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第三章 明日へ
106. 考察
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秋の節になると胎児が持つ両親の魔力の比率の研究で、7名のアデルの誕生が報告された。まだ検証数の少ない段階ではあるが、これは今までのアデルの出生率を考えると驚くべき結果であった。
これにより保護地区の制度と、加護のやり方を見直さなくてはいけない可能性が出てきた。今の制度では受胎後に同じアデルの精を受ける事は難しい。それを仕組み化していく必要がありそうだった。
いずれにしてもまだ検証数が少ない段階だ。やり方を模索しながら検証を進めていくしかない。この結果は中央医院でも注目され、医院の中で最も力を入れる研究として予算が組まれる事になった。
そして僕とリーダー格の医師は、この報告をしにオーウェン公爵の元へ訪れていた。
「そうか……かなり今後が期待できる結果だな」
「ええ、教会の加護の急増で出てきた資金をこちらへ回し、至急研究を進める予定です」
「そうか、こちらもできる限りの支援はしよう」
「ありがとうございます」
リーダー格の医師が報告をすると、オーウェン公爵が頷いた。
「国王陛下にも報告する必要がありそうだな」
「はい、今後は制度の見直しも視野に入れなければなりません。ぜひ陛下にもご検討いただきたい事案です」
「ああ、そうだな。近々場を設けよう」
「ありがとうございます」
「その時はお前たちも出席してもらおう」
「はい、承知いたしました」
僕たちは一通り意見交換をし、今後について話し合った。公爵はふむ、と考え込むと口を開く。
「結局の所、アデルの出生率が低くなったのはアデルの精子に含まれる魔力が減った事が原因と考えていいのか」
「まだ確証はありませんが、今の所その可能性が有力です」
「……だがそうなった原因は分からないままか……」
「ええ……アデル風邪と因果関係があるとは思っておりますが……そちらについてはまだ何も」
「まあ、その研究はこれからだな。まずは現状を打破する事に注力すべきだろう」
議論がひと段落すると部屋に従者が入ってきて、紅茶を給仕した。紅茶をひとくち口に含むと、僕は口を開く。
「オーウェン公爵はアデル風邪に罹患されてはいらっしゃらないですよね」
「ああ、私はないな」
「……ではなぜ公爵の子はエバばかりだったんでしょうか。アデル風邪と因果関係があるならば説明がつかないです」
僕がそういうと、公爵は少し考えた後、ゆっくりと首を横に振った。
「私は罹患していないが、私の父がアデル風邪に罹患している」
「……前王弟殿下が……ですか?」
「ああ、父が罹患したのは第一波がくる前、まだアデル風邪が強毒化する前の話だ」
「……そうだったのですか」
「その時は本当にただの風邪のような症状だったと聞いている。知らず罹患した者も多かっただろう」
「……そうですね、当時の医療技術を考えればあり得る範囲でしょう」
公爵の言葉に医師が同意する。公爵は頷くと軽く息を吐いた。
「原因が分かれば、根本の治療方法も考えられるのだがな」
「ええ……ですが今は対処療法の可能性を見いだせただけでも僥倖というべきです。まずは現状の改善から取り組んで参ります」
「ああ、そうだな。頼んだぞ。私の方でも急ぎ進めよう」
「よろしくお願いします」
僕たちは今後の方針を話し合った後、部屋を辞した。
これにより保護地区の制度と、加護のやり方を見直さなくてはいけない可能性が出てきた。今の制度では受胎後に同じアデルの精を受ける事は難しい。それを仕組み化していく必要がありそうだった。
いずれにしてもまだ検証数が少ない段階だ。やり方を模索しながら検証を進めていくしかない。この結果は中央医院でも注目され、医院の中で最も力を入れる研究として予算が組まれる事になった。
そして僕とリーダー格の医師は、この報告をしにオーウェン公爵の元へ訪れていた。
「そうか……かなり今後が期待できる結果だな」
「ええ、教会の加護の急増で出てきた資金をこちらへ回し、至急研究を進める予定です」
「そうか、こちらもできる限りの支援はしよう」
「ありがとうございます」
リーダー格の医師が報告をすると、オーウェン公爵が頷いた。
「国王陛下にも報告する必要がありそうだな」
「はい、今後は制度の見直しも視野に入れなければなりません。ぜひ陛下にもご検討いただきたい事案です」
「ああ、そうだな。近々場を設けよう」
「ありがとうございます」
「その時はお前たちも出席してもらおう」
「はい、承知いたしました」
僕たちは一通り意見交換をし、今後について話し合った。公爵はふむ、と考え込むと口を開く。
「結局の所、アデルの出生率が低くなったのはアデルの精子に含まれる魔力が減った事が原因と考えていいのか」
「まだ確証はありませんが、今の所その可能性が有力です」
「……だがそうなった原因は分からないままか……」
「ええ……アデル風邪と因果関係があるとは思っておりますが……そちらについてはまだ何も」
「まあ、その研究はこれからだな。まずは現状を打破する事に注力すべきだろう」
議論がひと段落すると部屋に従者が入ってきて、紅茶を給仕した。紅茶をひとくち口に含むと、僕は口を開く。
「オーウェン公爵はアデル風邪に罹患されてはいらっしゃらないですよね」
「ああ、私はないな」
「……ではなぜ公爵の子はエバばかりだったんでしょうか。アデル風邪と因果関係があるならば説明がつかないです」
僕がそういうと、公爵は少し考えた後、ゆっくりと首を横に振った。
「私は罹患していないが、私の父がアデル風邪に罹患している」
「……前王弟殿下が……ですか?」
「ああ、父が罹患したのは第一波がくる前、まだアデル風邪が強毒化する前の話だ」
「……そうだったのですか」
「その時は本当にただの風邪のような症状だったと聞いている。知らず罹患した者も多かっただろう」
「……そうですね、当時の医療技術を考えればあり得る範囲でしょう」
公爵の言葉に医師が同意する。公爵は頷くと軽く息を吐いた。
「原因が分かれば、根本の治療方法も考えられるのだがな」
「ええ……ですが今は対処療法の可能性を見いだせただけでも僥倖というべきです。まずは現状の改善から取り組んで参ります」
「ああ、そうだな。頼んだぞ。私の方でも急ぎ進めよう」
「よろしくお願いします」
僕たちは今後の方針を話し合った後、部屋を辞した。
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