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廻る時
四十一
しおりを挟む目が覚めるとそこは育った伯爵家の庭だった。いつも通り読みかけの本が膝の上に置かれている。
今までの事は全て夢だったのだろうか?それにしては妙にリアルで怖かったのだが・・・・
気を取り直して本の続きを読んでいれば、腹違いの姉と義母が物凄い形相でこちらに向かって来た。
?何かしただろうか?この間はお腹が痛いと言って一週間ほど爺様の所で仕事をしていたし顔は合わせていないはずなんだけど
「怪我は?」
「は?」
「は?じゃないわよ。怪我してない?ナイフで皮膚を傷つけられたでしょ?」
「・・・えっと、いつの話ですか?」
「「えっ?」」
えって言われても、この間の仕事でも怪我なんてしてないし。
その前に二人の前で何かをしたことすらないぞ?どうなってるんだろう?悪い夢でも見たのかな?
「あの私はどこも怪我なんてしていせんよ?木の枝が折れて落ちてきた事もありませんし・・・」
「そ、そう・・・なら良いんだけど」
「なら体調はどう?気分悪いとかはないの?」
「ありませんよ?元気ですし、お祖父様のところにも顔を出して体調管理されていますから」
「じゃっじゃあもし、もし結婚の依頼がきたらどうするの?やっぱり受けるの?」
????何故そこで結婚の依頼?
「えっと、そもそも私は社交界には顔を出していませんよね?そんな私に結婚の申し込みなんてくるわけないじゃないですか。
お二人ともどうしたんですか?」
普段絶対関わってこないのに今日に限ってどうしたんだろう?ひっそりと生きていたはずなんだけど、何か気に触ることでもしたのかな?
「何もないのなら良いのよ。貴女のおかげで今の生活があるのだから」
「そうよ、何か不満があるのならちゃんと言いなさいよ」
どうした二人とも。て言うか私のおかげで何故今の生活がある?
「はぁ、ありがとうございます」
それだけ確認すると二人は屋敷の方に帰っていった。本当になんだったんだ?
それから数週間後私に縁談の申し込みがあった。
夢でも拒否できなくて引き受けたけど今回もそうなるんだろうか?
そんな事を思っていたらなんと父と義母が受ける事は出来ないと頑として引かなかった。
やはり今までのは悪い夢だったのかもしれない
そう思いいつもと同じ日々を過ごしていた。予定外だったのは爺様のところで結婚の申し込みに来た侯爵と会った事だろう。
彼と会った時と言うか顔を見た瞬間、嫌な汗が全身から溢れ出てその場で気を失ってしまった。
何と言うか精神が耐えられなかった。
子供を失った喪失感。じわじわ命を削られていく感覚。何度も味わった様な感覚が蘇って来たのだ。
起きた時彼が近くに居て驚くと同時に逃げ出した。だけど直ぐに捕まり抱きしめられた。
腕の中で暴れても離してもらえず、そのまま腕の中で吐いた。
汚いと思うかもしれない。だけどもそれ程嫌だったのだ。耐えられない。
それでも彼は拘束を解いてくれなかった。終いには一緒に風呂にまで入れられた。この時ばかりは爺様を呪った。
だけど風呂の中で彼は何もしてこなかった。それが唯一の救いでもあった。
その後話をするのも寝るのも彼の腕の中であった。勘弁して欲しかった。
次の日落ち着いているわけではないけど、話はできるだろうと応接室で話し合いを行う事になった。勿論私は彼ソーシアルの膝の上。そして何故か父も居た。
かいつまんで話を聞けば、今まで夢だと思っていたことは夢ではなく現実であること。
そして爺様、父、彼ソーシアルは理解していると言うこと。
そんな中で今回は義母と姉まで記憶を持っていたことを話せば、全てがまとまりかけているのだと話された。
だけど結婚だけは嫌だと話せば、それはできないと切られた。
子供たちの魂に会ったのだという。しかも応援されたらしい。
本当かどうかは分からないが、魂は保護されているとのことだった。そこら辺は女神がしっかり管理してくれていたそうだ。
そんな話を聞いても信用できなかった。同じ事を繰り返すだけではないのかと。
そこに今までは出てこなかった彼の父親、領地に籠っているという前侯爵が部屋に入ってきた。
「初めましてリーズラントさん」
彼ソーシアルをそのまま少し歳を取らせた様な風貌で体付きも彼より少しガッチリしていた。
「初めまして、リーズラントと申します。えっと・・・」
挨拶しようにも膝から下ろしてもらえない。
「ああ、構わない。息子は君に執着している様だからね。
今日こちらに伺ったのは息子に言われたからと、そちらのこの国の隠密を取り仕切る方から連絡があったからなのです」
そう言って彼は爺様の方を見た。今回の話し合いは爺様が計画した?
「はっきり言いましょう。何度か時間を巻き戻したことにより、息子に掛けられたというか王家に掛けられた呪いは解けています。
前回迄貴女が被害を被る形だったのですが今回はそんな事は無いと言い切れます」
「それは・・・どうしてそう言い切れるのですか?」
「妻が・・・王家の血を引く妻が我が領から外に出られる様になったのです」
えっ?そんな事?
「そんな事と思われるかもしれませんが重要事項です。
本来妻は王家の離宮からも出ることが出来ない人間でしたから。それが出来る様になったということは確実に呪いが解けたということ。それは王家にも報告済みです」
「ですが、私や子達が死ぬのは・・・」
「それも対処できるようになっております。実際侯爵家に居たあの執事は王族暗殺で処分しております。
勝手に住み着いていた母娘もそうです。彼等は執事に諭された元男爵家の者で没落して平民に落ちたのですが、その暮らしについていけずあの執事に目をつけられ駒にされたのです。こちらは邸自体を潰す事で居場所すら取り上げましたので問題ありません。
使用人達も碌でもないのが残っていたので全て解雇しております。
ああそれと離れにあった家に関しては取り壊さずそのままにしてありますよ?ボタン、押すの楽しいでしょう?」
それを言われると何とも言えない。でも、
「執事の彼は納得されたのですか?」
「納得も何ももうこの世に居ませんが?
言ったでしょう?王族暗殺だと。王妃に毒を盛ってお腹の子を殺しているんですよ」
っっっっ、酷い
「本来の目的は違った様ですが、今は各国でちょっとした宗教が問題になってまして、そちらの手の者だということもわかっています。そのせいで貴女が狙われたという事も。
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あの女神、豊穣の女神なんだ。仕事してない女神かと思った
「それに加えて、欲望の神が力を分け与えているのでよほどのことが無い限りは幸せに暮らせますよ?
実際貴女の手の甲に桔梗の花が刻まれているでしょう?
魂の消費が激しいのでこれ以上傷つかないようにとの配慮がなされているんですよ」
そんなになるまで放置していたのはあいつらだろうが。今更なんで・・・・
「創造神が思い腰をあげたそうです。なので幸せになってください。私も協力しますから」
その後彼は妻が心配ですからと領地に戻っていった。
残された私たちというか、私はどう捉えたら良いのか分からなかった。
そんな中ソーシアルが私をギュッと抱きしめた。
「リーズラント、今回は貴女の許しが出るまで手は出さない。ただ、貴女の傍にいる事は許して欲しい。
お願いだから私の前から消えないで」
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