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序章
第十話 交差する思惑
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陸軍省。帝国陸軍の軍政を管轄している機関であり、総司令本部の子組織である。主任大臣である陸軍大臣は、参謀総長も務めている、バレラー・シャイスン。男の軍人だ。
帝国軍は、女性が大半を占めてはいるが、決して男性が居ないという訳では無い。帝国軍では人種男女年齢関係なく、優秀なら入隊、昇格することが可能で、バレラーも優秀と認められ、陸軍大臣と参謀総長を務めているのだ。
バレラーが普段通り、執務室で葉巻を吸っていると、男の部下一人で執務室へ入ってき、総司令本部から伝えられたことを報告する。
「何ぃ?総司令本部から、特別指導員が派遣されると?一体どこにだ?」
「はっ!例の問題児集団である。第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団であります!」
「チッ…先を越されたか……」
それを聞き、バレラーは眉をひそめた。
現在、帝国本土内では新兵を中心に組まれた師団が、歩兵、機甲などを含めて十五師団居り、自身の力を強めたいと考えているバレラーは、その十五師団の新兵達に、洗脳教育を行っているのだが、第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団の新兵達は、指導員の言うことを一切聞かないため、バレラーの計画は膠着している。
それを打開するべく、バレラーは優秀な指導員を探していたのだが、総司令本部に先を越されてしまったのだ。このままでは計画実行に支障が出てしまうと思い焦り始める。
「あの問題児集団のところか…アイツらは私の教育方針を無視する面倒な奴らだ。おい、その特別指導員の性別は?」
「はっ!我々と同じ男だということです」
焦っていたバレラーだったが、特別指導員の性別が男だと分かると、ニヤッと笑みを浮かべた。
「ふむ…いつも通りアレを渡しとけ、そして、もしその者があの連中を懐柔に成功した時、私の派閥に入るよう誘え!なーに、金や美女とのハーレムを餌にすればイチコロだ!」
この世の男は、金と美女好きという考えを持っているバレラーは、その二つを餌にして勇一を自身の派閥に引き込むことが出来る。そう確信して、部下に命じる。
「承知致しました!」
命令を受けた男の部下は、敬礼した後執務室から退出していった。
そして、一人執務室に残ったバレラーは、新しい葉巻を吸いながら外の景色を眺める。
「さてさて、女神は誰に微笑むことやら…」
そんなことを呟きながら、バレラーは不気味な笑みを浮かべ、自身の計画が成功することを願っていた。
○
海軍省。帝国海軍の軍政を管轄している機関であり、陸軍省同様、総司令部の子組織である。主任大臣は、海軍元帥も務めている東轟狼菜。陸軍大臣とは違い、こちらは女性である。
そして狼菜もバレラー同様、部下から総司令本部が第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団に特別指導員が派遣されたと報告を受けた。
「男の指導員か…」
「どう致します?総司令本部からの派遣のため、バレラー陸軍大臣の息はかかっていないと思いますが…」
「派閥に取り込まれる可能性大ということか…」
表面では総司令本部の元、協力しあっていると思われているが、実際の所は陸軍と海軍は犬猿の仲で、互いにスパイを送りあっている程だ。
狼菜視点、男は信用出来ない者で、事実バレラーが何か悪巧みしていると聞く。
少し考えた後、狼菜は命令を下す。
「陸軍に潜らせているスパイに、その特別指導員を監視するよう伝えよ。バレラーの部下が、接触しているのを確認次第、連絡をするようにも伝えよ」
「はっ!」
命令を受け、狼菜の部下は執務室から退出していく。部下が出ていった後、狼菜は机の上に置いてある紅茶が入ったカップを手に取り、外を見ながら飲み始める。
「絶対に、バレラーの悪巧みを暴く」
そう決心しながら…
○
帝都近辺の山岳部、そこは第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団の練習場となっている。
その山岳部の小屋にて、第七歩兵師団のリーダー格、折田信乃、第八歩兵師団のリーダー格、アリサ・トゥータ、第十八機甲師団のリーダー格、ミシェル・エーデルの三人が集まっていた。
「それは本当なのよね?」
ミシェルから聞いた話に、信乃はミシェルの方を見ながら真偽を再確認する。
「本当ですわ。お母様が総司令部の関係者から手に入れた、信用が高い情報ですの」
「にしても、新しい男の指導員ね~…まぁ大したことねぇーだろ」
ミシェルが話した情報。それは、新しい男の指導員がやってくるという物だった。
しかし、自身の技術に強い自信を持っているアリサは、その話に興味を示しおらず、また、普段通り母親が圧力をかけ、自身を丁重に扱うと思っているミシェルも、アリサ同様、新しい指導員に興味はなかった。
だが、信乃は違った。
信乃は、真面目で頭が良い優等生だ。だからこそ、バレラーが自分達に洗脳教育を施そうとしているのに勘づいている。
最初、それに勘づいた信乃は、その事を上層部に伝えようとしたが、バレラーの権力により有耶無耶にされ、挙句の果てに信乃は、虚言癖の優等生だというレッテルを貼られてしまい、相手をされなくなってしまった。
そこから信乃は、大人を特に男を信用して居らず、バレラーが送ってくる指導員に反発をしているのだ。
そして、今回は男の指導員が来るという。そんなことはないのだが、信乃から見ると明らかバレラーの息がかかった者にしか見えない。
