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10.ランクC
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「はい。4人のランクをCに上げさせていただきました。おめでとうございます」
フィー達がナーナからカードを順番に受け取って、自身のランクを確認している。
予想よりも早いランクアップである。
「随分と優秀な子たちですね」
「あぁ。物覚えが良くて助かる」
「……私は、アドさんを応援してますから」
「ん? いきなりどうした?」
「なんでもありません。今日のご予定は?」
「そうか。休みの予定だが何かあるか?」
「これと言ってアドさんにやっていただきたい依頼はありませんが、ちょっと」
何かあるのだろうか?
ナーナの方に耳を近づける。
「なんだ?」
「例の魔石とか、手に入れられていませんよね?」
例の魔石? 鬼の魔石か。
ちょうど手に入れたところだ。
「あったら売って欲しいということか?」
「そんな感じです。あ、大丈夫です。アドさんが持ってきていたことは知られていませんから」
念のために鬼の素材や魔石は俺が持ち込んでいることを秘密にしてもらっている。
ギルドの見立てでは鬼のランクはBほどらしいが、安全地帯からの攻撃で討伐している俺からしたら、胸を張れるものではない。
なのでランクをCのままで鬼の素材や魔石をギルドに売っている。
「そうか。一応、1個ならあるが」
「え? 本当ですか?
売っていただけますか?」
そこまで欲しいか。
意外な食いつきである。
数年で鬼の魔石は価値が上がったのだろうか?
「あぁ。今のところ使い道はないからな」
こちらを誰も見ていないことを確認してマジックバッグから鬼の魔石を取り出してカウンターに置く。
「ありがとうございます!」
金貨2枚がカウンターに置かれる。
数年前の倍の価格だ。
本当に価値が上がったようだ。
ナーナが鬼の魔石を持って奥に向かっていった。
フィー達には朝に休みだと言っていたし、ギルドでの用事も済ましたので自由にしてくれと伝える。
「今日は休みだ。自由にしてくれていい」
「わかりました。ご主人様はどこか行かれるのですか?」
「特に予定はない。部屋で装備の確認でもしているよ」
「あの、お菓子を作ってもいいでしょうか?」
「フィーは菓子が作れるのか?」
「は、はい。ご主人様のお口に合うか、わかりませんが」
「そうか。これは材料費だ」
金貨を1枚フィーに握らせる。
自由に使える金を渡しているとは言っても、それは自身のために使えばいいという意味で渡しているものだ。
俺も食べるものは俺が金を出すべきだろう。
「多すぎます!」
「余れば返してくれればいい。
それに材料だけでなく器具も必要だろ?」
「ですが」
「楽しみにしてるよ」
フィーの頭に手を置いて優しく撫でる。
「はい!」
頭から手を離すとフィーは一礼してから離れていく。
ルナとマサは2人で特訓すると言ってギルドの奥にある訓練場に向かった。
「父さん。強くなりたい」
じっとこちらを見ていたオーギスと目が合うと、強くなりたいと言ってきた。
数日会わないうちにおとーさんから父さん呼びに変わっていた。
2人一組での攻略で何かあったのだろうか?
