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第3章 二度目の初夜
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しおりを挟むクロードがヴィンセントの膝あたりを掴んでベッドに押し付けても、ヴィンセントは拒まなかった。それどころか、自ら足を大きく開き、誘うようにクロードの腕に指を滑らせた。
「っ……」
「挿れられそうですか?」
「僕だって、子どもじゃないです……」
その言葉とは対照的に、クロードは子どものようにムッとした表情を浮かべていた。
慌ただしく下着を脱ぎ捨て、ヴィンセント同様一糸纏わぬ姿になると、クロードは勃ち上がった自身の性器に香油を垂らす。
それをぐちゅぐちゅと全体に塗り広げてから、クロードはその先端をヴィンセントの後孔に押し当てた。
「は、あっ、あっ……」
先っぽに吸い付こうとするように、後孔の縁が勝手にヒクつく。香油と先走りで濡れた亀頭をずりずりと押し付けられ、ヴィンセントは息を大きく吐くように喘いだ。
「……痛かったら、言ってください」
今日何度も聞いたような言葉を、クロードはまた口にした。
いや、今日だけではない。
思えば、記憶を失う以前のクロードもそうだった。受け入れる側のヴィンセントを常に気遣い、ヴィンセントが少しでも苦しそうな素振りを見せたら行為を中断して、また念入りに前戯を施した。
いまの変わってしまったクロードと共に居れば居るほど、不思議と以前のクロードのことを思い出す。
気難しくて、不器用で、怒りっぽくて、いつもヴィンセントを大切にしてくれたあの青年を──
「っう、アッ、あぁっ……!」
「はぁっ……!」
ぐぷりと先端が中に入り込んだかと思うと、そのままずるずるとクロードの性器がヴィンセントの後孔を満たしていく。
慣れ親しんだその雄の熱さに、ヴィンセントは首を逸らせ、天井を見つめた。
体が勝手に喜んで、内側がしゃぶりつくようにクロードのものを締め付ける。
「ああっ、ヴィンセントさんっ……」
クロードは快感に耐えるように、眉を寄せた悩ましげな顔をしていた。余裕のないギラギラとした目が、真っ直ぐにヴィンセントを見下ろす。
「ッ気持ちが良すぎて……すぐにイッてしまいそうです……っ」
「このままイッてもいいですよ……っ、ああッ!」
馬鹿にされたと思ったのだろうか。途端にクロードは悔しそうな顔をして、性器を根元までヴィンセントの中へと押し込んできた。
一気に奥までガンッと突かれ、ヴィンセントの目の前に一瞬、火花が散る。
「はっ、あ、……んっ、ああッ、クロード……!」
「はぁ……いま、すごく気持ちよさそうな顔してますよ……いやらしくて、すごく綺麗だ……」
「い、いわないでくださ……っあ、ああッ」
ゆっくりと腰をひかれ、またすぐに奥まで押し入ってくる。そのたび中の性器がヴィンセントの肉壁をずりずりと擦り、ヴィンセントのいいところを押し潰しながら緩慢に動く。
どこかぎこちない律動に、それでもヴィンセントは恍惚とした表情を浮かべながらクロードを見上げた。
目が合うと、クロードは口角を上げて笑う。少し余裕が出てきたのか、悪戯っぽく、それでいて艶のある笑みだ。
「ヴィンセントさん」
「あっ……ん、んぅ、あ……ふ」
欲に濡れた弾んだ声で名前を呼んだクロードは、ヴィンセントと繋がったままの体を屈めて、優しくヴィンセントに口付けた。
自然とヴィンセントの腰が持ち上がり、体勢がキツくなる。しかし、それが気にならないほどクロードとの口付けは甘美だった。
「んぁ、ああっ、ひ……アッ、んあっ」
口付けの最中にも腰を揺すられ、ヴィンセントの唇から媚びるような甘い声がもれる。
深いところで上下に奥を犯すように突かれ、宙に浮いた足先がびくびくと痙攣するように震えていた。先ほど射精したはずのヴィンセントの性器も腹の上でそり返り、はしたなく蜜を零している。
「っあ、ああッ、も、もうっ無理です……」
「イッてもいいですよ……僕も一緒にイきたいです……」
「ッ……くっ、う、アッ、あぁああッ……!」
耳を舐りながら大きく腰をひかれ、その直後にまたガンッと奥まで性器で貫かれる。最奥に容赦なく先端を叩きつけられ、ヴィンセントは激しい快感で一瞬頭の中が真っ白になった。
「ハッ、あ、ああっ、すごいっ」
クロードはヴィンセントの胸元に額を押し付け、ヴィンセントの絶頂とともにその最奥にビュクビュクと精液を注ぎ込む。その声は喜色で満ちていた。
はっきりと形がわかるほどにぴったりと吸い付いたそこが、食むようにうねって、もっともっとと射精を促す。
それに応えるように後孔の奥で脈打つクロードの吐精は長く続き、その間、ヴィンセントは全身がとろけそうなほどの甘い絶頂に酔いしれていた。
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