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第3章 7【セブン】ー 先輩と後輩2人 ー

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第三章

あらすじ

先輩と後輩2人との6日間のはなし。


登場人物

・先輩     35歳
・大河     24歳 会社の後輩
・流ノ介    24歳 会社の後輩

・看護師
・医師
・先輩の母親
・課長
・社長
・女性社員



1DAY(月曜日)

○病院・待合室 (昼)
混みあっている待合室。
一番後ろの一番端に座って番号を呼ばれるのを貧乏ゆすりして待っている先輩(35歳)
看護師「26番の札をお持ちの方、26番の方ーー。いらっしゃいますかーー?」
先輩「は、はい、居ます」
診察室に向かう先輩。
看護師「まぁ、元気そうじゃない」
先輩「お久しぶりです」
看護師「久しぶり、会えて嬉しいわ」
先輩「……。(軽く会釈する)」

○同・診察室
診察室のドアを開ける看護師。
看護師「じゃあ、こちらの診察室へお入りください」
先輩「はい」
椅子に座って机に置かれたレントゲンの画像を見ている医師。
医師「久しぶりだね」
先輩「お久しぶりです」
医師「とりあえず、今回の血液検査、CTはどこも異常なし!!」
先輩「そうですか」
医師「どっか気になるところある?」
先輩「特にないです」
医師「じゅあ、終わり」
先輩「……先生はいつもあっさりしてますね」
医師「そお? ……あれからもう10年も経つのか」
カルテを見直す医師。
先輩「そうですね」
医師「俺が担当した最年少、がん患者だったからな」
先輩「そうでしたね」
医師「って、すまん。懐かしんでる場合じゃないんだよ。まだ待ってる患者がたくさんいて大変なんだ」
先輩「はい」
医師「じゃあ また」
先輩「また」
軽く一礼して診察室から出る先輩。

○同・出入口(昼)
ポケットからケータイを取り出す先輩。
母親に連絡する先輩。
先輩「もしもし……」
母親「もしもし……」
先輩「今日さ、久しぶりに検査行ってきた」
母親「それでどうだった?」
先輩「異常なし。無事、クリアです」
母親「そっか、良かった」
先輩「じゃあ。それだけだから」
母親「そう」
先輩「毎回、この報告だけはしてきたからさ」
母親「うん。ありがとう」
先輩「じゃあ切るね」
母親「うん。たまには家に帰ってきなさいよ」
先輩「はい、はい」


T 7【セブン】― 先輩と後輩2人 ―


2DAY(日替わり・火曜日)

