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【後日譚】幸せ貞操危機生活 〜ちゃすてぃてぃくらいしす・らいふ!〜
Days3「お前の子供は産めないもんな」
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※BLあるあるの話をしてるだけなので男性妊娠要素はないです
-----------------------------
「おはよ~ベルンハルトくん」
明るい声に起こされて、のろのろと目を開ける。
「おはよう、スピカ。……グレンは?」
いつもなら朝イチに見るのはグレンくんの煌めく笑顔なのだが、どういうわけか今日のオレのエスコート役はこのふわふわモフモフ生物らしい。
「実家からの呼び出しだって」
「へぇ……なんの用で?」
グレンがオレより優先するんだから結構重要なことなのかな、なんて傲慢なことを考えつつスピカに洗浄魔法をかけてもらう。
スッキリしたことで少しはっきりしてきたオレの頭に叩き込むように、スピカは大きな声で告げてきた。
「お見合いだって!」
おみあい。オミアイ……お見合い????
「え……古代語で別の意味を持つ単語ですか?」
「いや、君の知ってるお見合いですよ。男と女のラブゲーム」
「へ……へぇ……そう……グレンが、ね」
動揺しているのを悟られないようにパジャマを脱いで、クローゼットから適当に服を用意する。
「生着替え~! ヒュー!!」
「オッサンかよ。で、魔王様はグレンの代わりにオレの護衛に来てくれたわけですか」
「そうそう。あ、一応“お守りイヤリングも付けて“ってグレンくんから伝言~」
お守りイヤリング……クラウスのところに乗り込むときにもらったあれか。
「いや、魔王様が傍にいるのに必要ないだろ」
ソファーに座り、肘掛けにもたれかかると、スピカがとてとてと歩み寄ってきて、足元で丸まった。
「私もそう思うけどね。……てか、その服は季節感なくない?」
指摘され、着ている服を見下ろす。
長袖のブラウスとスラックスという、実に無難な組み合わせだが……外を見れば快晴なので、少し暑苦しいのかもしれない。
「でも、この世界さぁ……四季バラバラじゃない?」
雪が降った次の日には夏のように暑くなったり――いや、オレは常にグレンに温度調整魔法をかけてもらってるから寒いとか暑いとかわからないんだけど――その逆もある。
「うん。バラバラ~~ちなみに今は二月だけど、季節的には気持ち夏寄りかな? ぐらいです」
脳みそバグる……。
日本の暦は一旦忘れた方がいいのかもしれない。
「……って、違うよ。ベルンハルトくん! 恋人が! お見合いに駆り出されたっていうのに! その冷静さはなんなの!!??」
「うるさいよスピカ」
わめく彼女を抱き上げて膝の上に乗せる。
「いやだって……グレンがさ、オレから離れると思えないし……」
「おお……すごいなグレンくん……あの自己肯定感低すぎ君をここまで立派に育てたのか……」
散々な言われようだが、まあそうです。
さすがにちょっと動揺はしたけど……魔王と手を組んでまでオレを生き返らせるような男が、いまさら家のために望まない結婚をするとは思えない。
「ちぇ~嫉妬するとこ見たかったなぁ~!!」
「貴女、ハピエン厨なんでしょ」
「ハッピーにもスパイスは必要だよ」
唇を尖らせるスピカに、ふむ、と思案して。
「そっか……そうだよな。グレンは……長男で……いつかはアルナイルの後継者になるんだもんな」
声を震わせて目を伏せる。
「お前の傍にいれるなら……二番目でも、いいから」
どう? 上手くない? と、スピカに問いかけるよりも先に。
「…………ベル」
後ろから声がしました。
タイミング!!!!
「スピカ!! 気づいてたなら止めろ!!」
「いやごめん、演技でも可愛いなって思ってつい見惚れてました」
振り向くと、ちゃんとしたスーツを着込んだイケメンが立っていた。
「お、かっこいい」
最近は黒のワイシャツだけとかラフな格好しか見てなかったからなんか新鮮。やっぱイケメンはなんでも似合う~!!
