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しおりを挟む朝起きたら、・・・あれ、朝なんだよね?物凄く日が高いところにあるみたいだけど。
身体が凄く気だるくて動きたくない。でも喉は乾くしお腹も空いた、とベッドボードを見ると、水と果物が用意されていた。
リヴァル様?
夢で「可愛いですよリリム」を何回も言われたけど、本当は来てくれていたのかな?
でもちゃんと抱き締めて頭を撫でてもらいたかったな。そう思うのは我儘なのかな?
右手のブレスレットを眺め口付けを落とす。淡くブレスレットが光り、消えていく。
応えて貰えたのが嬉しくて、お迎えが来るまで頑張ろうと思った。
でもこの日動き出せたのは、夕方前だった。それ迄ベッドがお友達。生理現象時は頑張りました。這うのは何時ぶりでしょう?
夕食はしっかり食べて、軽く柔軟体操をして床に着いた。明日からまた仕事。
桐の箱を探し出さないと。
意気込んだはいいが、ここからまた数ヶ月はなんの情報も無かった。
いつの間にか15歳の誕生日が過ぎました。
お祖父様や、バーナードさん、レイ、リヴァル様からプレゼントが届いた。
小物であったり、武具や武器。でも1番嬉しかったのは、リヴァル様からの扇。
リヴァル様の瞳の色の宝石が埋め込まれていて、それでも軽く舞の負担にならない。メッセージカードにも“早くリリムを抱きしめたいです”と書かれていてすごく嬉しかった。
でもそれと同時に、リヴァル様の誕生日を知らないことに気付いた。
休みの日に王都に向かい、影の執事さんに聞きに行った。
だけど帰ってきた答えは、
「誰も知らないのです。調べても分からず、母親でさえいつ産んだのか分からないと仰られていました。特定した者は謎の死を遂げています。
ですので、皆彼の方の誕生日を知りません。
リリム様が決めて頂ければ彼の方も喜ばれると思いますよ」
じゃあ何が喜ばれますか、と問えば、リリム様から頂けたらどの様な物でも喜ばれますよ。
全く参考にならないし、難しい。
お礼を言って静養都市に向かう。考えながらだったせいかいつの間にか屋敷に着いた。
何も考えずに壁を越えて入り込むと何時もと違う場所だと気付く。
失敗したかな?と思うも、気配は感じなかった。
ただ、屋敷が変わった作りだった。外から廊下に入れて、部屋のドアは取っ手がなく、横に開く物らしい。引き戸だったかな?
不用心に思えるも、誰も居ないからか?と思い、失礼します、と廊下に入る。
不思議な感覚がするけど、やっぱり人の気配は・・・・するね。
でも、何だろう?生きているのかな?そんな感じがする。
その部屋の引き戸の前に立ち、失礼します、入りますね。と開けて一歩踏み込む、中から風圧を感じるも、そのまま進むとベッドが置いてあり、誰かが寝ていた。
ベッドサイドに立つと明かりが灯り部屋が明るくなる。
一気に部屋が明るくなった事に驚いていると声を掛けられた。
「君、誰?」
「えっと・・・」
しばしの沈黙。お互い何も言わず見つめ合ってしまった。
「えーっとですね、大分前からこのお屋敷の一室を使わせてもらっています。リリムと言います。
貴方もずっと此処におられるのですか?」
「リリム?(そう君が)・・・うん、身体の調子が悪くてね。
ねえ、君って舞を踊るんだよね?見せてもらえない?」
「良いですよ、どの様なものがよろしいですか?」
「そうだね、僕は身体を動かすのが凄く辛いんだ、だから観ていて楽しくなる様なものをお願いできるかな?」
「分かりました。では」
シャラン、と音がして部屋の中で風が踊るように身体を動かす。
自然と足が出るので腕と身体全体で表現する。
踊り終わり、彼の方を見ると、涙を流していた。
思わず駆け寄ると大丈夫と言われた。
「お願いがあるんだけど、僕が探している物を見つけて欲しいんだ。
そしてそれをある人に返して欲しいの。ダメかな?」
「内容によりますね。どの様なものになりますか?」
「そうだね。んー、君は口が固い方?」
「秘密をベラベラ喋るバカはいませんが?」
「あははは、そうだね。うん、やっぱり君に頼もう。
探して欲しいのはアーバイン国の物で、桐の箱に深紅の宝石が入っているんだ。僕に贈られた物なんだけど、返さなければいけない状況になってね。送り返す準備をしていた時に、向こうからの使者に裏切り者が居たらしくて盗まれてしまったんだ。