○会社・屋上 昼休み (日中)
晴天。
ひとり屋上のベンチでサンドイッチを食べ、缶コーヒーを飲む先輩。
流ノ介「先輩、やっぱりここにいたんですか」
コンビニ袋をぶら下げて駆け寄ってくる流ノ介(24歳)
先輩「あれ、リュウみんなと飯行かなかったの?」
流ノ介「今日はお金ないのでコンビニ弁当です」
先輩「へー」
流ノ介「先輩はいつも一人で昼飯食べてて、寂しくないんですか?」
先輩「全っ然、寂しくない」
流ノ介「そうなんだ……。そういえば聞いてくださいよ」
先輩の隣に座りコンビニ弁当を食べ始める流ノ介。
サンドイッチを頬張る先輩。
流ノ介「僕また失敗しちゃって……」
先輩「へー」
缶コーヒーを飲む先輩。
流ノ介「発注数、0を2個多く入力しちゃいました」
先輩「ドラマで定番な失敗談だな」
流ノ介「もうこれで何回目だろ…… 失敗しまくりですよ、僕」
先輩「へー」
流ノ介「今日は……」
先輩「今日もやらかしたの?」
流ノ介「はい。今朝、K社に送るはずだったmailをS社へ送ってしまって、S社の方から、せっかく確定していた見積を再度、考え直してくれ。って、さっき連絡がありました。あっちの会社はこうなのに、なぜ、うちはこうなんだと……お怒りで……」
先輩「ドンマイ」
流ノ介「ハァ、だんだん自分に自信がなくなってきました……」
先輩「へー」
流ノ介「先輩は出来る人だから、僕の気持ちなんてわからないですよ」
先輩「出来る人か……」
流ノ介「だって、いつも仕事終わらせるの早いし…… 入社して先輩が失敗するとこ見たことないし……」
先輩「出来る事だけをやってるだけ。だから失敗しないだけ」
流ノ介「僕は未だに出来る事なんて一つもない」
先輩「リュウって俺と干支、一緒だったよな」
流ノ介「12個下なんで、一緒です」
先輩「リュウと同期のタイガも?」
流ノ介「そうです」
先輩「そっか、」
流ノ介「それがどうかしたんですか?」
先輩「24になる年か、」
流ノ介「はい」
先輩「最近うちの会社、新卒取らなくなったからリュウとタイガが今はうちのルーキーってことだよな」
流ノ介「はい」
先輩「じゃあ今のうち、いっぱいやらかしとけば いいよ」
流ノ介「え、いいんですか?」
先輩「いいよ。いいよ。上司や会社をいっぱい困らせちゃえ」
流ノ介「いやいやいや、タイガはそれでいいですよ。失敗しても仏の先輩がメンターでフォローしてくれるから。僕なんて少しのミスも許さない鬼センと呼ばれてる人がメンターなんですから」
先輩「大丈夫だって」
流ノ介「大丈夫じゃないですよ。ほんとタイガが羨ましい……」
先輩「鬼センもリュウの事ちゃんと見てるよ」
流ノ介「嘘だ」
先輩「お前、失敗はたくさんするけど、2回、同じ失敗はしないそうじゃん」
流ノ介「え、」
先輩「鬼センが言ってたからさ。アイツはすげぇって」
流ノ介「迷惑かけないように、かけないようにって…… 毎日、必死ですから……」
先輩「だから、今のうちにいっぱい迷惑かけとけって」
流ノ介「いや……」
先輩「いつかリュウも先輩になる時がくるんだから、そん時、同じ失敗した後輩君に俺もそれやった!やった!って笑い飛ばしてやれるくらいさ」
流ノ介「そんなカッコいい先輩になれますかね……僕」
先輩「それは俺にもわからない」
流ノ介「なんですかそれ」
先輩「さ、戻ろう」
流ノ介「はい」
食べかすを片付け始める先輩と流ノ介。
流ノ介「そういえば、昨日お休み取ってませんでした?」
先輩「取ってた」
流ノ介「何してたんですか?」
先輩「ナイショ」
流ノ介「えーー教えて下さいよーー」
先輩「興味ないだろ」
流ノ介「ありますよ。たまには休みの日にでも、飲みに連れてってくださいよーー」
先輩「気が向いたら、……行こう」
流ノ介「お願いします!!」
先輩「気が向いたらだよ」


3DAY(日替わり・水曜日)

○会社・オフィス (朝)
デスクについて缶コーヒーを飲む先輩。
大河「おはよーーございまーーす!!!!」
隣のデスクにつく陽気な大河(24歳)
先輩「おはよ」
大河「昨日、行った飲み会、めちゃくちゃかわいい子いましたよ」
先輩「良かったな」
大河「先輩も行きましょうよ」
先輩「気が向いたら」
大河「絶対、行かない返事じゃないすか」
先輩「そう?」
大河「そのルックスをもっと使った方がいいですよ。イケメンなのに」
先輩「うるせ」
大河「あっそうだ、昨日の案件の資料つくってきたんで確認してください」
先輩「りょうかい」
手を出す先輩。
大河「いや、mailで送ります」
先輩「はい」
PCを確認する先輩。
先輩「じゃあこれで、いこう」
大河「ほんとですか? ちゃんと確認してます?」
先輩「してるよ。出来る後輩がいて助かるよ」
大河「天才ですから」
先輩「へー」
大河「へーって」

