1 / 17
第一話 第一側妃の暗殺未遂と侍女の死(1)
しおりを挟む 知らずホッとして目を閉じた光太は--……違和感を感じ、閉じた目をすぐさま開く。
背中に、地面の感触があった。
あれほどうるさかった風の音は止み、代わりとばかりに耳をくすぐるのは、柔らかな下草だ。
いつの間にやら光太は、草原のど真ん中で大の字になって寝ころんでいた。
「ッ!?」
ギョッとして、思わずガバリと跳ね起きる。
ついさっきまで、高い高い場所から落ちていた。
地面なんて見えていなかったし、着地した衝撃もなかった。
ものすごいスピードでうんと高い場所から落ちて、無傷。そんなことがあり得ないことくらい、光太だって知っている。
「ケースケッ、ユーゴッ、みんな!」
なによりも、しっかり握りしめていたはずの手のひらがなにも握っていないことに愕然として叫んだ光太は、けれど。
「お~う、ここだぁ」
「後ろにいるよぉ」
少し離れた場所でムクリと起きあがったふたつの影に心底安堵して、泣きそうになった。
「あ~、ひどい目にあった。コウちゃん、ケースケ、怪我はない?」
「「ない」」
「ならよかった。他のみんなは? ちゃんと全員いる?」
ひぃふぅみぃ、と人数を数えながら、ユーゴがなんでもないことのように問う。
なんでもなくはないだろうに、ユーゴはいつもと変わらない。
さりげなく光太とケースケを自分の側へと引き寄せて、ぎゅうぅうッと手をつないできたけど。
ユーゴはよく、『暴走防止』とか言って手をつないでくるから、いつもと同じといえば、いつもと同じなので、とりあえず握り返しておく。
「えーと。金堂発見。木もっちゃんと大内先生……に、女子ふたり。うん、ちゃんと全員いるぞ」
三人の中で一番背の高いケースケが背伸びをし、ぐるりと周囲を確認する。
光太とユーゴも周囲を見回したが、残念ながら身長の関係か、低木の影になっている人影は、どれが誰なのかまではわからなかった。
そんな場合ではないとわかっていても、なんかちょっと悔しい。
「--……え? え? どうなってるの? え? なに? ここどこぉ?」
先生を呼びに行ってくれた女の子のうちのひとり--喜多山花楓が、体を起こしかけた姿勢のまま、混乱した様子の声をあげる。
さもありなん。
周囲ははるか彼方まで続く大草原だ。
混乱する気持ちはよくわかる。
よくわかるけど、カエデの疑問は光太の疑問でもある。
「どこって、どこだろう。大内先生わかる?」
わからないなら聞けばいい。
よろよろと立ちあがり、ちょうど近くまでやってきていた大内先生を見上げ、光太はコテンと首を傾げてみせる。
大人ならもしかして、と思ったのだけれど。
「いや……これはちょっと……見たことのない景色というかなんというか…………」
やっぱり大人でも、訳がわからないのがいまの状況らしい。
背中に、地面の感触があった。
あれほどうるさかった風の音は止み、代わりとばかりに耳をくすぐるのは、柔らかな下草だ。
いつの間にやら光太は、草原のど真ん中で大の字になって寝ころんでいた。
「ッ!?」
ギョッとして、思わずガバリと跳ね起きる。
ついさっきまで、高い高い場所から落ちていた。
地面なんて見えていなかったし、着地した衝撃もなかった。
ものすごいスピードでうんと高い場所から落ちて、無傷。そんなことがあり得ないことくらい、光太だって知っている。
「ケースケッ、ユーゴッ、みんな!」
なによりも、しっかり握りしめていたはずの手のひらがなにも握っていないことに愕然として叫んだ光太は、けれど。
「お~う、ここだぁ」
「後ろにいるよぉ」
少し離れた場所でムクリと起きあがったふたつの影に心底安堵して、泣きそうになった。
「あ~、ひどい目にあった。コウちゃん、ケースケ、怪我はない?」
「「ない」」
「ならよかった。他のみんなは? ちゃんと全員いる?」
ひぃふぅみぃ、と人数を数えながら、ユーゴがなんでもないことのように問う。
なんでもなくはないだろうに、ユーゴはいつもと変わらない。
さりげなく光太とケースケを自分の側へと引き寄せて、ぎゅうぅうッと手をつないできたけど。
ユーゴはよく、『暴走防止』とか言って手をつないでくるから、いつもと同じといえば、いつもと同じなので、とりあえず握り返しておく。
「えーと。金堂発見。木もっちゃんと大内先生……に、女子ふたり。うん、ちゃんと全員いるぞ」
三人の中で一番背の高いケースケが背伸びをし、ぐるりと周囲を確認する。
光太とユーゴも周囲を見回したが、残念ながら身長の関係か、低木の影になっている人影は、どれが誰なのかまではわからなかった。
そんな場合ではないとわかっていても、なんかちょっと悔しい。
「--……え? え? どうなってるの? え? なに? ここどこぉ?」
先生を呼びに行ってくれた女の子のうちのひとり--喜多山花楓が、体を起こしかけた姿勢のまま、混乱した様子の声をあげる。
さもありなん。
周囲ははるか彼方まで続く大草原だ。
混乱する気持ちはよくわかる。
よくわかるけど、カエデの疑問は光太の疑問でもある。
「どこって、どこだろう。大内先生わかる?」
わからないなら聞けばいい。
よろよろと立ちあがり、ちょうど近くまでやってきていた大内先生を見上げ、光太はコテンと首を傾げてみせる。
大人ならもしかして、と思ったのだけれど。
「いや……これはちょっと……見たことのない景色というかなんというか…………」
やっぱり大人でも、訳がわからないのがいまの状況らしい。
11
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる