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①〈フラップ編〉
6『白いからといって、白いやつと呼んではいけない』①
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「うそっ! なんじゃこりゃあ!!」
部屋の中に、レンの裏返るような叫び声が反響しました。
「な、なんですか……!?」
フラップが何事かと、目を白黒させます。
ベッドの上にバッグを置いたとたん、バッグがもぞもぞとうごめいて、
中から、入れた覚えのない珍客が飛び出してきたのです。
ソフトクリームそっくりの奇妙な髪型にセットし、
ショルダーバッグを肩から下げた、一匹の白ネズミ。
エメラルド色の半月目で、フラップを不敵に見上げています。
「か、かわいすぎる!」
レンは白ネズミを両手ですくい上げ、自分の顔の高さまでささげ持ちました。
ミミズのようなしっぽが、両掌に収まらずに垂れ下がっています。
「どういうこと? バッグなんて身につけてるんだけど! それに髪……」
レンの丸くした瞳とやかましい声に、白ネズミは、キッと目を細めます。
「名前つけるなら何がいいかな。ええっとね……『しろさん』! とか?」
たえかねた白ネズミは、牙をむいてレンの親指に……ガブリ!
「痛ったぁぁぁあああ!」
鋭い痛みでレンが飛び上がった拍子に、白ネズミはベッドの上に放られました。
それから白ネズミは、ショルダーバッグのチャックを開いて、
中から一つのボールのようなものを取りだしました。
白と、草色の二色が、生き物のように抱き合った模様をしています。
レンとフラップが、物珍しそうに見つめていると、
白ネズミはそのボールを、胸のあたりにポンと押しつけました。
ボン! もくもくもく……。
ボールが弾け、白ネズミは緑色の煙に包まれました。
「けほっ、けほっ……!」
ぬるい抹茶ミルクのにおいに、レンとフラップはむせ返ってしまいます。
煙が吹き散ちると、そこには、草色のシャツに白衣をまとった、
先ほどよりも大人びたような白ネズミが、太い脚でドンとたたずんでいました。
首の下に巻いているピンク色のネクタイが、どうにもチャーミングです。
「えーっと、しろさん?」
レンがおそるおそる聞くと、白ネズミは息を大ーきく吸いこみ、そして……、
「『しろさん』ではないわぁ! このボンクラ坊主めぇ!!」
口を利きました。いかにもネズミらしい、幼い子どものような声で。
この小さな体から、どうやってこれほど覇気のある声が出せるのでしょう?
レンとフラップは、あんぐりとしていました。
「ふぁ~!」
白ネズミは、ようやくもろもろの我慢を解いたように、深く息をつきました。
「や~っと話せるようになった。
まったく、おぬしのバッグの中は、退屈で仕方なかったぞ。ほこりっぽかったし」
ボリボリ……。白ネズミが自分の後頭部をうっとうしそうにかいています。
「なんか、その……ごめんね?」
どうして謝まったのか、レンは自分でもわけが分かりませんでした。
「あ、あなた何者なんですか?」フラップがたずねました。
「うむ。よくぞ聞いてくれた!」
白ネズミは、その場で二度せき払いをすると、
「わしは、さすらいのネズミ発明家。人呼んで、フレデリック博士じゃ!
ハイテクメカに、薬用ドリンク、最高のチーズの食べ方に至るまで、
幅広く開発を続けている、ネズミ界随一の科学者じゃ。よろしくのう!」
そう言って、一端のアイドルのような決めポーズを取ってみせたのです。
レンは、フラップと出会った時よりも、強烈な不可解に囚われました。
「……発明家。ネズミ界随一の……フレデリック、はかせぇ?」
「さよう。フレデリック博士じゃ。フレデリック!
そこんところ、忘れんでもらいたいのう。
ちなみに、今しがた使ったのは、『早着がえコスチューム・ボール』じゃ。
胸に当てるだけで、パパッと早着がえ。これが何かと便利でのう。
あと、こうしてわしが言葉を話せるのは、
この『バイリンガル・ネクタイ』のおかげじゃ。
人語、犬語、カラス語からライオン語まで、完璧に意思疎通できる優れもの!