○同日・先輩のマンション・リビング(夜)
ソファに座ってテレビを観ている先輩。
ケータイが鳴る。
大河から。
先輩「もしもし、どうした?」
大河「やばいっす、やばいっす」
先輩「何がやばいの?」
大河「やばいっすよ、あっ今お時間大丈夫ですか?」
先輩「大丈夫。だから何がやばいんだよ」
大河「今朝、見てもらった資料あるじゃないですか?」
先輩「うん」
大河「あの後すぐクライアントの社長へ送ったんすけど…… 少し前、うちの会長からうちの社長へ、うちの社長から課長へ連絡があったらしく、課長から確認の連絡が今、俺にあって」
先輩「……うん」
大河「クライアントの社長が求めていた商品と違う商品を入力してたみたいで……。けど、欲しがっている商品はもう作られてなくて、それをまだ社長に報告し忘れてます。……俺」
先輩「要するに社長が欲しい品とは違う品を提示してしまった」
大河「はい」
先輩「しかし、社長の欲しい品はすでに作られてない。その事を社長へまだお伝えしていない」
大河「……はい。その通りです」
先輩「課長はなんて?」
大河「明日、謝りに行ってこい。とだけ……」
先輩「そっかタイガにしては珍しいミスだな」
大河「はい。すみません」
先輩「じゃあ明日、俺も一緒に謝りに行くよ」
大河「いや、先輩はなにも悪くないので、俺一人で行きます」
先輩「最終確認したの俺だし、責任は俺にもあるから」
大河「悪いっす」
先輩「俺に連絡してきたって事は、一緒についてきて欲しいって事だろ」
大河「……バレてました? ……もう俺どうしたらいいか」
先輩「最近、仕事抱えすぎてるから仕方ないよ。その分俺がラクさせてもらってるし」
大河「そんなことないっすよ」
先輩「魔の2年目だな、アハハ」
大河「笑いごとじゃないっす」
先輩「じゃあ明日」
大河「はい、じゃあ明日。お願いします」
ホッとした様子でケータイを切る大河。


4DAY(日替わり・木曜日)

○会社・オフィス (朝)
デスクについて缶コーヒーを飲む先輩。
大河「おはよございます」
ゆっくり隣のデスクにつく大河。
先輩「おはよ、お前はわかりやすいな」
大河「ハァーー。もう課長来てます?」
先輩「来てるよ」
大河「あーーこれから課長に呼び出されシバかれるんですかね?嫌だーー」
先輩「たまにはいいだろ」

○同・課長のデスク (同)
頭の上でプリント(資料)を持って揺らし呼ぶ課長。
課長「ちょっと来てくれるかーー? この案件の担当者」
先輩「はい、私です」
席を立つ先輩。
大河「僕が行きます」
先輩「お前はここにいろ」
大河「……はい」

○同日・駅・改札口
菓子折りを持つ大河。
鞄の中を忘れ物はないか確認する先輩。
先輩「さぁ行くか」
大河「はい」

○同日・電車の中
電車の8人席に隣同士で座る先輩と大河。
大河「朝、課長に呼ばれた時なんか言われました?」
先輩「うん。この件とは別件でちょっと」
ケータイを触りながら返答する先輩。
大河「結局、俺、呼び出されなかったけど」
先輩「明日、くらいじゃない?」
大河「マジっすか……」
先輩「フン 笑」
大河「俺、昼休みまでいつ呼び出されるかってビクビクしてて」
先輩「なんだそれ」
大河「生きた心地しなかったっすよーー」
先輩「へー。そろそろ、着くかな」
ケータイを鞄にしまう先輩。
先輩「このクライアントの社長さん、うちの会長の友達なんだってさ」
大河「マジっすか」
先輩「めちゃくちゃ、怖いらしいぞ」
大河「僕、この契約がダメになったら会社辞めます」
先輩「へー、お疲れ」
大河「いや、止めてくださいよ」
先輩「じゃあ辞めてどうすんの?」
大河「なんか自分で起業します」
先輩「なら……俺もそこに転職しよっかな」
大河「なにノっかってきてんすか」
先輩「(ニヤリ)」
電車から降りる先輩と大河。

