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37.いいこと?
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「続きはベッドでしよう。せっかくの初めてだしな」
「はじめて……? わっ」
なんのことかとカルナが尋ねる前に、シュラトはカルナを抱きしめたまま立ち上がった。
急に体が宙に浮いたカルナは、とっさにギュッとシュラトにしがみつく。
カルナは特別大柄でもないが、小柄で華奢というわけでもない。そんなカルナを軽々と抱え上げたシュラトは、カルナを落とさないようにゆっくりと寝室へ移動する。
シュラトはそっとカルナの体をベッドに横たえると、自身もそのままベッドに上がり、カルナへと覆い被さった。
そして、少し緊張した面持ちのカルナを真上から見下ろし、妙に熱のこもった声で言う。
「いいことを思い付いたんだ」
唐突に告げられた言葉に、カルナはきょとんと首を傾げる。
「いいこと?」
「ああ、カルナは俺が群れを失うことを気にしていただろう?」
「それは、まあ……」
戸惑いつつ、カルナはおずおずと頷く。
それはそうだ。しかし、それがどう『いいこと』に繋がるのかは予想もつかない。
カルナを見下ろしたまま、シュラトはにっこりと笑った。無邪気に笑った口元からは、いまだに鋭い牙が覗いている。
「俺たちで群れを作ればいい」
なんでもないことのように告げられたシュラトの言葉に、カルナはぱちぱちと目を瞬かせた。
正直な話、シュラトが何を言っているのかまったく意味がわからない。
しかし、困惑するカルナを見ても、シュラトは上機嫌に笑みを浮かべたままだった。
「群れを作るって……どうやってですか?」
「だから、俺たちで作るんだ」
「っ!」
そう言った瞬間、シュラトの指先がカルナの下腹部をグッと押した。
腹の底をきゅうっと締め付けられるような感覚に、カルナは軽く息を呑む。
カルナを見下ろす深緑の瞳が、なぜだか妖しく光って見えた。
「いい考えだと思わないか? 子どもが五人もいれば立派な群れだろう?」
「ご、五人!?」
思わず大きな声で叫んでしまった。
先程シュラトが発した言葉の意味は、カルナにもなんとなく理解はできた。けれども、同意できるかどうかはまた別の話である。
「む、無理ですよ……だって、種族違いじゃないですか」
獣人にも性別はあるが、実は生殖にはあまり関係がない。男でも孕むし、女でも孕ませることができる。これができない生き物も多いらしいが、獣人にとっては別に特別なことではなかった。
ただ、男だの女だの肉食だの草食だのは関係なく、種族違いの獣人の夫婦はものすごく子どもができにくかった。先祖が獣であった時の名残ではないかと言われている。
無論、同じ獣人同士であることには違いないため、種族違いであっても子どもができることも稀にある。
実際、カルナは牛獣人の母と熊獣人の父との間に産まれたのだ。たったひとりの子どもだったが、結婚してすぐに妊娠できたのはラッキーだったと母はよく口にしていた。
種族違いの夫婦が子どもを作るのは、それだけ難しい……つまり、牛獣人のカルナと狼獣人のシュラトが子どもを授かるのは、なかなか大変なことであるはずだ。
──なのに、五人?
自然とカルナの表情が引き攣る。
本気なのか、冗談なのか。
いや、本気であるはずがない。そうわかってはいるものの、楽しげに笑うシュラトの瞳を見ていると、カルナの背筋がぞくりとした。
「はじめて……? わっ」
なんのことかとカルナが尋ねる前に、シュラトはカルナを抱きしめたまま立ち上がった。
急に体が宙に浮いたカルナは、とっさにギュッとシュラトにしがみつく。
カルナは特別大柄でもないが、小柄で華奢というわけでもない。そんなカルナを軽々と抱え上げたシュラトは、カルナを落とさないようにゆっくりと寝室へ移動する。
シュラトはそっとカルナの体をベッドに横たえると、自身もそのままベッドに上がり、カルナへと覆い被さった。
そして、少し緊張した面持ちのカルナを真上から見下ろし、妙に熱のこもった声で言う。
「いいことを思い付いたんだ」
唐突に告げられた言葉に、カルナはきょとんと首を傾げる。
「いいこと?」
「ああ、カルナは俺が群れを失うことを気にしていただろう?」
「それは、まあ……」
戸惑いつつ、カルナはおずおずと頷く。
それはそうだ。しかし、それがどう『いいこと』に繋がるのかは予想もつかない。
カルナを見下ろしたまま、シュラトはにっこりと笑った。無邪気に笑った口元からは、いまだに鋭い牙が覗いている。
「俺たちで群れを作ればいい」
なんでもないことのように告げられたシュラトの言葉に、カルナはぱちぱちと目を瞬かせた。
正直な話、シュラトが何を言っているのかまったく意味がわからない。
しかし、困惑するカルナを見ても、シュラトは上機嫌に笑みを浮かべたままだった。
「群れを作るって……どうやってですか?」
「だから、俺たちで作るんだ」
「っ!」
そう言った瞬間、シュラトの指先がカルナの下腹部をグッと押した。
腹の底をきゅうっと締め付けられるような感覚に、カルナは軽く息を呑む。
カルナを見下ろす深緑の瞳が、なぜだか妖しく光って見えた。
「いい考えだと思わないか? 子どもが五人もいれば立派な群れだろう?」
「ご、五人!?」
思わず大きな声で叫んでしまった。
先程シュラトが発した言葉の意味は、カルナにもなんとなく理解はできた。けれども、同意できるかどうかはまた別の話である。
「む、無理ですよ……だって、種族違いじゃないですか」
獣人にも性別はあるが、実は生殖にはあまり関係がない。男でも孕むし、女でも孕ませることができる。これができない生き物も多いらしいが、獣人にとっては別に特別なことではなかった。
ただ、男だの女だの肉食だの草食だのは関係なく、種族違いの獣人の夫婦はものすごく子どもができにくかった。先祖が獣であった時の名残ではないかと言われている。
無論、同じ獣人同士であることには違いないため、種族違いであっても子どもができることも稀にある。
実際、カルナは牛獣人の母と熊獣人の父との間に産まれたのだ。たったひとりの子どもだったが、結婚してすぐに妊娠できたのはラッキーだったと母はよく口にしていた。
種族違いの夫婦が子どもを作るのは、それだけ難しい……つまり、牛獣人のカルナと狼獣人のシュラトが子どもを授かるのは、なかなか大変なことであるはずだ。
──なのに、五人?
自然とカルナの表情が引き攣る。
本気なのか、冗談なのか。
いや、本気であるはずがない。そうわかってはいるものの、楽しげに笑うシュラトの瞳を見ていると、カルナの背筋がぞくりとした。
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