どうじゃ、いずれもわしが手がけた発明品じゃぞ」
どうと言われても、相手は明らかに普通の博士ではありません。
人間ですらいまだ発明できていないような技術を、
このネズミの科学者が持ち合わせているというのでしょうか。
「……それで、そんなキミがどうしてぼくんちに?」
「なんじゃ、少年。そのネズミにたいする、非友好的なまなざしは」
えっ? 別に嫌っているわけじゃないのに。
「まったく気に食わん。で、なんじゃって? わしがここに来た理由?
フフン。そ~んなの、決まっておるじゃろう」
白ネズミは、びしっとフラップを指さしました。
「世にも珍妙なフシギ生物よ! おぬしを研究させてほしい」
「「ええええ~~っ!?」」
レンもフラップも、虚を突かれて驚くしかありません。
はっきりとした執念を感じさせる、白ネズミの突然の申し出。
どうやら、フレデリック博士という呼び名は、伊達ではないようです。
何も知らないネズミ博士のために、フラップはいろいろと説明に追われました。
自分がドラギィという生物であること。スカイランドを追い出されたこと。
故郷に帰るため、修行をしなければならないこと……。
「ふむふむ」ネズミ博士は、深くうなずきました。
「あい分かった! なるほど、ドラギィという生物か。
フラップよ、おぬしにもいろいろ事情があったとはのう……
とはいえ、空島とはまたえらく非科学的じゃな。果たして本当に存在するのか?
――そして少年よ、レンといったか。おぬしはフラップを家に迎え、
修行とやらをせねばならぬ彼を、世間の目から守ってやっておるのだな」
レンが、その通りだとうなずくと、フラップが博士にたずねました。
「あのう、ところでしろさん。あなたが博士を名乗るなら、
どこかに素晴らしい研究所をお持ちなのでは?」
「フレデリック博士と呼ばんか! ん、わしの研究所?
見てみるか? わしのラボは、かなり特殊じゃぞ」
見てみる? 写真でも見せてくれるというのでしょうか?
と、ネズミ博士は、ショルダーバッグの中に両手を突っこみました。
その中からたぐるように引っ張り上げたのは、
ぐるぐる巻きにされた一枚の大きな紙のようなものでした。
奇妙なことに、博士の背丈ほどの長さはあります。
「わ、割と大きいですね……どうやって入れてたんです?」
「わしのバッグは『ブラックホール式バッグ』といってのう。
たいていのものは、サイズなど関係なしにしまうことができるのじゃ。
どの辺に貼りつけるかのう? ……うむ、あそこにするか」
ネズミ博士は、紙を抱えてベッドシーツの上を歩いていきました。
「すまんが、ここにある枕をどけてくれんかのう?」
レンが言われるままに、自分の枕をよそへどかしてやると、
博士は木製のヘッドボードにむかって、
ぽーいっと放り投げつけるように紙を貼りつけました。
紙は、はらはらっと音を立ててめくれ落ち、
そこに、博士が通れるくらいのスライドドアが描かれていました。
「それが、キミの研究所?」
ただの壁紙ではないでしょうか? レンは少し小バカにされた気分です。
「いやいや。これはれっきとした、わがフレデリック・ラボへの入り口。
その名も、『ラボドア』じゃ。
しかし、その大きさでは、このドアをくぐることもかなわんからのう」
博士は、さらにバッグの中に手を突っこみます。
中から引っ張り上げたのは、先に丸い球がついたおもちゃの銃のようなもの。
「レン、フラップ。
今からベッドに上がって、この『チヂミガン』で発射する光に当たるがいい。
こいつの光を受けた生物は、みなわしと同じくらいのサイズになれるぞ。
心配するな。痛みなどみじんも感じないからのう」
レンは、感心するべきか、あきれ返るべきか、決めあぐねていました。
「次から次へと、とんでもない発明品が飛びだすなあ。
ネズミの科学力って、そんなに進んでるの?」
「おぬしら人間が、多くの同胞をネズミホイホイで捕まえておる間に、
わしらネズミは、生存率を上げるべく、日々進歩しておるのじゃ。
まあ、中でもわしの科学力は別格じゃがのう。ほれ、じっとしておれよ」
「あの、ドラギィには必要ないですよ。自分で小さくなれますから」
フラップは、胸に手を当てて、ふぅぅ、と息をはきました。
すると、小さかったその体が、さらに少しずつ縮まっていき、
ついには、ラボドアをくぐれるくらいのサイズになってしまいました。
普段よりもさらに小さくなれるなんて、レンもまだ知らなかったことです。
「なんと!」ネズミ博士は感心しました。
「器用なやつじゃ。魔法のように自力で小さくなれるとは!