手を尽くして探しているんだけど見つからず。僕も体調を崩してここに居る。八方塞がりの状態だから、アーバインにも協力して貰ってはいる。
でもアレだけはどうしても返したいから協力してほしい、ダメかな?」
「良いですよ。私が依頼を受けているのも同じ物の様ですし、問題ありません」
「えっ?依頼?君ルーダンの人間じゃ無いの?」
「?いいえ、アーバインの人間です。となると、あと桐の箱だけ探せば良いんですよね。特徴とか分かります?私実物見た事ないんで」
「ちょっとまって!宝石手に入れてるの?」
「ええ、見ますか?」
はい、と胸から取り出し渡す。顔を赤くしながら受け取り確認して、最後に炎の魔法を宝石に掲げると、部屋全体に模様が散り淡く光った。
それを確認すると満足したらしく返してもらえた。
「うん、確かに本物だね。凄いね、こっちはいくら探しても見つからないのにどうやって探したの?」
「情報は命です」
「ふふ、そうだね。じゃあ桐の箱だね。あれはカラクリが有って手順を踏まないとちゃんと開かない。そしてもう一つは、・・・」
「ありがとうございます。じゃあまた施設で探りでも入れておきますね。
あ、そういえばどんな風に体調が悪いんですか?私で良ければ話し相手にでもなりますよ?こう見えて教育はうけてるんで」
「そう?じゃあお言葉に甘えようかな。よろしくねリリム。僕はレーシェ。年は17だよ。
体調も、悪いと言うより女の身体から男の身体に変化していて、それを知られたくなくてここにいる様なものだよ」
「じゃあ身体は安定すれば大丈夫として。後は貴方の心次第ですよね。
女から男に変わる気持ちがわからないのでなんともいえませんが、貴方としてはどうなんです?」
「どうって、そうだね。本当は来年には結婚している筈だったんだ。だけどこんなことになった。
でも、男の身体になるにつれて、本当はこっちが正解だったんじゃ無いかと思い始めた。そうなると、婚約者に対して申し訳なくて・・・どうしたら良いのか分からなくなってこんな状況になってしまったんだ」
「んー、私の考えですけど、男の身体が本当の自分とお思いなら別に恥ずべきことでは無いですよね。婚約者に対してもですが、あまり自分を卑下されると、逆に相手の事も悪く言っている様に聞こえますよ?
貴方は貴方、相手は相手。そう考える方が楽ですよ?それに申し訳ないと思うのであれば、ちゃんと対面で思いを伝えるのが1番いいと思います。
難しいかもしれませんが、やってみてはどうですか?」
「はは、そんなこと言われたのは初めてだよ。みんな申し訳ないとか、僕が悪いとしか言わないから・・・ありがとう。君に逢えて良かった」
レーシェに涙を流されながらお礼を言われてしまった。
胸の内を吐き出せば一気に上手くいく事あるよね。
この調子で桐の箱見つかるといいな。
新しい知り合いが増えました。
※※※※※※
レーシェ視点
生まれた時の性別は女だった。なんの疑問も持たずに育ってきた。
それが崩れ去ったのは思春期と呼ばれる14、5の時に婚約者と初めて対面した時、
この人とはいい友人になれる。同性として。
何故かそう思った。逆にその時からなぜ自分の身体が女なのか分からなくなった。
そう思い始めた日から身体に変化が現れた。膨らみ始めた胸がなくなり、代わりに男の物が出てき始めた。
訳が分からず両親に報告すると直ぐに侍医の診察を受けた。
結果、本来男として生まれるべきなのに、あの時の影響で身体が女になり生まれてきた。影響を与えていた物が、無くなっていったので身体が元の姿に戻ろうとしているのだと。
今まで女として生きてきたのに今度は男として表に立たなければいけない。
当然婚約も解消。贈られてきた婚約の証の宝石も返さなければならない。
周りからも気持ち悪い、不気味だと陰口を叩かれる。そんな日が続き、宝石を返そうとアーバインからの使者に渡せば、そのまま行方を眩まされる。
精神的にドン底まで落とされ、起き上がれないほど身体に激痛が走った。何をするにも1人では出来なくなり、結局は厄介払いでルーダンにある屋敷に行かされることになった。
何もかも諦めて、せめて宝石だけでも見つかるようにと祈る毎日で彼に会った。名前だけは知っていた。このルーダンで有名な踊り子。
どこまでも真っ直ぐで疑う事を知らない瞳に縋ってみたくなった。
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