アデルの子

新子珠子

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第一章 静かな目覚め

44. 不義理

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 熱に浮かされた様だった。

 ふう、と熱を孕んだ息を吐くと、くちゅ、と水音が響く。ほとんど自分で触れた事などなかったそこを辿々しく慰めても、とても登りつめることはできず、諦めて同時に前にも触れる。

 こんな浅ましい姿を誰かに見られでもしたら本当に死にたくなる。それでも追い求める手を止められなかった。

 はあ、はあ、とケモノの様に息が上がっていた。
 そして、何度も何度もあの時の光景を、香りを、感触を、思い出していた。

「っ――――…」

 切なくて堪らず、彼の名前を口ずさむ。

 若々しく真っ直ぐでどこまでも穏やかな、彼。
 そんな彼に対してなんて浅ましく卑しい事をしてしまっているのだろう。あのお方の美しく真っ直ぐな心根を知っているのに、これは間違いなくそれを踏み躙る様な行いだった。
 快感へ登りつめるほど、どろりとした罪悪感が腹の底に溜まっていく。



「――――………っ…――――っ……」

 それでも彼の名前を呼ぶ事を止めらなかった。だめだと思っても心が必死に彼に縋っていた。

 自然と涙が頬を伝い、ぽたりとシーツに落ちる。


「……っ―――様…」

 罪悪感が深まる一方なのに、涙が落ちれば落ちるほど彼の名前を呼んでしまっていた。





――――――――――――――――――



 体調が復調し、教会で成人の儀礼を終えると屋敷には僕の成人の祝いの品や手紙がひっきりなしに届くようになった。そう言った品々の処理や婚姻を含めた様々な儀礼の準備をどう進めていくべきか、確認することがたくさんあり、屋敷はどことなくバタバタとした雰囲気に包まれていた。

「テディ、ここの手紙は目を通した。返事を自分で書きたい方を書き留めたからアズレトに渡して貰える?」
「はい、承知いたしました。お預かりいたします。」

 僕が少し掠れた声でそう言うと、30代後半の穏やかな侍従が微笑んでリストを受け取った。

 テディは比較的この屋敷の使用人の中では若いほうだが、レヴィルが物心がついた時にはもうこの屋敷で働いていたと言うくらい長く勤めてくれている使用人の1人だ。今はこの屋敷にはいないが、タウンハウスを守ってくれているクローデル家の執事の息子でもある。こざっぱりと整えられたミルクティー色の髪は母親譲りだ。

 僕は成人を機にテディに従者になってもらうことを決めた。このまま従者を付けずに活動する事は成人貴族として体裁的にも護身的にもあまり良くなく、ついリノが僕の従者のような仕事をしてしまうのも、そろそろ辞めた方がいいのではという話になったのだった。
 リノは日々の僕の服装を決められなくなる事をとても残念がったが、僕が従者にテディを選んだ事を素直に喜んでくれた。この機会にリノ自身も、よく従者時代に行動を共にしていた従僕を自身の従者にする事に決め、使用人たちのリズムも変わり始めていた。



 テディはリストを持って部屋を出てると、すぐにまた戻ってきた。おそらく別の使用人にリストを預けたのだろう。彼の手にはリストと引き換えるように僕の上着が準備されていた。

「ティト様、そろそろ出発いたしましょうか。」

 僕はベストの内ポケットからセレダの懐中時計を取り出す。たしかにそろそろ出かける時刻だった。

「ああ、そうだね。」

 僕はそっと懐中時計を内ポケットにしまう。テディは気にするように懐中時計を目で追っていた。

「チェーンのご用意をしなくても本当によろしいのですか?」
「うん、とりあえずはこれで、預かっているものだしね。」
「承知いたしました。ただ…留め具がないと落としやすいので、そちらだけは近いうちにご用意させてください。内側で留めてしまえば目立ちませんから。」
「分かった、頼むよ。」
「承知いたしました。」

 懐中時計はチェーンをつけてボタンホールなどに留めつけて見せるのがこの世界ではスタンダードだが、おそらくセレダはファッションとして見せる気はなかったのだろう。時計には丈夫な革紐が取り付けられているだけだった。勝手に付け替えるのは気が引けるので、このまま持っているつもりだった。

 テディは頷くと、そっと上着を着るように促した。ニット素材のグレージャケットに濃いグレーのベストとネクタイ、ベージュのスラックスを合わせていて、とても秋らしい服装だ。抜け感があって大人っぽい雰囲気に感じる。テディはセンスが良いから毎日が楽しみだと、リノが言っていたのが何となく分かる気がした。

