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第5章 柳 ジュンイチ ~これが俺の恋物語。~
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第五章
あらすじ
柳 ジュンイチは本屋で1冊の不思議な本と出逢った話。
登場人物
★ 柳 ジュンイチ 35歳 男性
・ 高嶺の花子さん 29歳 女性
・ 本屋の店主 77歳 男性
・ 同僚
○横断歩道・信号(赤信号)(夜)
信号待ちをしているジュンイチ(35歳)
ジュンイチ「アァーー!!」
両手を夜空におもいっきり突き上げ背伸びをするジュンイチ。
○星空
ジュンイチ「きょうも疲れた~~。なんで、こんなに毎日忙しんだよーー」
独り言を言いながら辺りを見渡すジュンイチ。
○横断歩道・信号(青信号)(同)
ジュンイチ「ううん?あれ、あんなところに本屋なんかあったっけ? ……最近ヌいてないし、カネもないし、エロ本でも買って帰ろ」
T 柳 ジュンイチ~これが俺の恋物語。~
○古本屋・店内(同)
ジュンイチ「えぇっとアダルトコーナーはどこだ、どこだ。おっあった」
エロ本を持ってレジに向かうジュンイチ。
○同・レジカウンター(同)
ジュンイチ「これお願いしまーーっす」
本屋の店主「はい。2千300円です」
ジュンイチ「タッカッ!! ちょ……ちょっと待った」
財布の中身を確認するジュンイチ。
ジュンイチ「やっべ……500円しか持ってねぇーーじゃん……」
本屋の店主「あの~~どうかされました……」
ジュンイチ「すみません……またにします」
財布をポケットにしまうジュンイチ。
本屋の店主「かしこまりました。それではこちらの本は私が戻しておきます」
ジュンイチ「ありがとうございます。ほんとすみません」
本屋の店主「いえいえ、お構いなく」
本を後ろの棚に置く本屋の店主(77歳)
本屋の店主「ところで失礼ですが、お客さん今彼女さんはいらっしゃらないのですか?」
ジュンイチ「そんな相手が居たらこんな本も買わずに済むんだけどさ。最近は、独りで、が多いんですよ」
本屋の店主「仕事場に気になるお相手はいらっしゃらないのですか?」
ジュンイチ「そーーだな……居ないって言ったら嘘になるし、居るって言っても俺なんか相手にされないだろうし」
本屋の店主「そんなこと相手に聞いてみないとわからないじゃないですか?」
ジュンイチ「まぁ……いやいや聞かなくてもわかるでしょ。高嶺の花子さんって感じだし」
本屋の店主「そうなんですか……。しかしその方の事がお好きなんでしょ」
ジュンイチ「まーー会社の中で俺が一番その子のこと、好きだと思う!!」
本屋の店主「だったらその方にお伝えするべきですよ」
ジュンイチ「ムリッムリッ。俺なんかが話しかけても絶対ムシだよ……」
本屋の店主「そんな事ありませんよ。そうだ、そんなお客さんに良い本があるんですよ」
ジュンイチ「なになに、俺500円しか持ってないよ」
古びた本を取り出し渡す本屋の店主。
本屋の店主「これね、うちの倉庫にずっと保管されててホコリまみれですけど、すごく面白い本だから読んでみてくださいよ」
ジュンイチ「エロ本より面白いですか?」
本屋の店主「このご時世、エロ本よりももっと面白いモノなんてインターネットを使えばいくらだって簡単に見れるじゃないですか」
ジュンイチ「そーーだけど……」
本屋の店主「それに本屋に行かなくても近頃じゃあ素人がご自分で書いた作品を投稿できるアルファポリスっていうサイトもあり面白い物語がたくさん投稿されているみたいですよ。特にその中の“Stay Gold”って物語は面白いらしいーーので、ぜひ読んでみてください。……アダルトな物語かどうかは分かり兼ねますがね アハハハハ」
苦笑いをするジュンイチ。
ジュンイチ「わっ……わかりました」
本屋の店主「おっと失礼しました。話がそれてしまいました」
ジュンイチ「……俺はね、あの一枚一枚ページを捲る時のドキドキが好きなんですよ」
本屋の店主「大丈夫です。この本もきっとドキドキさせてくれますから」
ジュンイチ「ほんとですか?」
本屋の店主「ほんとです」
ジュンイチ「ほんとにほんとですか?」
本屋の店主「ほんとです」
ジュンイチ「じゃあいくら、買うよその本」
本屋の店主「500円でいいですよ」
ジュンイチ「はい、じゃあ500円」
お金を払い帰ろうとする後ろ姿のジュンイチ。
本屋の店主「そうだ、お客さん一つだけ言いそびれていた事が……」
振り向くジュンイチ。
ジュンイチ「なんですか」
本屋の店主「本の1ページ目にお名前を書く欄があるのですが、必ずご自分のお名前をお書き下さい」
ジュンイチ「はーーい。わっかりましたーー」
本屋の店主「必ずご自分のお名前をですよ!」
ジュンイチ「はーーい」
店を出るジュンイチ。
○ジュンイチの部屋(同)
ベッドの上に寝っ転がるジュンイチ。
本を読み始め1ページ目に自分の名前を書く欄を見つけるジュンイチ。
ジュンイチ「マジで名前書くトコあんじゃん」
名前を書く欄の下に(主人公)とも書いてある。
ベッドから起き上がりバックパックから消せるペンを取り出す。
ジュンイチ「書いてみよ……」
時計の針は午前2時をさす。
本をペラペラ捲るジュンイチ。
本の内容はなんとなくラブ・ストーリーなのだとわかったのだが本の文章にはいくつもの空白があり、しかも“ここ重要だろ!”って所ばかりが空白になっている。
ジュンイチ「えっ、ここ重要だろ!!」
ラスト2行ほどに至っては白紙のまま。
ジュンイチ「なんだ、この本。肝心なとこばっかが虫食いのように空白になってんじゃん。気になるな~~」
本をパタッと閉め、寝るジュンイチ。
ジュンイチ「まっとりあえず、きょうは寝よ」
○ ジュンイチの部屋(日替わり・朝)
ベッドの上で目を覚ますジュンイチ。
ジュンイチ「やっべーー寝坊した」
ケータイを取り同僚に電話する。