こいつは、おぬしの体とくわしい能力を調べる時が、待ちきれんぞ!」
「反対にぼく、熊のようにおっきくなることもできますよ。
その場合、大量のエネルギーを消耗するんですけども。
……というか、まだ調べさせてあげるとは言ってませんってば!」
フラップは、ぷりぷりと頬をふくらませて抗議しました。
そのかたわらで、レンは自分のベッドに上がりこみ、
ネズミ博士からチヂミガンを撃ってもらいます。
――ほとんどだまされたような気持ちではありましたが。
パシュ!
その白い小粒ほどの光を胸に受けたとたん、
目の前にある部屋の壁が、そびえ立つようにだんだんと高く遠のいていき、
青い布団カバーの面積が、自分の脚の下でぐーんと広がっていったのです。
――アニメやゲームの中だけの、子どもだましだと思っていました。
レンは人生ではじめて、ネズミサイズの人間になってしまったのです。
「これ、ほうけておるでない。早くラボに入りたいんじゃないのか?」
シーツのむこうに、自分と同じ背丈のネズミ博士と、フラップと、
ラボへの入り口が、当たり前のようにレンを待っていました。
「なんだか面白いですね、レンくん。
あなたが、ぼくと同じくらいの背丈になれるなんて。ネズミってすごい!」
「ちょ、待って! ベッドの上って、こんなに歩きづらかったの……」
レンとフラップは、博士に続いて開いたドアをくぐっていきました。
部屋の中に、レンの裏返るような叫び声が反響しました。
「な、なんですか……!?」
フラップが何事かと、目を白黒させます。
ベッドの上にバッグを置いたとたん、バッグがもぞもぞとうごめいて、
中から、入れた覚えのない珍客が飛び出してきたのです。
ソフトクリームそっくりの奇妙な髪型にセットし、
ショルダーバッグを肩から下げた、一匹の白ネズミ。
エメラルド色の半月目で、フラップを不敵に見上げています。
「か、かわいすぎる!」
レンは白ネズミを両手ですくい上げ、自分の顔の高さまでささげ持ちました。
ミミズのようなしっぽが、両掌に収まらずに垂れ下がっています。
「どういうこと? バッグなんて身につけてるんだけど! それに髪……」
レンの丸くした瞳とやかましい声に、白ネズミは、キッと目を細めます。
「名前つけるなら何がいいかな。ええっとね……『しろさん』! とか?」
たえかねた白ネズミは、牙をむいてレンの親指に……ガブリ!
「痛ったぁぁぁあああ!」
鋭い痛みでレンが飛び上がった拍子に、白ネズミはベッドの上に放られました。
それから白ネズミは、ショルダーバッグのチャックを開いて、
中から一つのボールのようなものを取りだしました。
白と、草色の二色が、生き物のように抱き合った模様をしています。
レンとフラップが、物珍しそうに見つめていると、
白ネズミはそのボールを、胸のあたりにポンと押しつけました。
ボン! もくもくもく……。
ボールが弾け、白ネズミは緑色の煙に包まれました。
「けほっ、けほっ……!」
ぬるい抹茶ミルクのにおいに、レンとフラップはむせ返ってしまいます。
煙が吹き散ちると、そこには、草色のシャツに白衣をまとった、
先ほどよりも大人びたような白ネズミが、太い脚でドンとたたずんでいました。
首の下に巻いているピンク色のネクタイが、どうにもチャーミングです。
「えーっと、しろさん?」
レンがおそるおそる聞くと、白ネズミは息を大ーきく吸いこみ、そして……、
「『しろさん』ではないわぁ! このボンクラ坊主めぇ!!」
口を利きました。いかにもネズミらしい、幼い子どものような声で。
この小さな体から、どうやってこれほど覇気のある声が出せるのでしょう?
