恭介&圭吾シリーズ

芹澤柚衣

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アンチノック・スターチスの誤算

5.

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 それは殆ど烏丸の直感だった。
 弟子に邪魔にされ、いじけたような気持ちがなかったかと言われれば確かにあった。そしてまだ学生の筈の、恭介の負担が少しでも和らげば良いと思っていたのも本当だった。それらはすべて後付けだったのかもしれないし、こうなることまで見越しての、先見の明だったのかもしれない。
 今となってはどちらが正解だろうと構わなかった。とにかく半ば衝動で片足を突っ込んでしまったこの依頼を一秒でも早く終わらせて、弟子のもとへと帰るのが烏丸にとっての絶対的最優先事項であった。
「詳しく聞かせてもらおうか」
 烏丸は笑った。愛想というには体温のない笑顔だった。
〝話したことがすべてだ〟
 臆せずに一之進が答える。忍び足で歩いているかのような、用心深い声だった。
「詰めが甘いなぁ」
 温くなった珈琲の中に角砂糖をひとつ落としながら烏丸が言った。水面に投じられた一石を、その場にいる全員が眺めているかのような不思議な空気だった。
「訛りがないよ、彼女」
 砂糖の粉がついた人差し指を行儀悪く女の霊に向けながら、烏丸が口角をあげる。
「出身が秋田というところから嘘なら、むかさり絵馬についてのノウハウは、ネットか何かで調べて手に入れた情報だということだ。人が何かを検索する時の行動理由には、大きく分けてふたつある」
 中指を人差し指に並べるように立てながら、烏丸が言った。場面転換を終わらせた直後に舞台に立ったナレーターのように、やけに解説じみた口調だった。
「ただの興味本意と、切実にその必要性に駆られた時だ」
〝……〟
 一之進は眉をひそめた。いちいち気に障る言い回しをする男だと改めて思った。
「今回は後者だな。露骨に追い詰められているって顔してるよ、彼女。嘘をつき続けるには難しいコンディションだな」
 人差し指と親指で、指についた僅かな砂糖を珈琲の中に払い落としながら烏丸が続けた。それは拓真に砂時計を思わせる仕草だった。
 この男は、良くも悪くも気分屋だ。猫っ可愛がりしている恭介のお願いならともかく、その他大勢の依頼など、期を逃せば二度と引き受けてくれないに違いなかった。
「絵師に心当たりはある。むかさりも呪具のひとつだからね。同業者の中に、つてがないこともない。けれど、」
 ついに、烏丸の指からすべての砂糖が落ちてしまった。間をあけずに、烏丸が微笑んだ。拓真には、それが時間切れの合図のように思えた。
「得体のしれない依頼は、この俺の信用を損なう恐れもある。この場で詳しく話せないのなら、この件はなかったことにしよう」
「一之進!!」
 拓真は思わず、前に転がるような勢いで立ち上がった。
「烏丸さんに慈悲はない!」
「流石にそれは失礼じゃないか?」
 露骨にムッとした顔で烏丸が突っ込んだ。
「このチャンスを逃したら、きっともう取り合ってはもらえないよ……! 今この場で、ちゃんと話そう! 僕たちだけで、どうにかできる問題じゃないんだ!」
〝……〟
「一之進!!」
 拓真は必死で説得を試みた。今期どころか、これまでの人生で一番の大声だと自分でも思った。
〝……わかったよ〟
 拓真のらしくない大声が揺らしたのは、テーブルに置かれた二つのタンブラーと、一段下がった奥にある、カウンターに座っていたマスターの心臓だけではなかったよう。髪をかきむしりながら、ついに一之進が折れた。煙に巻こうとして失敗した事実が大変気まずく、ばつの悪い顔で頭を下げる。
〝……鳴海には言わないでくれ〟
「興味ないよ」
 烏丸のその一言は、他言無用を約束したのと同意だった。
〝……ご迷惑を、お掛けして申し訳ありません。改めまして、宮下咲と申します〟
 今まで押し黙っていた女が、割って入るように頭を下げた。静謐を貫いたのは、協力することを約束してくれた二人の出す結論を待つためだった。
〝とある方を、ずっと探しているんです〟
「人探しなら、探偵に頼めば? 探偵トゥナイトスクープが、依頼を募集してるQRコードなら表示できるけど」
 局長が代わってからは歴が浅いが長寿番組としては名高い番組タイトルを無責任に口にしながら、烏丸が片手で携帯を弄る。
〝おい、わかってるだろ。この場合は霊だ〟
「まぁ……考えてることはだいたいわかったけど」
 携帯を裏向きに向けて机に置きながら、烏丸がジロリと一之進をねめつけた。

