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第3章 二度目の初夜
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しおりを挟むヴィンセントが仰向けになると、目を細めたクロードはしげしげとその体を眺めはじめた。
気恥ずかしさにヴィンセントは目を逸らしたが、なぜここまで自分が恥じらっているのかはヴィンセントにもよくわからない。
クロードの手のひらが、ヴィンセントの首筋に触れ、滑るようにヴィンセントの肌を撫でる。胸元から腹筋までをゆっくりと這うように動く手に、ヴィンセントは奥歯を噛んだ。
「嫌ですか?」
「……いえ」
「じゃあ、もっと触りますね」
くすりと笑ったクロードは、宣言通りヴィンセントの上半身のあちこちを触れはじめた。
傷だらけの、硬い体だ。触ったところでそう楽しいものでもないはずだが、なぜだかクロードの目はキラキラとしていた。
「すごく格好良くて、綺麗です」
うっとりとした声でクロードは呟く。
お世辞なのか、気を遣っているのか。ヴィンセントはなんともいえず、黙ったままでいた。
その間にも、クロードの指先はヴィンセントの肌をなぞり、そして胸筋の弾力を確かめるように指の腹で押す。
騎士を辞めてすでに一年以上も経っていたが、暇な時間は自室で剣の素振りをしたり、筋力トレーニングをしたりしているせいか、体つきは現役の頃と比べても遜色はない。
そんなヴィンセントの体を、クロードは目と肌でじっくりと楽しんでいるようだった。
「っ……」
ふいにクロードの指先が、ヴィンセントの胸の先端をかすめた。
その瞬間、びくり、とヴィンセントの体が小さく跳ねたのを見たクロードは、おそるおそるといった様子でヴィンセントのそこに手を伸ばす。
「んッ」
「痛いですか……?」
「…………いえ」
吐息混じりの声でヴィンセントが否定すると、クロードは安心したような顔でヴィンセントの乳首に指の腹で触れた。
軽く触れてはすぐに離れるその感触がもどかしくて、くすぐったい。なにより、ほのかに気持ち良くもあった。
「気持ちいいですか?」
わかりきったことをわざわざ尋ねてくるクロードがどこか恨めしくて、ヴィンセントは無言で顔を背けた。
その沈黙を肯定と取ったらしいクロードは、妙に緊張した面持ちでそっとヴィンセントの乳首を摘むと、二本の指で優しくこねるように触れた。
「っ、ん……ぁ、あッ」
「痛かったら言ってくださいね」
そう言って、クロードはヴィンセントの乳首をくにくにと指先でいじる。
先ほどよりも遥かに強い刺激に、ヴィンセントはとっさに片手で口を覆った。
すると、クロードは不満そうな顔をして、少し強めの力できゅっとヴィンセントの乳首を摘む。
「ひっ、あ……やめっ……」
「声が聞こえないと、嫌がってるのかどうかわからないです」
「しかし、聞かせるようなものではっ……んんッ」
「僕は聞きたいです、ヴィンセントさんの声……格好よくて、すごくいやらしい」
格好よくて、すごくいやらしい……?
困惑したヴィンセントは、思わず目を丸くしてクロードを見上げた。
クロードは恍惚とした表情でヴィンセントを見下ろしており、視線が交わった瞬間、妖艶に笑う。
「格好よくて、いやらしくて、とても綺麗です。声も、体も、表情も、瞳も……ヴィンセントさんは全部素敵です」
「そ、それは……ありがとうございます……?」
言った直後に、この流れで「ありがとう」はおかしいだろうとヴィンセントも気付いたが、訂正する前に、体を屈めたクロードにキスをされてしまう。
唇をついばまれ、その合間にも指先で執拗に乳首を弄ばれる。
慣れた手つきで摘まれ、擦られ、押し潰され──以前のクロードそのままの責め方に、ヴィンセントは目を閉じて感じ入った。
舌を絡めあう水音とともに、小さな喘ぎ声がこぼれる。
ヴィンセントはもう声を抑えようとはしなかった。
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