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24.神殿
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「ここは、どこだ?」
主人であるアドの姿もなければ、先に転移しているはずのアン達もいない。
そばにいるのはフィーだけであった。
「わからない。迷宮の、中なのかな?」
「かもしれない」
ジャングル。実際に行ったことはないが、テレビなどで見た光景に似ていた。
「とりあえず、先に進むか」
道と呼べるものはない。視線の先にあるのは自分の二倍ほどもある木々と自分と同じくらいの大きさがある植物。
後方に壁があれば迷宮だというのが分かるのだが、後方に広がるのは前方と同じ光景だった。
「そうだね。ご主人様達と合流できるといいけど」
周りを警戒しながら進んで行く。
目印となるように木に傷をつける。
「マサ?」
「どうした?」
「なんか、おかしくない?」
「魔物がいないことか?」
「それもあるけど、マサのネックレスが光ってる」
フィーに言われて気づく。ネロが保管されている黒い宝石がかすかに光っていた。
「召喚しろって、ことなのか?」
マサの声に反応するように光が強くなる。
もしもの時のためにアドから魔石を預かっていてよかったと思いながら地面に魔法陣を描いていく。
フィーはマサを守るように杖を構える。
今まで魔物の姿はなかったが、気が抜ける状況ではない。
「こい、ネロ」
描いた魔法陣の中に魔石を投げ込み、魔法陣に手を当てて魔力を注ぐ。
「マサ、ここは神域だ」
魔法陣の上に現れたのは、紫色の髪を持つ女性だった。
「ネロ?」
まさかと思いながらネロの名前を呼ぶ。
「うん。そうだよ?」
骸の姿はどこへいったのか?
どうして人間のような姿をしているのか、聞きたいことはあったが、マサがネロに質問する前にフィーが声を上げた。
「オーギスと同じ、紫の髪。左右で違う色の瞳」
伝え聞く魔王の姿に似ているとフィーは思った。口に出そうとした時、ネロが声を上げた。
「私はネロだ。それ以上でも、それ以下でもないよ。そんなことより、この先にはマサが必要とする力があるはずだ。私を信じて、先に進まないか?」
マサはフィーを見る。フィーと目があった。
コクリと頷くマサにつられて、フィーもコクリと頷く。
どちらからともなく2人は手を繋いだ。
「こっちだ。私はここを知っている」
ネロについて行くと、ジャングルを抜けた。
視界に入って来たのは、神殿と呼ぶにふさわしい建物だった。
「私は中には入れない。2人で中に入ってくれ。私はここで待っているよ」
ネロが神殿の前で立ち止まり、マサとフィーに笑みを向ける。
2人は手を繋いだまま神殿に入っていった。
「これも運命か。私と同じ道を歩まないよう、私が彼らを支えられるといいんだが。いや、もう支えはあるのだろうな」
2人が神殿に入って行くのを見ながら誰にいうでもなく、独り言を呟いて彼らの主人であるアドを思い出す。
「私は私にできることをするさ」
ネロは神殿を見上げながら、2人が出てくるのを待った。
「剣?」
神殿に入ってるために階段を上った先で視界に入って来たのは、さらに階段を上った先にある四角の石に突き刺さっている剣だった。
「聖剣というやつだろうか?」
マサはお決まりの展開ならそれしかないと思いながら、フィーと一緒に階段を上って行く。
「ボロボロだよ?」
石に突き刺さっている剣を間近で見ると錆びついていた。
「とりあえず、引っこ抜いてみるか」
フィーの手を離して剣に近づいて行く。
錆びついているのだろう柄を握って抜こうと力を入れるまでもなく、スポッと抜けてしまう。
「抜けたね」
「抜けたな」
抜いた剣を見てみるが、ただの錆びた剣にしか見えない。
ガガガと何かが開く音が神殿内に響く。
「壁が」
「開いてるな」
音が聞こえた方向を見ると先ほどまで壁だったはずが、扉のように開いていた。
「奥に行ってみるか」
「大丈夫かな?」
「たぶん、大丈夫だ」
マサは説明できない確信を持ってフィーと一緒に奥の部屋へ入っていく。
奥の部屋には、鞘が浮いていた。
「浮いてるね」
「こいつの鞘だ」
マサは浮いている鞘に手を伸ばす。
鞘がマサの手に吸い込まれるように近づいていく。
近づいてきた鞘をマサが掴んで、鞘に錆びた剣を収める。
鞘に収まっている剣が輝く。
