「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者：オレ)の無能勇者に転生しました

【後日譚２】異世界（日本）から聖女が来たらしいけど、オレ（元勇者で元日本人）には関係ないったらない！！！

第14話 幼馴染

　静寂。

　怖いぐらいの静けさの中を、進んでいく。たまに倒れてる人がいるのはグレンに魔力を吸い上げられて瀕死の兵士だろうからいいとして……。

「こ・れ・も、魅了魔法の影響？」

　時折、急に攻撃してくる人がいるのが困る。

　この人、兵士ですらない気がする。服装的に文官だよなぁ。

「でしょうね。聖女の命令は、貴方以外を通すな――らしいので」

　グレンはそんな彼を顔色一つ変えずに魔法で攻撃し、答えた。

「本当に熱烈なお誘いだよなぁ」

「靡かないでくださいね。貴方、案外綺麗な女性に弱いんですから」

　……セシリアとかドロシーとかに優しくしてたの、根に持ってるんだね。あれは女の子が好きっていうか、接し方がわかんなかっただけだから許して……。



　◇



　そのまま正気のない王宮を、玉座の間――異質な魔力の気配のする場所を目指して進んでいると。

　“勇者時代“に見慣れた人達が倒れているのを見つけた。

　
「王様と、王妃様……」

「側近達も魔法をかけられていたみたいですね」

　全員グレンに魔力を吸収されて意識を失っているが、どうも大臣やらと王様達とが争った形跡がある。

　玉座の間王宮の中心に聖女がいる時点でわかっていたことだが、国の上層部までもやはり洗脳済みらしい。

「あー……これで王様黒幕説なくなった」

　完全に聖女様と戦う流れだ。
　嫌だな～！！！

　オレがぼやいている間に、グレンは躊躇いなく玉座の間の扉を押し開けた。

　
「ま、待てって！！！　心の準備が――」

　まだだから、と叫びかけた声が止まる。


「――あれ？　なんで貴方まで入ってきてるの？」

　“彼女“が、そこにいた。


「私、ちゃんとお願いしたのに。“ベルンハルトさんだけを連れてきて“って」

　アイリ・モロボシ――諸星愛莉。

　オレの……いや。
　赤谷せきや蓮れんの、初恋の少女が、そこにいた。

　薄茶に染めていたはずの髪は黒く地毛になっているが、その面差しを見間違えるはずもない。


「愛莉、ちゃん……」

　玉座から立ち上がった彼女は、悠々とレッドカーペットを歩いてくるとオレの前で立ち止まり、愛らしく微笑んだ。


「ひさしぶり――蓮くん」