○同日・取引先・社長室
ソファに腰掛ける社長。
向かい合わせのソファに二人並んで立つ先輩と大河。
先輩「この度は、私の確認不足でご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」
一礼する先輩。
大河「申し訳ごいませんでした」
慌てて一緒に一礼する大河。
社長「まぁまぁ、座って下さい」
先輩「失礼します」
大河「失礼します」
お茶を持ってくる女性社員。
女性社員「これ、よろしければ召し上がって下さい」
軽く会釈する先輩と大河。
大河「これ……宜しければ……」
菓子折りを渡す大河。
女性社員「わざわざ、ありがとうございます」
社長「早速、本題に入りたいんだが……」
先輩「はい」
社長「あなたたちの会社には随分と前からお世話になっていてね」
先輩「いえ、こちらこそお世話になっております」
社長「この件でってわけでは決してないんだが、これからはお付き合いを控えさせて頂こうかと思っていてね」
先輩「はぁ、そうですか……」
社長「申し訳ない」
先輩「いえ、いえ、いえ、いえ……」
社長「この件はもう違う会社に発注させてもらったよ」
先輩「はい」
社長「その会社の担当者が教えてくれたんだが、私が欲しがっていた品はもう作られていないそうじゃないか?」
先輩「はい。……そうだったみたいです」
社長「どうしてその事をすぐに教えてくれなかった?」
先輩「それは私の正確に不足です」
社長「うん……」
大河「いや、ぼっ僕がすぐに報告をしなければならなかったのに……忘れてしまっていました。申し訳ございません」
社長「もういいよ。済んだ事だ」
大河「はい……」
先輩「あの、今回頂いた件で他社様へ再度、依頼し直したと、おっしゃっていたのですが、私共も、もう一度いろいろ代替品を探し考えてみたので、これ」
鞄からプリント(資料)取り出す先輩。
大河(N)『いつのまに……』
少し驚いた様子でプリント(資料)を見る大河。
社長「そうか……しかし……すまんが今回はもう……」
先輩「はい……」
机の上にプリント(資料)を置く先輩。
社長「私は一度、決めた事は変えない主義なもんでね、これからお付き合いはなくなってしまうが、若い君たちの頑張りに期待しているよ」
先輩「ほんとに申し訳ございませんでした」
大河「申し訳ございませんでした」
社長「会長によろしくお伝えください」
先輩「はい」


○同日・電車の中 (夕)
4人席の窓側に向い合せで座る先輩と大河。
大河「先輩いつあんな資料つくったんすか?」
先輩「昨日の夜」
大河「家で、ですか?」
先輩「そう」
大河「……ほんと、俺のためにすみません」
先輩「なんで謝ってんの?」
大河「……(俯く)」
先輩「別にお前のためじゃないし」
大河「……(俯く)」
先輩「それに俺が一緒に謝ったところで結果は……多分、あの社長は今後ほんとにうちへの依頼はしてこない。だからまぁ年間2億の売上をつくれる物件を二人で破壊しちゃったって事に変わりはない」
大河「そうですけど」
先輩「ドラマのように、じゃあもう一度君たちに。って、そううまくはいかないよな」
大河「……はい」
先輩「っで、タイガは辞めるんだっけ?」
大河「はい。責任取るっす」
先輩「へー」
窓の外を見る先輩。
先輩「……そのさ、責任の取り方違わない」
大河「俺なんて、居ても居なくても会社はまわりますから」
先輩「それは正解」
大河を見る先輩。
大河「……はい」
先輩「チャラチャラしてて、毎日ウかれてて、軽~~く宙ウいてんじゃねぇかと思う時もあるけど……。だけどさ、いつかタイガなら2億いや3億を超える売上規模のクライアントを何個も抱えてるような、すげぇ奴になってんじゃねぇかな?」
大河「え、」
先輩「いや、だから。出来る奴なんだから良い仕事して……ってこと、だから……」
大河「……ほんとに、今日はすみませんでした……」
突然、電車の中で号泣する大河。
先輩「いや、俺が泣かせたみたいだから……やめろ」
大河「ず・み・ま・ぜん・で・じ・だ……」


5DAY(日替わり・金曜日)

○会社・オフィス (朝)
デスクについて缶コーヒーを飲む先輩。
大河「おはよーございます」
落ち着いたようにゆっくり隣のデスクにつく大河。
先輩「おはよ」
大河「もう課長きてるんすか?」
先輩「来てるよ。(ニヤリ)初めて挫折した次の日の気分は?」
大河「サイヤクです」
先輩「へー」
大河「昨日の事、もう報告したんすか?」
先輩「したよ」
大河「ちょっとトイレ行ってきます」
先輩「心配すんなって、あっこれ次の案件、資料まとめといて」
依頼書を大河に渡す先輩。
大河「はい」