レンとフラップは、あんぐりとしていました。
「ふぁ~!」
白ネズミは、ようやくもろもろの我慢を解いたように、深く息をつきました。
「や~っと話せるようになった。
まったく、おぬしのバッグの中は、退屈で仕方なかったぞ。ほこりっぽかったし」
ボリボリ……。白ネズミが自分の後頭部をうっとうしそうにかいています。
「なんか、その……ごめんね?」
どうして謝まったのか、レンは自分でもわけが分かりませんでした。
「あ、あなた何者なんですか?」フラップがたずねました。
「うむ。よくぞ聞いてくれた!」
白ネズミは、その場で二度せき払いをすると、
「わしは、さすらいのネズミ発明家。人呼んで、フレデリック博士じゃ!
ハイテクメカに、薬用ドリンク、最高のチーズの食べ方に至るまで、
幅広く開発を続けている、ネズミ界随一の科学者じゃ。よろしくのう!」
そう言って、一端のアイドルのような決めポーズを取ってみせたのです。
レンは、フラップと出会った時よりも、強烈な不可解に囚われました。
「……発明家。ネズミ界随一の……フレデリック、はかせぇ?」
「さよう。フレデリック博士じゃ。フレデリック!
そこんところ、忘れんでもらいたいのう。
ちなみに、今しがた使ったのは、『早着がえコスチューム・ボール』じゃ。
胸に当てるだけで、パパッと早着がえ。これが何かと便利でのう。
あと、こうしてわしが言葉を話せるのは、
この『バイリンガル・ネクタイ』のおかげじゃ。
人語、犬語、カラス語からライオン語まで、完璧に意思疎通できる優れもの!
どうじゃ、いずれもわしが手がけた発明品じゃぞ」
どうと言われても、相手は明らかに普通の博士ではありません。
人間ですらいまだ発明できていないような技術を、
このネズミの科学者が持ち合わせているというのでしょうか。
「……それで、そんなキミがどうしてぼくんちに?」
「なんじゃ、少年。そのネズミにたいする、非友好的なまなざしは」
えっ? 別に嫌っているわけじゃないのに。
「まったく気に食わん。で、なんじゃって? わしがここに来た理由?
フフン。そ~んなの、決まっておるじゃろう」
白ネズミは、びしっとフラップを指さしました。
「世にも珍妙なフシギ生物よ! おぬしを研究させてほしい」
「「ええええ~~っ!?」」
レンもフラップも、虚を突かれて驚くしかありません。
はっきりとした執念を感じさせる、白ネズミの突然の申し出。
どうやら、フレデリック博士という呼び名は、伊達ではないようです。
何も知らないネズミ博士のために、フラップはいろいろと説明に追われました。
自分がドラギィという生物であること。スカイランドを追い出されたこと。
故郷に帰るため、修行をしなければならないこと……。
「ふむふむ」ネズミ博士は、深くうなずきました。
「あい分かった! なるほど、ドラギィという生物か。
フラップよ、おぬしにもいろいろ事情があったとはのう……
とはいえ、空島とはまたえらく非科学的じゃな。果たして本当に存在するのか?
――そして少年よ、レンといったか。おぬしはフラップを家に迎え、
修行とやらをせねばならぬ彼を、世間の目から守ってやっておるのだな」
レンが、その通りだとうなずくと、フラップが博士にたずねました。
「あのう、ところでしろさん。あなたが博士を名乗るなら、
どこかに素晴らしい研究所をお持ちなのでは?」
「フレデリック博士と呼ばんか! ん、わしの研究所?
見てみるか? わしのラボは、かなり特殊じゃぞ」
見てみる? 写真でも見せてくれるというのでしょうか?