「本当ですか? 嬉しい……って、違いますよ。なんですか二番目って!!」
怒ってるけどにこにこが抑えきれてなくて可愛い。
「いや……BLあるあるの、“俺は男だから、お前の子供は産めないもんな“ですけど」
「最近のBLは産めるけどね!!」
「ベルに変なこと教えないでください。あとベルも乗らない!」
グレンはジャケットを乱暴に脱ぎ捨てるとソファーの背を跨いでオレの隣に座る。脚長いね……。
「わかってると思いますけど、断りましたよ」
「うん、知ってる。……でもさぁ、実際どうなの。グレンって長男だろ」
アルナイル男爵家は没落しかけ――だった気がしていたが、それは『追放皇帝』の中での設定。つまりはグレンの願望で、本当は今も普通に立派にお貴族様だ。
「別に……俺の代で潰れても問題ありませんよ。今日も釘を刺しにいっただけです」
グレンはオレの首筋に顔を埋めて笑った。
「――“俺の幸せを壊す気なら、貴方も愛しいブルーノ様の元へ送って差し上げます“って」
……父親に言ったの、それ。
「実質脅しじゃん……」
「紛れもなく脅しですよ。ね、ブルーノ・ミルザムがいまどうしているか知りたいですか?」
「…………いいや。なんとなくわかるし」
排斥後のブルーノ・ミルザムの行く末をオレは詳しくは知らないが。
風の噂では――元ベネトナシュ公爵も、クラウスとグレンが共謀して同じ場所へ送ったそうなので、その顛末は聞くまでもない。
「そういえば、シャウラ子爵は今もブルーノに熱を上げているので……頃合いを見てご退場願います」
――子爵は、ロニーに陰謀の全容を知らされていなかったらしい。
彼はブルーノへの忠誠を誓っていて、あくまでもオレ――敬愛する主人の忌み嫌う存在――の排除を目的としており、殺害計画はロニーの独断だったそうだ。
「そう……」
子爵がいなくなれば、次のシャウラ子爵家当主はエステルになるのはまず間違いない。
父親を排斥されればエステル辺りは騒ぐだろうが、まあいいや。
「その方が都合がいいかもな。いくら【予言】で忠誠を誓わせてるとはいえ、お前が言ってたみたいに玉砕覚悟でなにかしでかさないとは限らないし……」
ミルザム伯領での有力貴族。最有力は言うまでもなくミルザム伯爵家、次点がシャウラ子爵家、そしてアルナイル男爵家だ。
その全ての当主をオレの味方――ロニーとエステルが味方かは疑問だけど、命を賭してまでオレとグレンに逆らうメリットは二人にはないはずだ――で固められれば、かなり安全安心。
「ええ。――作り物でない、真の忠誠は恐ろしいですからね」
「ね~」
彼らは愉しげに黄金の目を細める。
「そうだね……」
たった一人のために世界を滅ぼしかけたことのある彼らの言葉は重く、恐ろしく。
それでも二人は決してオレを裏切ったりしないことをオレはもう知っているから――これからも日々は平穏に続いていくのだ。
◇◇◇
「俺が貴方を愛することはありません。貴方を抱くのは、ただの義務です」
はい、フラグ回収です。
……いや、ただのお遊びだけどね。
ベッドの上で開幕した“政略結婚ごっこ“だ。
去り際にスピカが「第801回BLあるある選手権~!」とか叫んで消えたのが悪い。
「こんな感じですか?」
「これはどっちかっていうとTLあるあるだろ……」
“冷徹公爵のお飾りの妻になりました~お前を愛することはないと言われたのに何故か溺愛されています~“みたいなやつ。
「最近はBLでも割と定番らしいですよ」
「そうなんだ、詳しいね……」
わざわざ脱ぎ捨てたジャケットをもう一度着込んでオレを押し倒しているグレンの厚い胸板を押してみるがピクリともしない。
くそ……なんか最近こいつまたちょっと筋肉増えてる気がするな。オレはずっと貧弱なままなのに……っ!!
「ほら、ベルの設定も教えてください。ちなみにオレは“戦の報酬として爵位と美しい妻を手に入れた戦闘狂“です」
さっきの一言でそんな細かい設定読み取るのは無理だろ……!!
「え~……じゃあオレは“戦場の狂犬と呼ばれる男に密かに片想いしていた伯爵令息“で」
「…………ベルが俺に片想いって……ちょっと解釈違いですね……」
めんどくせぇ~~!!!
