宝箱を開けたら

riki

文字の大きさ
上 下
12 / 41

11.奴隷会議2

しおりを挟む
「第二回。奴隷会議を始めます。
 二番奴隷のオーギスが進行させていただきます。
 父さんは強かった」

「力はオーギスの方が強いだろうけど、速かったな。
 あと油断してるようでめっちゃ警戒されてる」

 ギルドからの帰り道。
 マサがアドに膝カックンをしようとして失敗した。

 アドはいつの間にかマサの隣にいてマサの耳をつまみあげた。

 痛みを思い出してしまったのか。
 マサはつままれた方の耳をさする。

「全く。ご主人様に何してるんですか。
 明日の朝食はマサさんだけ一品少なくします」

「ごめんなさい、もうしません!」

 フィーに胃袋を掴まれているマサは土下座をして許しをこう。

「マサの朝食はどうでもいいので置いといて。
 ご主人様が強いのは予想外というか。
 あそこまでの動きをされるとは思いませんでした。
 あれでランクCというのは、納得できませんね」

「そうですか?
 ご主人様が強いのは当たり前だと思ってました。
 だって大金貨を45枚以上は稼いだ人ですよ?」

 正確な家の値段はわからないが、フィーの見立てでは最低でも15枚は必要だと思われる。
 そこに自分たちの値段を足して出てきた枚数をアドは稼いでいるのだとフィーは言う。

「そう言われるとそうですね。
 強くて当たり前。ランクを上げていないだけ?
 でもご主人様の目標はランクSのはず。
 ランクを上げないのはなぜ?」

「アドさん自身がランクCくらいだと思ってるってところだと思うよ?」

「何か知っているのか?」

「ちょっと前にアドさんと2人で話したんだけど。
 俺たちに嫉妬するほど自分には才能がないって、俺たちの才能が羨ましいって言ってた」

「ご主人様が」

「そうか」

「確かにアドさんには才能がないんだと思う。
 けど諦めなかった人なんだ。自分の夢を。
 やっとその夢に俺たちと進むことでたどり着ける。
 叶えてあげようぜ?」

「当たり前です」

「父さんの夢は、俺の夢だから」

「上から目線な発言は見逃すとして、誰もご主人様に逆らうなんて言っていないからね」

「だって俺天才ですし」

「「「うざ」」」

「ひでぇ!」

「明日は2の迷宮攻略ですが、装備の点検は大丈夫ですか?」

「完璧」

「当たり前です」

「死にたくないからね。ちゃんとしてあるよ」

「それでは明日のために眠りましょうか」

 第二回。奴隷会議はアドの夢を叶えることが目的であることを再確認して終了した。

「コソコソ何をしてるのかと思ったら」

 倉庫の部屋から出てきた奴隷たちの背中を物陰から見ていたアド。
 ポタリと床に水が落ちる。

「…まだまだ、追い越させはしないさ」





「2の迷宮が、封鎖?」

 朝食を済ませてギルドに立ち寄ると何やらざわついていたのでナーナに声をかけたところ、2の迷宮が封鎖されたらしい。

「はい。魔物の数が減っているようです。
 異常だと感じたので昔の記録を調べたところ、一定の場所に集まっているのではないかと予想されます」

「一定の場所に?」

「はい。昔の記録にあったのは、1階層から9階層で出会う魔物の数が減ったが、10階層に入ると視界に飛び込んできたのが」

「魔物の群れだった?」

「そのようです。
 これからランクAのアンさんのパーティーに調査をお願いするところです」

「それに同行は可能か?」

 調査が必要なら人数も必要になるはずなので、同行が可能か聞いてみる。
 返ってきた答えは予想通りのものだった。

「ランクB以上の冒険者であれば、同行は可能です」

 仕方ない。外の魔物討伐に予定を変更するか。
 いや、いつまで封鎖かわからないから遠出するのもありではないか?

「そうか。俺たちは無理だな」

「はい。すみません」

 ナーナから離れて依頼が貼られている掲示板を確認する。

 目的の依頼を見つけたので、ナーナに依頼を受ける手続きを行ってからギルドを出る。

 家に戻ると全員でリビングに移動する。
 全員が椅子に座ったのを確認して遠出することを伝えた。

「というわけで、迷宮攻略はなしだ。
 今日は遠出するための準備をすることにした」

「遠出、ですか?」

「あぁ。迷宮攻略が出来ないので護衛をすることにした」

「護衛、ですか」

「何事も経験だ。これからの迷宮攻略には野宿や夜の見張りなども必要になってくる。
 迷宮で何日も泊まることもあるしな。護衛は予行練習だと思えばいい。
 ただし気を抜くことは許さない。
 これは仕事だ。失敗すればランクが下がることもある」

 迷宮は階層を進むたびに広くなっていく。
 1日で探索を終えることは無くなってくるだろう。

 2の迷宮が封鎖されたのはいいタイミングだったかもしれないな。

「わかりました」

「なんだかピクニックみたいだな」

「ご主人様の話を聞いていなかったのか? 仕事だ。遊びじゃないんだぞ?」

「わかってるよ、ルナちゃん。そんなに睨まないでくれよ。可愛い顔が台無しだよ?」

「お前に可愛いと思われても嬉しくともなんともない」

「え? ツンデレ?」

「ツン、なんだ? なんだかわからんが、寒気のする呼び方をするな!」

 ルナとマサは仲がいいな。

「父さん」

「なんだ?」

「粉があと少しになりました」

「そうか。いつまでもつ?」

「多分、10日くらい」

「わかった。作っておく」

「え? 素材は?」

「安心しろ。確保済みだ」

 2の迷宮に鬼を討伐しに行った時だった。
 迷宮街で露店をやっている冒険者が髪を黒くする粉の材料を売っていたのだ。

 ないよりもあった方がいいだろうと思ったので購入した。
 後は加工するだけだ。

「ありがとう、父さん」

 護衛か。俺も初めての仕事だが、護衛する相手はドルビド君だ。
 知っている人物とはいえ油断することなく完璧な仕事をしよう。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました

Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』 それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。 最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。 そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。 さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...