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銭ゲバ事件簿1
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「そうか・・私は、道化だった訳だ・・伯爵家の財政を火の車にしてまで、体裁を整えていた私こそが、道化だったという訳なのだな・・」
小鳥は、乾いた笑いを止めることができない。
「道化になるために、私は私には過ぎた女神の様な美貌の女性を手放してしまい、かわいい子供は言葉を手放した・・私は、私はなんと愚かなのだろう・・」
(いや、だからレベッカさん結構普通だって・・)
ここにいる全員が心の中でツッコミを入れるが、そんな事は当事者に知ったこっちゃない。
今度はさめざめと、泣きくれる声。
「ベッキー、すまなかった。私のような愚か者が、君のような美しい女性を、妻として迎える事ができたというのに・・どうか、どうか私の元にに帰ってきてくれ!君の言うことを聞いて、君の幼馴染の忠告を聞いて、私たちの身の丈に合った、ふさわしい暮らしを送ろう・・」
レベッカさんも、小鳥も、みっともないくらいに泣きくれている。
バリバリと、いかにも昨日風呂に入っていなさそうな頭をかきむしって、キャスは胸元から、違法魔法陣を取り出した。
そして、レベッカさんにベンをヒョイ、と抱き付かせると、
一気に魔力を送って、二人を伯爵の元に、送り込んだのだ。
////////////////
「それで、あの伯爵、あれからどうなったんです?」
バリバリと、行儀悪く、スミス夫人からの差し入れの、うまそうなレモンパイに齧り付くのは、我らが銭ゲバ。
事件はつつがなく、解決した。
結局は事務局にすら報告しないような、小さな夫婦間の連絡ミス、として処理された。まかり間違えば貴族の子弟の誘拐事件として、王都を騒がせる大事件になりかねなかった事件だ。
王都には、いつも通りの日々が戻ってくる。
平和な、何にもない、静かな王都の魔法騎士団の、休憩時間。
「なんでも、二人は結局離婚調停を引き下げて、浮気相手に疑われた例の幼馴染の紹介の会計士を雇い入れて、きちんとした生活してるらしいよ。」
そもそも美意識の高い伯爵、以前に比べると慎ましい生活だが、見栄を張らずに、自分の美意識に正直に、それからレベッカさんの言う事をちゃんと聞いて、小洒落た、生活感のいい感じで溢れた生活をしているらしい。
そんな伯爵のライフスタイルは、肩の力の抜けた感じがうけているらしく、新興の小金持ちの平民たちから、憧れをうけているとか。無理して貴族相手に見え張らなくても、平民に格好つけていればいい事に気がついた伯爵、それなりに自尊心も満たされて、幸せにしているらしい。
ニコラも、なんだか緩い感じになった3人の姿絵が表紙になった、富裕層むけの雑誌を最近見たところだ。
ベンの手に、近頃はやりの子供用の緑色の飛行機のおもちゃが握られていたのが、とても微笑ましかった。
「キャス!あんたそれ3個目じゃない!ちょっと、私まだ2個目も食べてないんだけど!ずるい!」
「いいだろ、俺が持ってきた差し入れなんだから、俺が一番いっぱい食っても」
「貴族のくせに、女性に対するマナーがなってないわよ!そういう時は、女の子に一番多く食べさせるんでしょ?ねえ、ジャン様なんとか言ってよ!」
キャンキャンと、レモンパイを巡ってニコラとくだらない喧嘩してるのは、なんと、あのキャス。
事件の後、魔法騎士団を騒がせたことを、低身低頭で、スミス伯爵家、それからマッケンタイヤ伯爵家からの謝罪をうけたジャンは、
「お願いです、このどうしようもない子を救うと思って、ジャン様の下で鍛えてやってくださいませ」
とのスミス夫人にお願いされて、お人好しのジャンは断りきれなかったのだ。
(まあ、あの魔力の量、鍛えればなんとかなるかも・・・)
二人の人間を、一気に送り出すだけの魔力。
怠惰で使い物にならなそうに見えるが、これだけの魔力を、正確に、確実に操る能力があるのだ。
うまく導けば、大物になるかもしれない。うまく、導くことができれば、の話だが。
相変わらずパンツの後ろで手を拭っているらしい、なんだかチョコレートだかの跡のついたキャスのケツのシミを見て、ジャンはため息をついた。
その代わりと言ってはなんだが、とマシェント伯爵令嬢は、両家が後ろ盾となる。
貴族社会では、丸裸同然のニコラに、少しでも味方は多い方がいい。
それに、ニコラはジャンと婚約しているのだ。伯爵夫人としても、古く、そこそこ尊敬される両家の後ろ盾があるのとないとのでは、これからのニコラの伯爵夫人としての立ち位置に、違いがあるだろう。
そう言われて引き受けたはいいが、一応伯爵令嬢と、男爵であるニコラとキャスは、今の所低レベルなケンカばかりする、ケンカ仲間だ。
「ほらほら、ニコラちゃん、俺のをあげるからちょっと落ち着いて・・」
ジャンは別にニコラほど甘党ではないので、なんの惜しみもなく、自分の皿の上の乗ったレモンパイをニコラにやる。ジャンは、気持ちが優しい。
ニコラはすっかりと機嫌を直して、ジャン様大好き!とジャンの腕に絡みついて、べえ!とばかりにキャスに舌を出して、大きなパイに齧り付く。
「はは、ニコラちゃんクリームついてるよ。」
ジャンは一心不乱にパイにかぶりつくニコラが可愛くてしょうがない。
ニコラの顎についたクリームを拭ってやりながら、ご機嫌なニコラに、ああそうだ、と思い出して、