ジュンイチ「もしもし」
同僚「もしもし」
ジュンイチ「すまん寝坊した 課長に少し遅れるって言っといてくれっ」
同僚「あははは お前何言ってんだよ、きょう会社休みだろ」
ジュンイチ「マジで!?」
同僚「きょうは祝日です」
ジュンイチ「そうだった、あっぶねーー」
同僚「用ってそれだけ?もう切るぞ」
ジュンイチ「悪い悪い。お騒がせしましたーー」
ホッとしたジュンイチはケータイを切る。
冷蔵庫に向かい、水をたっぷり注いでベッドへ戻る。
飲み終わったコップをベッドの横に置き昨日買った本を手に取る。
ジュンイチ「しかしこの本、空白ありすぎて内容がさっぱりわかんねぇーーよ。返品しに行こうかな」
3秒ほどフリーズし考えるジュンイチ。
ジュンイチ「いや、待てよ。自分の名前を書いた次のページに、確か主人公の好きな人の名前を書く欄があったような」
本をもう一度、読みなおすジュンイチ。
ジュンイチ「やっぱあった」
また3秒ほど考えフリーズするジュンイチ。
ジュンイチ「好きな人の名前……をか。じゃあ高嶺の花子さんの名前書いて、この物語は俺と花子さんの二人の物語にしちゃお……かな……」
消せるペンを取るジュンイチ。
ジュンイチ「ここに花子さんの名前を書いてっと、最初の文章の空白へは……」
○本・物語の書き出し
【二人は※※※の※※※で話が弾み仲良くなった。恋焦がれていた※※※から声を掛けたのがきっかけだった】
ジュンイチ「二人は ※会社 の ※階段 で話が弾みっと、声を掛けたのは……やっぱり男からでしょう。つーーことで 俺、※ジュンイチ から声を掛けたにして。やべぇ楽しくなってきた……それから……」
ジュンイチは淡々と文章の空白になっている箇所をどんどん埋めていく。
ジュンイチ「あの場面で ※あんなコト や ※こんなコト をヤるって書いちゃったからここはもう ※エッチする だな。キスは ※舌を絡ませて をどっかで入れときたいな」
○会社・階段(日替わり・朝)
ジュンイチは急遽7階で行われる会議に出席するため階段をのぼっている。
ジュンイチ「最近運動してないし階段使って少しは身体動かさなきゃなーー」
上の階から高嶺の花子さん(29歳)が降りてくる。
ジュンイチN『あれ花子さんだ……』
ジュンイチは階段をのぼるペースを落とす。
ジュンイチN『あぁ~~声掛けてぇーー』
高嶺の花子さんは軽く会釈をしてすれ違う。
ジュンイチN『あの本の主人公なら声掛けるのになーー あーー俺も声掛けてぇーー。……よし、決めた。本の主人公になんか負けねーー』
高嶺の花子さんはスタスタ降りていく。
ジュンイチ「あっあのーー」
高嶺の花子さんは気づかず降りていく。
ジュンイチ「あっあのーー」
高嶺の花子さん「はっはい」
ジュンイチ「いつもお忙しそうですね」
高嶺の花子さん「そっそんなことないですよ」
ジュンイチ「人事部って大変そうに見えちゃって」
高嶺の花子さん「そんなことないですってば。いつも皆さんの方がお忙しそうで恐縮です」
ジュンイチ「いやいやいやいや、そんなことないよ」
高嶺の花子さん「確かあなたは企画部の柳さんですよね」
ジュンイチ「はい。そうです。知っててくれたんだ、俺の事」
高嶺の花子さん「はい。企画部に知り合いがいて」
ジュンイチ「そうだったんだ」
高嶺の花子さん「仕事が出来て、とっても
優秀な方だと伺っております」
ジュンイチ「それ、ほんとーー?」
高嶺の花子さん「はい、本当です。でも運動はあんまりって噂です」
ジュンイチ「そんなことまで……」
高嶺の花子さん「はい」
ジュンイチ「まぁ間違いではないから否定はしません……きょうもさ、身体動かそうと思って階段を使ってるんだけど、少しのぼっただけでヘトヘトだよ」
高嶺の花子さん「あたしも運動は苦手で、なんかスポーツかジム行きたいなって思ってるんですけど……思ってるだけなんです」
ジュンイチ「じゃあさ、今度の休みジム一緒に行かない?」
高嶺の花子さん「えっ、誘って下さるんですか?あたし独りじゃ絶対行かないから嬉しいです」
ジュンイチ「誘う誘う。俺も独りじゃ絶対行かないと思うから」
高嶺の花子さん「やったーー」
ジュンイチ「じゃあ、いつにする?」
高嶺の花子さん「今週の金曜の仕事帰りに行きませんか?」
ジュンイチ「いいね、その日にしよう。良いジム探しとくね。決まったら連絡するからケータイ番号教えてよ」
高嶺の花子さん「わかりました」
高嶺の花子さんが見えなくなってジュンイチは軽くガッツポーズをする。
ジュンイチ「よっしゃ! うん?このシチュエーション……あの本と一緒だ」
○同日・ジュンイチの部屋(夜)
ベッドの上に寝っ転がるジュンイチ。
ジュンイチ「きょうのことって不思議なくらいこの本とシチュエーション似てたけど偶然だよな。第二章~夏~で確か俺 ※金曜 に二人で出かけるって書いたような……」
ジュンイチは本を開く。
ジュンイチ「やっぱ書いてる。ってかしかもその夜、本にはもう ※キスしちゃう って書いちゃってるし……これは合致しないだろう……な。けど高嶺の花子さんと一緒にジムに行けるなんて奇跡だ」
○テレビ
ニュースキャスターのコメントが流れる。
アナウンサー「本日から暦の上では夏ですね……今年は例年にもまして真夏日が続く日が多く……」
○会社・出入口(金曜・夜)
ジュンイチより先に着き辺りを見渡す高嶺の花子さん。
高嶺の花さん「まだ、来てないみたいだな……」
ジュンイチ「お待たせーー」
高嶺の花子さん「あっ!いえ、あたしも今来たところなんです」
ジュンイチ「そっかじゃあ行こっか」
高嶺の花子さん「はい」
○同日・ジム・(同)
夜景の見える休憩室。
肩にかけたタオルで額を拭くジュンイチ。
ドリンクを飲む高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「ここのジム夜景を見ながら身体鍛えられるんですねーー」
