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【4】ドレスの脱がせ方

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「……っふ」
 ベッドの上で、互いの舌を吸い合う。静かな部屋の中で、唾液の絡む湿った音と吐息だけがやけに響く。それだけで下肢のものは熱を帯びてゆるゆると昂ぶった。
 欲に駆られて服越しにクレアの身体をまさぐったが、布のたっぷりとしたドレスは素肌に触れるまでもどかしい。触れ慣れない衣服に、別の相手を抱いているようで落ち着かない気分にもなる。
「どうした」
「……脱がせ方が分からない」
 上気した頬のクレアはしたり顔で、ドレスの襟元から胸元までをするすると開いて見せた。はしたなく脱げかけたドレスの下から、滑らかで薄い胸と色付いた乳頭が俺の目の前に突き出される。
「ほら、好きに触るといい」
 誘導されているようで癪だが、肌に手を這わせるとしっとりと吸い付いて心地よい。突起を指先で摘まんでくにくにと揉み弄ると、豆粒のようなそれは指の間で堅くしこった。
「んっ……ふふっ」
 くすぐったいのか、クレアは小さく身を震わせる。おれは乳首に舌を這わせた。ちゅうちゅうと音を立てるように乳首を何度も吸い上げてやると、その度に小さく喘いで身を捩る。
「あ、はっ、こ、んなに、僕の夫は、赤ん坊みたいだったかな?」
 楽しげにそう言うと、クレアはおれの頭を自分の胸に押しつけるようにぎゅっと抱きしめた。その拍子に、コラリーの長い髪のかつらがずれ落ちる。いつものクレアの髪型になったことで、コラリーではなくクレアがドレスを着ているかのようだ。
「……クレアだ」
 元々見知っていた姿に近づいたせいか、名を呼ぶ声に自分でも意外なほど親愛の色が乗った。
「なんだい、その声は。そうだよ」
「うん。……クレア」
「そんな声であんまり名前を呼ぶな。何だか……いつもと違う」
 恥じらうように目を逸らされてしまい、見慣れない姿に思わず顔を見つめてしまう。すると今度は照れ隠しにか、ドレス越しの膝で小突かれた。
「おい君、続きはどうした」
 言われるままにおれはクレアの足首に触れ、脚に沿ってドレスのスカートの中へ手を滑り込ませた。おれの手で裾が捲れ上がり、クレアの太腿のあたりまでが剥き出しになる。
 その手が足の付け根のあたりまでに到達すると、布越しの膨らみに触れた。下着は女性用ではないようだ。
 そのまま奥まで手を伸ばし、その後ろの窪みへと指を触れさせる。柔らかく押し込むと、下着越しに窄まりがピクンと反応するのが分かった。
「あ、ま、待て、待て」
 急な制止が入り、おれはつい拗ねた顔を向けた。続きをしろと行ったのは自分のくせに。
「そんな顔しても駄目だ! 忘れてたが、このままじゃドレスが汚れる。君も脱げ」
 着て帰るものがなくなる、とクレアはおれを押し返して身を起こす。もどかしげにドレスを脱ぐクレアに急かされるように、おれも服を脱いで裸になった。
「ジャン、そこに仰向けになるんだ」
 ベッドに寝かされると、いつの間にか潤滑油の小瓶を手にしていたクレアが膝立ちでおれに跨がった。彼の付け根のものは、キスをして胸を弄られただけだというのに軽く立ち上がりかけている。とはいえこちらも似たようなものだ。
「焦らしたいところだけど、こっちもあまり待てないからな……」
 クレアは潤滑油を小瓶から掌に垂らすと、片手を自らの後ろに、もう片方の手をおれの陰茎に導いた。
 無防備な部分へのぬるりとした刺激は快とも不快ともつかず、おれの膝がびくんと震える。
「ははっ、君も元気なようだな?」
 おれ自身の判断よりもその部分は素直だったようで、ぬるついた手で弄ばれる度、先ほどより明らかに硬度と角度を増した。更に目の前ではクレアが自らの後孔をくちくちと慣らす姿を見せつけられ、おれの欲は煽られるばかりだった。
