ミルクはお好きですか?

リツカ

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17.たぶん好き

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 あの日から、ミルクの受け渡しは『直』で行われることになった。

 三度目は、人助けでも、酒に酔っているわけでもなかったが、当然のようにシュラトに寝室へと連れて行かれて、また彼の満足するまで乳を吸われた。
 四度目、五度目も、大体そんな感じだ。

 ただ、六度目は少し違った。



「はっ、あ……ああっ……」

 その日、カルナはシュラトの家に招かれ、シュラトの手料理をご馳走になった。
 そうして、取り留めのない会話をしながら食事をした後、シュラトに求められるがまま、リビングのソファにて乳を吸われている。

 ソファに座るシュラトの膝の上に向かい合う形で跨り、抱き合うように体を密着させて、カルナは何度も甘い声を漏らしていた。
 気付けば途中からは、カルナの方がシュラトに縋り付くような体勢になっている。

「もーでないっ、でないからぁ……」

 空っぽになってしまった乳を吸われるのがつらくて──気持ちよくて、カルナは半泣きで訴えた。

「ああ……すまない」

 名残惜しそうにしながらもシュラトは唇を離し、謝罪と共にカルナの乳首をぺろぺろと丹念に舐めた。
 その刺激がまた気持ちよくて、思わずカルナの体は胸を突き出すように反れた。

 ──これは、所謂大人の関係というやつなのだろうか……。

 蕩けた思考の中、そんな疑問を抱きながらも、カルナはシュラトを拒絶したいとは思えなかった。
 胸元にあるその頭を褒めるように優しく撫でると、背中に回ったシュラトの腕がきつくカルナを抱き返してくれて、それがまたなんとも心地よかった。

 経験がないからといって、カルナももう子どもではない。
 これが、命の恩人にミルクを与えるなどという単純な行為ではないことは、カルナも一応わかっていた。

 シュラトの唇も、指先も、間違いなく欲を孕んでカルナに触れている。
 むしろ、カルナへと快楽をもたらすことに重きを置かれたそれは、もはや性行為の愛撫と呼ぶべきものなのだろう。
 にも関わらず、カルナがそれを拒絶しないのは、この行為も、シュラトのことも、嫌いになれないからだ。

 ──というか、……うん、たぶん、好きなんだよな……。

 シュラトの指通りの良い茶髪に触れながら、カルナはぼんやりと考える。

 最初は、肉食獣人だから怖くて。でも、命の恩人で、かっこよくて、優しくて。
 仲良くなれて、はじめての友達ができたみたいで、すごくうれしかった。
 けれど、今はもうそれだけではない。

 会えなくなってしまうのが嫌で、大切なことを確認できないまま、淫な行為に耽っている。
 天国の両親が今のカルナを知れば、きっとひどく呆れられてしまうだろう。

 しかし、別に悪いことをしているわけではない……と自分に言い聞かせて、カルナはシュラトにぎゅっとしがみついた。

「カルナ……ほら、キスしよう」

 ミルクを飲み終えて満足したのか、顔を上げたシュラトが甘い声でそう強請る。
 カルナを抱きしめていた手がゆっくりと頬を滑り、その指先で柔らかなカルナの唇にふにふにと触れた。

 実際の身長は拳二つ分ほどシュラトの方が高いが、いまはシュラトの膝に跨るように座るカルナを、少し低い位置からシュラトが見上げている。
 カルナはその深緑の瞳に引き寄せられるように、無言でシュラトへと顔を寄せた。

 シュラトの舌がカルナの唇を舐め、歯列をなぞる。
 カルナの後頭部に回わした手でその黒髪を撫でながら、シュラトはカルナの耳元で囁いた。

「口開けて」

 求められるままにカルナが薄く唇を開くと、すぐさまシュラトの舌が口内へと入ってきた。
 ほのかに甘い、ミルクの味がする。
 シュラトの甘い舌が、カルナの上顎の気持ちいい部分を器用にくすぐる。さらに、舌を絡め取られ、優しく吸われて、カルナは快感で頭が真っ白になっていくのを感じていた。

 こういうキスを教えられたのつい最近で、まだ慣れない。
 頭の中に直接響くような水音が恥ずかしくて、カルナはぎゅっと目を瞑ったまま、シュラトの口付けを受け入れていた。

「っ……んっ、んぁ……ふ、ッあ……!」

 空いているシュラトの手がいたずらにカルナの乳首に触れると、指の腹で擦るようにクニクニと弄る。
 散々シュラトに吸われて敏感になった乳首への更なる刺激に、カルナは下腹部がきゅーっと締め付けられるような快感を覚えた。

 ──気持ち良すぎて、おかしくなりそう。

 だが、唇を塞がれた状態では碌に抗議もできない。
 カルナは口付けの合間に甘い悲鳴を上げながら、シュラトが満足するまで腰を震わせ続けるしかなかった。



「っは、あ……ああッ、……っ、はぁ……」

 ようやく、キスからも、胸への愛撫からも解放された時には、カルナの顔は真っ赤になっていた。

 体に力が入らない。
 なんだか、回を増すごとにどんどん気持ちよくなっている気がする。

 涙で潤んだカルナの視界は朧げで、シュラトの瞳がいっそう宝石のように煌めいて見えた。

「カルナ、俺の可愛いひと……」

 荒い呼吸を繰り返すカルナを宥めるように、シュラトはカルナの頭を撫でながら、その首筋や頬に何度もキスを落とす。

 ──この時間、すごく幸せだ……。

 もちろん最中も気持ち良くて、それはそれで幸せだが、シュラトが満足したあと、こうやって甘やかされる時間がカルナはいっとう好きだった。

 カルナはくたりとシュラトに身を預けて、うっとりと目を閉じた。
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