「聖剣アノルテイン」
マサが剣の名前を呼んで鞘から剣を抜く。
錆びていた剣は元の姿だと思われる美しい銀色を放っていた。
主人であるアドの姿もなければ、先に転移しているはずのアン達もいない。
そばにいるのはフィーだけであった。
「わからない。迷宮の、中なのかな?」
「かもしれない」
ジャングル。実際に行ったことはないが、テレビなどで見た光景に似ていた。
「とりあえず、先に進むか」
道と呼べるものはない。視線の先にあるのは自分の二倍ほどもある木々と自分と同じくらいの大きさがある植物。
後方に壁があれば迷宮だというのが分かるのだが、後方に広がるのは前方と同じ光景だった。
「そうだね。ご主人様達と合流できるといいけど」
周りを警戒しながら進んで行く。
目印となるように木に傷をつける。
「マサ?」
「どうした?」
「なんか、おかしくない?」
「魔物がいないことか?」
「それもあるけど、マサのネックレスが光ってる」
フィーに言われて気づく。ネロが保管されている黒い宝石がかすかに光っていた。
「召喚しろって、ことなのか?」
マサの声に反応するように光が強くなる。
もしもの時のためにアドから魔石を預かっていてよかったと思いながら地面に魔法陣を描いていく。
フィーはマサを守るように杖を構える。
今まで魔物の姿はなかったが、気が抜ける状況ではない。
「こい、ネロ」
描いた魔法陣の中に魔石を投げ込み、魔法陣に手を当てて魔力を注ぐ。
「マサ、ここは神域だ」
魔法陣の上に現れたのは、紫色の髪を持つ女性だった。
「ネロ?」
まさかと思いながらネロの名前を呼ぶ。
「うん。そうだよ?」
骸の姿はどこへいったのか?
どうして人間のような姿をしているのか、聞きたいことはあったが、マサがネロに質問する前にフィーが声を上げた。
「オーギスと同じ、紫の髪。左右で違う色の瞳」
伝え聞く魔王の姿に似ているとフィーは思った。口に出そうとした時、ネロが声を上げた。
「私はネロだ。それ以上でも、それ以下でもないよ。そんなことより、この先にはマサが必要とする力があるはずだ。私を信じて、先に進まないか?」
マサはフィーを見る。フィーと目があった。
コクリと頷くマサにつられて、フィーもコクリと頷く。
どちらからともなく2人は手を繋いだ。
「こっちだ。私はここを知っている」
ネロについて行くと、ジャングルを抜けた。
視界に入って来たのは、神殿と呼ぶにふさわしい建物だった。
「私は中には入れない。2人で中に入ってくれ。私はここで待っているよ」
ネロが神殿の前で立ち止まり、マサとフィーに笑みを向ける。
2人は手を繋いだまま神殿に入っていった。
「これも運命か。私と同じ道を歩まないよう、私が彼らを支えられるといいんだが。いや、もう支えはあるのだろうな」
2人が神殿に入って行くのを見ながら誰にいうでもなく、独り言を呟いて彼らの主人であるアドを思い出す。
「私は私にできることをするさ」
ネロは神殿を見上げながら、2人が出てくるのを待った。
「剣?」
神殿に入ってるために階段を上った先で視界に入って来たのは、さらに階段を上った先にある四角の石に突き刺さっている剣だった。
「聖剣というやつだろうか?」
マサはお決まりの展開ならそれしかないと思いながら、フィーと一緒に階段を上って行く。
「ボロボロだよ?」
石に突き刺さっている剣を間近で見ると錆びついていた。
「とりあえず、引っこ抜いてみるか」
フィーの手を離して剣に近づいて行く。
錆びついているのだろう柄を握って抜こうと力を入れるまでもなく、スポッと抜けてしまう。
「抜けたね」
「抜けたな」
抜いた剣を見てみるが、ただの錆びた剣にしか見えない。
ガガガと何かが開く音が神殿内に響く。
「壁が」
「開いてるな」
音が聞こえた方向を見ると先ほどまで壁だったはずが、扉のように開いていた。
「奥に行ってみるか」
「大丈夫かな?」
「たぶん、大丈夫だ」
マサは説明できない確信を持ってフィーと一緒に奥の部屋へ入っていく。
奥の部屋には、鞘が浮いていた。
「浮いてるね」
「こいつの鞘だ」
マサは浮いている鞘に手を伸ばす。
鞘がマサの手に吸い込まれるように近づいていく。
近づいてきた鞘をマサが掴んで、鞘に錆びた剣を収める。
鞘に収まっている剣が輝く。
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