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第19話 アビゲイルの覚醒
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王妃もベアテだ。
彼女が王室に嫁いでから国はますます栄え、豊かになっている。
王族は国民にとても慕われているが、それもあって特に王妃は人気が高い。
「そんなことありえません。私の実家は今は盛り返したとはいえ、一度は財産を失い、没落しました」
「まだ覚醒していないので、力が不安定なのでしょう」
「そう……なんでしょうか。すみません、自分のことなのに何もわからなくて」
「よかったら、これから神殿で大神官に会ってみて欲しいの。目覚めの儀式の準備をしてあるわ」
――――私がベアテかもしれない?
考えたこともなかったが、もし自分にそんな力があるとしたら、エリオット殿下の力になれたように、今後も困っている人を助けられるかもしれない。
「はい、よろしくお願いいたします」
目覚めの儀式のために神殿へ向かった。
国王一家のためだけの場所なので広くはないが荘厳な雰囲気が漂う。
王妃とエリオットが見守るなか、儀式が始まった。
白い装束に着替えたアビゲイルが女神像の前で跪く。
祈りを捧げながら、大神官が聖杯に注いだ聖水を飲み干した。
全身が暖かな光に包まれたかと思うと、額の中央が焼かれたように熱くなった。
そこには、祝福された者の証である刻印が現れた。
大神官は高らかに宣言する。
「また一人ここにベアテが誕生いたしました。神よ、感謝いたします」
少し休むようにと、王妃の配慮でまたサロンに通された。
ぼおっとするアビゲイルにエリオットが寄り添う。
「痛みますか?」
おでこにさわると、まだほんのり熱い。
「額の刻印は一時間程度で消えるそうですから、安心してください」
「殿下は私がベアテだとわかっていらっしゃったのですか?」
「初めて会ったときになんとなくそうじゃないかと思いました。立場上、ベアテに会う機会は多いのですが、あなたにも彼らと同じオーラのようなものを感じました。確信があったわけじゃないので、母に会ってもらおうと思ったのです。ベアテ同士なら間違いなくわかるそうなので」
「それで、私を結婚記念パーティに呼んでくださったのですね」
「半分はそうです」
「半分ですか?もう半分は?」
「あなたと二人きりになりたかったのですよ。ビジュウ・オロールの皆さんはいい方ばかりで居心地がいいのですが、こうしてゆっくり話すことは難しいですからね」
エリオットはアビゲイルの手を取り口づけをする。
「擦り傷を治してもらった翌日から、しばらくの間、毎日庭園に通って、あのときの女の子を探していました。まさかこんなかたちで再会できるなんて、運命に感謝しています」
「私も驚いています。まるで絵本の中の王子様みたいな男の子だと思ったんですけど、まさか本物の王子様だったなんて思いもよりませんでした」
不思議な縁を感じてアビゲイルは胸が熱くなった。
「それはそうとして、今日も義姉と母にあなたを取られてしまいました。今度、あたらめて二人だけの食事に誘いたいのですがよろしいですか?」
「はい、殿下。喜んで」
彼女が王室に嫁いでから国はますます栄え、豊かになっている。
王族は国民にとても慕われているが、それもあって特に王妃は人気が高い。
「そんなことありえません。私の実家は今は盛り返したとはいえ、一度は財産を失い、没落しました」
「まだ覚醒していないので、力が不安定なのでしょう」
「そう……なんでしょうか。すみません、自分のことなのに何もわからなくて」
「よかったら、これから神殿で大神官に会ってみて欲しいの。目覚めの儀式の準備をしてあるわ」
――――私がベアテかもしれない?
考えたこともなかったが、もし自分にそんな力があるとしたら、エリオット殿下の力になれたように、今後も困っている人を助けられるかもしれない。
「はい、よろしくお願いいたします」
目覚めの儀式のために神殿へ向かった。
国王一家のためだけの場所なので広くはないが荘厳な雰囲気が漂う。
王妃とエリオットが見守るなか、儀式が始まった。
白い装束に着替えたアビゲイルが女神像の前で跪く。
祈りを捧げながら、大神官が聖杯に注いだ聖水を飲み干した。
全身が暖かな光に包まれたかと思うと、額の中央が焼かれたように熱くなった。
そこには、祝福された者の証である刻印が現れた。
大神官は高らかに宣言する。
「また一人ここにベアテが誕生いたしました。神よ、感謝いたします」
少し休むようにと、王妃の配慮でまたサロンに通された。
ぼおっとするアビゲイルにエリオットが寄り添う。
「痛みますか?」
おでこにさわると、まだほんのり熱い。
「額の刻印は一時間程度で消えるそうですから、安心してください」
「殿下は私がベアテだとわかっていらっしゃったのですか?」
「初めて会ったときになんとなくそうじゃないかと思いました。立場上、ベアテに会う機会は多いのですが、あなたにも彼らと同じオーラのようなものを感じました。確信があったわけじゃないので、母に会ってもらおうと思ったのです。ベアテ同士なら間違いなくわかるそうなので」
「それで、私を結婚記念パーティに呼んでくださったのですね」
「半分はそうです」
「半分ですか?もう半分は?」
「あなたと二人きりになりたかったのですよ。ビジュウ・オロールの皆さんはいい方ばかりで居心地がいいのですが、こうしてゆっくり話すことは難しいですからね」
エリオットはアビゲイルの手を取り口づけをする。
「擦り傷を治してもらった翌日から、しばらくの間、毎日庭園に通って、あのときの女の子を探していました。まさかこんなかたちで再会できるなんて、運命に感謝しています」
「私も驚いています。まるで絵本の中の王子様みたいな男の子だと思ったんですけど、まさか本物の王子様だったなんて思いもよりませんでした」
不思議な縁を感じてアビゲイルは胸が熱くなった。
「それはそうとして、今日も義姉と母にあなたを取られてしまいました。今度、あたらめて二人だけの食事に誘いたいのですがよろしいですか?」
「はい、殿下。喜んで」
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