ジュンイチ「そうみたいだね、ネットで調べて人気№1だったから、俺も一度来てみたかったんだ。……ほんと綺麗だね」
夜景を見ながら会話をする二人。
ジュンイチ「よし、そろそろ帰ろっか」
高嶺の花子さん「はい」
ジュンイチ「帰りなんか食って帰る?」
高嶺の花子さん「あたしずっと行きたいお店があって、もしよかったら付き合っていただけませんか?」
ジュンイチ「いいよ。何屋さん?」
高嶺の花子さん「イタリアンなんですけど」
ジュンイチ「じゃあそこ行こう」
高嶺の花子さん「いいんですか?」
ジュンイチ「いいよ」
高嶺の花子さん「ありがとうございます」
○同日・レストラン(同)
メニューを見ながら席に着く二人。
高嶺の花子さん「今日は誘って頂きありがとうございました」
ジュンイチ「こちらこそ、付き合ってくれてありがと。また一緒に行こうよ」
高嶺の花子さん「はい、お願いします」
ジュンイチ「ここのおすすめ何?」
高嶺の花子さん「ここパスタがとっても美味しいらしくて夏限定の海鮮パスタはどうですか?」
ジュンイチ「じゃあ、それにする」
高嶺の花子さん「あたしはゆずときのこの醤油パスタにします」
ジュンイチ「それも、うまそーー」
高嶺の花子さん「じゃあ頼みますね」
ジュンイチ「お願いします」
店員を呼ぶ高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「柳さんて今、彼女さんとかいないんですか」
ジュンイチ「今は居ないよーーって……もう何年も居ないかな……」
高嶺の花子さん「そうだったんですね。フゥ~~ン」
ジュンイチ「涼子さんは、お相手居るの」
高嶺の花子さん「内緒です」
ジュンイチ「なんでよ、教えてよ」
高嶺の花子さん「片思い中なんで」
ジュンイチ「そうなんだ。いつからその人のこと想ってんの」
高嶺の花子さん「会社ですれ違うたびに、ゆっくりお話したいなーーと想ってて…… いつからだろ……」
ジュンイチ「同じ会社の人なんだ」
高嶺の花子さん「きょういや今やっと叶えられました」
ジュンイチ「そうなの?良かったじゃん。いいな~~そいつが羨ましい……うん?今、今って言った?」
高嶺の花子さん「はい。間違いなく今って言いました……」
3秒ほどフリーズし考るジュンイチ。
ジュンイチ「まさか、そいつって……俺?」
高嶺の花子さん「……はい」
ジュンイチ「エェーーッ!!!!!!!」
高嶺の花子さん「そんなに驚かなくても」
ジュンイチ「すげぇ嬉しいんだけど!!!」
高嶺の花子さん「ほんとですか」
ジュンイチ「ほんとだよ!!!」
高嶺の花子さんは微笑む。
ジュンイチ「今このハイテンションだからってわけじゃないけど、今しか言えない気がするから言うね」
高嶺の花子さん「??」
ジュンイチ「ずっとあなたの事が好きでした。僕と付き合って下さい」
高嶺の花子さん「はっはい。私こそ好きでした。お願いします」
ジュンイチは両手を高くあげる。
ジュンイチ「マ・ジ・で、やったぁーーーー」
空のお皿が並ぶテーブルを後にする二人。
ジュンイチ「家まで送るよ」
高嶺の花子さん「いいですよ。柳さんのお家と私のお家、真逆な方向ですから」
ジュンイチ「そうなの、けどきょうは送らせて、タクシー止めてくるよ」
高嶺の花子さん「わかりました。ありがとうございます」
○同日・タクシーの中(同)
後部座席に座るふたり。
ジュンイチ「きょうはマジで楽しかったーー」
高嶺の花子さん「私もです。ご飯までご馳走になっちゃって」
ジュンイチ「お構いなく~~」
高嶺の花子さん「そろそろお家が見えてきました。運転手さんここで止めてください」
運転手「かしこまりました」
タクシーから降りる高嶺の花子さん。
ジュンイチもタクシーから降りて見送る。
高嶺の花子さん「きょうは本当にありがとうございました。とっても楽しかったです」
ジュンイチ「俺も楽しかったよ。次の休み、もし予定空いてたら、映画でも観に行こうよ」
高嶺の花子さん「ぜひ、行きたいです」
ジュンイチ「じゃあ決まり。早く来週こねーーかなーー、そん時はキスしていい?」
高嶺の花子さん「えっ……あはははは」
ジュンイチ「ごめん、ごめん、つい心の声が」
高嶺の花子さん「柳さんと居るとほんと楽しいです」
ジュンイチ「そりゃどうも」
高嶺の花子さん「キスは来週でもきょうでもいいですよ」
ジュンイチ「じゃあ来週はマジで楽し……み……」
タクシーに乗り込もうとするジュンイチ。
ジュンイチ「待てっ待てっ今なんってった?」
タクシーから慌てて高嶺の花子さんの元へ戻るジュンイチ。
高嶺の花子さん「だから……」
ジュンイチ「きょうでもって言ったよね」
高嶺の花子さんの後頭部に左手を添え ※キスをする ジュンイチ。
○同日・ジュンイチの部屋(同)
ベッドに寝っ転がるジュンイチ。
ジュンイチ「この本マジですげぇーーかも……俺が空白に書き込んだコト、全部その通りになっていく……」
本をじっくり見つめるジュンイチ。
ジュンイチ「第三章~秋~から ※あんなコト や 第四章~冬~で ※こんなコト をヤるって書いちゃってるけど全部、本の通りになんのかな……?」
ニヤニヤ笑うジュンイチ。
○会社・屋上・昼休み(日替わり・日中)
木枯らしに枯葉が舞う。
それから会社の先輩に恋愛の手ほどきを受けるため昼休みはもっぱら先輩との時間に使い、第三章~秋~で書いた ※あんなコト が本の通りになる。
○ジュンイチの部屋(日替わり・夜)
窓の外で粉雪が舞う。
ソファに座るジュンイチ。
それまで読んだことのない恋愛漫画を夜な夜な読みあさりイケメン君の真似をして第四章~冬~で書いた ※こんなコト も本の通りになる。
○ ジュンイチの部屋・風呂場(日替わり・夜)
湯船に浸かるジュンイチ。
ジュンイチ「えっなに?なに? ※あんなコト や ※こんなコト がどんなコトだったのか気になっちゃうって?(ニヤリ)それは映画になってからのお楽しみ!!……って、俺はいったい誰と喋ってんだ……」
