DRAGGY!ードラギィ!ー【フレデリック編連載中!】

Sirocos(シロコス)

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③〈フレドリクサス編〉

プロローグ

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『どうして泣くのかしらねえ……!』

息がつまるほど重たい暗闇の上で、校長がひとりあきれ返っています。
――キノコのように丸くこんもりと束ねた、緑色の長髪をゆらして。

「ええぇぇ~~ん!  だって、怖いんだものぉ!」

ぼんやりとしたスポットライトの下で、幼い子どものように大泣きしている、
一匹のドラギィのシルエットが浮かび上がっていました。
全身を包む体毛はつややかで、ふわふわした触り心地……かと思いきや、
まるで海水に濡れたアザラシの毛のように短く、肌にはりついています。
ついでに、頭の角は水のしずくみたいに丸っこい形でした。

「この場所、怖くて……もう何にもできないよう!  しかも、ぼくひとりで!」

『あなた!』校長の厳しい声が降ってきました。
『せっかく、卒業基準値をはるかに超えているというのに。
そんな流ていぐせでは、先が思いやられますよ!』

「ぐすん……でも、ぼくのこと、人間界には落としませんよね……?」

すると、校長先生の海のような青い瞳が、暗闇の中で鋭くきらめき、
細長い口がやかましく声を立てて言いました。

「とんでもない!  あなたにも〈下界落とし〉の罰則ですわ!」

ドンドンドン!  校長の座る大机の木づちがたたき下ろされます。

「人間界で、強い心を身につけていらっしゃい!
……ひとつ言っておきますけど、わたしはすでに二名、下界に落としていますよ。
一日も早く、ここに帰りたいのなら、その二名を探しなさい。
どうせあなたひとりでは、心の修行なんて土台無理でしょうからね!」

再び激しく泣き出すドラギィを、緑の半透明の球体が容赦なく包みこみます。
足元に開かれた穴から、はるか広大な下の世界へ――
世にも恐ろしい人間の世界へ連れていくために。
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