「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

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【番外編】バック・ステージ

グレンくんは18歳③ ―第38話の舞台裏―

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    ―― side:グレン ――

 
「グレン、オレ……今すぐにお前と二人っきりになりたい。なんでもしていいから……な?」

 手を握り、上目遣いで告げられたその言葉に、直前まであった元パーティーメンバーセシリアとドロシーへの感情が消え失せた。
 

 ――なんでも。

 ……なんでも?

 
 もう、とても口にはできない妄想ばかりが頭の中を駆け巡った。


 ……落ち着け、グレン・アルナイル。
 お前、肉体的には十八歳だけど中身は三十六歳だからな。

 ひたすら自分に言い聞かせて、どうにか表情だけは取り繕う。

「…………」

「え、わ……グレン……!!」

 言葉を発する余裕はなかった――口を開けば彼への劣情が溢れてしまいそうで。

 黙って抱き上げて、足早に目的地二人になれる場所へと向かった。


 
 ◆◆◆


 
「貴方にしては、随分と大胆なお誘いでしたね」

 本当に心臓に悪いのでやめてください。
 俺じゃなかったらあの場で襲いかかってた。

「今すぐ忘れろ……」

 ベルンハルトは、顔を真っ赤にして俺を見上げる。

 ――わかってますよ。
 俺を宥めるためにあんなことを言っただけ。
 ようやく“猛獣使い“の自覚をされたようでなによりです。
 
「わかりました。なら教えて?――なになら、してもいいのか」

 でも俺は強欲だから。
 今すぐ貴方のを忘れて、ベッドの上から逃がしてあげることはできない。

 シーツに溶け込んでしまいそうな白い腕を掴んで、覆い被さる。

「キスは、訊かなくてもしてもいいんでしたよね」

 彼はもう俺を拒むことはない。

「ね、腕……放して。オレも、お前に触りたい」

 それどころか、その先を俺へ与えようとしてくれる。
 
「ベル……」
 

 ベルンハルトは俺の背に腕をまわし、俺をシーツへと引き寄せる。
 誘われるまま、またその唇を貪った。
 
「っ、ふ……あ……ぁ……グレン……」

「服、脱がせてもいいですか」

 彼が首肯してすぐ、性急にブラウスのボタンを外す。

 白い肌は少し汗ばんでいて、指で撫でると微かに吸い付く。

「あ……グレ、ン……まって、〈洗浄ヴァッシェン〉かけて……オレ、汗臭いかも、だから」

「嫌です。俺は貴方の匂い、好きですよ」

 彼は汗すらも例えようもなく良い匂いがする。もっと近くで、と顔を胸元に寄せて舌を皮膚の上へ這わせた。

 ――あ、乳首……たってる。

 目に入ったそれを、何も考えず唇で緩く食む。
 
「ンっ、あ……!」

 ベルンハルトの身体が跳ねて、可愛い口からは蜜のように甘い声が溢れた。

「や、だ……あっ、そっち、ばっかり」

じゃないのはどこなんですか?」

「どこ、って……あ、う……ッ、ん」

 わざとわからない振りをして、突き出すような体勢になった胸を入念にねぶる。
 
 でも前に彼が“ここでイきたくない“と言っていたから、できるだけ緩やかに、決定打は与えないように。

 弾いて、舐めて――。

 そうして淫らで蕩けた行為に夢中になっていると、彼の手が俺の肩を強く掴んだ。

 そして、濡れた瞳が俺を求めてくる。
 
 
「もういい……さっきの、忘れなくていい……なんでも、なんでもしていい! 全部、お前の好きにして」

 身体の奥底から込み上げたのは、薄汚い欲望。
 天上の美しい天使を、尊ぶべき存在を、骨の髄まで犯し尽くして奈落へと引きずり堕としてしまいたい。
 ――そんな背徳の芽生え。
 
「……ああ、やだな。俺、貴方を傷つけたくないのに」

 言葉とは裏腹に、唇は喜悦に歪んだ。

「いいよ……傷ぐらい、いくらでも付けて……ぜんぶ、お前が治してくれるだろ?」

 たおやかな指が、俺の下肢へのびてくる。
 淫蕩な熱を湛えたそれの形を確かめるようになぞり、彼も笑った。 

「これで。血が出るまで、めちゃくちゃにしてもいい。いや……してくれ」

 流し込まれた甘美な毒薬のような笑みに脳髄は灼かれ、思考は停止して。
 それでも、肉体だけはなおも貪欲に彼を求めた。
 
「後悔、しませんか」

「そんなに下手くそじゃないだろ?」

 艶やかな声を閉じ込めるように、唇を塞いで――それが、理性の最後。



 ◆



 ――やりすぎた。

 そう気がついたのは、ベルンハルトが気を失ってからだった。


「はぁ……なにやってんだ」

 ひたすらに熱を堰き止めさせて、彼の声が枯れるまで啼かせて。結局、イかせもせずに意識だけ飛ばさせてしまった。

「ごめんなさい……ベル」

 まだ行為の余韻に染まる彼の目元を撫でて、清めた身体を眺める。

「貴方が……そんなにまで美しくなければ、俺はもう少し貴方を真っ当に愛せたかもしれないな」

 思わずそんな嘆きを溢してしまうほど、その寝姿は美しい。

 
 彼は――その天使の姿で人を惑わせ、堕落させるために、斯様なまでに麗しく生まれ落ちたのだろうか。

 俺の唯一。俺の天使。俺の神様。

 いつだって貴方が俺を救って、俺を狂わせる。


「ねぇ、ベル……」

 いつか再び貴方を失う日が来たら。
 俺は今度こそ、世界を壊してしまうと思うんです。

「だからちゃんと……俺のこと、傍で見張っていてくださいね」
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