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25.女王様
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「ルナ姉。ここどこだと思う?」
「普通に考えれば、迷宮の中でしょうね」
「そうだよね」
前方にいたはずの主と後ろにいたはずの仲間の姿がない。
森の中。2人はつい先日行ったエルフの森を思い出していた。
「エルフの森じゃないよね?」
「そのはずよ。匂いが違う」
獣人族であるルナは嗅覚が鋭い。
エルフ族の匂いを覚えているので、エルフ族の森ならばエルフ族の匂いがするはずであるが、全くしない。
「父さんの匂いは?」
「ごめんなさい。マサとフィーの匂いはあっちからするのだけど」
仲間の匂いがする方を指さす。
「そっか。とりあえず、お姉ちゃんたちと合流する?」
「そうね」
2人は警戒しながら仲間の匂いがする方へ進んでいく。
「あれ、なんだと思う?」
「妖精?」
少し進んだ先で無数の小さな光の玉が浮いていた。
「だれだれ?」
「人族だ! 獣人族だ!」
小さな光の玉が近づいてくる。
よく見ないとわからないが、背中に翅が生えている人の形をしていた。
「妖精。本当にいたんだ」
「すごい数」
2人の周りをクルクルと無数の小さな光の玉が回る。
「この人族、紫だ!」
「ほんとだ! 瞳の色も違うよ!」
オーギスの方に光の玉が集まっていく。
「え? 今は黒だよね?」
「え、えぇ」
オーギスが忌み子であるというのはアドから聞いているので仲間の全員は知っている。
魔法の粉で黒くしているはずなのに、妖精たちは紫だと言ってオーギスに集まっている。
「紫だよ!」
「女王様に報告だ!」
「連行だ!」
オーギスの光の玉が密集したかと思えば、人型の光を放つ者となって宙に浮いた。
「え、えぇぇぇ!?」
「オーギス!?」
ルナが光に包まれたオーギスを捕まえようとするが、何かに阻まれてしまう。
「いっ!」
壁に手をぶつけたような衝撃が手に伝わる。
人型の光はどんどん離れていく。
「逃がさない!」
オーギスの匂いはわかっているので見失っても追いかけることができるが、あんな大きな光を見失うことはなかった。
「女王様! 勇者を連れてきた!」
「勇者? 勇者なら神殿にいるぞ」
オーギスに密集していた光が散っていく。
目の前には美しい少女が花に水をやっていた。
オーギスが連れてこられた場所は、いろんな花が咲いている美しい場所だった。
木々はなく、小さな家のようなものが無数に建っていて、奥には小さな城が見えた。
「ここは」
「私の眷族が失礼した。ここは妖精の国だ。しかし、よく似ている。紫の髪に、左右で違う色の瞳」
花に水をやっていた少女がオーギスに近づいて謝罪する。
少女は戸惑っているオーギスの髪に手を伸ばしていき、撫でるように髪を触る。
「あ、あなたは?」
「あぁ、すまない。懐かしくてつい触ってしまった。私は」
「オーギス!」
少女がオーギスの髪から手を離して名乗ろうとした時、空間に波紋が広がっていき、波紋の中心からルナが現れた。
「ルナ姉。大丈夫だから」
武器を構えていたことで周りにいた妖精たちが逃げていった。
オーギスはルナを落ち着かせるように笑みを向けて近づいていく。
「よかった。光が消えたから、どこかに転移したのかと」
ルナはオーギスの姿を見て安心したのかその場で座り込む。
オーギスは座り込んだルナに手を伸ばして、ルナはオーギスの手を握って立ち上がる。
「私の眷族が迷惑をかけてしまったな。どうか、許してほしい」
様子を見ていた少女が2人に近づいていき謝罪を行なった。
「あなたが、女王様?」
「あぁ。私は妖精族の女王、レノル。気軽にレノルと呼んでくれ」
「私はルナと言います」
「オーギスです」
「ルナとオーギスだね。何か聞きたいことがあるのだろ?」
「レノル様、ここはどこなのでしょうか? 私たちは迷宮のクリスタルで帰還したはずなのですが、いつの間にか森にいて」
「ここは迷宮の中だよ。出る方法は勇者が持って来る聖剣を使わなければならない」
「勇者?」
「何度も説明するのはめんどうだからね。全員が集まってから説明するよ。さあ、座ってお茶でも飲もう。君たちの話を聞かせてくれると嬉しいな」
レノルが指を鳴らすと、何もなかった場所にテーブルと椅子が現れる。
さらに指を鳴らすとテーブルの上にティーセットとお菓子が現れた。
「あ、そうそう。2人にこれを上げるよ。眷属が迷惑をかけたお詫びだと思ってくれ」
レノルが2人の方を向いて、指を鳴らすとオーギスの前には大剣が現れて地面に突き刺さり、ルナは体が光って巫女の知識を取り戻した。
「オーギスには私の加護がついたフェアリーブレードを。壊れることもなく、魔力を注げば私の力を使うことができるだろう。ルナにかけられていた呪いは解いた。さらに私の加護を与えた。あとで確認してみるといい」
「綺麗だ」
オーギスは地面に刺さっている大剣フェアリーブレードを引き抜いて、七色に光る大剣に見とれていた。
「あ、ありがとうございます。これで、治癒魔法が使えます」
呪いによって封じられていた知識を取り戻す。