両手で顔を洗うジュンイチ。
○ジュンイチの部屋(日替わり・夜)
テレビのニュースで桜の花びらが舞う。
ベッドにもたれかかるジュンイチ。
ジュンイチ「この本、マジすげぇーー!! そろそろ花子さんと付き合って一年か……」
最終章~春~を確認するジュンイチ。
○本・最後のページ(原本)
ジュンイチは最終章の文を思い出している。
最終章 文面【原文】
【二人の元へ穏やかな※※※が※※※※※※ と共にやって来た春に※※※は※※※へ※※※して下さいと伝えた。
返事は※※※※※※※と答えてくれ
そして、いつまでも春のあたたかさのような
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。 完】
ジュンイチ「俺、最後なんて書いたっけ」
本を待ち自分の書いた物語を読み上げるジュンイチ。
最終章 文面【ジュンイチバージョン】
【二人の元へ穏やかな ※風 が ※サクラの花びら と共にやって来た春に ※ジュンイチ は ※花子さん へ ※結婚 して下さいと伝えた。
返事は ※もちろん、喜んで。 と答えてくれ
そして、いつまでも春のあたたかさのような
※花子さんのあたたかい手をジュンイチはしっかりと握りしめ誓うのでした。幸せにします。 完】
ジュンイチ「俺って文才あんじゃん。でも、ちょっと待てよ……」
どっかで何かが引っ掛かり素直に喜べない自分が居て悩むジュンイチ。
ジュンイチ「この本の不思議な力に頼ってばっかで本当に良いのか……」
3秒ほどフリーズし考るジュンイチ。
ジュンイチ「消ーーそ、おっと」
自分で考えた最後の文章を全部消しはじめるジュンイチ。
消し終わった後、高嶺の花子さんのケータイへ連絡するジュンイチ。
ジュンイチ「もしもし」
高嶺の花子さん「もしもし、どうしたの?」
ジュンイチ「あしたさ 夜、逢わない?」
高嶺の花子さん「いいよ」
ジュンイチ「なら、仕事終わって家の近くの公園で待ってるから」
高嶺の花子さん「わかった」
○公園(日替わり・夜)
ブランコに座るジュンイチと高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「どうしたの突然」
ジュンイチ「(小声)いやーーさ、そろそろ付き合って一年だし……今まで自分の力で何にもしてこなかったから……きょうは……」
高嶺の花子さん「えっなに聞こえない」
ジュンイチ「(小声)そろそろさ、ケッケッ……」
高嶺の花子さん「だから、聞こえないってば」
ジュンイチ「ケッケッ結婚してください」
高嶺の花子さん「へっ!?……は、はい」
びっくりしながらも嬉しそうな高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「あり……がと……」
ジュンイチ「なんの記念日でもない、花束もない、指輪もない、けどどうしてもこの気持ちだけ伝えたくて」
高嶺の花子さん「うん、嬉しい」
ジュンイチ「これからも、よろしくお願いします」
高嶺の花子さん「はい」
ジュンイチは高嶺の花子さんに近寄り手を繋いだ。
ジュンイチ「あったかい手だね」
高嶺の花子さん「あのね、小さい頃、先生があなたの手は春のようなあたたかさがするね。って言ってくれたことがあって、嬉しかったな……」
ジュンイチ「ふーん、そうだったんだ。俺もこの手、好き」
少し笑うジュンイチ。
ジュンイチ「幸せにするね」
高嶺の花子さん「はい」
一年後
○本屋の前(夕)
左手に本を握りしめるジュンイチ。
○本屋の中(同)
ジュンイチ「こんにちは」
本屋の店主「おや、こんにちは」
レジカウンターから声を掛ける店主。
ジュンイチ「こんにちは」
本屋の店主「おぉ、あなたは確か」
ジュンイチ「あの、この本なんですけど……」
レジカウンターへ本を置くジュンイチ。
本屋の店主「そうそう、この本の継承者。なにか不思議な事でも起きましたか」
本を見つめる店主。
ジュンイチ「なにか知ってるんですか」
本屋の店主「いえ、私は何も」
ジュンイチ「そうですか。この本には空白がいくつもあって……」
本を持ちペラペラとページを捲るジュンイチ。
ジュンイチ「自分で書いた内容が現実になるんですよ。ホント、不思議な本なんです」
本屋の店主「そんなことありえませんよ」
ジュンイチ「いや、ほんとなんですって」
本屋の店主「そうですか、じゃあ良い思いたくさんしたんじゃないですか」
ジュンイチ「まぁだけど、もうこの本いらなくなっちゃったから買い取ってくれます?」
本を店主へ渡すジュンイチ。
本屋の店主「はい、喜んで買い取らせて頂きますよ」
ジュンイチ「ありがうございます」
本屋の店主「買取金額80円ですが……」
ジュンイチ「それで大丈夫です。」
本屋の店主「では……。ところでその左手の薬指に付けている物はもしかして…」
ジュンイチ「気づいちゃいました?実は結婚したんですよ……この本のおかげで!!」
本屋の店主「そうでしたか!!それはめでたい」
ジュンイチ「ほんとにこの本の不思議な力のおかげなんです!!」
本を見つめる店主。
本屋の店主「ほんとにそーーでしょうか……」
ジュンイチ「えっ」
本屋の店主「この本はお客さんが幸せを掴もうと動き始めるきっかけにしかすぎないですよ。自分で書いた内容がすべて現実になるわけがないじゃないですか」
ジュンイチ「まぁ冷静に考えてみれば……」
本屋の店主「ただ……」
ジュンイチ「ただ?」
本屋の店主「あなたがこの本に書いた主人公に負けないように考え行動したのであれば……別ですがね」
微笑む本屋の店主。
本屋の店主「その指輪はあなた自身の頑張りで掴み取った幸せですよ」
ジュンイチ「マーージーーでぇーーーーーーーー!!!!」
本屋の店主「それにそんなにトントン拍子に上手く行ったのもお相手の方があなたを好いていたから……。そうじゃなかったらまた違った展開になっていたのかもしれません」
