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 うれしそうなリョクを見上げたまま、光秋は荒い呼吸を繰り返す。
 心臓がばくばくと音を立てて、いっこうに治まりそうな気配もない。

「はっ……は、あ……あ……」
「いい子だね、みっちゃん。みっちゃんのイキ顔、すごくエロくてかわいかったよ」
「ん、ぁ……もう、おれ……」
「自分がイッたら終わりなんてさみしいこと言わないでよ。こんなのただの前戯でしょ」
「っ!」

 リョクの手が光秋の片足を持ち上げた。軽く浮いた臀部をもう片方の手でするりと撫でたかと思うと、その指先が光秋の尻のあわいを開くように柔肉を鷲掴む。
 後孔に空気が触れる感覚に、光秋は「ひゃっ」と色気のない悲鳴をあげた。
 リョクはくすくすと小さく笑ったあと、光秋を見下ろして言う。

「ここがとろとろになるまでローションで解してから、俺のでいっぱい気持ち良くしてあげる。やっとみっちゃんとひとつになれるのうれしいなぁ」
「ま、まって……!」
「待てないよ。そんな時間もないし」

 ──あ……

 その瞬間、自分たちの関係が『ただの客とキャスト』でしかないことを、光秋ははたと思い出した。
 冬の空気を吸い込んだときのあの胸がスッと凍えるような感覚に、光秋は呆然とする。自分たちは制限時間付きの偽りの恋人なのだと、そんな当たり前のことを一瞬でも忘れていた自分が情けなかった。
 光秋が固まっているうちに、リョクは持ってきていたローションを手に取り、それを自身の指にたっぷりとまとわせていく。
 指の隙間からとろりとこぼれたローションが光秋の太腿に落ち、その冷たさに光秋の足がびくりと跳ねた。

「あっ、リョ、リョクくん……」
「大丈夫。じっとしてて」
「え、あ……っ」

 リョクの濡れた指先が、光秋の後孔の縁をくるりと撫でた。直後、すりすりと窄まりの上を滑るように上下に動く。
 少しでも気を抜けば秘所に侵入してきそうなその指先に、光秋は体を強張らせた。

「ンッ、あ」
「みっちゃん、力抜いて」
「いっ……!」

 光秋は大きくかぶりを振ったが、そんな抵抗も虚しく後孔のナカにつぷりとリョクの指先が入ってきた。
 感じたことのない異物感と羞恥心に、光秋はギュッと目を閉じる。

「ん、うっ……」
「狭いね。ほんとに俺が初めてなんだ」
「あっ……動かさないで……!」
「動かさないとナカ解せないじゃん」

 リョクは苦笑しつつ、挿入した指をゆっくりと前後させる。
 ローションのおかげか、光秋の後孔はその指を容易く根元まで飲み込んだ。まるで歓迎するように、肉壁がリョクの指にきゅうきゅうと絡みつく。

「んっ、く……あっ!」
「ここ気持ちいいでしょ? 前立腺っていうんだよ。男でも女の子みたいに気持ちよくなれるとこ」

 そこをリョクの指がたんたんと叩くだけで、腹の底に痺れるような快感が走った。直接男性器に触れるよりも鈍く、けれど深い刺激だ。

「あ、おっ……あッ、ふ、あぁ……っ」
「初めてなのに感度いいねー。もしかしてオナニーのときここ弄ってた?」
「ンッ、あ……し、してない……!」
「本当に? でも、指もう一本入っちゃいそうだよ?」
「っ、う、あっ……んッ!」

 一度指を引き抜かれたかと思うと、先ほどよりも太いなにかがナカに入ってきた。それが重ねられた二本の指だと光秋が気付く前に、その二本の指はナカを押し広げようとバラバラに動きだす。

「はっ、あッ……あっ、ん……!」
「だんだん柔らかくなってきた。この調子なら、思ったより早く俺のも入りそうだね」
「い、っあ、そこっ……!」
「前立腺気持ちいいねー」

 わずかに膨らんだしこりを指の腹でぐりぐりと押し潰されるたび、光秋の大きく開いた足がびくりと跳ねた。
 腹の奥が熱くて、まるでとろけるように体の力が抜けていく。ただリョクの指を突き入れられた後孔だけが、はしたなくその指を締め付けていた。