○同・課長のデスク (同)
先輩を呼ぶ課長。
(前回よりも大きめな声)
課長「おい!ちょっと来てくれるかぁーー?」
先輩「はい」
席を立ち課長のデスクへ向かう先輩。
課長「社長が、昨日の話を詳しく聞きたいらしいんだ」
先輩「今からですか」
課長「そうだな……。今、社長室に居るみたいだから」
先輩「わかりました。今から行ってみます」

○同・オフィス (同)
デスクに戻り缶コーヒーを一口だけ飲む先輩。
先輩「行くか」
席を立つ先輩。
トイレから帰ってきてデスクにつく大河。
大河「先輩、どこ行くんすか?」
先輩「社長室」
大河「え、まさか昨日の事でですか?」
先輩「そう」
大河「俺も行きます」
先輩「なぜ?」
大河「俺の失敗なんで」
先輩「お前は呼ばれてない」
颯爽と社長室へ向かう先輩。

○同・社長室 (同)
社長室の前で一呼吸おきドアを開ける先輩。
先輩「失礼します」
社長「はい、どうぞ」

○同・ソファの前 (同)
デスクで作業をしている社長。
社長「そこに座って待っていてくれないか。もう少しで終わるから」
先輩「はい。失礼します」
ソファに腰掛ける先輩。

○同・オフィス (夜)
デスクの時計の針が22時をさす。
PCを触る先輩。
先輩「これぐらい、まとめとけばタイガもわかるだろ」
時計を見る先輩。
先輩「やべ、もうこんな時間じゃん……」
流ノ介「え、先輩まだ仕事してるんですか?」
外回りから帰ってくる流ノ介。
先輩「おっ、リュウ」
流ノ介「ちょっと仕事しすぎなんじゃないですか」
先輩「暇人だから。リュウこそ今まで外回りしてたの?」
流ノ介「はい、今回のクライアントさんと盛り上がってしまって」
先輩「そっか」
流ノ介「もう帰られるんですか?」
先輩「もう帰るよ」
流ノ介「じゃあ一杯だけ、一杯だけでいいんで飲みに行きませんか?」
先輩「いいよ」
流ノ介「ほんとですか?」
先輩「行こう。どこ行く?」
流ノ介「やった」
ケータイが鳴る流ノ介。
流ノ介「あ、タイガからだ。もしもし……」
大河「もしもし、リュウ、今大丈夫?」
流ノ介「うん。大丈夫だけど、なに?」
大河「いや、お前が会社帰ってきたら聞こうと思ったんだけど、帰ってこないから」
流ノ介「外回り行ってて遅くなったんだ、ごめん」
大河「別にいいけど。 いや、あのお前から引き継いだクライアントさんの件で聞きたい事があって」
流ノ介「なに?」
大河「えっとね」
流ノ介「あっそうだ、今から朝倉先輩と飲みに行くけどタイガも来る?」
大河「マジで!! 絶対行くーー!!」
流ノ介「そういうと思った」
大河「今どこ?」
流ノ介「まだ会社」
大河「大輔先輩、まだ仕事してんの?」
流ノ介「そうみたい」
大河「あの件でのことで、かな……」
流ノ介「さぁ?」
先輩を見る流ノ介。
流ノ介「とりあえず、僕たちこれから出るから」
大河「どこで飲むの?」
流ノ介「MOONってお店知ってるよね?会社の近くのバー!!」
大河「知ってる!!じゃあ、そこで」
流ノ介「OK、じゃあまた」
ケータイを切る流ノ介。
流ノ介「すみません。さっきの電話タイガからだったので飲み誘っちゃいました」
先輩「いいよ」
流ノ介「じゃあ、行きましょう」
オフィスから出ていく先輩と流ノ介。

○同日・大河の部屋(同)
急いで出かける支度する大河。


6DAY(土曜日)