ジュンイチ「ほんとラッキーだった!!」
本屋の店主「はい!そのラッキーもあなたが引き寄せたモノですよ」
少し笑う本屋の店主。
完
あらすじ
柳 ジュンイチは本屋で1冊の不思議な本と出逢った話。
登場人物
★ 柳 ジュンイチ 35歳 男性
・ 高嶺の花子さん 29歳 女性
・ 本屋の店主 77歳 男性
・ 同僚
○横断歩道・信号(赤信号)(夜)
信号待ちをしているジュンイチ(35歳)
ジュンイチ「アァーー!!」
両手を夜空におもいっきり突き上げ背伸びをするジュンイチ。
○星空
ジュンイチ「きょうも疲れた~~。なんで、こんなに毎日忙しんだよーー」
独り言を言いながら辺りを見渡すジュンイチ。
○横断歩道・信号(青信号)(同)
ジュンイチ「ううん?あれ、あんなところに本屋なんかあったっけ? ……最近ヌいてないし、カネもないし、エロ本でも買って帰ろ」
T 柳 ジュンイチ~これが俺の恋物語。~
○古本屋・店内(同)
ジュンイチ「えぇっとアダルトコーナーはどこだ、どこだ。おっあった」
エロ本を持ってレジに向かうジュンイチ。
○同・レジカウンター(同)
ジュンイチ「これお願いしまーーっす」
本屋の店主「はい。2千300円です」
ジュンイチ「タッカッ!! ちょ……ちょっと待った」
財布の中身を確認するジュンイチ。
ジュンイチ「やっべ……500円しか持ってねぇーーじゃん……」
本屋の店主「あの~~どうかされました……」
ジュンイチ「すみません……またにします」
財布をポケットにしまうジュンイチ。
本屋の店主「かしこまりました。それではこちらの本は私が戻しておきます」
ジュンイチ「ありがとうございます。ほんとすみません」
本屋の店主「いえいえ、お構いなく」
本を後ろの棚に置く本屋の店主(77歳)
本屋の店主「ところで失礼ですが、お客さん今彼女さんはいらっしゃらないのですか?」
ジュンイチ「そんな相手が居たらこんな本も買わずに済むんだけどさ。最近は、独りで、が多いんですよ」
本屋の店主「仕事場に気になるお相手はいらっしゃらないのですか?」
ジュンイチ「そーーだな……居ないって言ったら嘘になるし、居るって言っても俺なんか相手にされないだろうし」
本屋の店主「そんなこと相手に聞いてみないとわからないじゃないですか?」
ジュンイチ「まぁ……いやいや聞かなくてもわかるでしょ。高嶺の花子さんって感じだし」
本屋の店主「そうなんですか……。しかしその方の事がお好きなんでしょ」
ジュンイチ「まーー会社の中で俺が一番その子のこと、好きだと思う!!」
本屋の店主「だったらその方にお伝えするべきですよ」
ジュンイチ「ムリッムリッ。俺なんかが話しかけても絶対ムシだよ……」
本屋の店主「そんな事ありませんよ。そうだ、そんなお客さんに良い本があるんですよ」
ジュンイチ「なになに、俺500円しか持ってないよ」
古びた本を取り出し渡す本屋の店主。
本屋の店主「これね、うちの倉庫にずっと保管されててホコリまみれですけど、すごく面白い本だから読んでみてくださいよ」
ジュンイチ「エロ本より面白いですか?」
本屋の店主「このご時世、エロ本よりももっと面白いモノなんてインターネットを使えばいくらだって簡単に見れるじゃないですか」
ジュンイチ「そーーだけど……」
本屋の店主「それに本屋に行かなくても近頃じゃあ素人がご自分で書いた作品を投稿できるアルファポリスっていうサイトもあり面白い物語がたくさん投稿されているみたいですよ。特にその中の“Stay Gold”って物語は面白いらしいーーので、ぜひ読んでみてください。……アダルトな物語かどうかは分かり兼ねますがね アハハハハ」
苦笑いをするジュンイチ。
ジュンイチ「わっ……わかりました」
本屋の店主「おっと失礼しました。話がそれてしまいました」
ジュンイチ「……俺はね、あの一枚一枚ページを捲る時のドキドキが好きなんですよ」
本屋の店主「大丈夫です。この本もきっとドキドキさせてくれますから」
ジュンイチ「ほんとですか?」
本屋の店主「ほんとです」
ジュンイチ「ほんとにほんとですか?」
本屋の店主「ほんとです」
ジュンイチ「じゃあいくら、買うよその本」
本屋の店主「500円でいいですよ」
ジュンイチ「はい、じゃあ500円」
お金を払い帰ろうとする後ろ姿のジュンイチ。
本屋の店主「そうだ、お客さん一つだけ言いそびれていた事が……」
振り向くジュンイチ。
ジュンイチ「なんですか」
本屋の店主「本の1ページ目にお名前を書く欄があるのですが、必ずご自分のお名前をお書き下さい」
ジュンイチ「はーーい。わっかりましたーー」
本屋の店主「必ずご自分のお名前をですよ!」
ジュンイチ「はーーい」
店を出るジュンイチ。
○ジュンイチの部屋(同)
ベッドの上に寝っ転がるジュンイチ。
本を読み始め1ページ目に自分の名前を書く欄を見つけるジュンイチ。
ジュンイチ「マジで名前書くトコあんじゃん」
名前を書く欄の下に(主人公)とも書いてある。
ベッドから起き上がりバックパックから消せるペンを取り出す。
ジュンイチ「書いてみよ……」
時計の針は午前2時をさす。
本をペラペラ捲るジュンイチ。
本の内容はなんとなくラブ・ストーリーなのだとわかったのだが本の文章にはいくつもの空白があり、しかも“ここ重要だろ!”って所ばかりが空白になっている。
ジュンイチ「えっ、ここ重要だろ!!」
ラスト2行ほどに至っては白紙のまま。
ジュンイチ「なんだ、この本。肝心なとこばっかが虫食いのように空白になってんじゃん。気になるな~~」
本をパタッと閉め、寝るジュンイチ。
ジュンイチ「まっとりあえず、きょうは寝よ」
○ ジュンイチの部屋(日替わり・朝)
ベッドの上で目を覚ますジュンイチ。
ジュンイチ「やっべーー寝坊した」
ケータイを取り同僚に電話する。
ジュンイチ「もしもし」
同僚「もしもし」
ジュンイチ「すまん寝坊した 課長に少し遅れるって言っといてくれっ」
