閉じ込められた記憶――リイサ・アーツハルドの真実――

心太

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マリアンネとマリアンネの母親と別れてから数時間ほど列車に乗り、ミッドランドシティへの中継駅であるクラージュに着いた。下車する人は多くなかった。どちらかと言えば、帰る人が多いからだろう。

列車を降りたとき南部独特のむわっとした湿気を帯びた空気が私の肌をなめまわしているよう出気持ち悪い。西の空から太陽が消え、暗がりを迎えようとしていた。かすかだが星々が見えている。
クラージュで一泊してからミッドランドシティへは明日向かうことになっている。

駅はこれから家に帰る人でごった返していた。私はゆうゆうと階段を下りていった。ただ外より湿度が高いせい不快度指数が高めだ。

サンドニ県の県庁所在地であるクラージュは官公庁街で公務員が多い。多くが男性だが中には女性もいる。
官公庁の女性の制服は濃紺のワンピースと決まっているが、男性の制服も上下紺で詰襟姿だ。
暑そうだなー。でも――詰襟グッド!
そういえば、元彼の軍服姿はカッコよかったなあ……。

私は男性の官公庁職員の制服である詰襟姿を横目で見ながら、今夜泊まれる宿を探すために、旅行者のための相談窓口へ向かった。

相談口は改札口の近くにあった、窓口には誰もいなく遠くから、ちらちらと時計を見ている二十台半ばくらいの女性の姿が目に入っていた。そろそろ終業時間が近いのだろう。なんだか悪い気がしながらも受付の女性に話しかけた。

女性は私の姿を見ると、すぐにしゃんとした格好になり、「何か御用でしょうか」と話しかけてくれた。私が今日泊まれるところを紹介して欲しいと答えると、女性は近く冊子を広げた。

「クラージュは計十五か所ほど宿泊できる施設があるんですが、ご予算はどのくらいを考えておられますか」
「五千ルピーくらいを希望しています」
「五千ルピーですと、六件ほどの施設がございます」
 広げた地図にペンで丸く印をつけていく。
「どこかご希望はございますか」

正直どこでもいいと思った。だがさすがに丸投げはいけないだろうと思い、駅からあまり遠くない、ホテルに決めた。ホテルの名前は、ホワイトブレス。白い息。なんかカッコいい。私はホワイトブレスホテルを指す。

「ここでお願いします」
「かしこまりました。夕飯はいかがしますか」
「外で食べるので大丈夫です」
「承知いたしました。では宿泊先に空きがあるか確認を致しますので、あちらのお席でお待ちになってくださいませ」
 そういうと女性は奥の部屋に消えていった。
 私は椅子に座り、近くに置いてあった冊子を手に取る。
「夕飯はどうしようかなっと」
 四つ折りになっている冊子を広げ、クラージュ駅周辺の飲食店を探した。

結構いろいろなお店があるな。肉料理の店に魚料理の店。選ぶのに時間がかかってしまうかもしれない……。冊子を見ていると、先ほどの女性が呼んでいた。

カウンターへ向かうと「ご予約がとれました。ホワイトブレスまでは駅を出ると、三つの大きな道路がありますので、右側の道路をつたっていって、大体五、六分ほどで着くと思います」
「ありがとうございます。ついでにどこか夕飯でおススメのお店教えてくださいませんか」
「そうですねぇ……」

 女性はさきほどの冊子とは違う冊子を持ってきて広げた。そして細く長い指で一か所のお店を指した。
「私のおススメは東洋の料理が食べられる、大漁というお店です。雰囲気も良いので是非」
 私は女性にお礼を言い窓口を出た。
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