「〝降霊術〟に使うつもりだな?」

 タン、タンと、左足で床を叩く。片手でくるくると珈琲をかき混ぜながら、烏丸は市役所の職員のように起伏のない声音で言った。
「一之進との結婚は、むかさりを描かせるための口実だ。おおかたその想い人だか探し人だかを――式の招待客として描かせるのが目的ってとこだろ。行方知らずの霊を見つけるには、なるほど手っ取り早いだろうね。気長に探せば? と言いたいところだけど、どうやらそういう余裕はなさそうだし。さしずめ、」
 遊園地の観覧車のようにじれったくなるくらいゆっくりとした仕草で咲を見遣ってから、烏丸はカチャリとティースプーンを皿の上に戻す。
「何らかの事情で囚われていて、そういう方法でしか外に連れ出せない幽霊、とかね」
〝お願いです……! どうか、彼を助けてください……! もう他に方法がないんです……!〟
「俺は別に構わないけれど」
 烏丸は、伺うような言い方で一之進に視線を戻した。それは慈しみ溢れる感情からくる親切からというより、初めから範疇に入れるつもりがない者の薄情な視線だった。
「一之進はそれで良いのか? むかさりとはいえ、儀式を行えば本当に結婚することになるんだぞ。初めから別の人が好きだと分かっている相手と祝言を挙げるだなんて、あまり健全な行為じゃないと思うけど」
「考えがあります」
 先ほどの慣れない大声によるダメージを引き摺ったような声で、拓真が答える。細かい傷のついたタンブラーに残っていた水を一気に飲み、喉に潤いを戻してから更に続けた。
「むかさり絵馬を描いてくださる絵師様さえお呼びいただければ、式を真似事だけで終わらせるための方法は考えてあります。咲さんと一之進が、本当に結婚するような事態は、」
 そこまで言って、拓真は再びタンブラーを煽った。喉のダメージは重大だったらしい。水がなくなったことを失念していたため、氷がダイレクトに拓真の唇へと落下した。
「回避できるのか?」
〝……多分〟
 ふたつの氷を口の中に入れ、水分摂取をしている拓真の代わりに一之進が答えた。
「それなのに、鳴海には誤解させたままで良いんだな」
 伏せたままの携帯を片手に取って、くるりとひっくり返す。
「俺は子供の惚れた腫れたにまで干渉する趣味はないけど、恭介がこれ以上無茶な仕事をしないために動くためのあらゆることには興味があるよ。絵師は呼んでやるから、報酬は恭介宛に用意しとけ」
 耳に響くのは、弟子以外の人間にはどこまでも平等で、残酷な者の奏でるベル・カント。
 烏丸は、親指だけで受話器のアイコンをタップした。「あ」の行からは程遠い名前を検索するために、スクロールに勢いをつけ、下から上へと一気に流す。
「招待客の情報……は、まぁ、追々で良いか」
〝聞いておかなくていいのか?〟
「何か、急に興味がなくなった」
 気まぐれな猫はそう言って、検索しかけた電話番号さえ途中放棄をし、まるで不燃ゴミを指定区域に捨てるかのような、ぞんざいな仕草でポケットに収納する。
「恭介不足だから、もう帰るよ。ここは出しておくから、お前らはゆっくりしていったら」
 携帯からも一之進からも視線を外した烏丸の目は、心からぞっとする程何も映してはいなかった。上等なジャケットをタオルか何かのように適当に掴んで、組んでいた長い脚を解いた。店に意識を戻したのは、壁に掛けてある時計で時刻を確認する一瞬だけ。その直後に烏丸の意識はこの場所の誰にも、何にも向けられてはいなかった。
「……言ったろ、烏丸さんに慈悲はない」
 強烈な西日が照らす古びた喫茶店の床に、その長い脚が作る色の濃い影が躍るように溶けていく。恐らくは、出会ってから今も変わらずに絶対的なプライオリティを持つ愛弟子の元へと、軽やかな足取りで向かう背中を見送った。本当に、タイム・アップギリギリだったのだと改めて悟った瞬間だった。
〝最近、圭吾がやけに好戦的だからな……ただでさえ重かった恭介への偏愛が、著しく拗れていってるぞ。大丈夫なのか、あれ〟
「僕に聞かないで……」
 ようやく念願の砂糖に手を伸ばしながら、拓真は掠れた声で嘆く。
 適温などとうに過ぎたカップに、砂糖の塊がカツンと音を立てて落とされた。