同僚「あははは お前何言ってんだよ、きょう会社休みだろ」
ジュンイチ「マジで!?」
同僚「きょうは祝日です」
ジュンイチ「そうだった、あっぶねーー」
同僚「用ってそれだけ?もう切るぞ」
ジュンイチ「悪い悪い。お騒がせしましたーー」
ホッとしたジュンイチはケータイを切る。
冷蔵庫に向かい、水をたっぷり注いでベッドへ戻る。
飲み終わったコップをベッドの横に置き昨日買った本を手に取る。
ジュンイチ「しかしこの本、空白ありすぎて内容がさっぱりわかんねぇーーよ。返品しに行こうかな」
3秒ほどフリーズし考えるジュンイチ。
ジュンイチ「いや、待てよ。自分の名前を書いた次のページに、確か主人公の好きな人の名前を書く欄があったような」
本をもう一度、読みなおすジュンイチ。
ジュンイチ「やっぱあった」
また3秒ほど考えフリーズするジュンイチ。
ジュンイチ「好きな人の名前……をか。じゃあ高嶺の花子さんの名前書いて、この物語は俺と花子さんの二人の物語にしちゃお……かな……」
消せるペンを取るジュンイチ。
ジュンイチ「ここに花子さんの名前を書いてっと、最初の文章の空白へは……」
○本・物語の書き出し
【二人は※※※の※※※で話が弾み仲良くなった。恋焦がれていた※※※から声を掛けたのがきっかけだった】
ジュンイチ「二人は ※会社 の ※階段 で話が弾みっと、声を掛けたのは……やっぱり男からでしょう。つーーことで 俺、※ジュンイチ から声を掛けたにして。やべぇ楽しくなってきた……それから……」
ジュンイチは淡々と文章の空白になっている箇所をどんどん埋めていく。
ジュンイチ「あの場面で ※あんなコト や ※こんなコト をヤるって書いちゃったからここはもう ※エッチする だな。キスは ※舌を絡ませて をどっかで入れときたいな」
○会社・階段(日替わり・朝)
ジュンイチは急遽7階で行われる会議に出席するため階段をのぼっている。
ジュンイチ「最近運動してないし階段使って少しは身体動かさなきゃなーー」
上の階から高嶺の花子さん(29歳)が降りてくる。
ジュンイチN『あれ花子さんだ……』
ジュンイチは階段をのぼるペースを落とす。
ジュンイチN『あぁ~~声掛けてぇーー』
高嶺の花子さんは軽く会釈をしてすれ違う。
ジュンイチN『あの本の主人公なら声掛けるのになーー あーー俺も声掛けてぇーー。……よし、決めた。本の主人公になんか負けねーー』
高嶺の花子さんはスタスタ降りていく。
ジュンイチ「あっあのーー」
高嶺の花子さんは気づかず降りていく。
ジュンイチ「あっあのーー」
高嶺の花子さん「はっはい」
ジュンイチ「いつもお忙しそうですね」
高嶺の花子さん「そっそんなことないですよ」
ジュンイチ「人事部って大変そうに見えちゃって」
高嶺の花子さん「そんなことないですってば。いつも皆さんの方がお忙しそうで恐縮です」
ジュンイチ「いやいやいやいや、そんなことないよ」
高嶺の花子さん「確かあなたは企画部の柳さんですよね」
ジュンイチ「はい。そうです。知っててくれたんだ、俺の事」
高嶺の花子さん「はい。企画部に知り合いがいて」
ジュンイチ「そうだったんだ」
高嶺の花子さん「仕事が出来て、とっても
優秀な方だと伺っております」
ジュンイチ「それ、ほんとーー?」
高嶺の花子さん「はい、本当です。でも運動はあんまりって噂です」
ジュンイチ「そんなことまで……」
高嶺の花子さん「はい」
ジュンイチ「まぁ間違いではないから否定はしません……きょうもさ、身体動かそうと思って階段を使ってるんだけど、少しのぼっただけでヘトヘトだよ」
高嶺の花子さん「あたしも運動は苦手で、なんかスポーツかジム行きたいなって思ってるんですけど……思ってるだけなんです」
ジュンイチ「じゃあさ、今度の休みジム一緒に行かない?」
高嶺の花子さん「えっ、誘って下さるんですか?あたし独りじゃ絶対行かないから嬉しいです」
ジュンイチ「誘う誘う。俺も独りじゃ絶対行かないと思うから」
高嶺の花子さん「やったーー」
ジュンイチ「じゃあ、いつにする?」
高嶺の花子さん「今週の金曜の仕事帰りに行きませんか?」
ジュンイチ「いいね、その日にしよう。良いジム探しとくね。決まったら連絡するからケータイ番号教えてよ」
高嶺の花子さん「わかりました」
高嶺の花子さんが見えなくなってジュンイチは軽くガッツポーズをする。
ジュンイチ「よっしゃ! うん?このシチュエーション……あの本と一緒だ」
○同日・ジュンイチの部屋(夜)
ベッドの上に寝っ転がるジュンイチ。
ジュンイチ「きょうのことって不思議なくらいこの本とシチュエーション似てたけど偶然だよな。第二章~夏~で確か俺 ※金曜 に二人で出かけるって書いたような……」
ジュンイチは本を開く。
ジュンイチ「やっぱ書いてる。ってかしかもその夜、本にはもう ※キスしちゃう って書いちゃってるし……これは合致しないだろう……な。けど高嶺の花子さんと一緒にジムに行けるなんて奇跡だ」
○テレビ
ニュースキャスターのコメントが流れる。
アナウンサー「本日から暦の上では夏ですね……今年は例年にもまして真夏日が続く日が多く……」
○会社・出入口(金曜・夜)
ジュンイチより先に着き辺りを見渡す高嶺の花子さん。
高嶺の花さん「まだ、来てないみたいだな……」
ジュンイチ「お待たせーー」
高嶺の花子さん「あっ!いえ、あたしも今来たところなんです」
ジュンイチ「そっかじゃあ行こっか」
高嶺の花子さん「はい」
○同日・ジム・(同)
夜景の見える休憩室。
肩にかけたタオルで額を拭くジュンイチ。
ドリンクを飲む高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「ここのジム夜景を見ながら身体鍛えられるんですねーー」
ジュンイチ「そうみたいだね、ネットで調べて人気№1だったから、俺も一度来てみたかったんだ。……ほんと綺麗だね」
夜景を見ながら会話をする二人。
ジュンイチ「よし、そろそろ帰ろっか」
