蓮にも棘がある

朔夜

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勉強会①

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午前11時に駅前集合と言われたが、誰がくるかもわからな

いので少し緊張していた。クラスの人だったら仲良くなれ

るチャンスかも!と思うのは、お昼ご飯は幼なじみ達と中

庭、教室では寝ているか遊馬に構われているかなので教室

には友達と呼べる存在がいないからだ。そして、学校で上

位に入るほどの姫野の容姿で遊馬と関わっていると、話し

かけられずもちろん反感も受けやすい。

少し早めについてしまった姫野は柱にもたれて髪を耳にか

け、ふぅと息をつく。

「今日は友達つくろう。頑張る。」そう決意した。





その頃、遊馬は親友2人と合流していた。

「姫野さんくるってまじかよ?」

うっひょー最高!と彼女もちの木嶋は騒ぐ。

「木嶋うるさい。」

寝起きの椎名は耳を塞ぎながら心底嫌そうな顔をする。

「つーか今日赤羽こないの?」

「多分寝てるでしょ」

遊馬の適当な返事になんだよ。3対3になっちゃったなと

ボソボソという木嶋は、まあしょうがねぇ!こうなったら

楽しむぜ!と言いながら遊馬と椎名の間に入り、上機嫌な

様子で2人の肩に手をまわすのであった。




待ち合わせ時刻から5分ほどして、「ひめちゃん」声をか 

けられた姫野は目の前の3人の男子を見て驚く。

「おはようございます、姫野杏子です。勉強会お邪魔して

ごめんなさい」

ペコリと頭を下げてお名前教えてくださいと笑うと、右端

の男子は「そんな改まらないでくださいよ!木嶋陸でっす

よろしくね!」と笑う。

優しそうで良かった…姫野は心の中でほっと安心し、女子

きますか?と聞こうとするがもう1人の男子によって遮ら

れた。

「椎名怜」

姫野がぱっと目を向けると、椎名は目線を逸らしてしま

う。

「みんな同い年だし敬語使わないでいーよ」

と笑う遊馬の私服姿を写真したい写真したいと思う気持ち

を抑えてチャラ男チャラ男チャラ男こいつはチャラ男と時

制して「うん、ありがとう」と返事をした。



姫野は外面モード、ここでいう遊馬に対しての話し方で会

話をしながら少し歩くとカラオケと書いてある看板の前で

木嶋が立ち止まる。

「ここ!」

「勉強会って言っただろ、ひめちゃんもいるんだし」

「わたしは大丈夫だよ」

木嶋に対して疲れた様子の遊馬は「ごめんね?」と言いた

げな目線を姫野に送る。

「しかも予約しちゃったんだって!」

いいからいいから!ここでも勉強できるって!と言って遊

馬の手を引っ張っていく。

椎名はその様子を見て深くため息をついて姫野に話しかけ

る。

「無視していいからね、木嶋のことは。」

「でも木嶋さんみてるとこっちも元気になってくるなぁ」

「うるさいだけだけどね」

椎名を見ると、その顔は少し笑っていた。

「ていうかめずらしいね、他の女子は木嶋のことうるさい

としか言わないのに」

「そうなんだ、まあ知って間もないからかな?」

クスクスと笑う姫野を椎名はじっと見る。それ気付いた姫

野は「え、なんかついてる?」と顔をぺたぺたと触る。

「いや、さっきと印象変わるなって思って」

姫野はぎくっとする。いつのまにか素になってたのだ。

「そっちの方がいいんじゃない?結構あほっぽいけど」

椎名の稀な褒め言葉を聞き流した姫野はやっぱり…と声を

出して

「そ、そんなにアホかな?」

と両手で顔を覆った。そしてまた見つめてくる椎名に

「ていうかあんま見ないで…」

と赤くなる。そう、姫野は気付いてしまったのだ、長い前

髪からチラッと見えた椎名の顔が実はとても綺麗だという

ことに。何度も言うが、姫野はイケメンに弱いのである。

思っても見ない反応に椎名は困りつつも

「女子苦手だけど、姫野さんは変わってるね」

いい意味で、と言って早く乗れよ!とエレベーターの中で

ボタンを押しっぱなしの木嶋の方へ向かって歩く。

直感的である椎名は、人の雰囲気でその人の人柄をなんと

なく察することができ、なんとなく姫野は裏表がなく素直

だと感じたのだ。

今褒められたのかな?と嬉しくなった姫野は、友達できち

ゃうかも!と気分はるんるんで椎名の後に続いた。
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