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第一章 新兵師団内乱編

第二十七話 もう1つの皇国

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第七歩兵師団、第八歩兵師団、第十八機甲師団の三師団が使っている兵舎の病室。
勇一の指示で、小隊Aの者達は、戦艦大和の第一艦橋で見つけた隆一をベットに寝かせていた。

「全く、勇一くんも人使いが荒いわね~」

勇一に対して文句を述べながら、隆一の健康状態の書類を書いているナイスバディな美女は、軍医のナイル・紫電。
医者としての腕はとてもいいのだが、男好きという難点があるため、男軍人から嫌われている。だが、他の子と同じように接してくれている勇一のことをナイルは気に入っているようだ。
普段は、
余談だが、ナイルとグリアは士官学校時代の同級生である。

「まぁ、勇一くんからの頼みなら、なんでも聞くけどね~」

ペンを回しながら、ナイルがそのようなことを言っていると、

「………ここは、何処だ……?」

意識を失っていた隆一が目を覚ました。

「起きたみたいね…誰かーー!勇一くんを呼んでーーー!!」

隆一の意識が戻ったことに気づいたナイルは、外居る子達に、勇一を呼ぶよう頼む。

「おっはようございま~す。それでは、診察を初めましていただきますね~」

勇一を呼んでくるのを他の子に任せ、ナイル自身は隆一の体調を見ることにした。





「きょうかーん!」

兵舎に向けて歩いていると、兵舎から数人の子達が、私の元に駆け寄ってきた。

「どうした?」
「さ、先程…あの軍人が目を覚ましたそうで…」

駆け寄ってきた子達に、何があったか尋ねると、一人が息を切らしながら、海軍中将の方が目を覚ましたとの事だ。

「分かった。言いに来てくれて助かった。それと、本日も自主訓練、自習に変更すると皆に伝えてくれ、これから私は、あの軍人に出会ってくる」
「ハッ!!」

伝えに来てくれた子達に礼を述べた後、訓練変更の言伝を頼み、病室に向かうことにした。





「あら、来てくれたのね」

病室に入ると、紫電殿が椅子に座っていた。

「容態は?」
「溺水した症状はあったけど、それ以外は文句なしの健康体よ」
「そうか…悪いのだが、少々部屋からでていってくれるか?色々と話したいことがあるゆえ」

海軍中将の方の状態を聞いた後、私は紫電殿に部屋から一時的に退出してもらうように頼んだ。

「…わかったわ。終わったら言ってね~」

私の頼みに、紫電殿は了承して病室から出ていってくれた。

「…失礼致します」

私は声をかけながら、仕切り幕を開けた。

「君は?」
「はっ!私は元大日本帝國陸軍、八雲勇一であります!この度、戦艦大和の第一艦橋で、気を失っていた海軍中将殿を見つけ、ここに運んだ所存であります」

海軍中将の方から、誰かと聞かれ、私は背筋を伸ばし敬礼しながら応える。

「そうか…私は大日本帝国海軍中将、宮武隆一だ。貴殿の行い感謝する」

私がしたことに、宮武閣下は感謝をしながら頭を下げる。

「いえ、当然のことをしたまでです。して、宮武閣下…戦艦大和のあのやられ具合…一体何があったのですか?」
「ふむ……」

先程から気になっていた戦艦大和について、私は宮武閣下に話を尋ねてみることにした。

「上層部での命令でな。単独で枢軸国海空軍に挑むことになったのだ…全力を尽くしたが、あの有様だ……」

単独で枢軸国海空軍に挑んだ結果と、宮武閣下は仰られる。
枢軸国海空軍!?米国や連合軍ではなく!?
混乱しながら、私は宮武閣下に、詳しいことを尋ねることにする。

「枢軸国…もしや、ナチスとイタリアとですか!?米国や連合国ではなく!?」
「ん?アメリカや連合国は同盟国だぞ?確かに、昔は敵国だったが…」

私の問に、宮武閣下は首を傾げながら答えた。
米国や連合国が同盟国?昔は敵国という言葉にも引っかかる。
もしや、宮武閣下が知っている大日本帝國と、私が知っている大日本帝國は違うのか?この世界のように、別世界という可能性もある…確かめてみるか……

「……少々食い違いがあるみたいなので、それぞれここに来るまでのことを話し合いませんか?」
「そうだな。それと、貴殿にはここのことを話して欲しいのだが…」
「分かりました。知っている限りことをお話しましょう…」

私は大日本帝國が、大東亜戦争で劣勢を強いられており、私が経験したフィリピン戦での出来事を話したのち、悪魔によって不死としてこの世界に転移させられたから、大和発見までの出来事を宮武閣下に話した。

「なるほど…ここが異世界とは…信じられんな」
「はい、お気持ちは十分分かります。ですが、現実なのです…実際私はこのとおり…」

信じられない表情をしている宮武閣下に、私は事実だと知らせるため、手首を桜花で切り落として、再生する所を見せた。

「なんと面妖な…」
「お陰で、自害は無論、戦場で華々しく散ることも出来なくなりました……」
「貴殿も苦労したのだな。では、私の話をしよう」

私に労いの言葉をかけてくださった宮武閣下は、宮武閣下が知っていることを話してくださった。
宮武閣下の世界の大日本帝國は、大東亜戦争で劣勢になることなく大勝利を納めたとのこと。大日本帝國は米国と連合国と講和会議を行い、日独伊三国同盟の解消と、大東亜共栄圏と連合国の連携を強化を条件に、米英蘭によるアジアからの全面撤退を約束させることに成功。一方、欧州では、枢軸国と連合国の戦いが終わり、独ソ戦争も一時的に停戦。戦争終結により、大日本帝國は緩やかな立憲君主制になったという。それから数十年後、ナチスによる連合国への一方的な宣戦布告により、第三次世界大戦が勃発。大東亜共栄圏、連合国対枢軸国が起こり、宮武閣下も自身の艦隊、蒼穹艦隊を引き連れ海戦に参加。その際、古くなった戦艦大和を引退させようという話が上がっていたようだが、大和に愛着を持っている宮武閣下は大和を活躍させ、枢軸国に恐怖の戦艦と印象付けたようだが、それが逆効果となり、御前会議にて、大和を囮にし敵基地への攻撃を行うことが決まったという。
作戦決行時、宮武閣下は大和に一人残り、共に枢軸国海空軍に挑み、敵戦力に損害を出しながら、宮武閣下は大和と共に沈み、気を失ったという。そして、気がついたら私により保護されたとのことだ。

「…宮武閣下、見事です」

話を聞いた私は、宮武閣下の武勲に感激した。

「そう感激するな…大和と共に挑んだのは、私の我儘だ……」
「いえ、宮武閣下の武勲は素晴らしいです。そう悲観しないでください」

自身の武勲を悲観する宮武閣下に、悲観する必要は無いと伝える。

「それより、まさか皇国が二つあるとはな…」
「はい…私も驚きました。大東亜戦争で負けつづている私が所属している大日本帝國、大東亜戦争で勝利を収めた宮武閣下が所属している大日本帝國……話だけでは信じ難いことですが、我々が今いる世界は、我々が知っている世界とは、全くのことなる異界…似ているが、歴史が少し違う世界があっても、おかしくは無いでしょう…」
「うむ」

それぞれの話を聞き、私が居た世界と宮武閣下がいらっしゃった世界は、歴史が違う別々の世界と結論付けた。
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