高嶺の花子さん「はい」
ジュンイチ「帰りなんか食って帰る?」
高嶺の花子さん「あたしずっと行きたいお店があって、もしよかったら付き合っていただけませんか?」
ジュンイチ「いいよ。何屋さん?」
高嶺の花子さん「イタリアンなんですけど」
ジュンイチ「じゃあそこ行こう」
高嶺の花子さん「いいんですか?」
ジュンイチ「いいよ」
高嶺の花子さん「ありがとうございます」
○同日・レストラン(同)
メニューを見ながら席に着く二人。
高嶺の花子さん「今日は誘って頂きありがとうございました」
ジュンイチ「こちらこそ、付き合ってくれてありがと。また一緒に行こうよ」
高嶺の花子さん「はい、お願いします」
ジュンイチ「ここのおすすめ何?」
高嶺の花子さん「ここパスタがとっても美味しいらしくて夏限定の海鮮パスタはどうですか?」
ジュンイチ「じゃあ、それにする」
高嶺の花子さん「あたしはゆずときのこの醤油パスタにします」
ジュンイチ「それも、うまそーー」
高嶺の花子さん「じゃあ頼みますね」
ジュンイチ「お願いします」
店員を呼ぶ高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「柳さんて今、彼女さんとかいないんですか」
ジュンイチ「今は居ないよーーって……もう何年も居ないかな……」
高嶺の花子さん「そうだったんですね。フゥ~~ン」
ジュンイチ「涼子さんは、お相手居るの」
高嶺の花子さん「内緒です」
ジュンイチ「なんでよ、教えてよ」
高嶺の花子さん「片思い中なんで」
ジュンイチ「そうなんだ。いつからその人のこと想ってんの」
高嶺の花子さん「会社ですれ違うたびに、ゆっくりお話したいなーーと想ってて…… いつからだろ……」
ジュンイチ「同じ会社の人なんだ」
高嶺の花子さん「きょういや今やっと叶えられました」
ジュンイチ「そうなの?良かったじゃん。いいな~~そいつが羨ましい……うん?今、今って言った?」
高嶺の花子さん「はい。間違いなく今って言いました……」
3秒ほどフリーズし考るジュンイチ。
ジュンイチ「まさか、そいつって……俺?」
高嶺の花子さん「……はい」
ジュンイチ「エェーーッ!!!!!!!」
高嶺の花子さん「そんなに驚かなくても」
ジュンイチ「すげぇ嬉しいんだけど!!!」
高嶺の花子さん「ほんとですか」
ジュンイチ「ほんとだよ!!!」
高嶺の花子さんは微笑む。
ジュンイチ「今このハイテンションだからってわけじゃないけど、今しか言えない気がするから言うね」
高嶺の花子さん「??」
ジュンイチ「ずっとあなたの事が好きでした。僕と付き合って下さい」
高嶺の花子さん「はっはい。私こそ好きでした。お願いします」
ジュンイチは両手を高くあげる。
ジュンイチ「マ・ジ・で、やったぁーーーー」
空のお皿が並ぶテーブルを後にする二人。
ジュンイチ「家まで送るよ」
高嶺の花子さん「いいですよ。柳さんのお家と私のお家、真逆な方向ですから」
ジュンイチ「そうなの、けどきょうは送らせて、タクシー止めてくるよ」
高嶺の花子さん「わかりました。ありがとうございます」
○同日・タクシーの中(同)
後部座席に座るふたり。
ジュンイチ「きょうはマジで楽しかったーー」
高嶺の花子さん「私もです。ご飯までご馳走になっちゃって」
ジュンイチ「お構いなく~~」
高嶺の花子さん「そろそろお家が見えてきました。運転手さんここで止めてください」
運転手「かしこまりました」
タクシーから降りる高嶺の花子さん。
ジュンイチもタクシーから降りて見送る。
高嶺の花子さん「きょうは本当にありがとうございました。とっても楽しかったです」
ジュンイチ「俺も楽しかったよ。次の休み、もし予定空いてたら、映画でも観に行こうよ」
高嶺の花子さん「ぜひ、行きたいです」
ジュンイチ「じゃあ決まり。早く来週こねーーかなーー、そん時はキスしていい?」
高嶺の花子さん「えっ……あはははは」
ジュンイチ「ごめん、ごめん、つい心の声が」
高嶺の花子さん「柳さんと居るとほんと楽しいです」
ジュンイチ「そりゃどうも」
高嶺の花子さん「キスは来週でもきょうでもいいですよ」
ジュンイチ「じゃあ来週はマジで楽し……み……」
タクシーに乗り込もうとするジュンイチ。
ジュンイチ「待てっ待てっ今なんってった?」
タクシーから慌てて高嶺の花子さんの元へ戻るジュンイチ。
高嶺の花子さん「だから……」
ジュンイチ「きょうでもって言ったよね」
高嶺の花子さんの後頭部に左手を添え ※キスをする ジュンイチ。
○同日・ジュンイチの部屋(同)
ベッドに寝っ転がるジュンイチ。
ジュンイチ「この本マジですげぇーーかも……俺が空白に書き込んだコト、全部その通りになっていく……」
本をじっくり見つめるジュンイチ。
ジュンイチ「第三章~秋~から ※あんなコト や 第四章~冬~で ※こんなコト をヤるって書いちゃってるけど全部、本の通りになんのかな……?」
ニヤニヤ笑うジュンイチ。
○会社・屋上・昼休み(日替わり・日中)
木枯らしに枯葉が舞う。
それから会社の先輩に恋愛の手ほどきを受けるため昼休みはもっぱら先輩との時間に使い、第三章~秋~で書いた ※あんなコト が本の通りになる。
○ジュンイチの部屋(日替わり・夜)
窓の外で粉雪が舞う。
ソファに座るジュンイチ。
それまで読んだことのない恋愛漫画を夜な夜な読みあさりイケメン君の真似をして第四章~冬~で書いた ※こんなコト も本の通りになる。
○ ジュンイチの部屋・風呂場(日替わり・夜)
湯船に浸かるジュンイチ。
ジュンイチ「えっなに?なに? ※あんなコト や ※こんなコト がどんなコトだったのか気になっちゃうって?(ニヤリ)それは映画になってからのお楽しみ!!……って、俺はいったい誰と喋ってんだ……」
両手で顔を洗うジュンイチ。
○ジュンイチの部屋(日替わり・夜)
テレビのニュースで桜の花びらが舞う。
ベッドにもたれかかるジュンイチ。
