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4.父の言葉
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『お前は自分と同じ草食獣人と家族になりなさい。そのほうがきっと幸せだ』
ふたりきりのとき、父はカルナに何度かそう言った。
父は母に対してずっと申し訳ないと思っていたようだった。母と母の家族を引き離してしまったと、いつも自分を責めていた。
カルナは幼い頃から、父のその教えを守るつもりだった──いや、自然とそうなるだろうと思っていたのだ。
カルナは他の草食獣人同様、本能的に父以外の肉食獣人が怖かったから。
けれど、今となってはよくわからない。
「……カルナ」
手首を掴まれ、グイッと引き寄せられた。
振り返ると、薪を積み終えたらしいシュラトがカルナを見ていた。咎めるような、訝しむような、そんな瞳で。
「あ……」
「もう行こう。あなたは荷台に乗ってくれ」
すぐに背を向けられ、荷馬車の方へと腕を引かれた。
「またね、カルナ」
後ろからジェシカに声をかけられる。
振り返ると、にこやかに微笑んだ彼女が軽く手を振っていた。
手首を掴む力が強くなった気がして、カルナは軽く頭を下げてからすぐに前を向いた。
シュラトの大きな背中からピリピリとした威圧感を感じる。
いますぐ手首を掴む手を振り払って逃げだしたいような、その背中に抱きついて甘えたいような、そんな複雑な感情のまま、カルナは荷台の空いたスペースへと乗り込んだ。
その後、すぐにシュラトは馬に跨り、荷馬車を出発させた。
シュラトの家は、街から少し離れた閑静な場所にあった。
豪邸というわけではないが、庭も馬小屋もあり、一人暮らしには十分な広さの立派な住居である。
荷馬車から降りたカルナは、ここまで運んでくれた白馬の体を労るように撫でる。
シュラトの愛馬に荷物を運ばせるなんて申し訳なかったが、カルナが歩きでここまで荷車を引くことになっていたら、なかなか骨が折れただろう。
シュラトが馬を小屋に連れて行く間に、カルナは薪を庭に下ろし、家の壁の横に積み上げていく。すぐにシュラトもやってきて、ふたりで薪を運び終えてから家の中に入った。
「ん……っ、ぁ……んぅ」
おじゃまします、と言う間もなかった。
家に入った瞬間に後頭部を手で掴まれ、貪るように荒々しくキスをされる。長い舌が口内を舐め回し、奥に引っ込んだカルナの舌を絡め取る。
そのまま食べられてしまいそうで怖いのに、気持ちが良くて仕方なかった。
口付けが終わり、鼻先が触れ合いそうな距離で、カルナとシュラトは見つめ合う。
ギラギラとした欲望を宿した美しい深緑の瞳に、惚けた顔のカルナが映っていた。
ふたりきりのとき、父はカルナに何度かそう言った。
父は母に対してずっと申し訳ないと思っていたようだった。母と母の家族を引き離してしまったと、いつも自分を責めていた。
カルナは幼い頃から、父のその教えを守るつもりだった──いや、自然とそうなるだろうと思っていたのだ。
カルナは他の草食獣人同様、本能的に父以外の肉食獣人が怖かったから。
けれど、今となってはよくわからない。
「……カルナ」
手首を掴まれ、グイッと引き寄せられた。
振り返ると、薪を積み終えたらしいシュラトがカルナを見ていた。咎めるような、訝しむような、そんな瞳で。
「あ……」
「もう行こう。あなたは荷台に乗ってくれ」
すぐに背を向けられ、荷馬車の方へと腕を引かれた。
「またね、カルナ」
後ろからジェシカに声をかけられる。
振り返ると、にこやかに微笑んだ彼女が軽く手を振っていた。
手首を掴む力が強くなった気がして、カルナは軽く頭を下げてからすぐに前を向いた。
シュラトの大きな背中からピリピリとした威圧感を感じる。
いますぐ手首を掴む手を振り払って逃げだしたいような、その背中に抱きついて甘えたいような、そんな複雑な感情のまま、カルナは荷台の空いたスペースへと乗り込んだ。
その後、すぐにシュラトは馬に跨り、荷馬車を出発させた。
シュラトの家は、街から少し離れた閑静な場所にあった。
豪邸というわけではないが、庭も馬小屋もあり、一人暮らしには十分な広さの立派な住居である。
荷馬車から降りたカルナは、ここまで運んでくれた白馬の体を労るように撫でる。
シュラトの愛馬に荷物を運ばせるなんて申し訳なかったが、カルナが歩きでここまで荷車を引くことになっていたら、なかなか骨が折れただろう。
シュラトが馬を小屋に連れて行く間に、カルナは薪を庭に下ろし、家の壁の横に積み上げていく。すぐにシュラトもやってきて、ふたりで薪を運び終えてから家の中に入った。
「ん……っ、ぁ……んぅ」
おじゃまします、と言う間もなかった。
家に入った瞬間に後頭部を手で掴まれ、貪るように荒々しくキスをされる。長い舌が口内を舐め回し、奥に引っ込んだカルナの舌を絡め取る。
そのまま食べられてしまいそうで怖いのに、気持ちが良くて仕方なかった。
口付けが終わり、鼻先が触れ合いそうな距離で、カルナとシュラトは見つめ合う。
ギラギラとした欲望を宿した美しい深緑の瞳に、惚けた顔のカルナが映っていた。
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