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ノミーの遊び

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今日の天気は晴れ

めっちゃ気持ちのいい小春日和。今日は何して遊ぼうかな~

なーんて鼻歌交じりに宙を浮きながら移動しているのは、私こと、
スズキ目スズメダイ科クマノニ亜科クマノニ属カクレクマノミのノミーである!エッヘン。

はあ~、どうしようかなー、久しぶりに水に浮いてみようかな~
それとも、誰か捕まえて遊ぼうかなー

ふよふよ浮いていたら、穏やかな流れの川が目に入った。

「あっ、川みっけ!よし、川に浮かぼう!」

スーッと川に身を預ける。ちょっと冷たいけど気持ち良くなって、そのまま寝てしまった。



どんぶらこ~どんぶらこ~どんぶらこ~
たまに沈んで~また浮いて~

身体を回転させて~お腹もいい色に焼けて~


どのくらい寝てたんだろう?
いつの間にか景色が暗くなったような気がする。


~そんなノミー(魚)をカラスの証言~

ノミーが川に浮いて少しすると寝息が聞こえてきた。
これを見ていたカラスの集団、一羽が捕まえてみんなで食べようと話し合いをする。

そうこうしているうちに、魚が沈んだ。
これはマズイと全員が思い、浮いて来たところを力の強い一羽が襲いかかる!

そんなカラスの行動を見越してか、ノミーが動いた。
襲いかかって来たカラスを尾ビレで弾き飛ばしたのだ。

尾ビレアタック!!

本来なら体格差のあるカラスには効きもしない攻撃のだった。
だが、今回は違った。目を三角にし、怒りの篭った形相で身体を回転させて勢いを付け渾身の力を込めて繰り出された攻撃は、カラスを弾き飛ばすだけに留まらなかった。
弾かれたカラスの一羽は、衝撃と激しい痛みに見舞われ勢いをつけて仲間達が滞空している場所に突っ込んだ。
そして仲間を巻き込み地面に落ちていった。
それを見ていた仲間のカラスは、この魚に恐れを抱き襲うのをやめた。
と言うか襲えなかった。群れで一番と言われたものが負けたのだ。自分達では到底敵うはずがない、と。

そんな魚ことノミーは未だに目覚めず川の流れに身を任せていた。
美味しそうな腹を見せながら・・・


この時のノミーは夢を見ていた。
卓球の試合の夢
尾ビレにラケットを括り付け、タイブレークまでもちこみ、この一球で決着が付くという夢。
意地でも勝ちたいノミー。魚だからと馬鹿にする者を黙らせたかった。練習しても、才能が無いと無駄だと言われてるみたいで嫌だった。
そんな最後の一球、今までの怒りと想いとをごちゃ混ぜにして渾身の力で振り切る。
相手を怖気付かせ、出来た隙に叩き込む。

カーン

周りの静寂が怖いほどだった。
なんで?と思うものが多かった。結果が全てなら、私の勝ち。
嬉しさで笑顔になると、
「ありがとうございました!」
と言って、我に帰った相手と握手をして会場を後にした。
今日ほど良い日は無いだろう。
家のベッドで眠りに落ちた・・・夢を見ていた。



~流されるノミー(魚)を見ていた鷹の証言~

浮いて流されている魚を鷹が見つけたのは、昼過ぎの強大な滝の音が聞こえ始める場所だった。
滝までの川は流れも早く、所々にゴツゴツした岩が沢山あった。
そんな岩を華麗にかわし、川の上を浮き流されている魚。
ある意味強者だろう。
この先の滝でどうなるか見てみたくなり、助けもせず様子を伺っていた。

滝の落差は約80m。滝壺は有る。
だがそんな高さから落ちれば、いくら水があるとは言え叩きつけられれば無事ですむはずが無い。

川の速い流れに乗って滝に差し掛かると、魚が勢いよく飛んだ!
というか、川の勢いでなげ飛ばされたが正解!

それは紛れもなく打ち上げられた魚!
周りには他の鳥もいたが、みんなあの魚がどうなるか見ていた。

だが、残念な事に見ていた鳥の中でも、上空からではなく、下からみていたものが餌食になった。


そう、イキナリ鼻提灯を膨らませ勢いを殺し、鼻提灯を割ってその鳥の背中目掛けて落ちて行ったのだ。

「グゲッ」

醜い声が聞こえたかと思うと、ノミーは鳥の背中でバウンドしてまた下に落ちて行く。

それを見ていた仲間がノミーに襲いかかる。
仲間を攻撃されたのだ。許せるはずが無い。
急降下して来る鳥を落ちながら軽くヒラリと交わして、更に襲って来た鳥の背中に突っ込む。

「グゲッ」

又しても醜い声が聞こえて来る。

そんな声も聞こえずノミーはまだ寝ている。

流石にノミーが水に叩き付けられるのを見るには忍びないと、最初の鷹が急降下でノミーの下に回り込み、下からノミーに向かって一度羽ばたく。
強烈な羽ばたきは、ノミーの落下速度をかなり落とした。

滝壺には主が居ることがある。後はノミーの運次第なのだが・・・・

バッシャーン!

大きな水音とともに巨大な魚が現れる。

主だ。

鋭い歯を見せ落ちてくるノミーの下で口を開く。
丸呑みにするつもりなのだ。

・・・・・・・・・・・・?

ところが、いくら待っても魚は落ちて来ない。

口を閉じて上を確認した途端

どごーーーーん!