二人は呑気なことを言っているが、信乃はより一層警戒するよう、自身のに言い聞かせる。
(大人…特に男は信用出来ない)
っと。
帝国軍は、女性が大半を占めてはいるが、決して男性が居ないという訳では無い。帝国軍では人種男女年齢関係なく、優秀なら入隊、昇格することが可能で、バレラーも優秀と認められ、陸軍大臣と参謀総長を務めているのだ。
バレラーが普段通り、執務室で葉巻を吸っていると、男の部下一人で執務室へ入ってき、総司令本部から伝えられたことを報告する。
「何ぃ?総司令本部から、特別指導員が派遣されると?一体どこにだ?」
「はっ!例の問題児集団である。第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団であります!」
「チッ…先を越されたか……」
それを聞き、バレラーは眉をひそめた。
現在、帝国本土内では新兵を中心に組まれた師団が、歩兵、機甲などを含めて十五師団居り、自身の力を強めたいと考えているバレラーは、その十五師団の新兵達に、洗脳教育を行っているのだが、第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団の新兵達は、指導員の言うことを一切聞かないため、バレラーの計画は膠着している。
それを打開するべく、バレラーは優秀な指導員を探していたのだが、総司令本部に先を越されてしまったのだ。このままでは計画実行に支障が出てしまうと思い焦り始める。
「あの問題児集団のところか…アイツらは私の教育方針を無視する面倒な奴らだ。おい、その特別指導員の性別は?」
「はっ!我々と同じ男だということです」
焦っていたバレラーだったが、特別指導員の性別が男だと分かると、ニヤッと笑みを浮かべた。
「ふむ…いつも通りアレを渡しとけ、そして、もしその者があの連中を懐柔に成功した時、私の派閥に入るよう誘え!なーに、金や美女とのハーレムを餌にすればイチコロだ!」
この世の男は、金と美女好きという考えを持っているバレラーは、その二つを餌にして勇一を自身の派閥に引き込むことが出来る。そう確信して、部下に命じる。
「承知致しました!」
命令を受けた男の部下は、敬礼した後執務室から退出していった。
そして、一人執務室に残ったバレラーは、新しい葉巻を吸いながら外の景色を眺める。
「さてさて、女神は誰に微笑むことやら…」
そんなことを呟きながら、バレラーは不気味な笑みを浮かべ、自身の計画が成功することを願っていた。
○
海軍省。帝国海軍の軍政を管轄している機関であり、陸軍省同様、総司令部の子組織である。主任大臣は、海軍元帥も務めている東轟狼菜。陸軍大臣とは違い、こちらは女性である。
そして狼菜もバレラー同様、部下から総司令本部が第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団に特別指導員が派遣されたと報告を受けた。
「男の指導員か…」
「どう致します?総司令本部からの派遣のため、バレラー陸軍大臣の息はかかっていないと思いますが…」
「派閥に取り込まれる可能性大ということか…」
表面では総司令本部の元、協力しあっていると思われているが、実際の所は陸軍と海軍は犬猿の仲で、互いにスパイを送りあっている程だ。
狼菜視点、男は信用出来ない者で、事実バレラーが何か悪巧みしていると聞く。
少し考えた後、狼菜は命令を下す。
「陸軍に潜らせているスパイに、その特別指導員を監視するよう伝えよ。バレラーの部下が、接触しているのを確認次第、連絡をするようにも伝えよ」
「はっ!」
命令を受け、狼菜の部下は執務室から退出していく。部下が出ていった後、狼菜は机の上に置いてある紅茶が入ったカップを手に取り、外を見ながら飲み始める。
「絶対に、バレラーの悪巧みを暴く」
そう決心しながら…
○
帝都近辺の山岳部、そこは第七、第八歩兵師団、第十八機甲師団の練習場となっている。
その山岳部の小屋にて、第七歩兵師団のリーダー格、折田信乃、第八歩兵師団のリーダー格、アリサ・トゥータ、第十八機甲師団のリーダー格、ミシェル・エーデルの三人が集まっていた。
「それは本当なのよね?」
ミシェルから聞いた話に、信乃はミシェルの方を見ながら真偽を再確認する。
「本当ですわ。お母様が総司令部の関係者から手に入れた、信用が高い情報ですの」
「にしても、新しい男の指導員ね~…まぁ大したことねぇーだろ」
ミシェルが話した情報。それは、新しい男の指導員がやってくるという物だった。
しかし、自身の技術に強い自信を持っているアリサは、その話に興味を示しおらず、また、普段通り母親が圧力をかけ、自身を丁重に扱うと思っているミシェルも、アリサ同様、新しい指導員に興味はなかった。
だが、信乃は違った。
信乃は、真面目で頭が良い優等生だ。だからこそ、バレラーが自分達に洗脳教育を施そうとしているのに勘づいている。
最初、それに勘づいた信乃は、その事を上層部に伝えようとしたが、バレラーの権力により有耶無耶にされ、挙句の果てに信乃は、虚言癖の優等生だというレッテルを貼られてしまい、相手をされなくなってしまった。
そこから信乃は、大人を特に男を信用して居らず、バレラーが送ってくる指導員に反発をしているのだ。
そして、今回は男の指導員が来るという。そんなことはないのだが、信乃から見ると明らかバレラーの息がかかった者にしか見えない。
二人は呑気なことを言っているが、信乃はより一層警戒するよう、自身のに言い聞かせる。
(大人…特に男は信用出来ない)
っと。
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