「今度、先輩と出掛けることになったから」
 圭吾の平淡な声が、言葉尻だけ妙に浮わついているのを聞き逃しても良かったけれど。自分の恋が絶望的だからといって、友人の恋愛事情を一切耳に入れたくないなんて子供っぽいことはしたくなかった。
 鳴海は古き良き昭和の時代を思わせるような台所の真ん中に設置された、これまた古き良き昔ながらのダイニング・テーブルの上でぺしゃんこになっていた上体をゆるゆると持ち上げ、マシュマロのように柔らかい頬を掌に預ける。頬杖のなりそこないみたいなポーズで視線だけを向けて、菜箸で味噌を溶かしている圭吾の横顔を盗み見た。
 赤だしよりもミックスが好みの誰かさんに合わせて、今日も今日とて彼は黄土色のそれをお玉に掬い上げて片手鍋に入れているのかと思ったら、何だか無性に羨ましくなった。どうやら好きな人のために味噌を溶かすこともできない世界線にいるせいで振られたらしい自分には、日常の一部のように感じられるそんなやりとりさえ酷く妬ましいものに映ってしまう。
 普段はうまく飲み込めていた薄暗い感情が、鳴海の喉元にまでせりあがっている自覚はあった。まるで山頂付近でする深呼吸のように大袈裟に息を吸ってから、努めて明るい声を出す。
「出掛けるって、デート?」
 それは、AIのように機械じみた明るさのある声だった。
「……ではないな。依頼だし、烏丸さんがついてくる」
「それって、過保護過ぎじゃない?」
 流石に驚いて、鳴海はテーブルからずり落ちかけていた体勢を元に戻す。二人が遊びに――依頼と本人は言っているけれど、この浮かれようからして目的の大部分はデートだろう――出掛けるのに、まさか保護者同伴だとは思わなかった。
「今回は遠出だし、仕方ないんじゃないか?」
「え、どこ行くのさ」
 圭吾は、菜箸を鍋の脇に置き、後ろポケットから携帯を取り出す。親指だけで何度かタップしてから、位置情報の検索履歴から、一番上に履歴の残っている住所を人差し指で軽く叩いた。
「うわ、県外じゃん」
「だから、来るみたい」
「標高高いねー。これ何メートル?」
「さあ」
「お前って、興味のないことにはとことん興味ないよね!」
 圭吾を相手に質問による情報収集では補填できないデータが多いことを早い段階で悟った鳴海は、自身の携帯を取り出して素早くタップした。わかっていたのは地名だけ。標高が高いだろうと判断した鳴海の推測に大きな誤差はなく、簡単なハイキングに適している山間と言ってもいい立地条件だ。
「これは……烏丸さんがついてきちゃってもしょうがないね」
「そのことに関しては異論はないよ」
 菜箸の先についていた味噌で汚れた流し台を、ダスターで拭きながら圭吾が言った。不満の見え隠れするそれは異論がない人の声音ではなかったが、鳴海は深く突っ込まないことにする。
「あ、待って。それっていつ?」
「明日だけど」
「報連相!!」
 鳴海は思わず叫んだ。それは社会人の行う朝礼当番のように、清んでいて且つ力のある声だった。
 圭吾は乾燥ワカメを片手鍋に追加しながら暢気に首を傾げている。こんなこと言いたくはないが、初恋の自覚で少し浮かれている彼は、頭の回転速度が普段の三割減で遅くなっている気がする。
「いいよ、もう……出発前に教えてくれたことだけで満足するよ」
 じっと鳴海を不思議そうに見る瞳は、まるでこちらの方が非常識な人間のように思えてくるような純真さがあった。
 緩くかぶりを振って、再び頬を掌の上に載せる。
(明日……ってことは、烏丸さんダブルブッキングじゃない?)
 あれから、拓真にも一之進にも会っていない。けれど、真面目な拓真は鳴海が気にしているかもしれないその後のことを、逐一メールで知らせてくれていたのだ。携帯会社からランダムに発信されるキャンペーン告知メールやダイレクト・メールであれば配信停止の手続きをとったのかもしれないが、それは鳴海にとって気にならない訳がない案件の行く末であり、視野にも思考にも入れたくない現実だった。ありとあらゆる感情や葛藤に阻まれ返信こそしないものの、それでも内容確認だけは怠らずにいられなかった。
 どうにか破談してくれという鳴海の切なる願いは届かず、先日ついに絵師が見つかり、烏丸の立ち合いのもと儀式を行うことになったという日程の報告が来た。覚えたくもなかったそのXデーは、それでも脳に嫌という程こびりついて離れなかった。それは圭吾の言う「明日」と同じ日取りだったと記憶している。
 一之進の結婚の儀という口にするのもおぞましい依頼を引き受けている筈の烏丸が、一体どういう手品で、同じ日に恭介たちのデートにも付き合うというのだろうか。
(もう、どうでも良いか……)
 ついに思考が停止して、鳴海はずるずるとテーブルに沈み込んだ。

 一之進が鳴海を選んでくれないのなら。一生この気持ちに答えるつもりがないのなら。
 この世のあらゆることが、すべてにおいて鳴海にはどうでもよいものになっていた。
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