 テディは慣れた手つきでブラシで細かなチリを払う。

「チーフはいかがなさいます?」
「今日はいいや、ジェイデンに会うだけだから。」
「畏まりました、では参りましょう。」

 僕は頷き、自室を出た。



 今日はジェイデンと村屋敷で話をする約束になっていた。
 体調自体は数日前から全快していたが思った以上に成人の儀礼等でバタバタしてしまい、ようやく今日になって時間が作れたのだった。
 結局、加護の見学から10日以上間が空いてしまっていた。

 僕はテディを連れ立ってジェイデンの待つ村屋敷に向かった。




 村屋敷に到着するとジェイデン、爺、ヒューゴが玄関で待ってくれていた。事前に訪問する事を伝えていたのでスムーズにサロンに通してくれる。爺とテディは丁寧にお茶を準備してくれると静かに礼をした。

「では私どもは別の間に控えておりますので何かございましたらお呼びください。」
「ありがとう。」

 あらかじめ何の話をするのか分かっているからか、使用人達はサロンには留まらず早々に退室をした。


 僕はそこでようやく落ち着いてジェイデンの顔を見た。少し疲れた様な印象を受けるが、穏やかな雰囲気が変わっていない事に僕は安心していた。

「体調はどう?」
「はい、問題ありません。ティト様は高熱が出たとお伺いしました、体調はいかがですか。」
「もうすっかり良くなったよ。本当は数日前に良くなっていたんだ。」
「そうでしたか…安心いたしました。……ただ…まだ喉の調子は良くなさそうですね。」
「ああ…」

 心配そうにそう言ったジェイデンに微笑む。確かに僕の声は掠れているし、時々調子を外している。

「これは体調不良じゃない、声変わりが始まったんだ。」
「声変わり…ですか…」

 ジェイデンは少し驚いたように僕を見た後、静かに頷いた。

「もう大人になられるのですね…。」
「…まだ心が追いついていないけど…その様だ。」

 僕が淡く微笑むと、ジェイデンも安心した様に表情を和らげる。そしてゆっくりと僕に礼をした。

「ご成人おめでとうございます。」
「…ありがとう。」




 僕たちは一度紅茶を口に含んだ。僕はカップを置いた後、居住まいを正してジェイデンを見つめる。

「話をする前に1度だけ謝らせてほしい。」
「…はい、私もそうさせてください。」

 僕はジェイデンとの約束を取り付ける際に、1つだけ言付けを頼んでいた。それは今回の見学の事で”謝るのはお互いに1回だけ”という事だった。お互い自分を責めて謝るばかりでは、前向きな話し合いがきっとできないと思い、事前にそうお願いをしていた。

「…せっかくジェイデンが僕の気持を汲んで、加護を見学を受け入れてくれたのに、僕が勝手な行動をとったせいで加護自体を混乱させてしまった。それに結果的に無理やりフェロモンも嗅がせてしまって…本当に申し訳なかった…ごめんなさい。」
「私も…ティト様が無理をするなと忠告してくださったのに、聞き入れずあのような事態に引き起こしてしまいました。…気付かなかったとはいえ、貴方を酩酊状態にしてしまった…本当に申し訳ありません。」

 僕たちは2人で頭を下げ合った。ゆっくり頭を起こすとジェイデンも同じように頭を起こす。目線が合うと、なんだか可笑しくてお互いに小さく笑い合った。

「これでもう終わりにしよう。僕はジェイデンの謝罪を受け入れる。ジェイデンも僕の謝罪を受け入れてくれる?」
「はい、もちろんです。」

 ジェイデンは静かに頷いた。

「ありがとう。」

 僕も頷くと僕たちはもう一度微笑みあった。





「今日は先日の事についての整理と、これからの事について話をしたいと思っているんだ。」
「はい。」

 ジェイデンも目的は分かっていたのだろう。驚いた様子もなく静かに頷いた。

「僕はあの加護の場でジェイデンのフェロモンを確かに感じた。ジェイデンも僕のフェロモンが分かったんだよね?」
「ええ、そうです。」
「今までそう言う事はなかった…んだよね。」
「はい、セレダから聞いたかもしれませんが……私はあの時、初めてアデルのフェロモンを感じました。驚いてしまいまして…気付かない内に私自身もいつのまにかフェロモンを出していました。
その感覚が…今まで自分で意識してフェロモンを出そうとした感覚とは全然違っていたんです。テストの際にティト様が私のフェロモンを感じられなかったのは…おそらく…私が今までフェロモンの出しているつもりで、出せていなかったのだと思います。」

 それは事前にセレダから聞いていた見解と同じだった。ジェイデンはフェロモンに触れる機会がなかったせいで、自身のフェロモンの出し方をおそらく掴めていなかった。それが僕のフェロモンに触れた事でコツを掴めたのではないか、とセレダからは伝えられていた。

