1 / 37
遺伝子改造
1
しおりを挟む
教室前方の壁の上半分を占める黒いディスプレイに書記の女の子が日付を書く。
ディスプレイは黒、文字は白。
昔あった黒板とチョークのデザインにしていると先生は言っていた。
黒い背景に白い文字は人の集中力を上げるらしいが、僕の意識は散漫だった。
日付の隣には本日のディベートのテーマ『生物兵器はあっていいのか』が大小のバランスが取れていない字で書き出された。
小学生が討論するには難しすぎると思うのだけど、決めたのは先生ではなくもっと上の人たちだろうから先生に文句を言っても仕方がない。
僕はうんざりとした気持ちで窓の外を眺めた。
「遺伝子を改造して生物兵器を作ることは悪いことだと思います」
「動物が可哀想だと思います」
「家畜が許されるのなら生物兵器も許されると思います」
「人を殺す道具を作るのがいけないと思います」
「もし目的が『殺人』以外だったらどうするんですか?」
週に一回ディベートの授業。
過去の人間が犯した罪について考えることが子孫である僕らの役目らしい。
過去の人がやらかしたことの責任を僕達に背負わされても困るのだが、拒否権なんてないし仕方ない。
「他に意見のある人はいますか? ……いませんね。では当てます。煌君、お願いします」
上の空だったのがバレたようで、皆んなの視線が僕に集まった。
焦りながら適当な答えを考えて、動揺を悟られないよう努めて喋った。
答えの出ない討論の時間が終わり、先生が教壇に上がって毎度お決まりの言葉を述べた。
「バイオテクノロジー、インフォメーションテクノロジー、スピリチュアルテクノロジーなど色々あるが、それぞれのいい面、悪い面を考えることが大切だ。自分の頭で考えること、それを常に意識するように」
先生のアリガタイお言葉を頂戴したところで、今日の授業の終わるを告げるチャイムが鳴った。
時間ぴったりに終えられたこちが嬉しいのか、先生は小さくガッツポーズしていた。
こんなことで喜ぶなんて、先生の人生はよっぽどいいことがないのだろう。
僕も人のことは言えないけど。
ディスプレイは黒、文字は白。
昔あった黒板とチョークのデザインにしていると先生は言っていた。
黒い背景に白い文字は人の集中力を上げるらしいが、僕の意識は散漫だった。
日付の隣には本日のディベートのテーマ『生物兵器はあっていいのか』が大小のバランスが取れていない字で書き出された。
小学生が討論するには難しすぎると思うのだけど、決めたのは先生ではなくもっと上の人たちだろうから先生に文句を言っても仕方がない。
僕はうんざりとした気持ちで窓の外を眺めた。
「遺伝子を改造して生物兵器を作ることは悪いことだと思います」
「動物が可哀想だと思います」
「家畜が許されるのなら生物兵器も許されると思います」
「人を殺す道具を作るのがいけないと思います」
「もし目的が『殺人』以外だったらどうするんですか?」
週に一回ディベートの授業。
過去の人間が犯した罪について考えることが子孫である僕らの役目らしい。
過去の人がやらかしたことの責任を僕達に背負わされても困るのだが、拒否権なんてないし仕方ない。
「他に意見のある人はいますか? ……いませんね。では当てます。煌君、お願いします」
上の空だったのがバレたようで、皆んなの視線が僕に集まった。
焦りながら適当な答えを考えて、動揺を悟られないよう努めて喋った。
答えの出ない討論の時間が終わり、先生が教壇に上がって毎度お決まりの言葉を述べた。
「バイオテクノロジー、インフォメーションテクノロジー、スピリチュアルテクノロジーなど色々あるが、それぞれのいい面、悪い面を考えることが大切だ。自分の頭で考えること、それを常に意識するように」
先生のアリガタイお言葉を頂戴したところで、今日の授業の終わるを告げるチャイムが鳴った。
時間ぴったりに終えられたこちが嬉しいのか、先生は小さくガッツポーズしていた。
こんなことで喜ぶなんて、先生の人生はよっぽどいいことがないのだろう。
僕も人のことは言えないけど。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
京都鴨川まねき亭~化け猫さまの愛され仮嫁~
汐埼ゆたか
キャラ文芸
はじまりは、京都鴨川にかかる『賀茂大橋』
再就職先に行くはずが迷子になり、途方に暮れていた。
けれど、ひょんなことからたどり着いたのは、アンティークショップのような古道具屋のような不思議なお店
『まねき亭』
見たことがないほどの端正な容姿を持つ店主に「嫁になれ」と迫られ、即座に断ったが時すでに遅し。
このときすでに、璃世は不思議なあやかしの世界に足を踏み入れていたのだった。
・*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
『観念して俺の嫁になればいい』
『断固としてお断りいたします!』
平凡女子 VS 化け猫美男子
勝つのはどっち?
・*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイトからの転載作品
※無断転載禁止
悪魔公爵鷲頭獅子丸の場合
岡智 みみか
キャラ文芸
悪魔公爵ウァプラの最後にして最愛の息子と称される獅子丸は、人間界への修行を命じられる。『聖人』の魂を持つ涼介と悪魔の契約を交わし、その魂を魔界に持って帰らなければ、獅子丸は真の息子として認められない。人間界で知り合った下級妖魔の沼女、スヱと共に、涼介の魂をめぐる争いが始まった。
蛇に祈りを捧げたら。
碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…?
神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は?
人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる