第二側妃様付きの侍女は嘘を見抜く~転生した元プロファイラーは行動心理学でチートしながら悪を暴く

きのと

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第13話 3つのF

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「どうでしょう。確信はありませんが、リストを取り戻すまでは殺さないと思います」
「俺もそう思う。仮にネヴィル副議長がハンドラーだったとしても、自ら監禁や殺人をやるとは思えない。手足となって動く人間がいたはずだ」
「中隊長、スパイリストに副議長の政務官の名前がありましたが、そいつでしょうか?」
「よし、政務官から話を聞こう」


刑事時代、私が一番得意だったこと、それは自供を引き出すことだ。
人の心理は言葉からだけではなく、行動からも読み取ることができる。これをノンバーバル理論という。
100パーセント嘘だと断定できる動作は存在しないが、正しく分析すれば容疑者が嘘をついているか高確率で見抜くことができる。
じっくり観察できるように、中隊長にお願いして私も同席させてもらった。


政務官は背の高い痩せぎすの男だった。

「フィッシャー政務官、わざわざ呼び立てて申し訳ない。御前会議中の忙しいところ応じてもらって感謝する」
「いえ、ハワード中隊長と言えば誉高い国の英雄です。こうしてお会いできてうれしく思います」

政務官をリラックスさせるために軽く雑談をしてもらうよう頼んである。

「本題に入ろう。スコット・ハーフナーという人物が先月から出仕せず行方をくらましているが、理由をご存じだろうか?」
「いいえ。旅行に行きたいから急に休みをとるといいだして、我々も困っているのです」
「急に?何か変わった様子はなかっただろうか?」
「特にありませんでした」

瞬きが多くなり、わずかだが呼吸が浅くなっている。政務官は緊張している。

「ここだけの話だが、ハーフナーは国家にとって重要な機密を握っているらしい。所在に心当たりがあるなら……」
「いやいやいや、本当にわからないんですよ。それにあいつはただの秘書です。国家機密など無縁ですよ。あははははっ」

話を遮るのは不安の表れ、笑うのはいら立ちを隠すため。
政務官にとって、ハーフナーのことはかなり触れられたくない話題なのだ。
中隊長とラウルに目で合図する。
追い込みをかける。

ここからが本番だ。

動物が危機的状況に陥ったときにはいずれかの行動をとる。
1,Freeze(フリーズ) 硬直
2,Flight(フライト) 逃走
3,Flight(ファイト) 戦闘
頭文字をとって、「3つのF」と呼ばれている。


「フレッシャー政務官、これをご存じではありませんか」

ラウルが例のリストを広げた。
リストを見た途端、政務官の顔が強張った。

「い、いや、知らない、見たこともない」
---Freeze 硬直

政務官は態勢を変え、椅子に浅く座りなおした。
つま先がドアのほうに向いている。
これは、すぐにでも立ち上がり、この場から逃げ出したいと思っているジェスチャーだ。
---Flight 逃走

「本当はご存じですよね。あなたはこれを探していたんじゃないですか?」
「知らないと言っているだろう!!!!だいたい、ハーフナーがなんだっていうんだ!お前たちに関係ないだろう!!」

机をバンバン叩きながら、大声で怒鳴り散らした。
----Fight 戦闘

中隊長が詰め寄る。

「ハーフナーはどこにいるんだ!生きているのか!言え!!」

政務官は黙り込んだ。
この男はリストのことも秘書の居場所も知っている。しかし、このまま黙秘を続け、喋ることはないだろう。

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