「グレンさ……結構、イメプレ好きだね」
今度、やっぱりメイド服着てあげたほうがいいかな……と思いつつ、“政略結婚“の相手にするのには甘すぎるキスに目を閉じた。
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「おはよ~ベルンハルトくん」
明るい声に起こされて、のろのろと目を開ける。
「おはよう、スピカ。……グレンは?」
いつもなら朝イチに見るのはグレンくんの煌めく笑顔なのだが、どういうわけか今日のオレのエスコート役はこのふわふわモフモフ生物らしい。
「実家からの呼び出しだって」
「へぇ……なんの用で?」
グレンがオレより優先するんだから結構重要なことなのかな、なんて傲慢なことを考えつつスピカに洗浄魔法をかけてもらう。
スッキリしたことで少しはっきりしてきたオレの頭に叩き込むように、スピカは大きな声で告げてきた。
「お見合いだって!」
おみあい。オミアイ……お見合い????
「え……古代語で別の意味を持つ単語ですか?」
「いや、君の知ってるお見合いですよ。男と女のラブゲーム」
「へ……へぇ……そう……グレンが、ね」
動揺しているのを悟られないようにパジャマを脱いで、クローゼットから適当に服を用意する。
「生着替え~! ヒュー!!」
「オッサンかよ。で、魔王様はグレンの代わりにオレの護衛に来てくれたわけですか」
「そうそう。あ、一応“お守りイヤリングも付けて“ってグレンくんから伝言~」
お守りイヤリング……クラウスのところに乗り込むときにもらったあれか。
「いや、魔王様が傍にいるのに必要ないだろ」
ソファーに座り、肘掛けにもたれかかると、スピカがとてとてと歩み寄ってきて、足元で丸まった。
「私もそう思うけどね。……てか、その服は季節感なくない?」
指摘され、着ている服を見下ろす。
長袖のブラウスとスラックスという、実に無難な組み合わせだが……外を見れば快晴なので、少し暑苦しいのかもしれない。
「でも、この世界さぁ……四季バラバラじゃない?」
雪が降った次の日には夏のように暑くなったり――いや、オレは常にグレンに温度調整魔法をかけてもらってるから寒いとか暑いとかわからないんだけど――その逆もある。
「うん。バラバラ~~ちなみに今は二月だけど、季節的には気持ち夏寄りかな? ぐらいです」
脳みそバグる……。
日本の暦は一旦忘れた方がいいのかもしれない。
「……って、違うよ。ベルンハルトくん! 恋人が! お見合いに駆り出されたっていうのに! その冷静さはなんなの!!??」
「うるさいよスピカ」
わめく彼女を抱き上げて膝の上に乗せる。
「いやだって……グレンがさ、オレから離れると思えないし……」
「おお……すごいなグレンくん……あの自己肯定感低すぎ君をここまで立派に育てたのか……」
散々な言われようだが、まあそうです。
さすがにちょっと動揺はしたけど……魔王と手を組んでまでオレを生き返らせるような男が、いまさら家のために望まない結婚をするとは思えない。
「ちぇ~嫉妬するとこ見たかったなぁ~!!」
「貴女、ハピエン厨なんでしょ」
「ハッピーにもスパイスは必要だよ」
唇を尖らせるスピカに、ふむ、と思案して。
「そっか……そうだよな。グレンは……長男で……いつかはアルナイルの後継者になるんだもんな」
声を震わせて目を伏せる。
「お前の傍にいれるなら……二番目でも、いいから」
どう? 上手くない? と、スピカに問いかけるよりも先に。
「…………ベル」
後ろから声がしました。
タイミング!!!!
「スピカ!! 気づいてたなら止めろ!!」
「いやごめん、演技でも可愛いなって思ってつい見惚れてました」
振り向くと、ちゃんとしたスーツを着込んだイケメンが立っていた。
「お、かっこいい」
最近は黒のワイシャツだけとかラフな格好しか見てなかったからなんか新鮮。やっぱイケメンはなんでも似合う~!!