激しい音と共に水しぶきが上がる。
ノミーが勢いを付けて主に突っ込んだのだ。
(頭からだと痛いので背ビレを立てて背中から)
衝撃で主は目を回す。そのままノミーはバウンドしてまた水の流れに身を任せて流されて行った。

後に残された、主と鳥達は、あの魚の運の良さに感心するばかりだった。



♢♢♢♢♢♢



そんなこんなで流されて、冒頭の景色が暗くなったところに戻る。



「あれ?あれれれれ?どこだろうここ?もしかしてもう夜になっちゃったのかな?」

しばらく考え込む。
ふと、母さんの怒った顔が脳裏に浮かび血の気が引いた。

「ま、まずい!どうしよう怒られる。ていうかお仕置き怖い!」

ノミーのお母さんが怒ったら、ノミーの使わなくなった物を何でもかんでも捨ててしまうのだ。それはノミーがちゃんと片付けをしなかったり、やるべき事(宿題など)をしなかった時だけなのだが!
それでも、取っといた物を捨てられるのは嫌だ。
何とか早く家に帰り(これ以上暗くなる前に)怒られない様にしなければ!(少しでも穏便に)

早速川を戻ろうとしたら、大きな口にギザギザの歯を沢山付けたワニが口を開いてた。

瞬間水面から飛び身体を水平にして回転。尾ビレをナイフの様に鋭くして上の歯を全て切り落とした。
ついで下の歯も。
そしてワニの口の上に乗ってお願いする。

「川上に向かって。家に帰りたいの」

歯が無くなって呆然としているところにこのお願い。ジーと私を見て、これ以上逆らうと危険、と思いつつも、仲間に合図を送り川上に向かっていく。

10匹くらい集まったところで、身体を水の中に沈めた。そしてこの魚を他の仲間が襲おうとした時。

ドゴーーーーーン!!

激しい音と共に水飛沫が上がる。
自分を食べようとしたワニ達を、ノミーが尾ビレから繰り出すソニックブームで次々と川に沈めていってるのだ。

次々と上がる轟音と水飛沫。
恐る恐るノミーを乗せていたワニが水面に顔を出すと、そこには鬼の形相の魚がいた。そして他のワニ達は水面に浮いていた。

恐ろしくなって逃げたくなったが、低い声で呼び止められた。
泣きそうになりながら、魚を見る。

「私家に帰りたいって言ったよね?」

最早恐怖で身体がブルブル震える。

「早く川上まで連れて行って?ね?」

鬼の形相から笑顔になった。それも怖かった。もう答えは一つしか無かった。

「はい」

そう答えて川上を目指す。
でもこの先は主の居る滝壺しか無かったはずだけどいいのかなー、回らない頭でぼんやり考えた。


途中木の枝から降りてくる大蛇に襲われかけても、弾き返していた。
魚ってこんなに凄かったっけ?最強だよね?そんな考えしか思いつかなかった。

滝壺まで来た。
当然これ以上は進めない。
恐々声をかけた。

「あの滝は僕では登れない。鳥にでも頼まないと・・・・」

見上げてその高さに驚いた。
水が流れ落ちる音もさる事ながら、彼処から落ちて無事だったこの魚の事も。

「うーん。どうしようかな、誰かに放り投げて貰うとか?」

「???何言ってるの?この高さ、尋常じゃ無いよ?落ちてくる水の量もハンパじゃ無いし!」

うーんと考えてる魚を見ていると、身体の下に大きな影ができた。
間違いない、主だ。

ゆらりと水面が揺れて、自分よりも数倍大きい魚が姿を現わす。

喰われるかと思いきや、うんざりした様な目で見られた。

「なんだまた来たのか。今度はどうした魚?」

「魚じゃないよ。ノミーだよ。カクレクマノミだよ。家に帰りたいのにこの滝邪魔なの!」

「邪魔と言っても滝は無くならんぞ。わしが弾き飛ばしてもたかが知れておるし、鳥にでも頼むか?」

「鳥!?鳥に頼めるの?どうするの?どうやるの?」

滅多にできない経験が出来るのだ。嬉しくてたまらない。
ウキウキ、ワクワクしながら返答を待つ。

ノミーは他の鳥を傷付けていたことを覚えていない。

まだ滝の上空を飛行していた鷹が名乗りを上げてくれた。

ただ滝壺付近まで降りてしまうと、上まで上がるのが大変なので、ある程度上まで上がってきて欲しいとのこと。

頑張ってジャンプしても、ワニに弾き飛ばしてもらっても、高さが足りない。
そうこうしてるうちに時間も経つ。
イライラしてくるノミーを怖く思っていると、主が協力してくれることになった。

水面に浮かぶノミー。
主が底まで潜り勢いを付けて水面まで登ってくる。その勢いのままに尾ビレでノミーを高く飛ばす。
勢いが弱まり落ちてきそうになったところを、鷹が背中で受け止めた。

ノミーはそのまま、ワニと主に礼を言って鷹に川上の村まで運んでもらった。

途中、自分がどんなことをしていたのかも教えられた。

うーむ、自分恐るべし。
そう思いながら上へ上へと進んで行った。
かなりの鳥旅だった。気持ち良くて、何回か寝かけたけど、その度に起こされた。
寝られると厄介だと思われているみたいだ。

村まで着くと、近くにあった野生の木から木の実を取っておすそ分けした。

お礼を言って鷹と別れた。

今日の事はお母さんに知られると怒られそうだから内緒にしておいた。

お腹も空いていたので、たんまりご飯を食べて、布団に入った。

疲れていたので、ぐっすり眠ることが出来た。



しばらくたって、私は何も言ってないのに、私がかなり下流の方まで流されたのが広まっていた。
当然お母さんの耳にも入り、お説教を食らってしまった。

何で何も言ってないのに・・・・・・・どこから漏れたんだろう?   くすん。
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