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銭ゲバ事件簿1
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いきなり聞こえてきた、少女の声にびっくりしたのだろう。
感傷的にがなり立てていた小鳥は沈黙し、レベッカさんも、びっくりしてニコラを見る。
ニコラは、もう我慢がならない。
ここの連中ときたら、金を、銭を、なんだと思っているのか。
「マッケンタイヤ伯爵、あなた、銭を・・銭をなんだと思っているの!!あなたが足蹴にしている、銭に自分を幸せにしてもらおうなんて、なんて図々しい!」
(図々しい、はあ、一体・・)
隊の全員が、キョトン顔だ。
図々しいやら、神経が太いだの、ツラの皮が厚い、というのはニコラを彩る形容詞の専売特許だが、このツラの皮の厚い美少女が、伯爵の図々しさに、なんだかお冠だ。
カンカンに怒り狂うニコラは、続けた。
「銭は、銭はね、銭を先に幸せにしてあげないと、銭が幸せを運んでくれるわけないじゃない!!!」
小鳥は、不審そうに、だが、声の主が、伯爵令嬢のニコラである事に気がついたらしい。
「ご・・ご令嬢、一体なんの・・・?事でしょう・・・」
「銭はね、銭の仲間が大好きなのよ。大事な仲間と家族と楽しく暮らしていた金庫から、一人引き離されるのに、絶対に幸せな理由で使ってあげないと、銭が可哀想よ!あなた、銭の幸せを考えた事、あって?」
無茶苦茶だ。
「ご、ご令嬢、あの、銭の幸せって、なんでしょう・・」
最もすぎる小鳥の質問。
ニコラの戯言なぞ聞かなくても良いのだが、この伯爵、真面目で律儀なのだろう。
「自分が使われる事で、誰かが幸せになる行き先に連れてってあげることよ!自分を幸せにするために、誰かを幸せにするために、銭を使った事、あるの??」
暗い、静かな金庫で、毎日楽しく仲間と過ごしていた銭が、そんな日々を終わらせて、旅立つ日が来る。旅立つ理由は、なんだろう。可愛い恋人に花を買ってあげたい若い男に、遣われるのか。年老いた祖母の、冷える足元を暖めるための靴下を買いたい孫に遣われるのか。美味いものを家族に作ってやりたいおかみさんが、市で見つけた朝どりいちごの為に、遣われるのか。
「なんて可哀想な伯爵家の銭!あなたは銭を不幸にしている事が、わからないの??」
ニコラはわっと泣き出して、ジャンの胸に縋る。
小鳥は押し黙る。
(なるほどな、確かに。)
ジャンは、胸元でビービー泣いている恋人の頭をよしよしと撫でてやりながら、思い至る。
言ってる事はめちゃくちゃなのだが、それでもニコラの言わんとした事が、なんだかわかった気がするのだ。
この伯爵、自分の見栄だの対面だのに銭を躍起になって使っていたが、誰の幸せにもならないものばかりに銭を使っていた様子。伯爵自身ですら、ちっとも自分の喜びの為ですらなく、体面を保つだけの理由ばかりで、躍起になって銭を使っていたかの様子だった。
(子供部屋の品々ですら、子供を幸せにするためのものではなく、美的センスやら、なんやらを誰かに見せつける為に大金をはたいた感じだものな・・)
銭を介さないとうまく言葉や考えをつなげられないニコラであるが、ジャンはニコラの言いたい事は、よくわかった気がする。伯爵のやってるような、金の、心の、力の、そして愛の使い方をしてても、何のみのりはなさそうだ。
そしてニコラは爆弾を落とす。
この娘魔女に育てられただけあって、人の弱みに、致命傷を与える事に躊躇ない。
「そんな銭の使い方ばかりしてるから、あなた、周りから馬鹿にされてるの、わからないの!!!!」
感傷的にがなり立てていた小鳥は沈黙し、レベッカさんも、びっくりしてニコラを見る。
ニコラは、もう我慢がならない。
ここの連中ときたら、金を、銭を、なんだと思っているのか。
「マッケンタイヤ伯爵、あなた、銭を・・銭をなんだと思っているの!!あなたが足蹴にしている、銭に自分を幸せにしてもらおうなんて、なんて図々しい!」
(図々しい、はあ、一体・・)
隊の全員が、キョトン顔だ。
図々しいやら、神経が太いだの、ツラの皮が厚い、というのはニコラを彩る形容詞の専売特許だが、このツラの皮の厚い美少女が、伯爵の図々しさに、なんだかお冠だ。
カンカンに怒り狂うニコラは、続けた。
「銭は、銭はね、銭を先に幸せにしてあげないと、銭が幸せを運んでくれるわけないじゃない!!!」
小鳥は、不審そうに、だが、声の主が、伯爵令嬢のニコラである事に気がついたらしい。
「ご・・ご令嬢、一体なんの・・・?事でしょう・・・」
「銭はね、銭の仲間が大好きなのよ。大事な仲間と家族と楽しく暮らしていた金庫から、一人引き離されるのに、絶対に幸せな理由で使ってあげないと、銭が可哀想よ!あなた、銭の幸せを考えた事、あって?」
無茶苦茶だ。
「ご、ご令嬢、あの、銭の幸せって、なんでしょう・・」
最もすぎる小鳥の質問。
ニコラの戯言なぞ聞かなくても良いのだが、この伯爵、真面目で律儀なのだろう。
「自分が使われる事で、誰かが幸せになる行き先に連れてってあげることよ!自分を幸せにするために、誰かを幸せにするために、銭を使った事、あるの??」
暗い、静かな金庫で、毎日楽しく仲間と過ごしていた銭が、そんな日々を終わらせて、旅立つ日が来る。旅立つ理由は、なんだろう。可愛い恋人に花を買ってあげたい若い男に、遣われるのか。年老いた祖母の、冷える足元を暖めるための靴下を買いたい孫に遣われるのか。美味いものを家族に作ってやりたいおかみさんが、市で見つけた朝どりいちごの為に、遣われるのか。
「なんて可哀想な伯爵家の銭!あなたは銭を不幸にしている事が、わからないの??」
ニコラはわっと泣き出して、ジャンの胸に縋る。
小鳥は押し黙る。
(なるほどな、確かに。)
ジャンは、胸元でビービー泣いている恋人の頭をよしよしと撫でてやりながら、思い至る。
言ってる事はめちゃくちゃなのだが、それでもニコラの言わんとした事が、なんだかわかった気がするのだ。
この伯爵、自分の見栄だの対面だのに銭を躍起になって使っていたが、誰の幸せにもならないものばかりに銭を使っていた様子。伯爵自身ですら、ちっとも自分の喜びの為ですらなく、体面を保つだけの理由ばかりで、躍起になって銭を使っていたかの様子だった。
(子供部屋の品々ですら、子供を幸せにするためのものではなく、美的センスやら、なんやらを誰かに見せつける為に大金をはたいた感じだものな・・)
銭を介さないとうまく言葉や考えをつなげられないニコラであるが、ジャンはニコラの言いたい事は、よくわかった気がする。伯爵のやってるような、金の、心の、力の、そして愛の使い方をしてても、何のみのりはなさそうだ。
そしてニコラは爆弾を落とす。
この娘魔女に育てられただけあって、人の弱みに、致命傷を与える事に躊躇ない。
「そんな銭の使い方ばかりしてるから、あなた、周りから馬鹿にされてるの、わからないの!!!!」
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