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第三章 明日へ
83. 晩秋
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どうしても早く確かめておきたくて、僕は教会を出た足で早速ジェイデンの元を訪れることにした。
コンコン、と村屋敷の一室をノックをすると、そこにはいつも通りジェイデンの姿があった。
「ジェイデン、少し話をしてもいいかな」
「ええ、もちろんです」
彼は穏やかに返事をする。その様子からは、やはり何も読み取ることができなかった。
「あのさ……昨日の話なんだけど……」
「はい」
「……やっぱり僕は君を手放したくは無い。だから、君の本当の想いを聞かせて欲しいんだ」
「…………」
「……本当に僕のもとに居たくない……のかな?」
「いえ……違います……私はただ……」
そこで言葉を詰まらせた彼は、苦しげに顔を歪める。
「ジェイデン……?」
「…………ティト様のことが嫌いなわけではありません」
「そうか……それなら充分だ」
そう言って微笑んでみせると、彼は何か言いたそうにして、でも結局口を閉ざしてしまった。
「……少し散歩に行かない?」
僕がそう言うと、彼は不思議そうな顔をした後に、こくりと首を縦に振った。僕たちは2人で中庭へと向かう。
「ここの庭の花たちも、もう終わりだね」
「ええ、もうすぐ冬ですから」
「ああ、でもこの実は綺麗だね」
そう言いながら、僕は真っ赤に色づいた木の実を手にとった。それをそっとジェイデンに差し出すと、彼は嬉しそうに微笑む。
「可愛いですね」
「うん、これって食べられるんだよ」
「そうなんですか?」
「ちょっと食べてみる?」
「……いえ、遠慮しておきます」
「あははっ、冗談だよ」
そんな他愛もない会話をしながら、僕たちの間に穏やかな時間が流れていく。僕はゆっくりと呼吸をして彼に向き合った。
「ジェイデン、僕は君の事が好きだ」
そう言った途端、彼の瞳が大きく見開かれる。
「僕はまだ若いし、頼りないだろうけど、いつか必ず君を守れるくらい強くなってみせる。だから、ずっとここにいてほしい」
僕を見つめたまま、彼はしばらく黙り込んでいた。やがて小さく息を吐くと、ぽつりと話し始める。
「……私もティト様が好きです」
「……じゃあ!」
「でも、あなたのそばにいることはできません」
「どうして……」
「……私はもう護衛の仕事をするのが難しいんです」
そう言うと、ジェイデンは腹部に手を当てた。僕は思わず息を飲む。
「もしかして……」
「はい……最近体調が悪くて、あまり動けなくて……今日も本当は安静にしていないといけないんです」
「っ本当!?ごめん……僕!」
「謝らないでください。私の方こそ隠していてすみませんでした」
彼はそう言うと、力なく笑う。僕はいてもたってもいられなくなって、慎重に彼を抱きしめた。
「ティト様……?」
「これからはもっと気をつけるよ……絶対に無理はさせないから……だから……お願いだから……」
「……はい」
「……僕のもとで、僕の子供を……産んでくれないかな……」
ジェイデンは何も言わなかった。僕は少し不安になりながらも、彼の返答を待つ。しばらくして、彼は僕の背中へと腕を回してきた。
「はい……」
「……ありがとう、結婚しよう、ジェイデン」
「……っは、い」
彼の声は震えていた。僕は彼のことをより一層強く抱き締める。それからしばらくの間、彼は静かに涙を流し続けていた。
コンコン、と村屋敷の一室をノックをすると、そこにはいつも通りジェイデンの姿があった。
「ジェイデン、少し話をしてもいいかな」
「ええ、もちろんです」
彼は穏やかに返事をする。その様子からは、やはり何も読み取ることができなかった。
「あのさ……昨日の話なんだけど……」
「はい」
「……やっぱり僕は君を手放したくは無い。だから、君の本当の想いを聞かせて欲しいんだ」
「…………」
「……本当に僕のもとに居たくない……のかな?」
「いえ……違います……私はただ……」
そこで言葉を詰まらせた彼は、苦しげに顔を歪める。
「ジェイデン……?」
「…………ティト様のことが嫌いなわけではありません」
「そうか……それなら充分だ」
そう言って微笑んでみせると、彼は何か言いたそうにして、でも結局口を閉ざしてしまった。
「……少し散歩に行かない?」
僕がそう言うと、彼は不思議そうな顔をした後に、こくりと首を縦に振った。僕たちは2人で中庭へと向かう。
「ここの庭の花たちも、もう終わりだね」
「ええ、もうすぐ冬ですから」
「ああ、でもこの実は綺麗だね」
そう言いながら、僕は真っ赤に色づいた木の実を手にとった。それをそっとジェイデンに差し出すと、彼は嬉しそうに微笑む。
「可愛いですね」
「うん、これって食べられるんだよ」
「そうなんですか?」
「ちょっと食べてみる?」
「……いえ、遠慮しておきます」
「あははっ、冗談だよ」
そんな他愛もない会話をしながら、僕たちの間に穏やかな時間が流れていく。僕はゆっくりと呼吸をして彼に向き合った。
「ジェイデン、僕は君の事が好きだ」
そう言った途端、彼の瞳が大きく見開かれる。
「僕はまだ若いし、頼りないだろうけど、いつか必ず君を守れるくらい強くなってみせる。だから、ずっとここにいてほしい」
僕を見つめたまま、彼はしばらく黙り込んでいた。やがて小さく息を吐くと、ぽつりと話し始める。
「……私もティト様が好きです」
「……じゃあ!」
「でも、あなたのそばにいることはできません」
「どうして……」
「……私はもう護衛の仕事をするのが難しいんです」
そう言うと、ジェイデンは腹部に手を当てた。僕は思わず息を飲む。
「もしかして……」
「はい……最近体調が悪くて、あまり動けなくて……今日も本当は安静にしていないといけないんです」
「っ本当!?ごめん……僕!」
「謝らないでください。私の方こそ隠していてすみませんでした」
彼はそう言うと、力なく笑う。僕はいてもたってもいられなくなって、慎重に彼を抱きしめた。
「ティト様……?」
「これからはもっと気をつけるよ……絶対に無理はさせないから……だから……お願いだから……」
「……はい」
「……僕のもとで、僕の子供を……産んでくれないかな……」
ジェイデンは何も言わなかった。僕は少し不安になりながらも、彼の返答を待つ。しばらくして、彼は僕の背中へと腕を回してきた。
「はい……」
「……ありがとう、結婚しよう、ジェイデン」
「……っは、い」
彼の声は震えていた。僕は彼のことをより一層強く抱き締める。それからしばらくの間、彼は静かに涙を流し続けていた。
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