「……もっ、やだぁ……っ」
「んー……みっちゃんがそう言うならそろそろいっか」

 しばらくして、ようやくリョクの指が抜き取られた。
 抜き取られるときの動きに光秋は腰をぶるりと震わせ、途方もない快感からの解放にホッと一息つく。

「俺も脱ぐね」

 リョクはそう言って、素早く服を脱ぎはじめた。
 現れた美しい肉体に、光秋は思わずほうと感嘆の息を漏らす。
 細身だがしっかりと筋肉が付いていて、想像よりもずっと男らしい。無駄のない引き締まった体は、美青年であるリョクの魅力をいっそう引き立てていた。
 ──そんなリョクの肉体にうっとりと見惚れていた光秋だったが、とあるものが視界に入り、目を見開く。

「みっちゃんがエロいから、こんなになっちゃった」

 おどけるように言ったリョクは下着とともにズボンを脱ぎ捨て、少しばかり興奮した面持ちで目を細めた。
 膝立ちになったリョクの股座で腹につきそうなほど反り返ったそれを見て、光秋はごくりと唾を飲み込む。
 太くて長いそれは、標準より大きいであろう光秋のものよりもさらに大きかった。使い込まれた赤黒い色のせいか、浮き出た血管のせいか、禍々しささえ感じられる。

「触ってみる?」
「えっ……いっ、いや、いい……」

 光秋はぎこちない動きで首を横に振った。
 なんというか、怖い。
 好奇心や興奮よりも、未知への恐怖の方が圧倒的に優っていた。

「……こら、逃げちゃダメでしょ」
「う……」

 ベッドの上で無意識に後ずさりしようとした光秋の足をリョクが掴み、自身のもとへと引き寄せる。
 光秋の怯えた顔を見下ろして、リョクは唇の端を吊り上げて笑った。手早くゴムを付け、再びローションを自身の性器と光秋の後孔へと垂らす。

「ん、ぁ……」
「みっちゃん、挿れるね」
「こ、こわい……」
「大丈夫。俺に任せて」

 光秋の膝裏を掴んだリョクの手が光秋の足を開かせ、ベッドへと押し付けた。
 あらわになった尻の割れ目に、リョクの性器がずるずると擦り付けられる。

「ふっ、あ、やっ……」
「みっちゃん、ちょっと力んだりできる? その方が挿れやすいんだけど」
「む、むり……」
「そっか。じゃ、そのまま力抜いてて」
「っ、ん……あっ……!」

 硬い熱の塊が、グッと光秋の後孔に押し当てられた。
 そんな大きなもの、自分のナカに入るはずがない──そう思うのに、指で丁寧に解されたそこは、光秋の意思に反して容易く綻んでいく。

「はっ、あ……っ」
「先っぽ入ってくのわかる?」
「う、ぅ……ンッ、お、ぁ……!」

 ぐぷっという音とともに光秋の後孔になにかが入ってきたのがはっきりとわかった。
 入り口のあたりを押し広げられる圧迫感と、指とは比べものにならない存在感に、光秋は唇を震わせる。

「あ、ん……ぅ」
「カリのとこまで入ったら、あとは楽だよ。ゆっくり挿れてくね」
「ンッ、あ、あっ」

 その宣言通り、じれったいほど緩慢な動きでリョクの性器は光秋のナカに押し入ってきた。
 ずっ、ずっ、とリョクの雄がナカで動くたびに無防備な肉壁が刺激されて、勝手に腹のナカがきゅうきゅうと蠢く。
 すると、リョクがひどく心地よさそうに眉をひそめた。

「あー、キツくてとろとろでマジ気持ちいい……」
「ひ、ぅ……あ、ん……」
「みっちゃん、痛くない?」
「ん……っ」

 ──い、痛くはない……っけど……すごく変な感じ……ッ

 ちゃんと慣らしてもらったものの、息が詰まるような圧迫感は相変わらずだ。どうやらリョクは気持ちいいらしいが、光秋にとってはまだ苦しいという感覚の方が強かった。
 けれども、これがずっとしてみたかったセックスなのだと思うと感慨深いものがある。
 初めての相手が恋人でないことは少しさみしい。だが、大好きなリョクの顔を見上げていると、そんなことは些細なことのようにも思えた。

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