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第15話 パーティへの招待
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いよい全てのアクセサリーが完成した。
「最後の仕上げに入ります。殿下、魔法のリクエストはありますか?」
「アビー、あなたのおすすめは?」
「そうですね、エメラルドは愛の石と呼ばれています。国王陛下と王妃殿下との永遠の夫婦愛を願うのはいかがでしょうか?このエメラルドが、幸せな結婚生活のお守りとなるように」
ゴタ・デ・アセイテはもともとオイルの流れのような独特の模様が見られる。
祝福の魔法をかけられたエメラルドは豊かな水を湛えた泉のようにゆらゆらと煌めきだした。
「想像以上の出来です。みなさん、本当にありがとう」
職人一人一人の目を見ながら、エリオットが感謝を述べた。
「そうだ、オーナー、アビーを結婚記念パーティに招待したいのだけど、一日彼女をお借りできませんか」
「私が国王陛下のパーティに?む、無理です!」
領地にいたころから社交には無頓着だったので、夜会にもろくに参加したことがない。
そんなアビーの心配など気に掛ける様子もなく、
「これは、うちの店を貴族に売り込む千載一遇のチャンスだわ!」
「工房を代表してアビー、行ってこい!」
「いっぱい宣伝してこいよ!出来たら受注もしてきて!」
オーナーや職人たちは盛り上がっていた。
「了解いただけたようですね」
戸惑うアビーに、エリオットは笑顔を向けた。
国王夫妻結婚記念パーティ当日、側近のケーシーが迎えに来てくれた馬車に乗って、アビゲイルは高台にある白亜の城に向かっていた。
馬車の窓からは、風光明媚な田園風景を一望できる。
城の入り口には女神像が対になって飾られ、客を歓迎していた。
天に向かってそびえるいくつもの塔、精巧な装飾がいたるところに施されている柱には国章が描かれた旗幟がいくつもはためき、王家の権威と気高さを物語っている。
アビゲイルのことはエリオット自ら出迎えた。
「殿下、お招きありがとうございます」
「ようこそ、ドレスがとてもお似合いですね」
「ありがとうございます」
着なれないドレスとハイヒールに、動きが硬くなっているのが自分でもわかる。
「アビー、もしかして緊張していますか?」
「ええ、恥ずかしながら。夜会も久しぶりですし、王宮のパーティなど初めてで」
「今日は僕がずっとエスコートしますから、リラックスして楽しんでください」
さあどうぞと差し出されたエリオットの右腕にそっと手を添える。
殿下に触れているだけで心臓が早鐘を打つのに、同時にそばにいてくれる安心感があった。
「最後の仕上げに入ります。殿下、魔法のリクエストはありますか?」
「アビー、あなたのおすすめは?」
「そうですね、エメラルドは愛の石と呼ばれています。国王陛下と王妃殿下との永遠の夫婦愛を願うのはいかがでしょうか?このエメラルドが、幸せな結婚生活のお守りとなるように」
ゴタ・デ・アセイテはもともとオイルの流れのような独特の模様が見られる。
祝福の魔法をかけられたエメラルドは豊かな水を湛えた泉のようにゆらゆらと煌めきだした。
「想像以上の出来です。みなさん、本当にありがとう」
職人一人一人の目を見ながら、エリオットが感謝を述べた。
「そうだ、オーナー、アビーを結婚記念パーティに招待したいのだけど、一日彼女をお借りできませんか」
「私が国王陛下のパーティに?む、無理です!」
領地にいたころから社交には無頓着だったので、夜会にもろくに参加したことがない。
そんなアビーの心配など気に掛ける様子もなく、
「これは、うちの店を貴族に売り込む千載一遇のチャンスだわ!」
「工房を代表してアビー、行ってこい!」
「いっぱい宣伝してこいよ!出来たら受注もしてきて!」
オーナーや職人たちは盛り上がっていた。
「了解いただけたようですね」
戸惑うアビーに、エリオットは笑顔を向けた。
国王夫妻結婚記念パーティ当日、側近のケーシーが迎えに来てくれた馬車に乗って、アビゲイルは高台にある白亜の城に向かっていた。
馬車の窓からは、風光明媚な田園風景を一望できる。
城の入り口には女神像が対になって飾られ、客を歓迎していた。
天に向かってそびえるいくつもの塔、精巧な装飾がいたるところに施されている柱には国章が描かれた旗幟がいくつもはためき、王家の権威と気高さを物語っている。
アビゲイルのことはエリオット自ら出迎えた。
「殿下、お招きありがとうございます」
「ようこそ、ドレスがとてもお似合いですね」
「ありがとうございます」
着なれないドレスとハイヒールに、動きが硬くなっているのが自分でもわかる。
「アビー、もしかして緊張していますか?」
「ええ、恥ずかしながら。夜会も久しぶりですし、王宮のパーティなど初めてで」
「今日は僕がずっとエスコートしますから、リラックスして楽しんでください」
さあどうぞと差し出されたエリオットの右腕にそっと手を添える。
殿下に触れているだけで心臓が早鐘を打つのに、同時にそばにいてくれる安心感があった。
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