「ルナとマサについて行かないのか?」
「父さんと、戦いたい」
俺と戦いたい、か。
「負けても、泣くなよ?」
「はい!」
俺は負けたら泣いてしまうかもしれないがな。
「ご主人様?」
先に模擬戦をしていたルナとマサが動きを止める。
「オーギスに模擬戦を挑まれてな。ルナ、審判を頼めるか?」
「かしこまりました」
「アドさん、勝てるんですか?」
「マサ。そこは嘘でもオーギスを応援してくれ」
「怪我をしても治癒魔法使いますから、存分にやられてください!」
「マサ!」
ルナがマサを叱る。
マサは苦笑いを浮かべながらベンチに座ってこちらを見ている。
マサはフィーから治癒魔法を教わったことで使えるようになった。
鑑定の力で使えることがわかったからだと言っていた。
鑑定か。俺の実力もわかっているということか。
「オーギス。本気でいいぞ」
マジックバッグから短剣を取り出す。
オーギスは背負っている大剣を構えている。
「はい! 父さんも本気でお願いします!」
「始め!」
ルナの声とともにオーギスが突撃してくる。
どこからそんな力が出てくるのだろうか。
大剣を軽々と振り下ろす。
ギリギリまで引きつけてから大剣を避ける。
髪が何本か斬られてしまったが懐に入ることはできた。
オーギスの喉元に短剣の先を向けてピタリと止まる。
「……参り、ました」
「そこまで!」
「振り下ろして避けられた後のことを考えるんだ。懐に入られそうになったのなら蹴りを入れるとかな。
オーギスは力が強い。大剣が地面に刺されば、大剣が固定される。
大剣の柄を握ったまま、地面を蹴って飛び上がり、相手の背後を取ることもできる。
1つの動作で終わらせずに、次をどうするのか考えて行動するんだ」
オーギスの喉元から短剣の先を離していきながら、どうすればいいのか考えて行動することを教える。
少しは面目が保たれたか。
「見えましたか?」
「ぜんぜん。予想外の結果だ」
「私は少し見えましたが、反応できるかと聞かれれば、自信はありませんね」
マサは俺の動きが見えなかったらしい。
俺より速い魔物は普通にいる。
速さに慣れてもらう必要があるな。
模擬戦はいいかもしれない。
まだ負けることはないだろうが、そのうち追いつかれるのだろうな。
「ご主人様。次は私とお願いします!」
「その次は俺とお願いします!」
「じゃあ、その次は俺!」
ルナ、マサ、オーギスと模擬戦を挑まれたが、流石に連戦は辛いのでルナと模擬戦をしてから一度休憩し、マサ、オーギスと模擬戦を行なった。
ルナとマサには一撃も入れられることなく勝つことができたが、オーギスからは蹴りを一撃食らってしまった。
なんとか勝つことはできたが、まさか1試合で蹴りを食らうとは思わなかった。
マサの治癒魔法が無ければ家に帰ることができなかっただろうと思う一撃だった。
傷は癒えても体力までは戻らない。
3人の模擬戦に参加せずに観戦していた。
明日は迷宮攻略のため、模擬戦をほどほどにして4人で家に帰る。
家に帰るとフィーの手作りお菓子がテーブルに並んでいたので、みんなで美味しくいただいた。
夕食は豪華にして英気を養う。
明日の迷宮攻略に備えて早めの就寝だ。
フィー達がナーナからカードを順番に受け取って、自身のランクを確認している。
予想よりも早いランクアップである。
「随分と優秀な子たちですね」
「あぁ。物覚えが良くて助かる」
「……私は、アドさんを応援してますから」
「ん? いきなりどうした?」
「なんでもありません。今日のご予定は?」
「そうか。休みの予定だが何かあるか?」
「これと言ってアドさんにやっていただきたい依頼はありませんが、ちょっと」
何かあるのだろうか?
ナーナの方に耳を近づける。
「なんだ?」
「例の魔石とか、手に入れられていませんよね?」
例の魔石? 鬼の魔石か。
ちょうど手に入れたところだ。
「あったら売って欲しいということか?」
「そんな感じです。あ、大丈夫です。アドさんが持ってきていたことは知られていませんから」
念のために鬼の素材や魔石は俺が持ち込んでいることを秘密にしてもらっている。
ギルドの見立てでは鬼のランクはBほどらしいが、安全地帯からの攻撃で討伐している俺からしたら、胸を張れるものではない。
なのでランクをCのままで鬼の素材や魔石をギルドに売っている。
「そうか。一応、1個ならあるが」
「え? 本当ですか?
売っていただけますか?」
そこまで欲しいか。
意外な食いつきである。
数年で鬼の魔石は価値が上がったのだろうか?
