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34.一週間分の
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キスを終えたシュラトは、カルナの体にゆっくりと手を滑らせる。
その手はカルナの側胸部あたりでピタリと止まると、なにかを確かめるように服越しにさわさわとカルナの肌に触れた。
くすぐったさに、カルナは小さく笑いながら身を捩らせる。
「やっ……シュラトさまっ」
「さっきから思ってたんだが、このあたりに何か巻いてるのか? 感触が変というか……ここに段差がある」
「え? あ…………そ、それは……」
訝しむようなシュラトの言葉に、カルナは途端に顔を赤らめて、落ち着きなく視線を漂わせた。
しかし、向かい合わせでシュラトの膝の上に座っている状態では、じぃーっとカルナを見つめるシュラトの視線から逃れられるはずもない。
諦めたカルナは顔を赤くしたまま、もごもごと小さな声で喋る。
「……そ、れは……その、ほ……たいを……してて……」
「……? なんだって?」
「だから、その……包帯、です」
カルナの答えを聞いた瞬間、シュラトの目が大きく見開かれた。
「包帯!? どこか怪我したのか!?」
「い、いえ、違います」
シュラトのあまり剣幕にのけぞりつつ、カルナは大きく首を横に振る。
しかし、尚もシュラトは心配そうな顔をしていた。
「じゃあ、なんで包帯なんて」
「……それは、えっと……その……」
──なんと説明すればいいのだろう。
誤魔化せるなら誤魔化したいが、『二週間分たっぷり愛し合いたい』というシュラトの発言を考えれば、このあとシュラトが簡単にカルナを解放してくれるとは思えない。
考えた末、カルナはあえてへらりと笑い、なるべく明るい声で説明した。
「これはその、大したことではなくてですね……ただ、最近ミルクを搾れてないので胸が張って……それを隠すために包帯をさらし代わりに巻いてるだけなんです」
牛獣人は定期的に搾乳しなければ、どんどんミルクが胸に溜まっていく。
故に、カルナもシュラトが遠征に向かって一週間は、ちゃんと自分で搾乳していた。
けれども、酒場であの会話を聞いてからはそんなことをやる気も起きず、ここ三日は仕事に行く前にさらし代わりに幅広の包帯を胸に巻いて、それで人目を忍ぶ生活が続いていた。
それほど胸が膨らんでいるわけでもないが、周りに気付かれるのも、シャツにミルクか滲むのも嫌だった末の対応策である。
「……胸が張る?」
カルナの説明がいまいちピンと来なかったらしいシュラトは、きょとんと小首を傾げていた。いまだに獣耳があるせいで、いつもより少し幼く見える。
「えっと、牛獣人は定期的にミルクを出さないと胸にミルクが溜まってしまうんですけど、ここ一週間はミルクを出せてないので……」
「つまり、ここに一週間分のミルクが溜まってるってことか……」
途端にシュラトは、どこかうっとりとした表情でカルナの胸元を見つめた。深緑の目だけが、やけにギラギラとしている。
その瞳にほんの少しだけ恐怖を感じながらも、カルナの胸は確かな期待に高鳴っていた。
その手はカルナの側胸部あたりでピタリと止まると、なにかを確かめるように服越しにさわさわとカルナの肌に触れた。
くすぐったさに、カルナは小さく笑いながら身を捩らせる。
「やっ……シュラトさまっ」
「さっきから思ってたんだが、このあたりに何か巻いてるのか? 感触が変というか……ここに段差がある」
「え? あ…………そ、それは……」
訝しむようなシュラトの言葉に、カルナは途端に顔を赤らめて、落ち着きなく視線を漂わせた。
しかし、向かい合わせでシュラトの膝の上に座っている状態では、じぃーっとカルナを見つめるシュラトの視線から逃れられるはずもない。
諦めたカルナは顔を赤くしたまま、もごもごと小さな声で喋る。
「……そ、れは……その、ほ……たいを……してて……」
「……? なんだって?」
「だから、その……包帯、です」
カルナの答えを聞いた瞬間、シュラトの目が大きく見開かれた。
「包帯!? どこか怪我したのか!?」
「い、いえ、違います」
シュラトのあまり剣幕にのけぞりつつ、カルナは大きく首を横に振る。
しかし、尚もシュラトは心配そうな顔をしていた。
「じゃあ、なんで包帯なんて」
「……それは、えっと……その……」
──なんと説明すればいいのだろう。
誤魔化せるなら誤魔化したいが、『二週間分たっぷり愛し合いたい』というシュラトの発言を考えれば、このあとシュラトが簡単にカルナを解放してくれるとは思えない。
考えた末、カルナはあえてへらりと笑い、なるべく明るい声で説明した。
「これはその、大したことではなくてですね……ただ、最近ミルクを搾れてないので胸が張って……それを隠すために包帯をさらし代わりに巻いてるだけなんです」
牛獣人は定期的に搾乳しなければ、どんどんミルクが胸に溜まっていく。
故に、カルナもシュラトが遠征に向かって一週間は、ちゃんと自分で搾乳していた。
けれども、酒場であの会話を聞いてからはそんなことをやる気も起きず、ここ三日は仕事に行く前にさらし代わりに幅広の包帯を胸に巻いて、それで人目を忍ぶ生活が続いていた。
それほど胸が膨らんでいるわけでもないが、周りに気付かれるのも、シャツにミルクか滲むのも嫌だった末の対応策である。
「……胸が張る?」
カルナの説明がいまいちピンと来なかったらしいシュラトは、きょとんと小首を傾げていた。いまだに獣耳があるせいで、いつもより少し幼く見える。
「えっと、牛獣人は定期的にミルクを出さないと胸にミルクが溜まってしまうんですけど、ここ一週間はミルクを出せてないので……」
「つまり、ここに一週間分のミルクが溜まってるってことか……」
途端にシュラトは、どこかうっとりとした表情でカルナの胸元を見つめた。深緑の目だけが、やけにギラギラとしている。
その瞳にほんの少しだけ恐怖を感じながらも、カルナの胸は確かな期待に高鳴っていた。
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