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第三章 明日へ
112. 最愛
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屋敷に戻ると、レヴィルが玄関先で出迎えてくれた。僕は馬車から降り立つと、レヴィルに駆け寄る。
「レヴィル、ただいま戻りました」
「ああ、おかえり」
レヴィルは僕の顔を見ると優しく微笑む。その笑顔を見て、僕は帰ってきたのだと実感する。僕はそのままレヴィルに抱きついた。
「どうした」
「……安心したくて」
「そうか」
そう言いながらレヴィルは僕の頭を撫でる。レヴィルからはジュニパーとグレープフルーツの香りがした。
「上手くいったのか?」
「……はい、無事に」
レヴィルには昨夜殿下の元で何をしてきたのか、あらかじめ話をしていた。
「……そうか、頑張ったな」
「はい」
僕はレヴィルを抱きしめたまま、顔を埋めて目を閉じる。
「疲れたか?」
「ううん、大丈夫……」
本当は疲れていたけれど、もう少しこうしていたかった。そんな嘘を見破ってか、レヴィルはぽん、と背中を軽く叩いた。
「少し休むといい」
「うん……」
名残惜しさを感じつつ体を離すと、レヴィルは僕の手を引いて歩き出す。手を引かれるまま着いた先は寝室だった。ベッドへ腰掛けるように促されて座ると、隣にレヴィルも座った。そしてそっと肩を抱き寄せられる。
瞼や頬に口付けられ、くすぐったさに思わず笑みがこぼれた。
「ふふっ、なんだかくすぐったいです」
「我慢しろ」
そう言ってレヴィルは笑うと、最後に唇に触れるだけのキスをして離れていく。それが寂しく感じられて、今度は自分からレヴィルの首に腕を回して引き寄せた。すると彼はすぐに意図を理解してくれて、また触れるだけの優しいキスを落とす。
「……レヴィル」
「ん?」
「今朝、カミーユ殿下と一緒に墓廟のユイール様の元へお祈りに行ってきました」
「そうか」
墓石を見つめるカミーユ殿下を思い出すと、胸がきゅう、と締め付けられた。
僕は顔を上げてレヴィルを見つめる。
「僕、カミーユ殿下をお支えしたいです。臣下として重用されなくても、アデルとして愛されなくてもいい。あの方の背をお支えしたい」
「……うん」
「許してくれますか」
レヴィルは僕の事をじっと見つめた。
「相手は王太子殿下だぞ」
「……はい」
「きっと苦労するし、辛いことも沢山ある」
「覚悟しています」
それでも、僕は。
「それでも、カミーユ殿下を支えたい」
「…………」
しばらく沈黙が続いたあと、レヴィルは大きな溜め息をつく。呆れられただろうか。恐る恐る見上げると、彼の表情はとても穏やかだった。
「いつのまにか頑固者になったな」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていい。そういう所も含めて好きなんだから」
レヴィルは苦笑いを浮かべると、もう一度だけ軽いキスをした。
「いいよ、お前の思うようにやりなさい」
「ありがとうございます……レヴィル」
僕は嬉しさと安堵感でいっぱいになって、涙が出そうになった。それを察してくれたのか、レヴィルは僕の目元に口付けると、おいでと言って僕を抱きしめた。
「レヴィル」
「なんだ?」
「大好きです。すごく、すごく大好きです。」
「知ってるよ」
レヴィルはくすりと笑って、僕をさらに強く抱きしめる。
「俺も大好きだよ」
僕はその言葉を聞いて満足げに微笑むと、目を閉じて彼の胸に顔をうずめた。
「レヴィル、ただいま戻りました」
「ああ、おかえり」
レヴィルは僕の顔を見ると優しく微笑む。その笑顔を見て、僕は帰ってきたのだと実感する。僕はそのままレヴィルに抱きついた。
「どうした」
「……安心したくて」
「そうか」
そう言いながらレヴィルは僕の頭を撫でる。レヴィルからはジュニパーとグレープフルーツの香りがした。
「上手くいったのか?」
「……はい、無事に」
レヴィルには昨夜殿下の元で何をしてきたのか、あらかじめ話をしていた。
「……そうか、頑張ったな」
「はい」
僕はレヴィルを抱きしめたまま、顔を埋めて目を閉じる。
「疲れたか?」
「ううん、大丈夫……」
本当は疲れていたけれど、もう少しこうしていたかった。そんな嘘を見破ってか、レヴィルはぽん、と背中を軽く叩いた。
「少し休むといい」
「うん……」
名残惜しさを感じつつ体を離すと、レヴィルは僕の手を引いて歩き出す。手を引かれるまま着いた先は寝室だった。ベッドへ腰掛けるように促されて座ると、隣にレヴィルも座った。そしてそっと肩を抱き寄せられる。
瞼や頬に口付けられ、くすぐったさに思わず笑みがこぼれた。
「ふふっ、なんだかくすぐったいです」
「我慢しろ」
そう言ってレヴィルは笑うと、最後に唇に触れるだけのキスをして離れていく。それが寂しく感じられて、今度は自分からレヴィルの首に腕を回して引き寄せた。すると彼はすぐに意図を理解してくれて、また触れるだけの優しいキスを落とす。
「……レヴィル」
「ん?」
「今朝、カミーユ殿下と一緒に墓廟のユイール様の元へお祈りに行ってきました」
「そうか」
墓石を見つめるカミーユ殿下を思い出すと、胸がきゅう、と締め付けられた。
僕は顔を上げてレヴィルを見つめる。
「僕、カミーユ殿下をお支えしたいです。臣下として重用されなくても、アデルとして愛されなくてもいい。あの方の背をお支えしたい」
「……うん」
「許してくれますか」
レヴィルは僕の事をじっと見つめた。
「相手は王太子殿下だぞ」
「……はい」
「きっと苦労するし、辛いことも沢山ある」
「覚悟しています」
それでも、僕は。
「それでも、カミーユ殿下を支えたい」
「…………」
しばらく沈黙が続いたあと、レヴィルは大きな溜め息をつく。呆れられただろうか。恐る恐る見上げると、彼の表情はとても穏やかだった。
「いつのまにか頑固者になったな」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていい。そういう所も含めて好きなんだから」
レヴィルは苦笑いを浮かべると、もう一度だけ軽いキスをした。
「いいよ、お前の思うようにやりなさい」
「ありがとうございます……レヴィル」
僕は嬉しさと安堵感でいっぱいになって、涙が出そうになった。それを察してくれたのか、レヴィルは僕の目元に口付けると、おいでと言って僕を抱きしめた。
「レヴィル」
「なんだ?」
「大好きです。すごく、すごく大好きです。」
「知ってるよ」
レヴィルはくすりと笑って、僕をさらに強く抱きしめる。
「俺も大好きだよ」
僕はその言葉を聞いて満足げに微笑むと、目を閉じて彼の胸に顔をうずめた。
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