「本当ですか? 嬉しい……って、違いますよ。なんですか二番目って!!」
怒ってるけどにこにこが抑えきれてなくて可愛い。
「いや……BLあるあるの、“俺は男だから、お前の子供は産めないもんな“ですけど」
「最近のBLは産めるけどね!!」
「ベルに変なこと教えないでください。あとベルも乗らない!」
グレンはジャケットを乱暴に脱ぎ捨てるとソファーの背を跨いでオレの隣に座る。脚長いね……。
「わかってると思いますけど、断りましたよ」
「うん、知ってる。……でもさぁ、実際どうなの。グレンって長男だろ」
アルナイル男爵家は没落しかけ――だった気がしていたが、それは『追放皇帝』の中での設定。つまりはグレンの願望で、本当は今も普通に立派にお貴族様だ。
「別に……俺の代で潰れても問題ありませんよ。今日も釘を刺しにいっただけです」
グレンはオレの首筋に顔を埋めて笑った。
「――“俺の幸せを壊す気なら、貴方も愛しいブルーノ様の元へ送って差し上げます“って」
……父親に言ったの、それ。
「実質脅しじゃん……」
「紛れもなく脅しですよ。ね、ブルーノ・ミルザムがいまどうしているか知りたいですか?」
「…………いいや。なんとなくわかるし」
排斥後のブルーノ・ミルザムの行く末をオレは詳しくは知らないが。
風の噂では――元ベネトナシュ公爵も、クラウスとグレンが共謀して同じ場所へ送ったそうなので、その顛末は聞くまでもない。
「そういえば、シャウラ子爵は今もブルーノに熱を上げているので……頃合いを見てご退場願います」
――子爵は、ロニーに陰謀の全容を知らされていなかったらしい。
彼はブルーノへの忠誠を誓っていて、あくまでもオレ――敬愛する主人の忌み嫌う存在――の排除を目的としており、殺害計画はロニーの独断だったそうだ。
「そう……」
子爵がいなくなれば、次のシャウラ子爵家当主はエステルになるのはまず間違いない。
父親を排斥されればエステル辺りは騒ぐだろうが、まあいいや。
「その方が都合がいいかもな。いくら【予言】で忠誠を誓わせてるとはいえ、お前が言ってたみたいに玉砕覚悟でなにかしでかさないとは限らないし……」
ミルザム伯領での有力貴族。最有力は言うまでもなくミルザム伯爵家、次点がシャウラ子爵家、そしてアルナイル男爵家だ。
その全ての当主をオレの味方――ロニーとエステルが味方かは疑問だけど、命を賭してまでオレとグレンに逆らうメリットは二人にはないはずだ――で固められれば、かなり安全安心。
「ええ。――作り物でない、真の忠誠は恐ろしいですからね」
「ね~」
彼らは愉しげに黄金の目を細める。
「そうだね……」
たった一人のために世界を滅ぼしかけたことのある彼らの言葉は重く、恐ろしく。
それでも二人は決してオレを裏切ったりしないことをオレはもう知っているから――これからも日々は平穏に続いていくのだ。
◇◇◇
「俺が貴方を愛することはありません。貴方を抱くのは、ただの義務です」
はい、フラグ回収です。
……いや、ただのお遊びだけどね。
ベッドの上で開幕した“政略結婚ごっこ“だ。
去り際にスピカが「第801回BLあるある選手権~!」とか叫んで消えたのが悪い。
「こんな感じですか?」
「これはどっちかっていうとTLあるあるだろ……」
“冷徹公爵のお飾りの妻になりました~お前を愛することはないと言われたのに何故か溺愛されています~“みたいなやつ。
「最近はBLでも割と定番らしいですよ」
「そうなんだ、詳しいね……」
わざわざ脱ぎ捨てたジャケットをもう一度着込んでオレを押し倒しているグレンの厚い胸板を押してみるがピクリともしない。
くそ……なんか最近こいつまたちょっと筋肉増えてる気がするな。オレはずっと貧弱なままなのに……っ!!
「ほら、ベルの設定も教えてください。ちなみにオレは“戦の報酬として爵位と美しい妻を手に入れた戦闘狂“です」
さっきの一言でそんな細かい設定読み取るのは無理だろ……!!
「え~……じゃあオレは“戦場の狂犬と呼ばれる男に密かに片想いしていた伯爵令息“で」
「…………ベルが俺に片想いって……ちょっと解釈違いですね……」
めんどくせぇ~~!!!
「グレンさ……結構、イメプレ好きだね」
今度、やっぱりメイド服着てあげたほうがいいかな……と思いつつ、“政略結婚“の相手にするのには甘すぎるキスに目を閉じた。
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