ジュンイチ「この本、マジすげぇーー!! そろそろ花子さんと付き合って一年か……」
最終章~春~を確認するジュンイチ。
○本・最後のページ(原本)
ジュンイチは最終章の文を思い出している。
最終章 文面【原文】
【二人の元へ穏やかな※※※が※※※※※※ と共にやって来た春に※※※は※※※へ※※※して下さいと伝えた。
返事は※※※※※※※と答えてくれ
そして、いつまでも春のあたたかさのような
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。 完】
ジュンイチ「俺、最後なんて書いたっけ」
本を待ち自分の書いた物語を読み上げるジュンイチ。
最終章 文面【ジュンイチバージョン】
【二人の元へ穏やかな ※風 が ※サクラの花びら と共にやって来た春に ※ジュンイチ は ※花子さん へ ※結婚 して下さいと伝えた。
返事は ※もちろん、喜んで。 と答えてくれ
そして、いつまでも春のあたたかさのような
※花子さんのあたたかい手をジュンイチはしっかりと握りしめ誓うのでした。幸せにします。 完】
ジュンイチ「俺って文才あんじゃん。でも、ちょっと待てよ……」
どっかで何かが引っ掛かり素直に喜べない自分が居て悩むジュンイチ。
ジュンイチ「この本の不思議な力に頼ってばっかで本当に良いのか……」
3秒ほどフリーズし考るジュンイチ。
ジュンイチ「消ーーそ、おっと」
自分で考えた最後の文章を全部消しはじめるジュンイチ。
消し終わった後、高嶺の花子さんのケータイへ連絡するジュンイチ。
ジュンイチ「もしもし」
高嶺の花子さん「もしもし、どうしたの?」
ジュンイチ「あしたさ 夜、逢わない?」
高嶺の花子さん「いいよ」
ジュンイチ「なら、仕事終わって家の近くの公園で待ってるから」
高嶺の花子さん「わかった」
○公園(日替わり・夜)
ブランコに座るジュンイチと高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「どうしたの突然」
ジュンイチ「(小声)いやーーさ、そろそろ付き合って一年だし……今まで自分の力で何にもしてこなかったから……きょうは……」
高嶺の花子さん「えっなに聞こえない」
ジュンイチ「(小声)そろそろさ、ケッケッ……」
高嶺の花子さん「だから、聞こえないってば」
ジュンイチ「ケッケッ結婚してください」
高嶺の花子さん「へっ!?……は、はい」
びっくりしながらも嬉しそうな高嶺の花子さん。
高嶺の花子さん「あり……がと……」
ジュンイチ「なんの記念日でもない、花束もない、指輪もない、けどどうしてもこの気持ちだけ伝えたくて」
高嶺の花子さん「うん、嬉しい」
ジュンイチ「これからも、よろしくお願いします」
高嶺の花子さん「はい」
ジュンイチは高嶺の花子さんに近寄り手を繋いだ。
ジュンイチ「あったかい手だね」
高嶺の花子さん「あのね、小さい頃、先生があなたの手は春のようなあたたかさがするね。って言ってくれたことがあって、嬉しかったな……」
ジュンイチ「ふーん、そうだったんだ。俺もこの手、好き」
少し笑うジュンイチ。
ジュンイチ「幸せにするね」
高嶺の花子さん「はい」
一年後
○本屋の前(夕)
左手に本を握りしめるジュンイチ。
○本屋の中(同)
ジュンイチ「こんにちは」
本屋の店主「おや、こんにちは」
レジカウンターから声を掛ける店主。
ジュンイチ「こんにちは」
本屋の店主「おぉ、あなたは確か」
ジュンイチ「あの、この本なんですけど……」
レジカウンターへ本を置くジュンイチ。
本屋の店主「そうそう、この本の継承者。なにか不思議な事でも起きましたか」
本を見つめる店主。
ジュンイチ「なにか知ってるんですか」
本屋の店主「いえ、私は何も」
ジュンイチ「そうですか。この本には空白がいくつもあって……」
本を持ちペラペラとページを捲るジュンイチ。
ジュンイチ「自分で書いた内容が現実になるんですよ。ホント、不思議な本なんです」
本屋の店主「そんなことありえませんよ」
ジュンイチ「いや、ほんとなんですって」
本屋の店主「そうですか、じゃあ良い思いたくさんしたんじゃないですか」
ジュンイチ「まぁだけど、もうこの本いらなくなっちゃったから買い取ってくれます?」
本を店主へ渡すジュンイチ。
本屋の店主「はい、喜んで買い取らせて頂きますよ」
ジュンイチ「ありがうございます」
本屋の店主「買取金額80円ですが……」
ジュンイチ「それで大丈夫です。」
本屋の店主「では……。ところでその左手の薬指に付けている物はもしかして…」
ジュンイチ「気づいちゃいました?実は結婚したんですよ……この本のおかげで!!」
本屋の店主「そうでしたか!!それはめでたい」
ジュンイチ「ほんとにこの本の不思議な力のおかげなんです!!」
本を見つめる店主。
本屋の店主「ほんとにそーーでしょうか……」
ジュンイチ「えっ」
本屋の店主「この本はお客さんが幸せを掴もうと動き始めるきっかけにしかすぎないですよ。自分で書いた内容がすべて現実になるわけがないじゃないですか」
ジュンイチ「まぁ冷静に考えてみれば……」
本屋の店主「ただ……」
ジュンイチ「ただ?」
本屋の店主「あなたがこの本に書いた主人公に負けないように考え行動したのであれば……別ですがね」
微笑む本屋の店主。
本屋の店主「その指輪はあなた自身の頑張りで掴み取った幸せですよ」
ジュンイチ「マーージーーでぇーーーーーーーー!!!!」
本屋の店主「それにそんなにトントン拍子に上手く行ったのもお相手の方があなたを好いていたから……。そうじゃなかったらまた違った展開になっていたのかもしれません」
ジュンイチ「ほんとラッキーだった!!」
本屋の店主「はい!そのラッキーもあなたが引き寄せたモノですよ」
少し笑う本屋の店主。
完
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