○MOON(バー)・個室 (夜中)
店の時計の針は午前0時をさす。
ビールを飲む先輩と大河。
カクテルを飲む流ノ介。
流ノ介「先輩、次何にします?」
先輩「タイガ、ブルドック頼んで」
大河「そんなイケメンな顔して」
先輩「顔、関係ないから」
流ノ介「先輩って転職組ですよね?」
先輩「そうだよ」
流ノ介「やっぱり慣れるまで大変でした?」
先輩「まぁ」
流ノ介「嫌な上司とか居なかったんですか?」
先輩「さぁ覚えてない」
流ノ介「先輩らしい……。皆さん悪いように言わないんですよね、先輩の事」
先輩「へー」
大河「だってうちのエースだぞ」
先輩「俺に興味ないだけだろ」
流ノ介「そんな事はないと思います」
大河「そういや、他の先輩たち頭上がらないって言ってた……」
先輩「いやいや実際こんな俺に話しかけてくるの、お前らぐらいだから」
流ノ介「僕は、なんか話聞いてほしくなるんですよね」
大河「わかる」
流ノ介「先輩って新人の頃どんな感じだったのか気になって、気になって」
大河「さすがにリュウみたいな失敗はしないでしょ」
先輩「まぁ」
大河「アハハハハ」
先輩「お前は笑えない」
流ノ介「そうだ、そうだ」
大河「すみません。……そういえば、今日残って仕事してたのはあの案件の件ですか?」
先輩「違うよ」
大河「社長室に呼ばれて何言われたんすか?」
先輩「お前には関係ない」
大河「ほんとっすか?」
先輩「いや、その件は関係あるか」
大河「やっぱりあの件の内容で何か言われたんすか?」
先輩「まぁ。聞きたい?」
大河「はい」
先輩「タイガがやらかした会社、そろそろ倒産するかもってさ」
大河「マジっすか!?」
先輩「金なくてうちとの契約を切らずにを得なかったってこと」
流ノ介「じゃあタイガのミスで契約が切られたわけじゃないって事ですか」
先輩「いや……ミスした事はダメな事でそれも原因の一つ。ただそれを口実に解消されたってのも事実」
大河「そうだったんすね……」
先輩「社長は遅かれ、早かれ、契約は解消してただろう。って」
流ノ介「じゃあ、タイガはあの社長にうまく使われたってわけだ」
先輩「まぁ。けど、ミスしたのが悪い」
大河「はい」
流ノ介「そうでした。そもそもそこでした」
先輩「さっ」
空いたグラスが5・6本並ぶ机の上。
帰る準備を始める先輩。
流ノ介「もう一つだけ聞いていいですか?」
大河「明日、休みなんすからまだ飲みましょうよ」
先輩「なに?リュウ」
流ノ介「この会社にくる前はなにしてたんですか?」
大河「リュウは真面目な質問ばっかだな」
先輩「自由な社風を掲げた会社で自由に仕事してたよ」
大河「そっちの方がめちゃくちゃ良いじゃないすか!!」
先輩「俺もタイガみたいに若かったから、そう思ってた」
流ノ介「なら、なんで辞めちゃったんですか」
先輩「……その話はまた今度な」
流ノ介「気になるーー」
大河「じゃあ俺からも一つ質問させて。今、彼女いるんすか」
先輩「いない」
大河「休みの日は何してるんすか?」
先輩「一つじゃなかったのか」
大河「え、聞こえないっす」
先輩「さぁそろそろマジで帰るぞ」
流ノ介「先輩、また飲みに連れてって下さい」
先輩「気が向いたら」
大河「そん時、俺も絶対、絶対、呼んでくれーー(叫ぶ)」
先輩「お前は飲みすぎ」
伝票を持ち立ち上がる先輩。

○同日・先輩のマンション・リビング(早朝)
ソファに座りベルトを緩める先輩。
先輩「やべぇーー飲みすぎた。やべぇーー頭痛い。やべぇーー腹痛い…… あいつらと一緒だったから少しは加減したんだけどな」
水を取りに行く先輩。

○同日・同・キッチン (同)
先輩「やべぇーー胃が痛い再発か。やべぇーー胸が苦しい肺ガンか……。いつまでビビってんの、俺は……」
水を飲む先輩。
先輩「マジ、またって事だけは勘弁してくれ……とりあえず、寝よぉ」

○同日・同・ベッドルーム (同)
ベッドに向かい布団に入り眠る先輩。
先輩「前の会社を辞めた理由か……ダメな自分を変えなきゃいけない……と……気づいたから……けど……もう遅いってことにも、気づいた……から……ZZZ」



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