アデルの子

新子珠子

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第三章 明日へ

79. 望み**

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「ふっ……んぅ……」

 ジェイデンは亀頭を舐めながら、ゆっくりと僕のものを口の中に含んでいく。

「っ、ちゅ……はぁ……っぅ……」
 
 唾液を絡ませながら喉の奥まで飲み込み、舌で裏筋やカリ首をなぞりながらピストン運動を繰り返す。その顔は熱に侵されていて、すっかり蕩けきっていた。
 
「……気持ちいいよ、上手だね」

 褒めると彼は嬉しそうに目を細めるから、僕もつい彼の頭に手を伸ばして撫でてしまう。ジェイデンはそれに嫌がる素振りを見せず、むしろもっとと強請るように腰を動かしていた。
 僕にすり寄る様に強請る姿は、どこか禁欲的にも見えるいつもの彼からは想像できないほど淫靡だった。
 
「んっ……はぁ……んむっ……」
 
 ジュポジュポという水音を立てながら一心不乱に奉仕するジェイデンの姿はとても扇情的だ。僕は快感に耐えながら、もう一度彼の頬を撫でた。

「……そろそろ、入れたいな」

 耳元で囁くと、ジェイデンの身体が小さく震える。

「んっ……ん……ティト様……」

 名残惜しそうに口から離すと、ジェイデンは少し恥ずかしそうに僕の膝の上に跨った。そして自身の後孔に手を伸ばすと、指先で入り口を広げるようにしながら僕のものの先端を押し当てる。

「……ゆっくり、ね」
「んっ……はい……っ」

 どこか焦れた様子のジェイデンが、言いつけを守ってゆっくりと挿入していく。先端が入る瞬間、彼は小さく声を上げた。
 
「っ……!ああ……っ」

 そのまま一気に奥まで入れてしまいたい衝動を抑えるように、彼は悶えながら徐々に埋め込んでいく。やがて根元近くまで入ると、ジェイデンは大きく息を吐いた。
 
「っ、入ったね」
「はい……っ」
 
 稽古をする度にこうして受け入れる様になったジェイデンのそこは、すっかり僕の形を覚えはじめていた。
 剣の稽古や村の手伝いをした後、村屋敷で彼とセックスに耽る。そんな日々を過ごしていくうちに、僕らの関係はすっかり主従の関係を超えてしまっていた。
 
「動ける?」
「はいっ……うっ、ん……あ……」
 
 最初はぎこちなかった動きも、今ではスムーズだ。僕の上で一生懸命動く彼が愛おしくなる。

「っ、はぁ……んっ……きもちぃ……です……」

 僕の上で乱れるジェイデンはとても綺麗だ。汗ばんだ肌に鍛え上げられた肉体、それがまた一層彼を美しく見せる。
 
「んっ、んっ、あっ……」

 だんだん激しくなる律動に合わせてベッドが軋む音が響く。
 
「あっ、あっ……!っ……っ!」

 前立腺に当たるのか、ジェイデンは甘い声で悶えていた。その様子があまりにも艶っぽくて、思わず下から突き上げた。すると面白いくらいに彼の体が跳ね上がる。
 
「んっ!あぁ……っ!っ!」

 その刺激から逃れようと身を捩るが、それは余計に結合を深めてしまうだけだった。

「っ……!だめっ……!ああ……っ――っ!」

 泣きそうな顔で訴えるジェイデンを無視して何度もそこを突き上げると、ジェイデンはすぐに絶頂を迎えた。しかしそれでも構わず責め続けると、ジェイデンは涙目になりながらも必死に僕にしがみつく。
 
「ひっ……!あっ……!待ってくださ……っ!イったばかりで……!」

 彼はいやいやと言うように首を振るが、その表情は明らかに悦んでいた。彼の逞しい腰を掴み、思う様突き上げる。彼はこうやって無理に攻め立てられるのが好きなようだった。
 
「っごめんね」

 そう言って思い切り突いてあげると、彼は何度か大きく震え、声も上げずに再び達した。同時に内壁が強く収縮して、僕は中に精液を流し込む。

「っ……!んぅ――……っ!」

 ジェイデンはそれを受け止めると、ぐったりとした様子で僕の胸板に倒れ込んだ。荒く呼吸を繰り返す彼の頭を優しく撫でる。

「……大丈夫?無理させちゃったね」
「……いえ……」

 ジェイデンはまだ蕩けたような瞳でこちらを見つめていた。

「すごく……良かったです……」
「……うん、僕もだよ」
 
 まだ繋がったままの状態で、キスを交わす。舌を絡め合いながら、互いの体温を感じ合うこの時間はとても気持ちが良い。
 しばらくそうしていると、やがてジェイデンが何か言いづらそうにもじもじとしはじめた。
 
「どうしたの?」
「そろそろ、抜いても良いですか……?」
「ん?」
「このままだと……もっとしたくなってしまいます……」

 それは困る、と言うように眉を下げるジェイデンに思わず笑ってしまった。
 
「そうだね、じゃあそろそろ抜こうか」

 ずるりと引き抜くと、ジェイデンの後孔からは僕の出したものが溢れ出してくる。

「っ……ん!」

 その感覚に感じてしまったらしいジェイデンが再び甘い声を出す。僕はもう一度中に押し込みたい衝動を必死に抑えた。

「んっ、んっ……」

 ジェイデンは小さく喘ぎながらゆっくりとそれを抜き出すと、名残惜しげに僕の方を見ていた。

「そんな顔をしないで」
「……っ、すみません」
「また、しよう」
「っ……はい」
 
 それから僕達は湯を浴びて、身支度を整えてから村屋敷を出た。互いに馬に乗り、散策する様にのんびりと丘屋敷へ向かう。

「ジェイデンは……」
「はい」
「……僕の……妻になりたい?」

 卑怯な聞き方だった。自身の想いは告げる事はせず、相手の気持ちだけ確認する様な言葉。ひょっとすると僕はジェイデンの言葉を先に知りたくて、こんな聞き方をしてしまったのかもしれない。
 
「…………私には……今、貴方とこうしているだけで……これ以上望んだら、バチが当たってしまいます」

 そう言って微笑む彼の表情を見て、胸が締め付けられるような思いになる。
 僕は結局、公爵から言われた言葉に結論を出さないまま、ジェイデンと身体を重ねている。それでも、何故まだ僕を信じられるのだろう。
 僕は彼を手放したくないと思った。もし彼が他の誰かのものになってしまったらと思うと耐えられないとも思う。そして何より、彼に触れていたいという欲望を抑えられなかったのだ。
 僕はきっともう、彼に溺れてしまっているのだと思う。僕は彼の事が好きなのだ。
 それは紛れもなく、恋愛感情として。

 きっと僕の想いを告げれば、彼は答えてくれる。そんな確信はあっても、それでも、今の関係を変える事が良い事なのか、僕にはまだ分からなかった。ジェイデンから護衛の仕事を奪い、妻にする事は、果たして本当に良い事なのか。
 今は――もう少しだけ。もう少しだけ、この関係でいたい。僕は中途半端で、どうしようもなく、そんな風に願っていた。
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