「ニコラちゃん、やっと次の半月の日に休みがとれたよ。一緒に肉を食べに行こう。」
小鳥は、乾いた笑いを止めることができない。
「道化になるために、私は私には過ぎた女神の様な美貌の女性を手放してしまい、かわいい子供は言葉を手放した・・私は、私はなんと愚かなのだろう・・」
(いや、だからレベッカさん結構普通だって・・)
ここにいる全員が心の中でツッコミを入れるが、そんな事は当事者に知ったこっちゃない。
今度はさめざめと、泣きくれる声。
「ベッキー、すまなかった。私のような愚か者が、君のような美しい女性を、妻として迎える事ができたというのに・・どうか、どうか私の元にに帰ってきてくれ!君の言うことを聞いて、君の幼馴染の忠告を聞いて、私たちの身の丈に合った、ふさわしい暮らしを送ろう・・」
レベッカさんも、小鳥も、みっともないくらいに泣きくれている。
バリバリと、いかにも昨日風呂に入っていなさそうな頭をかきむしって、キャスは胸元から、違法魔法陣を取り出した。
そして、レベッカさんにベンをヒョイ、と抱き付かせると、
一気に魔力を送って、二人を伯爵の元に、送り込んだのだ。
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「それで、あの伯爵、あれからどうなったんです?」
バリバリと、行儀悪く、スミス夫人からの差し入れの、うまそうなレモンパイに齧り付くのは、我らが銭ゲバ。
事件はつつがなく、解決した。
結局は事務局にすら報告しないような、小さな夫婦間の連絡ミス、として処理された。まかり間違えば貴族の子弟の誘拐事件として、王都を騒がせる大事件になりかねなかった事件だ。
王都には、いつも通りの日々が戻ってくる。
平和な、何にもない、静かな王都の魔法騎士団の、休憩時間。
「なんでも、二人は結局離婚調停を引き下げて、浮気相手に疑われた例の幼馴染の紹介の会計士を雇い入れて、きちんとした生活してるらしいよ。」
そもそも美意識の高い伯爵、以前に比べると慎ましい生活だが、見栄を張らずに、自分の美意識に正直に、それからレベッカさんの言う事をちゃんと聞いて、小洒落た、生活感のいい感じで溢れた生活をしているらしい。
そんな伯爵のライフスタイルは、肩の力の抜けた感じがうけているらしく、新興の小金持ちの平民たちから、憧れをうけているとか。無理して貴族相手に見え張らなくても、平民に格好つけていればいい事に気がついた伯爵、それなりに自尊心も満たされて、幸せにしているらしい。
ニコラも、なんだか緩い感じになった3人の姿絵が表紙になった、富裕層むけの雑誌を最近見たところだ。
ベンの手に、近頃はやりの子供用の緑色の飛行機のおもちゃが握られていたのが、とても微笑ましかった。
「キャス!あんたそれ3個目じゃない!ちょっと、私まだ2個目も食べてないんだけど!ずるい!」
「いいだろ、俺が持ってきた差し入れなんだから、俺が一番いっぱい食っても」
「貴族のくせに、女性に対するマナーがなってないわよ!そういう時は、女の子に一番多く食べさせるんでしょ?ねえ、ジャン様なんとか言ってよ!」
キャンキャンと、レモンパイを巡ってニコラとくだらない喧嘩してるのは、なんと、あのキャス。
事件の後、魔法騎士団を騒がせたことを、低身低頭で、スミス伯爵家、それからマッケンタイヤ伯爵家からの謝罪をうけたジャンは、
「お願いです、このどうしようもない子を救うと思って、ジャン様の下で鍛えてやってくださいませ」
とのスミス夫人にお願いされて、お人好しのジャンは断りきれなかったのだ。
(まあ、あの魔力の量、鍛えればなんとかなるかも・・・)
二人の人間を、一気に送り出すだけの魔力。
怠惰で使い物にならなそうに見えるが、これだけの魔力を、正確に、確実に操る能力があるのだ。
うまく導けば、大物になるかもしれない。うまく、導くことができれば、の話だが。
相変わらずパンツの後ろで手を拭っているらしい、なんだかチョコレートだかの跡のついたキャスのケツのシミを見て、ジャンはため息をついた。
その代わりと言ってはなんだが、とマシェント伯爵令嬢は、両家が後ろ盾となる。
貴族社会では、丸裸同然のニコラに、少しでも味方は多い方がいい。
それに、ニコラはジャンと婚約しているのだ。伯爵夫人としても、古く、そこそこ尊敬される両家の後ろ盾があるのとないとのでは、これからのニコラの伯爵夫人としての立ち位置に、違いがあるだろう。
そう言われて引き受けたはいいが、一応伯爵令嬢と、男爵であるニコラとキャスは、今の所低レベルなケンカばかりする、ケンカ仲間だ。
「ほらほら、ニコラちゃん、俺のをあげるからちょっと落ち着いて・・」
ジャンは別にニコラほど甘党ではないので、なんの惜しみもなく、自分の皿の上の乗ったレモンパイをニコラにやる。ジャンは、気持ちが優しい。
ニコラはすっかりと機嫌を直して、ジャン様大好き!とジャンの腕に絡みついて、べえ!とばかりにキャスに舌を出して、大きなパイに齧り付く。
「はは、ニコラちゃんクリームついてるよ。」
ジャンは一心不乱にパイにかぶりつくニコラが可愛くてしょうがない。
ニコラの顎についたクリームを拭ってやりながら、ご機嫌なニコラに、ああそうだ、と思い出して、
「ニコラちゃん、やっと次の半月の日に休みがとれたよ。一緒に肉を食べに行こう。」
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