ミルクはお好きですか?

リツカ

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18.獣のよう

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 気持ちよくて、でも少し疲れた。
 シュラトの体温がまた心地よくて、カルナはそのままシュラトの膝の上で眠ってしまいそうだった。

 しかし──

「ッ!」
「……勃ってる」

 衣服の上から性器を掴まれ、まどろんでいた思考が一気に現実へと引き戻された。
 シュラトの熱のこもった視線と、揶揄うような声に、カルナの顔がかあーっと赤くなる。

 下半身が熱くなっていたことにはカルナ自身も気付いてはいたが、こんなふうに突然触れられるとは思っていなかった。
 事実、いままでは上半身への愛撫のみで、そこに触れられたことはなかったのだ。

「シュ、シュラト様っ……ま、待って……」
「気持ちよかったんだな」

 心底うれしそうに微笑んだシュラトが、カルナのズボンの前をくつろげ、躊躇なく下着ごとズリ下げた。
 すると、脱がされた下着からカルナの勃起した性器が勢いよく飛びでてきて、まさかの展開に、カルナはひとりあたふたとしていた。

「ッま、まってくだ──」
「乳首と一緒でここの色も綺麗だな」
「ひっ」

 うっとりと目を細めたシュラトが、カルナの性器に直接触れた。
 そして、撫でるようにそっと指を滑らせる。

「あっ……! シュ、シュラトさま……そんな、だめです……っ」
「恥ずかしがらなくてもいい。俺の所為でこうなったんだから」
「ちが……あッ、ん……やっ……」

 カルナの性器を包んだ手が、ゆっくりと上下に擦るように動く。シュラトの力加減は絶妙で、すぐカルナの鈴口からトロッとした先走りがあふれてきた。
 経験したことのない初めての快感と羞恥に、カルナは目眩さえ覚える。

「ん、っあ……だめ、だめです……あっ、ああッ、気持ちいい、から……っ」
「気持ちいいならダメじゃないだろう?」

 カルナが涙目で訴えても、シュラトは聞き入れてはくれなかった。
 剣だこのあるゴツゴツとした掌でゆっくりと性器を扱かれるのが気持ちよくて堪らない。
 先端からどんどんカウパーがあふれて、シュラトの手が上下するたび、ぐちゅぐちゅといやらしい音が響く。

「シュラトさまっ、シュラトさま……あっ……は、あ、ああ……っ!」

 カルナの腰が震えて、とうとう性器からビュクっと精液があふれた。
 尚もシュラトの手はカルナの精を搾るようにゆっくりと下から上へと動き、カルナの性器はとぷとぷと勢いのない射精を続ける。

「ん……あ、ぁあ……」

 射精を終えると同時に、糸が切れたようにカルナの体から力が抜ける。
 カルナは荒い呼吸を繰り返しながら、シュラトの膝の上でぐったりとしていた。

「……わっ」

 すると、突然カルナの体が持ち上がり、背中からソファへと押し倒される。
 驚いたカルナが目を見開くと、シュラトが押し倒されたカルナの体を跨いで、膝立ちになってカルナを見下ろしていた。

「ああ、カルナ……」

 牙を剥き出しにして笑うその姿は、まさしく獣のようだった。
 深緑の瞳がギラギラと光り、ひどく愉しそうにカルナを見つめる。

 カルナは目を丸くして、黙ったままシュラトを見つめ返した。
 心臓の音がバクバクとうるさい。
 昔のカルナなら怖くて堪らなかっただろうが、いまはシュラトのその野性味にときめきすら感じている。

 それからシュラトは自身の前をくつろげ、そこから勃起した性器を取り出した。
 カルナのものよりも一回りは大きい、血管の浮き出たどこか凶悪なそれに、カルナは目を奪われた。

 ごくり、と唾を飲み込む。
 恐怖もあったが、それ以上に興奮している自分がいることにカルナは気付いていた。

「触れるか?」

 揶揄うような問いかけに、カルナは首をブンブンと横に振る。
 シュラトは少し残念そうに苦笑したが、それ以上無理強いをしたりはしなかった。

 そうしてシュラトは、カルナの顔を上から見下ろしたまま、無言で自身の性器を扱きはじめる。
 その手が動くたび、シュラトの手に吐き出されたカルナの精液の所為か、ぐちゅぐちゅといやらしい水音がカルナの耳にまで届いた。

 シュラトの吐息が次第に熱を持ち、手の動きが大胆になっていく。
 それから数分後、眉を寄せたシュラトは歯を食いしばり、カルナの胸目掛けて勢いよく射精した。

「ッ……カルナっ……」
「んっ……あっ、ああ……」

 胸の中央あたりに降り注いだシュラトの精液の熱さに、思わずカルナの口から甘い声が漏れる。

 射精後、ようやく牙を収めたシュラトは、まだ少し興奮した面持ちでカルナを見下ろした。
 そして、親が子どもに送るような優しいキスをカルナの額に落としたあと、舌を絡め合う濃厚な口付けを交わす。
 弾力のある柔らかな舌がカルナの歯列をなぞり、口内を掻き回す。息苦しくて気持ちのいいこの感覚には、当分慣れそうもない。

 唇を離すと、シュラトは愛おしげにカルナへと頬擦りする。実に獣らしい、少し愛嬌のある仕草だった。

 深緑の瞳がうっとりとカルナの黒い瞳を覗き込む。

「好きだ」

 甘い声で突如囁かれた言葉に、カルナは大きく見開いた目をゆっくりと瞬かせた。
 そして、カルナにしては珍しく、ほんの少しだけ拗ねたような顔をする。

「…………言うの、ちょっと遅いです」
「? 知ってただろ?」
「そんなのっ、ちゃんと言ってくれないとわかんないですよ……! ……でも、言わなかったのは俺も同じなので……すみません」

 勇気がなくて、シュラトに自分たちの関係を尋ねることができなかった。
 しかし、気になるならもっと早く聞けばよかったのだ。はっきりと好きだと言われたことはなかったが、シュラトからの強い好意を感じることは度々あったのだから。

「そうか。俺は普通に両想いだと思っていたから……不安にさせてすまなかった」
「いえ……」
「カルナが好きだ」

 改めてシュラトはそう言うと、カルナの唇にそっと触れるだけのキスをした。
 カルナは少し黙った後、シュラトの顔をおずおずと見つめ返して言う。

「……俺も、シュラト様のことが好きです……たぶん……」

 その返事を聞いたシュラトは、ククッと小さな笑い声をあげた。

「たぶんか」
「いや、その……いままで誰かを好きになったことがないので、よくわからなくて……」
「カルナの初めては俺ばかりだな。……続きをしてもいいか?」
「つ、続き……!? ……きょ、今日はちょっと……もう無理です……」
「じゃあ、また今度だな」

 ニヤリと笑ったシュラトの言葉に、カルナはいっそう顔を赤くした。


 これから三ヶ月ほどが、ふたりにとって──否、カルナにとって、一番幸せな時間だったのかもしれない。
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