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第10話 敵対国のスパイ
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話がそれたが、もともと同じ民族だったとはいえ、数十年も別々に文化を育んでいると、同じ言語でもイントネーションの違いなどが当然でてくる。
「中隊長様の部下は、正確にはカナナラ王国ではなく、トルーパー地方の訛りなのですが」
トルーパー地方は領有権争いをしているブランカ山のふもとに位置する。
統一を望む親カナナラ王国派のアンバー国民も多い。
「君にはそんなかすかな訛りが聞き分けられるのか?」
「はい、耳には自信があるので」
プロファイラー時代は国籍や出身地を音声識別プログラムを使って分析していたが、女神から与えられた「観察者」スキルのおかげで容易に判別できる。
「ちなみに中隊長様は、セルラー地方ご出身ではないですか?ラウル様も同郷ですね」
二人とも、心底驚いた顔をした。
「当たりですね」
その顔が可愛くて思わずクスッと笑ってしまった。
「中隊長、この名簿はもしかして、カナナラ王国のスパイリストではないでしょうか」
「私もラウル様と同意見ですが、たった二人では断定しかねます」
いかんせん、サンプルが少なすぎる。
「ミア、君ならリストの人物と直接話したら、言葉を聞き分けられるか?」
「それは出来ますが……」
使用人同士ならおしゃべりもできるが、政治家や文官など私には会う機会がない。
「今度、国王陛下主催のガーデンパーティがある。俺も参加するが、同伴者として一緒に来てくれないか?」
「はい?」
「それは、いい考えですね!宮殿のお偉いさんがたくさん来るから、リストの人物たちにも会えるでしょう」
ラウルも乗り気だ。
「待ってください、私は平民の侍女ですよ!パーティなんて出たこともないし、貴族に混ざるなんて無理です!」
「大丈夫だ。話は俺がする。君はただ隣で聞いていてくれればいい」
「でも、知り合いの使用人に見られたらバレるじゃないですか!」
「女性は化粧で別人のようになれるんじゃないか?」
「それはそうですけど!」
「ドレスなど必要なものはこちらで手配する。パーティは3日後だ」
ソフィア様に相談したらもっとノリノリで賛同してくれた。
翌日にはドレスと靴が届いた。
お飾りはソフィア様が実家から持ってきた控えめなものを貸してくれた。
よかった、国王様から頂いた宝石は豪華すぎて悪目立ちしてしまう。
ヘアメイクはハンナがやってくれることになった。
ガーデンパーティ当日は、ラウルが部屋まで迎えに来てくれた。
「ミアさん、とても素敵ですよ!完璧です!」
「やめてください、ラウル様。こんな豪華なドレス、私には不似合いです、気が重いです」
「いえ、どこから見ても貴族のご令嬢です。中隊長も驚きますよ」
今は、社交辞令に喜んでみせる余裕もない。
「中隊長、ミアさんをお連れしました」
中隊長は正装の白い騎士服だ。いつもとは逆の色合いで印象がずいぶん違う。凛とした中にも柔らかさを感じる。
「お待たせいたしました」
「……」
「あの、中隊長様?」
「君は本当にミアか?」
「はい?そうですが?」
ラウルは「ほらね」と言いながら、後ろで笑いをかみ殺していた。
「中隊長様の部下は、正確にはカナナラ王国ではなく、トルーパー地方の訛りなのですが」
トルーパー地方は領有権争いをしているブランカ山のふもとに位置する。
統一を望む親カナナラ王国派のアンバー国民も多い。
「君にはそんなかすかな訛りが聞き分けられるのか?」
「はい、耳には自信があるので」
プロファイラー時代は国籍や出身地を音声識別プログラムを使って分析していたが、女神から与えられた「観察者」スキルのおかげで容易に判別できる。
「ちなみに中隊長様は、セルラー地方ご出身ではないですか?ラウル様も同郷ですね」
二人とも、心底驚いた顔をした。
「当たりですね」
その顔が可愛くて思わずクスッと笑ってしまった。
「中隊長、この名簿はもしかして、カナナラ王国のスパイリストではないでしょうか」
「私もラウル様と同意見ですが、たった二人では断定しかねます」
いかんせん、サンプルが少なすぎる。
「ミア、君ならリストの人物と直接話したら、言葉を聞き分けられるか?」
「それは出来ますが……」
使用人同士ならおしゃべりもできるが、政治家や文官など私には会う機会がない。
「今度、国王陛下主催のガーデンパーティがある。俺も参加するが、同伴者として一緒に来てくれないか?」
「はい?」
「それは、いい考えですね!宮殿のお偉いさんがたくさん来るから、リストの人物たちにも会えるでしょう」
ラウルも乗り気だ。
「待ってください、私は平民の侍女ですよ!パーティなんて出たこともないし、貴族に混ざるなんて無理です!」
「大丈夫だ。話は俺がする。君はただ隣で聞いていてくれればいい」
「でも、知り合いの使用人に見られたらバレるじゃないですか!」
「女性は化粧で別人のようになれるんじゃないか?」
「それはそうですけど!」
「ドレスなど必要なものはこちらで手配する。パーティは3日後だ」
ソフィア様に相談したらもっとノリノリで賛同してくれた。
翌日にはドレスと靴が届いた。
お飾りはソフィア様が実家から持ってきた控えめなものを貸してくれた。
よかった、国王様から頂いた宝石は豪華すぎて悪目立ちしてしまう。
ヘアメイクはハンナがやってくれることになった。
ガーデンパーティ当日は、ラウルが部屋まで迎えに来てくれた。
「ミアさん、とても素敵ですよ!完璧です!」
「やめてください、ラウル様。こんな豪華なドレス、私には不似合いです、気が重いです」
「いえ、どこから見ても貴族のご令嬢です。中隊長も驚きますよ」
今は、社交辞令に喜んでみせる余裕もない。
「中隊長、ミアさんをお連れしました」
中隊長は正装の白い騎士服だ。いつもとは逆の色合いで印象がずいぶん違う。凛とした中にも柔らかさを感じる。
「お待たせいたしました」
「……」
「あの、中隊長様?」
「君は本当にミアか?」
「はい?そうですが?」
ラウルは「ほらね」と言いながら、後ろで笑いをかみ殺していた。
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