「それは…もしかすると今まで試したアデルたちとも相性が合う可能性があるという事?」
「………いえ……今まで試した際には必ず相手にもフェロモンを出してもらっていました。でも感じられなかった。私がフェロモンを感じたのはティト様が初めてです。…おそらく…今まで試してもらった人たちとはやはり相性は合わないのだと思います。」
「そう…。」

 やはり彼とフェロモンが相性が合うのは僕だけらしい。鈍く頭を働かせながら頷いた。


「…こういう質問の仕方は卑怯かもしれないけど……今後どうしていくべきか考える為にジェイデンはどうしたいか…良ければ気持ちを教えて欲しいんだ。」

 僕がそう言うとジェイデンは少しだけ困った顔をして、しばらく押し黙った。

 彼は口が重い方だ。急かすつもりはなかった。彼が口を開くまで静かに待つ。
 ジェイデンはそれなりに長い沈黙の後、ゆっくりと身動ぎをし、口を開いた。


「………私は…ドリス家の次男でしたので後継を産む役割を担うのだと言われて育ちました。…けれど結局、この十数年…子を宿すどころか……相性の合うアデルと出会う事すらできなかった。」

 ジェイデンは指を組み、静かにその指を見つめていた。

「…成人をしてからは身体的にも精神的にも本当に苦しかったですが、……何よりも、誰ともフェロモンが合わないと言う事実が…この世界には不要な存在なのだと言われている様で…誰からも認められていない様で……それがずっと苦しかったんです。」

 彼の口調はとても静かだったが、その言葉には彼の苦しみが滲み出ている様だった。数えきれないほどのアデルと引き合い、その度に落胆し、それでも家を繋ぐ為に苦痛に耐えて加護を受ける。先の見えない中、長い時間をその様に生きてきた彼の苦しみは、きっと僕の想像を絶するものだろう。


 ジェイデンはいつの間にか僕を真っ直ぐに見ていた。


「……でも……ティト様が気付いてくださった。

初めて世界に認められた様でした。……この世界に居ても良いのかもしれないと思えた。…もうそれだけで充分です。あの出来事だけで…私はこれからも自分の生を全うしようと思えた。もうそれだけで……ティト様からは充分なものをいただきました。」

 僕は彼から視線を逸らせず、ただ彼が紡ぐ言葉に耳を澄ます事しか出来なかった。

「…ですから、私の気持ちを考えていただく必要はありません。長い月日の中で、私はとっくに家から見放され、ドリス家には養子が迎えられています。もう私は子を宿す事を誰からも期待されてはいない。…だから私の意志ではなく、ティト様のご意志に従います。フェロモンが効いてしまう護衛はもう不要だと言うならば静かに立ち去ります。貴方を恨む事など決してありません。」

ー子を宿す事を誰からも期待されていなくても、ジェイデンにはジェイデンの気持ちを尊重する権利がある。
ー家の意向ではなく、ジェイデンの気持ちが知りたい。
ーもし未練がないと言うならば、何故ジェイデンは未だに加護を受けているのか。


 色々な言葉が浮かんだ。

 本当は正直にその言葉たちをかけてあげるべきなのだろう。…けれど口には出せなかった。僕の心はエバとしての彼の気持ちを尊重するのとは対極の場所にあった。

「ジェイデンと相性の合うアデルは僕だけなのかもしれない。……それならば…本当は…子を宿す事など関係なく、ジェイデンが幸せを得られる様に僕は全力を尽くすべきだし、貴方がそう言う気持ちではないのであれば、貴方に振り向いてもらえる様に心を尽くして努力をすべきなんだろうと思う。それは今の時代のアデルの義務でもある。」

 義務と言う言葉にジェイデンは僅かに身を硬くした。

「でも…僕は……人間としてもアデルとしても未熟だ。今回の事で何も出来ない自分の愚かさを知った。今の僕はアデルとしての責任を果たすだけの力がない。……それはきっと罪だ。」

 僕はしっかりとジェイデンを見据え、言葉を紡ぐ。

「僕は…ちゃんと自分の足で立つ事が出来る人物になりたい。人間として成長する為に…教師として…護衛として、ジェイデンに側にいて欲しい。1人の人間としてジェイデンに力を貸して欲しい。

だから……今はジェイデンをエバとして見る事はできない。これは……本当に僕のワガママだ。ジェイデンの気持ちを聞く素振りを見せておきながら、僕がしようとする選択はジェイデンの事を考えてはいない。……本当にごめん。」

