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銭ゲバ事件簿・3
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「へえ。よくできているのね」
ニコラは嘆息する。銭の匂いに敏感なニコラでも、手に取ってみないと、本物の黒魔石と見分けすらつかないほどだ。ニコラのような銭ゲバですら、そうなのだ。素人の若い娘さんなど、簡単に偽物をつかまされたのだろう。
「綺麗だな。このキラキラが、緑銀石だなんておっかない話だが」
ジャンも、偽物を光で透かしてみたり、関心しきりだ。
「流石にオニキスには美しさは及ばないまでも、若い娘の流行り物としては、ちょうど良いですね」
オニキスの持ち主のこのボンボンも、納得。
3人は、安づくりの首飾りに嵌っている黒いガラスの石に夢中だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ニコラのドレス仕立てもほどほどに、ニコラはジャンにおねだりして、騎士団の犯罪証拠品を扱う部署に連れてってもらったのだ。
ドレスの仕立て中だというのにアナベル女史に失礼極まりない上、呼んでくれたメリッサにも大変失礼な話だというのに、正義感の強い美少女が、悪質な犯罪を耳にしていても立ってもいられないのだと綺麗に勘違いしてくれたらしい。
やはり見た目が清廉だと非常に得だ。
なんだか二人して太った猫と一緒に涙目でハンカチを振って見送られてしまった。
ジャンはというと、完全に職権の濫用にあたるこの婚約者のおねだりに強く突っぱねるべき立場だというのに、「いいよ、ニコラちゃんは好奇心が旺盛だね」と、内部で簡単に通信魔法を飛ばして特別許可をとってきてしまう。
おそらくアカンやつだろう。
誰か厳しくニコラを躾けるべきだろうに、誰もその必要性は感じていないらしい。
犯罪証拠品を扱う部署は、王宮の地下にある。
拷問室だの牢だのがひしめくそのエリアは、昼なお暗く、若い娘が好き好んで出歩く様な場所ではないが、何せニコラは魔女の育ち。
(このジメジメした感じ!罪人の呻き声!懐かしいわ。魔の森を思い出すわね。みんな元気かしら)
犯罪者を一時的に拘束している牢の区画の奥が、犯罪証拠品を保管する部署。
犯罪者達への拷問などの呻き声が精神によろしくないので、聴覚に問題のある人員が積極的に採用される。職員によると、この部署は割といい給料だというので、ニコラの聴覚は絶好調だというのだが、とりあえず採用要領の冊子は先ほどカバンに入れておいた。
ニコラと、ジャン、そして、ついでに他の証拠品に用事のあったフォレストが、証拠品保管室に足を踏み入れた。
証拠品室には、多岐にわたるガラクタにしか見えない様々なものが、丁寧に保管されている。
ジャンであれば、魔力の残骸さえ残っていれば、これらの証拠品から、犯罪捜査の鍵となる、魔術の展開者の展開時の思考が読み取れるのだ。
ニコラは文句たらたらであるが、ジャンが多忙である理由もよく理解している。
「フォレスト、持ってきてくれたかい?」
「ええ、隊長、これがオニキス、こちらが黒魔石です」
フォレストは胸のポケットから、上質な絹で包まれた、二つの首飾りを取り出した。
この絹だけでも銀貨の価値だ。さすがはボンボン。
「こちらが我が家に代々伝わるオニキス。300年もの。こちらが、姉が昨年入手した黒魔石です。」
なるほどフォレストのお姉様は社交界の花的なポジションらしく、流行り物は確実に手に入れている様子。
石の底が、キラキラと緑や金に光り、美しい。
「それで、こちらが偽物の黒魔石。」
フォレストは、証拠品の箱の一つの中から、首飾りを一つ取り出して、ニコラの目の前においた。
ニコラは嘆息する。銭の匂いに敏感なニコラでも、手に取ってみないと、本物の黒魔石と見分けすらつかないほどだ。ニコラのような銭ゲバですら、そうなのだ。素人の若い娘さんなど、簡単に偽物をつかまされたのだろう。
「綺麗だな。このキラキラが、緑銀石だなんておっかない話だが」
ジャンも、偽物を光で透かしてみたり、関心しきりだ。
「流石にオニキスには美しさは及ばないまでも、若い娘の流行り物としては、ちょうど良いですね」
オニキスの持ち主のこのボンボンも、納得。
3人は、安づくりの首飾りに嵌っている黒いガラスの石に夢中だ。
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ニコラのドレス仕立てもほどほどに、ニコラはジャンにおねだりして、騎士団の犯罪証拠品を扱う部署に連れてってもらったのだ。
ドレスの仕立て中だというのにアナベル女史に失礼極まりない上、呼んでくれたメリッサにも大変失礼な話だというのに、正義感の強い美少女が、悪質な犯罪を耳にしていても立ってもいられないのだと綺麗に勘違いしてくれたらしい。
やはり見た目が清廉だと非常に得だ。
なんだか二人して太った猫と一緒に涙目でハンカチを振って見送られてしまった。
ジャンはというと、完全に職権の濫用にあたるこの婚約者のおねだりに強く突っぱねるべき立場だというのに、「いいよ、ニコラちゃんは好奇心が旺盛だね」と、内部で簡単に通信魔法を飛ばして特別許可をとってきてしまう。
おそらくアカンやつだろう。
誰か厳しくニコラを躾けるべきだろうに、誰もその必要性は感じていないらしい。
犯罪証拠品を扱う部署は、王宮の地下にある。
拷問室だの牢だのがひしめくそのエリアは、昼なお暗く、若い娘が好き好んで出歩く様な場所ではないが、何せニコラは魔女の育ち。
(このジメジメした感じ!罪人の呻き声!懐かしいわ。魔の森を思い出すわね。みんな元気かしら)
犯罪者を一時的に拘束している牢の区画の奥が、犯罪証拠品を保管する部署。
犯罪者達への拷問などの呻き声が精神によろしくないので、聴覚に問題のある人員が積極的に採用される。職員によると、この部署は割といい給料だというので、ニコラの聴覚は絶好調だというのだが、とりあえず採用要領の冊子は先ほどカバンに入れておいた。
ニコラと、ジャン、そして、ついでに他の証拠品に用事のあったフォレストが、証拠品保管室に足を踏み入れた。
証拠品室には、多岐にわたるガラクタにしか見えない様々なものが、丁寧に保管されている。
ジャンであれば、魔力の残骸さえ残っていれば、これらの証拠品から、犯罪捜査の鍵となる、魔術の展開者の展開時の思考が読み取れるのだ。
ニコラは文句たらたらであるが、ジャンが多忙である理由もよく理解している。
「フォレスト、持ってきてくれたかい?」
「ええ、隊長、これがオニキス、こちらが黒魔石です」
フォレストは胸のポケットから、上質な絹で包まれた、二つの首飾りを取り出した。
この絹だけでも銀貨の価値だ。さすがはボンボン。
「こちらが我が家に代々伝わるオニキス。300年もの。こちらが、姉が昨年入手した黒魔石です。」
なるほどフォレストのお姉様は社交界の花的なポジションらしく、流行り物は確実に手に入れている様子。
石の底が、キラキラと緑や金に光り、美しい。
「それで、こちらが偽物の黒魔石。」
フォレストは、証拠品の箱の一つの中から、首飾りを一つ取り出して、ニコラの目の前においた。
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