と、ネズミ博士は、ショルダーバッグの中に両手を突っこみました。
その中からたぐるように引っ張り上げたのは、
ぐるぐる巻きにされた一枚の大きな紙のようなものでした。
奇妙なことに、博士の背丈ほどの長さはあります。
「わ、割と大きいですね……どうやって入れてたんです?」
「わしのバッグは『ブラックホール式バッグ』といってのう。
たいていのものは、サイズなど関係なしにしまうことができるのじゃ。
どの辺に貼りつけるかのう? ……うむ、あそこにするか」
ネズミ博士は、紙を抱えてベッドシーツの上を歩いていきました。
「すまんが、ここにある枕をどけてくれんかのう?」
レンが言われるままに、自分の枕をよそへどかしてやると、
博士は木製のヘッドボードにむかって、
ぽーいっと放り投げつけるように紙を貼りつけました。
紙は、はらはらっと音を立ててめくれ落ち、
そこに、博士が通れるくらいのスライドドアが描かれていました。
「それが、キミの研究所?」
ただの壁紙ではないでしょうか? レンは少し小バカにされた気分です。
「いやいや。これはれっきとした、わがフレデリック・ラボへの入り口。
その名も、『ラボドア』じゃ。
しかし、その大きさでは、このドアをくぐることもかなわんからのう」
博士は、さらにバッグの中に手を突っこみます。
中から引っ張り上げたのは、先に丸い球がついたおもちゃの銃のようなもの。
「レン、フラップ。
今からベッドに上がって、この『チヂミガン』で発射する光に当たるがいい。
こいつの光を受けた生物は、みなわしと同じくらいのサイズになれるぞ。
心配するな。痛みなどみじんも感じないからのう」
レンは、感心するべきか、あきれ返るべきか、決めあぐねていました。
「次から次へと、とんでもない発明品が飛びだすなあ。
ネズミの科学力って、そんなに進んでるの?」
「おぬしら人間が、多くの同胞をネズミホイホイで捕まえておる間に、
わしらネズミは、生存率を上げるべく、日々進歩しておるのじゃ。
まあ、中でもわしの科学力は別格じゃがのう。ほれ、じっとしておれよ」
「あの、ドラギィには必要ないですよ。自分で小さくなれますから」
フラップは、胸に手を当てて、ふぅぅ、と息をはきました。
すると、小さかったその体が、さらに少しずつ縮まっていき、
ついには、ラボドアをくぐれるくらいのサイズになってしまいました。
普段よりもさらに小さくなれるなんて、レンもまだ知らなかったことです。
「なんと!」ネズミ博士は感心しました。
「器用なやつじゃ。魔法のように自力で小さくなれるとは!
こいつは、おぬしの体とくわしい能力を調べる時が、待ちきれんぞ!」
「反対にぼく、熊のようにおっきくなることもできますよ。
その場合、大量のエネルギーを消耗するんですけども。
……というか、まだ調べさせてあげるとは言ってませんってば!」
フラップは、ぷりぷりと頬をふくらませて抗議しました。
そのかたわらで、レンは自分のベッドに上がりこみ、
ネズミ博士からチヂミガンを撃ってもらいます。
――ほとんどだまされたような気持ちではありましたが。
パシュ!
その白い小粒ほどの光を胸に受けたとたん、
目の前にある部屋の壁が、そびえ立つようにだんだんと高く遠のいていき、
青い布団カバーの面積が、自分の脚の下でぐーんと広がっていったのです。
――アニメやゲームの中だけの、子どもだましだと思っていました。
レンは人生ではじめて、ネズミサイズの人間になってしまったのです。
「これ、ほうけておるでない。早くラボに入りたいんじゃないのか?」
シーツのむこうに、自分と同じ背丈のネズミ博士と、フラップと、
ラボへの入り口が、当たり前のようにレンを待っていました。
「なんだか面白いですね、レンくん。
あなたが、ぼくと同じくらいの背丈になれるなんて。ネズミってすごい!」
「ちょ、待って! ベッドの上って、こんなに歩きづらかったの……」
レンとフラップは、博士に続いて開いたドアをくぐっていきました。
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