 僕は深く頭を下げた。

 ジェイデンの戸惑う気配が頭上から感じられる。ややあって、ようやくジェイデンは口を開いた。

「……いいえ……いいえ…とんでもありません。…何よりも…ありがたいお言葉です。それで良いのです。ティト様は何も間違えてはいらっしゃいません。」

 ジェイデンはゆっくりとそう答え、頭を下げた。

「喜んでお受けします。」
「……本当にごめん。」
「いいえ…謝る必要も、申し訳なく思う必要も、ありませんよ。」

 僕は自分を納得させる様に何度か頷く。
 それでも申し訳ないという気持ちが次々に湧いてきていて、僕は罪悪感でいっぱいになっていた。






 ジェイデンは苦い顔をしている僕をしばらく見つめていたが、何かを思いついたように顔を上げると、ゆっくりと口を開いた。


「…最後にもう一度だけ…エバとしての私の願いを聞き入れてはいただけませんか。それで今回の事はお互いにケジメを付けましょう。」
「ケジメ…?」
「ええ、最後に貴方のフェロモンの匂いをもう一度嗅がせていただけませんか。」
「…え?」
「……すみません、ご迷惑な事は分かっています。今後その様な事は言わないとお約束いたします。今日ティト様のフェロモンを嗅いで…それで終わりにします。私は、護衛と教師として貴方の傍で存在し続けると誓います。」

 彼の言葉は縋る訳でもなく、とても穏やかな調子だった。
 彼自身がそうしたいというよりは、これで僕にケジメを付けさせようとしてくれている。そんな気がした。




 僕はしばらく呆然とするように、その言葉を咀嚼した。そして覚悟を決めて、ゆっくりと立ち上がる。

「…隣に座っても?」

 思ったよりも静かな声が出た。ジェイデンは僕を見上げると、少しだけ表情を和らげた。

「…はい。」

 僕はジェイデンの隣に座り、少しだけ彼の方を向く。ジェイデンも同じように身体を身じろぎさせた。彼の腕をゆっくりと引っ張り、お互いの首筋に顔を近づける。

 僕は少しずつフェロモンを開放させた。

 ジェイデンはそっと僕の首筋に顔を寄せ、匂いを嗅いでいるようだった。以前よりも穏やかな開放だからか、戸惑うような素振りもなく、彼からはフェロモンの匂いもしなかった。

「匂いする?」
「はい…します。優しい匂い……ですね。」
「ふふ、ありがとう。…ジェイデンのフェロモンの匂いは感じない…かな。」
「…はい、今は堰き止めているような感覚があります。」
「…そう、少しずつ開放できる?」

 ジェイデンは戸惑った様に息を詰まらせた。

「……いや…前回ご迷惑をおかけしてしまいましたので…これ以上…ご迷惑をおかけするわけにはいきません。」
「大丈夫だよ、制御する感覚も覚えた方がいい。1回しかチャンスがなくて申し訳ないけど…上手くいかなくても僕が酩酊するだけだ。」

 彼が最後に僕の匂いを嗅いで、終わりにしようと思ってくれているように、僕も彼の匂いを覚えておくべきだと思った。
 唯一彼と相性が合うのに、彼の手を取らない事を決めた最低のアデルだからこそ、きっと、そうすべきだと思った。



 ジェイデンは僕の意図を汲んでくれたのか、今まで見たことがないような困った顔をしていた。

「………制御できなかったら…突き飛ばしてください…」
「うん…」

 彼は自信がなさそうに唇を震わせてそう言った。

 彼はしばらくそのまま身を硬くしていたが、覚悟を決めた様にふう、と息を吐くと、ゆっくりと身体の力を抜いた。
 しばらくすると優しくシダーウッドの香りが漂い始める。僕は彼の首元ですん、と匂いを嗅ぐ。


「…ジェイデンの香りは落ち着いた香りだね。」
「……そう…ですか。」

 彼の香りは森林の中にいるような、深く清々しい香りだった。心を穏やかにしてくれるような彼らしい香りだ。けれどそれは同時にぐらぐらと腹の底から僕の欲望を駆り立てるような匂いでもあった。

 耳元で喋ったせいか、ジェイデンは僅かに身体を震わせた。その拍子に彼の匂いが濃くなる。僕はそっと彼の肩を持った。

「………もう少しゆっくり匂いを出せる?」
「……はい…」

 ジェイデンは小さく頷いたが、縋らないと辛いのか、そっと僕のジャケットの端を握った。きっと僕に気付かれたくないのだろう、力は入っていなかった。何となくその仕草に自分の中の衝動が突き動かされるのが分かるが、静かに息を吐いてやり過ごす。

 様子を伺うように少し身体を引いて顔を覗き込むと、彼は戸惑うように瞳を伏せていた。



 この人の瞳は何色だっただろうか。


 そう思うと自然と彼の頬に手を寄せていた。
 ふ、と視線が上がり、瞳に光が差す。黒目がかった彼の瞳は、光を湛えると翡翠のように深緑に光っていた。
 僕の不意の行動にコントロールできなかったのか、シダーウッドの香りが濃厚に漂う。





――ああ、綺麗だ。




 そう思うと、もう駄目だった。







 僕は薄く開かれた彼の唇に、己の唇を乗せていた。

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