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第三章 明日へ
93. 眠り
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翌日以降も僕は夜になるとカミーユ殿下の元を訪れた。初日と違い、カミーユ殿下はアデルは呼ばず、僕が来るとソファでぐったりとしている事が多かった。
「…………よく飽きずに通ってくるものだな」
「飽きたりしませんよ」
僕は微笑んで答える。
「お酒は飲んでいらっしゃいませんね?」
「…………」
侍従にも確認し、お酒を飲んでいない事を確認すると薬の準備をする。
毎晩ここへ来る前にヘイマー医師の元を訪れて、殿下の体調を共有し、その晩に服用する睡眠薬をもらう。それを水と共に殿下に渡して、服薬させる。それが僕が訪問する際の1番の目的に今はなっている。
殿下は力無く薬を服用すると、ソファに身を預けた。
「殿下、ベッドで休まれてください」
「……ここで良い」
「いけません、お身体を休めませんと」
「……うるさい」
「殿下」
僕は殿下を抱える様に起こすと半ば無理矢理ベッドに押し込んだ。
殿下は眉を顰めたが、抵抗するのも面倒なのか、そのままベッドに身を沈めた。
本来であれば睡眠薬を服用すれば、数十分で眠りに落ちる。だが、カミーユ殿下にはあまり効いていない様だった。食事も睡眠もろくに摂っていない殿下は本当にやつれていて、こんな状態で公務をしているのが不思議なくらいだ。少しでも身体を休めてほしいのだが、それが中々難しい。
僕は思い至った様にそっと殿下に手を伸ばした。
「殿下、眠られるまで手をマッサージしてもよろしいですか?」
「……」
カミーユ殿下は少し嫌そうな顔をしたが、返事はしなかった。僕はそれを気にする事もなく、殿下の手を取り、ゆっくりと揉みほぐす。あまり強くしない方が良いだろうと思いながら優しく。
昔、誘拐されて何もかもが怖くて眠れなかった時、リノがこうしてくれた事を思い出す。手を握ってくれただけでとても安心できたのだ。少しでも眠りの助けになると良いと思いながら続ける。
殿下の手からは想像していたよりもずっと硬い感触が伝わってきた。きっと剣を振るう機会も多いのだろう。
僕は黙って殿下の手を握ったままマッサージを続けた。
「…………お前は何故ここまでするんだ?私など放っておけばいいものを」
殿下は1人呟くようにそう言った。
「言ったでしょう?殿下をお助けしたいのです」
「…………物好きだな」
殿下はそう言ってため息をつくと、ゆっくりと目を瞑った。
「…………よく飽きずに通ってくるものだな」
「飽きたりしませんよ」
僕は微笑んで答える。
「お酒は飲んでいらっしゃいませんね?」
「…………」
侍従にも確認し、お酒を飲んでいない事を確認すると薬の準備をする。
毎晩ここへ来る前にヘイマー医師の元を訪れて、殿下の体調を共有し、その晩に服用する睡眠薬をもらう。それを水と共に殿下に渡して、服薬させる。それが僕が訪問する際の1番の目的に今はなっている。
殿下は力無く薬を服用すると、ソファに身を預けた。
「殿下、ベッドで休まれてください」
「……ここで良い」
「いけません、お身体を休めませんと」
「……うるさい」
「殿下」
僕は殿下を抱える様に起こすと半ば無理矢理ベッドに押し込んだ。
殿下は眉を顰めたが、抵抗するのも面倒なのか、そのままベッドに身を沈めた。
本来であれば睡眠薬を服用すれば、数十分で眠りに落ちる。だが、カミーユ殿下にはあまり効いていない様だった。食事も睡眠もろくに摂っていない殿下は本当にやつれていて、こんな状態で公務をしているのが不思議なくらいだ。少しでも身体を休めてほしいのだが、それが中々難しい。
僕は思い至った様にそっと殿下に手を伸ばした。
「殿下、眠られるまで手をマッサージしてもよろしいですか?」
「……」
カミーユ殿下は少し嫌そうな顔をしたが、返事はしなかった。僕はそれを気にする事もなく、殿下の手を取り、ゆっくりと揉みほぐす。あまり強くしない方が良いだろうと思いながら優しく。
昔、誘拐されて何もかもが怖くて眠れなかった時、リノがこうしてくれた事を思い出す。手を握ってくれただけでとても安心できたのだ。少しでも眠りの助けになると良いと思いながら続ける。
殿下の手からは想像していたよりもずっと硬い感触が伝わってきた。きっと剣を振るう機会も多いのだろう。
僕は黙って殿下の手を握ったままマッサージを続けた。
「…………お前は何故ここまでするんだ?私など放っておけばいいものを」
殿下は1人呟くようにそう言った。
「言ったでしょう?殿下をお助けしたいのです」
「…………物好きだな」
殿下はそう言ってため息をつくと、ゆっくりと目を瞑った。
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