13 / 36
4.夢路からの香り
生きた果樹園
しおりを挟む「拙者、アカツキと申す。実は先日、こちらの近くに住む巫女の女性と、お見合いをしたのでござる」
聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。
どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。
隣のソナエさんを、確認します。
あー、怒っていますねぇ。
わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。
ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。
ダメですね、これは。話す気がない模様です。
ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。
よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。
「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」
よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?
「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」
初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。
「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」
反省は、しているようですが。
あー、もう。
ソナエさんブチギレじゃないですか。
これは、早く解決せねば。
「何を話したか、再現はできますか」
「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」
「……あー」
これは、罪深い。
ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。
実に罪な発言ですよ、これは。
「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」
まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。
「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」
アカツキさんが、ハッと息を呑みました。
わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。
「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」
シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」
わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。
どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。
「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」
エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。
「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」
こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。
「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」
めんどうな方みたいですね。
「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」
自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。
なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。
休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。
今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。
「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」
へ?
今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。
どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。
隣のソナエさんを、確認します。
あー、怒っていますねぇ。
わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。
ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。
ダメですね、これは。話す気がない模様です。
ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。
よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。
「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」
よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?
「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」
初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。
「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」
反省は、しているようですが。
あー、もう。
ソナエさんブチギレじゃないですか。
これは、早く解決せねば。
「何を話したか、再現はできますか」
「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」
「……あー」
これは、罪深い。
ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。
実に罪な発言ですよ、これは。
「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」
まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。
「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」
アカツキさんが、ハッと息を呑みました。
わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。
「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」
シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」
わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。
どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。
「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」
エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。
「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」
こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。
「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」
めんどうな方みたいですね。
「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」
自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。
なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。
休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。
今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。
「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」
へ?
今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
空の話をしよう
源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」
そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。
人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。
生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。
みかんに殺された獣
あめ
児童書・童話
果物などの食べ物が何も無くなり、生きもののいなくなった森。
その森には1匹の獣と1つの果物。
異種族とかの次元じゃない、果実と生きもの。
そんな2人の切なく悲しいお話。
全10話です。
1話1話の文字数少なめ。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。

シンクの卵
名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。
メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。
ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。
手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。
その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。
とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。
廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。
そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。
エポックメイキング。
その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。
その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる