遠のくほどに、愛を知る

リツカ

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後日談など

初恋と罪と愛と 10

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 クロードはニヤリと笑った。後孔を弄る指はそのままに、もう片方の手をヴィンセントの雄へと伸ばす。

「ひ、あっ……!」
「お前、しゃぶってる最中から勃たせてただろう」
「う、ぁ……ああっ……」

 緩慢な動きで扱いてやると、ヴィンセントの腿がびくびくと震えた。後孔のナカと縁も蠢くようにヒクついて、口角を上げたクロードは挿入した指を二本に増やす。

「先にイクか?」
「っ、ああッ、ん、うぅ」

 ヴィンセントは首を横に振ったが、クロードの手の中の性器は熱く脈打っている。こうなってしまえば、そう長くは持たない。

「挿れられた瞬間イクのと、イッたあとナカを掻き回されるの、どっちが善いんだ?」

 身を乗り出したクロードが耳元で意地悪く囁くと、ヴィンセントの体がびくっと小さく跳ねる。首は横に振られたままだが、後孔がきゅんきゅんと指を締め付けて、期待しているのは丸わかりだった。

 クロードはうっそりと笑って、後孔を解す指に香油を足す。ぐちゅぐちゅといやらしい水音が大きくなり、指でナカを掻き回すたびにあふれた香油がぽたぽたとシーツにシミを作った。

「はっ、う、ぅ……あ、あ、ん……」

 ガクッとヴィンセントの肘が折れて、尻だけを上げてベッドに突っ伏したような体勢になる。腕に力が入らなくなっただけだろうが、クロードから見たらひどく淫らな姿だ。

 クロードは舌舐めずりをして、ゆっくりと後孔の指を引き抜く。
 すると、「あっ……」と物欲しげな声を上げたヴィンセントがぶるりと身震いした。

「ん……あ、ぁ……」
「今日はお前がしてくれるんじゃなかったのか?」

 揶揄うように尋ねると、突っ伏していたヴィンセントの顔がのそりとクロードを振り返った。紫の瞳が少し拗ねたようにクロードを映している。

「……なら、余計なことはしないでください……」
「余計なこと? 手伝ってやっただけだろ」

 悪びれた様子もなく言うクロードに対し、ヴィンセントはフーッと大きく息を吐いた。ため息というよりは、昂った体を落ち着けるための深呼吸に近かった。
 ぐらりと体を揺らして起き上がったヴィンセントは背後のクロードに向き直り、欲に濡れた声で囁く。

「……正面からでいいですか?」
「ああ」

 クロードは頷き、両手を差し出す。
 その手のひらに自身の手を重ねたヴィンセントは膝立ちでクロードに歩み寄り、おずおずとクロードの脚を跨いだ。

「……重くないですか?」
「平気だ」

 実際は太ももの辺りに体重がかかって少し重かったが、クロードもそこで根を上げるほど男が廃れてはいなかった。
 ヴィンセントは再び膝立ちになると、さらにクロードに身を寄せ、縋るようにクロードの肩を掴む。
 そうして、クロードの腹筋に先走りをにじませたヴィンセントの雄の先端が触れる……と同時に、クロードの性器にヴィンセントの臀部が擦り付けられた。

「はっ、あ……クロード様……」
「自分でできるか?」

 ヴィンセントは一瞬迷うような素振りを見せた後、こくんと小さく頷いた。
 それから、尻のあわいがクロードの性器にゆるゆると押し付けられ、やがて亀頭の先が後孔の縁にぴたりと当てられる。
 ヴィンセントは後ろ手にクロードの性器を掴み、火照った顔をしてごくりと唾を飲み込んだ。

「ふっ……う、あ、ああ……ッ」
「ゆっくりでいいからな……っ」
「ッ、ン……んぁ、あ……ああッ!」

 ヴィンセントの腿が痙攣するように震え、徐々に徐々にとクロードの膝の上へ腰を下ろしていく。そのたび、クロードの性器がずぷずぷとヴィンセントのナカに飲み込まれていき、とろとろにとろけた肉壁の甘い締め付けにクロードの顔が快感に歪む。

「ああ、ヴィンセント……」
「くッ、あっ……ああっ……!」

 クロードと同じように、ヴィンセントの表情も快楽にとけていた。眉を寄せ、全身を火照らせ、苦しそうに、美味そうに、クロードの怒張を受け入れていく。

「はっ、あっ……イク、出る……っ」

 悩ましげな声に視線を落とすと、ヴィンセントの性器から白濁混じりのカウパーがあふれていた。
 クロードは目を細め、徐に右手をヴィンセントの背中へと回す。
 そして、大きく斜めに走った傷痕にすうっと指を滑らせた。

「ひっ! あ……ん、ぁ、あっ……!」

 ヴィンセントの鈴口からとぷりと精液があふれ、その後もとろとろと勢いのない吐精が続く。
 ナカもびくびくと蠢くものだから、クロードは射精を堪えるのが大変だった。
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