「あぁ。今のところ使い道はないからな」
こちらを誰も見ていないことを確認してマジックバッグから鬼の魔石を取り出してカウンターに置く。
「ありがとうございます!」
金貨2枚がカウンターに置かれる。
数年前の倍の価格だ。
本当に価値が上がったようだ。
ナーナが鬼の魔石を持って奥に向かっていった。
フィー達には朝に休みだと言っていたし、ギルドでの用事も済ましたので自由にしてくれと伝える。
「今日は休みだ。自由にしてくれていい」
「わかりました。ご主人様はどこか行かれるのですか?」
「特に予定はない。部屋で装備の確認でもしているよ」
「あの、お菓子を作ってもいいでしょうか?」
「フィーは菓子が作れるのか?」
「は、はい。ご主人様のお口に合うか、わかりませんが」
「そうか。これは材料費だ」
金貨を1枚フィーに握らせる。
自由に使える金を渡しているとは言っても、それは自身のために使えばいいという意味で渡しているものだ。
俺も食べるものは俺が金を出すべきだろう。
「多すぎます!」
「余れば返してくれればいい。
それに材料だけでなく器具も必要だろ?」
「ですが」
「楽しみにしてるよ」
フィーの頭に手を置いて優しく撫でる。
「はい!」
頭から手を離すとフィーは一礼してから離れていく。
ルナとマサは2人で特訓すると言ってギルドの奥にある訓練場に向かった。
「父さん。強くなりたい」
じっとこちらを見ていたオーギスと目が合うと、強くなりたいと言ってきた。
数日会わないうちにおとーさんから父さん呼びに変わっていた。
2人一組での攻略で何かあったのだろうか?
「ルナとマサについて行かないのか?」
「父さんと、戦いたい」
俺と戦いたい、か。
「負けても、泣くなよ?」
「はい!」
俺は負けたら泣いてしまうかもしれないがな。
「ご主人様?」
先に模擬戦をしていたルナとマサが動きを止める。
「オーギスに模擬戦を挑まれてな。ルナ、審判を頼めるか?」
「かしこまりました」
「アドさん、勝てるんですか?」
「マサ。そこは嘘でもオーギスを応援してくれ」
「怪我をしても治癒魔法使いますから、存分にやられてください!」
「マサ!」
ルナがマサを叱る。
マサは苦笑いを浮かべながらベンチに座ってこちらを見ている。
マサはフィーから治癒魔法を教わったことで使えるようになった。
鑑定の力で使えることがわかったからだと言っていた。
鑑定か。俺の実力もわかっているということか。
「オーギス。本気でいいぞ」
マジックバッグから短剣を取り出す。
オーギスは背負っている大剣を構えている。
「はい! 父さんも本気でお願いします!」
「始め!」
ルナの声とともにオーギスが突撃してくる。
どこからそんな力が出てくるのだろうか。
大剣を軽々と振り下ろす。
ギリギリまで引きつけてから大剣を避ける。
髪が何本か斬られてしまったが懐に入ることはできた。
オーギスの喉元に短剣の先を向けてピタリと止まる。
「……参り、ました」
「そこまで!」
「振り下ろして避けられた後のことを考えるんだ。懐に入られそうになったのなら蹴りを入れるとかな。
オーギスは力が強い。大剣が地面に刺されば、大剣が固定される。
大剣の柄を握ったまま、地面を蹴って飛び上がり、相手の背後を取ることもできる。
1つの動作で終わらせずに、次をどうするのか考えて行動するんだ」
オーギスの喉元から短剣の先を離していきながら、どうすればいいのか考えて行動することを教える。
少しは面目が保たれたか。
「見えましたか?」
「ぜんぜん。予想外の結果だ」
「私は少し見えましたが、反応できるかと聞かれれば、自信はありませんね」
マサは俺の動きが見えなかったらしい。
俺より速い魔物は普通にいる。
速さに慣れてもらう必要があるな。
模擬戦はいいかもしれない。
まだ負けることはないだろうが、そのうち追いつかれるのだろうな。
「ご主人様。次は私とお願いします!」
「その次は俺とお願いします!」
「じゃあ、その次は俺!」
ルナ、マサ、オーギスと模擬戦を挑まれたが、流石に連戦は辛いのでルナと模擬戦をしてから一度休憩し、マサ、オーギスと模擬戦を行なった。
ルナとマサには一撃も入れられることなく勝つことができたが、オーギスからは蹴りを一撃食らってしまった。
なんとか勝つことはできたが、まさか1試合で蹴りを食らうとは思わなかった。
マサの治癒魔法が無ければ家に帰ることができなかっただろうと思う一撃だった。
傷は癒えても体力までは戻らない。
3人の模擬戦に参加せずに観戦していた。
明日は迷宮攻略のため、模擬戦をほどほどにして4人で家に帰る。
家に帰るとフィーの手作りお菓子がテーブルに並んでいたので、みんなで美味しくいただいた。
夕食は豪華にして英気を養う。
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