近未来怪異譚

洞仁カナル

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遺伝子改造

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「なんだったの、さっきの」



息を切らしながら、奨君はボヤいた。



「中学生のこと? 猫又のこと?」


「両方だよ。あの中学生も怪しいし、猫又には付きまとわれるし」


「付き纏われるって言っても二回だし、偶然かもよ」


「でも二回も襲われそうになるって、偶然かなあ?」


「わたげ達が関係しているのかな……?」



僕は手の中のわたげを見た。



この正体不明のふわふわな生き物が、何かに関係しているのだろうか?



僕はわたげの白い毛を撫でた。柔らかい肌触りは僕の心を少し落ち着かせてくれた。



息を整えていると、今度は不愉快な音声が聞こえてきた。



「あきらクーン、すすむクーン。なにしてんのー?」



嫌なことというのはなぜこうも重なるのだろう。



僕達を呼んだのは、翔生達だ。



「こんなところで何してんだよ。その白い物体、なんだ? 見せろよ」



僕達はあわててわたげとボルボを隠したが、遅かった。



返事を待たずに翔生は奨君の腕を乱暴につかんでボルボを奪った。



「ずいぶん大事そうにしていたところを見ると、珍しいものなんじゃない? どうする翔生君」



取り巻きAが媚びるように翔生に言う。



「返してよ!」


「なんだこいつ? 生き物か?」


翔生はボルボをグニグニと乱暴に触った。



「軽くてよく飛ぶな」



翔生達はボルボをつかってキャッチボールを始めた。



「こいつ使ってサッカーしようぜ」


「やめて! 返して!」



奨君はボルボを取り返そうと必死だったが、翔生達がボルボを投げるのに翻弄されるだけだった。



奨君が取り巻きBにつかみ掛かると、隙を見てボルボは逃げ出した。


今まで見たことのないような速さで走る。


見失うことはないが決して追いつけない速度。



「おい!待て!」



いち早く翔生が追いかけた。


図体はでかいのに動きは俊敏だ。


翔生に続いて取り巻き二人もかけていく。



遅れて僕たちもついていく。


奨君の大切な家族、失うわけにはいかない。


僕はわたげをしっかり抱いて、その存在を肌で感じながら、ひたすら足を動かした。
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