そして納得する。アドの死ぬ夢は神託だったのだと。
そして理解する。運命を打ち破ったアドには神からの祝福が与えられていることに。
「普通に考えれば、迷宮の中でしょうね」
「そうだよね」
前方にいたはずの主と後ろにいたはずの仲間の姿がない。
森の中。2人はつい先日行ったエルフの森を思い出していた。
「エルフの森じゃないよね?」
「そのはずよ。匂いが違う」
獣人族であるルナは嗅覚が鋭い。
エルフ族の匂いを覚えているので、エルフ族の森ならばエルフ族の匂いがするはずであるが、全くしない。
「父さんの匂いは?」
「ごめんなさい。マサとフィーの匂いはあっちからするのだけど」
仲間の匂いがする方を指さす。
「そっか。とりあえず、お姉ちゃんたちと合流する?」
「そうね」
2人は警戒しながら仲間の匂いがする方へ進んでいく。
「あれ、なんだと思う?」
「妖精?」
少し進んだ先で無数の小さな光の玉が浮いていた。
「だれだれ?」
「人族だ! 獣人族だ!」
小さな光の玉が近づいてくる。
よく見ないとわからないが、背中に翅が生えている人の形をしていた。
「妖精。本当にいたんだ」
「すごい数」
2人の周りをクルクルと無数の小さな光の玉が回る。
「この人族、紫だ!」
「ほんとだ! 瞳の色も違うよ!」
オーギスの方に光の玉が集まっていく。
「え? 今は黒だよね?」
「え、えぇ」
オーギスが忌み子であるというのはアドから聞いているので仲間の全員は知っている。
魔法の粉で黒くしているはずなのに、妖精たちは紫だと言ってオーギスに集まっている。
「紫だよ!」
「女王様に報告だ!」
「連行だ!」
オーギスの光の玉が密集したかと思えば、人型の光を放つ者となって宙に浮いた。
「え、えぇぇぇ!?」
「オーギス!?」
ルナが光に包まれたオーギスを捕まえようとするが、何かに阻まれてしまう。
「いっ!」
壁に手をぶつけたような衝撃が手に伝わる。
人型の光はどんどん離れていく。
「逃がさない!」
オーギスの匂いはわかっているので見失っても追いかけることができるが、あんな大きな光を見失うことはなかった。
「女王様! 勇者を連れてきた!」
「勇者? 勇者なら神殿にいるぞ」
オーギスに密集していた光が散っていく。
目の前には美しい少女が花に水をやっていた。
オーギスが連れてこられた場所は、いろんな花が咲いている美しい場所だった。
木々はなく、小さな家のようなものが無数に建っていて、奥には小さな城が見えた。
「ここは」
「私の眷族が失礼した。ここは妖精の国だ。しかし、よく似ている。紫の髪に、左右で違う色の瞳」
花に水をやっていた少女がオーギスに近づいて謝罪する。
少女は戸惑っているオーギスの髪に手を伸ばしていき、撫でるように髪を触る。
「あ、あなたは?」
「あぁ、すまない。懐かしくてつい触ってしまった。私は」
「オーギス!」
少女がオーギスの髪から手を離して名乗ろうとした時、空間に波紋が広がっていき、波紋の中心からルナが現れた。
「ルナ姉。大丈夫だから」
武器を構えていたことで周りにいた妖精たちが逃げていった。
オーギスはルナを落ち着かせるように笑みを向けて近づいていく。
「よかった。光が消えたから、どこかに転移したのかと」
ルナはオーギスの姿を見て安心したのかその場で座り込む。
オーギスは座り込んだルナに手を伸ばして、ルナはオーギスの手を握って立ち上がる。
「私の眷族が迷惑をかけてしまったな。どうか、許してほしい」
様子を見ていた少女が2人に近づいていき謝罪を行なった。
「あなたが、女王様?」
「あぁ。私は妖精族の女王、レノル。気軽にレノルと呼んでくれ」
「私はルナと言います」
「オーギスです」
「ルナとオーギスだね。何か聞きたいことがあるのだろ?」
「レノル様、ここはどこなのでしょうか? 私たちは迷宮のクリスタルで帰還したはずなのですが、いつの間にか森にいて」
「ここは迷宮の中だよ。出る方法は勇者が持って来る聖剣を使わなければならない」
「勇者?」
「何度も説明するのはめんどうだからね。全員が集まってから説明するよ。さあ、座ってお茶でも飲もう。君たちの話を聞かせてくれると嬉しいな」
レノルが指を鳴らすと、何もなかった場所にテーブルと椅子が現れる。
さらに指を鳴らすとテーブルの上にティーセットとお菓子が現れた。
「あ、そうそう。2人にこれを上げるよ。眷属が迷惑をかけたお詫びだと思ってくれ」
レノルが2人の方を向いて、指を鳴らすとオーギスの前には大剣が現れて地面に突き刺さり、ルナは体が光って巫女の知識を取り戻した。
「オーギスには私の加護がついたフェアリーブレードを。壊れることもなく、魔力を注げば私の力を使うことができるだろう。ルナにかけられていた呪いは解いた。さらに私の加護を与えた。あとで確認してみるといい」
「綺麗だ」
オーギスは地面に刺さっている大剣フェアリーブレードを引き抜いて、七色に光る大剣に見とれていた。
「あ、ありがとうございます。これで、治癒魔法が使えます」
呪いによって封じられていた知識を取り戻す。
そして納得する。アドの死ぬ夢は神託だったのだと。
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