遠のくほどに、愛を知る

リツカ

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後日談など

初恋と罪と愛と 11

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 クロードは「はっ……」と短く息を吐く。
 後孔の締め付けが良すぎて、少しでも気を抜くと早々に達してしまいそうだった。

「っ……あ、あっ、んっ……や」

 ヴィンセントの腿がヒクつくように震え、そのたびクロードの性器が奥深くへと侵入していく。念入りに解された穴はその侵入を拒むどころか、奥へ奥へとうれしそうにクロードを誘うのだ。

「あっ、ああッ……ひっ、う、あッ!」

 クロードの亀頭が最奥にたどりついた瞬間、ヴィンセントの体が軽く仰け反った。びくり、びくりと震える体をクロードが抱き締め、なだめるようにその広い背中を傷痕ごと撫でる……無論、いっそうヴィンセントが乱れてしまうことはわかっていたが。

「ッ~~、は、あ、あっ、イク……ッ」
「もうイッてるだろう」
「あっ、く……う、あっ、ああっ……!!」

 クロードの揶揄いなど聞こえていないらしい。ヴィンセントは天を仰ぎ、性器に触れないまま吐精を続けた。
 眼前に晒された喉元に、クロードは吸い付くようにキスをする。そのまま長いこと、物欲しげにきゅうきゅうと性器に絡みついてくる甘い締め付けを楽しんだ。

「は、ぁ……クロード様、クロード様……」
「ヴィンセント」

 少し落ち着いたのか、甘えるように頬を寄せてきたヴィンセントと口付けを交わす。薄く開かれた唇に舌を忍び込ませ、ヴィンセントの舌を絡め取り、優しく吸う。すると、興奮したようにヴィンセントも舌を絡めてきた。

「んっ、は、ぁ……クロード様、好きです……愛してます……」

 とろんとした紫色の瞳がクロードだけを見て、クロードにだけ愛を囁く。
 胸に湧き上がる悦びに息が詰まりそうになるのを感じながら、クロードは再びヴィンセントの唇を奪った。

 死んでもいいから愛されたかった。欲しかった。手放せなかった。
 これは夢なのではないかとたまに思う。そうだったらいいとも思う。

 愛していると告げられるたびうれしくて、でも少し怖い。
 いや、本当は愛していなかったと告げられる日が来るのが怖いのだろうか。

「……ヴィンセント、愛してる……本当に……」
「……はい、存じ上げております」

 クロードの言葉に、ヴィンセントが目を細めて微笑む。
 昔は常に無表情に見えていたが、傍にいる時間が長くなった今はヴィンセントの喜怒哀楽が多少はわかるようになった。どうやら表情の変化がわかりにくいだけで、感情の変化がないわけではないらしい。

 フー……と息を吐いたヴィンセントが汗ばんだ黒髪を掻き上げ、欲を孕んだ瞳でクロードを見下ろす。

「動いていいですか?」
「……ああ、もちろん」
「ん……、あっ、あ……っ」

 ヴィンセントの腰が微かに浮いた。
 ぴったりとハマっていた性器がずるりと肉壁を抉る。抜かれるのを嫌がるようにナカがクロードの雄に吸い付いて、その快感にクロードの眉が寄った。

「ああっ……クロードさま、クロードさまっ……」

 ヴィンセントはクロードにしがみ付いて、ゆっくりと腰を上下させる。腰を下ろすたびに大きく息を吐いて、クロードの亀頭を自身の最奥に押し付けた。泣きそうな甘い声で喘いで、どうしようもないほどクロードの劣情を誘ってくる。

「んぁ、っあ、あ……奥、あっ、ん……」
「ここだろ?」
「っ……あ、あっ!」

 ヴィンセントの腰を掴んだクロードがグッと最奥に自身の先端を押し付けてやると、ぎゅうっとナカが締まってクロードの性器にしゃぶりついてくる。
 思わずクロードは歯を噛み締めた。

「ッ……ヴィンセント、もう……」
「ん、あっ……クロードさま、だしてください、俺の中で……っ、ん、あっ!」

 ねだられるままヴィンセントの腰を掴んで、下から何度も突き上げた。ヴィンセントの気持ちのいいところを重点的に擦り上げながら、クロードは駆け上がってきた射精感に唇を歪める。

「っく……、ヴィンセント……ッ」
「ひ、あっ……あ、ああっ、ああぁッ!」

 クロードが精を吐き出すのと、ヴィンセントが絶頂を迎えるのはほぼ同時だった。後孔の奥の奥に熱を吐き出す雄を、快感に戦慄くナカが愛おしそうに咥え込んでいる。

「はっ……あ、あぁ……」

 恍惚とした表情を浮かべたヴィンセントの胸が大きく上下した。クロードの体にしがみついていた手をそろりと自身の腹に伸ばし、そこを愛おしそうに撫でる。

「は、ぁ………熱い……」

 とろけた目で微笑むヴィンセントを見て、また腹の底にずくりと熱が集まるのを感じた。それを誤魔化すよう、クロードは再びヴィンセントの唇に啄むようなキスをする。

 ……しかし、一度火のついた欲望がそう易々と収まるはずもなく、結局は体位を変えて再度体を繋げた。ヴィンセントがクロードを甘やかして「もう一度いいですよ」と、笑いかけてくれたのだから我慢する理由もない。

 クロードが二度目の精をヴィンセントのナカに吐き出したときには、もうすっかり夜は深まっていた。どちらかというとすでに朝に近いのかもしれない。
 クロードとヴィンセントは抱き合ったままその身をベッドの上に投げ出し、そうしてようやく二度目の眠りについた。
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