「なあ、もう……」
 おれが手を伸ばして脚に触れると、クレアはにんまりとこちらを見下ろした。その頬は期待に染まり、目には隠しようもない情欲の色が宿っている。
「入れたいか? ……僕もだ」
 腰が沈められ、濡れたおれの先端がつぷりと飲み込まれる。クレアとの行為は初めてではない。それだけにこの先の快楽への期待は否応もなく高まり、おれの腰骨の辺りはすでにびりびりと痺れ始めていた。
「ク、クレアッ……」
 クレアが腰を落としきると、おれの性器は熱のある柔肉にぬるりと包み込まれた。
「あっ、はあっ……、君のこれ、この前より大きくなってないか……?」
「わ、分からない」
 分からないが、ここから出たくないということだけは分かる。温かく心地よいそこは、いつまでも受け入れていてくれそうな気さえする。
 クレアはおれの胸に手をつき、腰を揺らし始めた。中の肉壁がやわやわとおれのものを擦り上げ、気まぐれな動きで緩急を付けて愛撫する。
「……っ! あっ、そんなのっ! っく……!」
「んぅっ♥ あっ♥ 君の、気持ちいいよっ♥ ああっ♥」
 とろとろと甘やかすような刺激に、入れたばかりのはずのおれのものは早々に熱を放ちそうになる。
「ま、待て! クレア、少し待ってくれ!」
「出したいのか……? いいよ、ジャン」
 そう言って蕩けそうな顔で、自らのへその下辺りをトントンと指で示す。
「別に我慢する必要はないんだ。何度でも好きなだけ注げば良い。──僕の中に」
 囁かれた途端、おれの腹の底に灼熱のような情欲がカッと沸き立つ。
「本当にいいのか!?」
 クレアの腰を掴み、ぐっと突き上げる。
「ひあぁっ♥」
 おれの上にある身体が、跳ねるように反らされた。
「んっ♥ いい、上手だっ♥」
 クレアの内側が、おれのものをきゅうきゅうと締め付ける。自分のよいところへと導くように、媚肉が絡みつく。突き上げる度に、腰を揺らす度に、熱が高まる。互いが混ざり合う。
「クレア……好きだ、クレア」
「ジャン、君、本当にかわいいな……!」
 クレアが愛おしげにおれの頬を撫でた。電流のような快感が脳髄を走る。
「──あ、悪いっ、で、出るっ!」
 おれはクレアの奥に勢いよく吐精した。自分でも驚くほど長い射精で、精子が執拗に注ぎ込まれる。精液は彼の中を満たし、入りきらなかった分は接合部からとろりと溢れた。
「随分たっぷりと出してくれたじゃないか……♥」
 そう言ってクレアは、繋がった場所から卑猥な水音を立てて更に腰を揺らす。そうして彼もほどなく絶頂を迎えた。
「んぅっ♥ ~~~ッ♥♥♥」
 声にならない声を上げると、性器に直接触れてもいないのに高く精を放つ。白濁が胸にかかり、飛沫は俺の胸元へも散った。
 達して無防備な姿をさらす汗ばんだ裸の姿を見上げて、おれはいつの間にかこの男に惚れてしまったんだな、と今更のように思った。
「ふぅ……。……ジャン」
 クレアはおれに覆い被さるように身を寄せると、額に軽く口づけた。触れ合った肌が汗で貼り付く。
「あのドレス、やっぱりあの時に脱いでおいて正解だっただろう?」
 乾きかけの唾液と汗と白濁にまみれた互いの姿を見て、おれも納得する。
 着たまま横になったせいで多少皺にはなっているだろうが、脱がずにいたらあの服がどんな惨状になっていたか想像するとおそろしい。
「貴婦人を抱くのは大変なんだな……」
「貴婦人は脱がせなくてもいいんだ。御婦人たちは時々着たままでしてる」
 おれの呟きに、クレアはこともなげに答えた。
「そんなことしたら、ドレスが汚れるんじゃないのか」
「多少はね。でも今回みたいなことの心配なら大丈夫だよ。……少なくとも御婦人方は射精をしないからね」
 優しく頭を撫でられ、おれは気恥ずかしさに顔を覆った。
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