「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの

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最終章 チート小説

第44話「グレンの話」

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 オレ……めちゃくちゃ決死の覚悟で告白したのに……上書きされた……!!


「え、てか蓮って……え、なんでオレの名前……うえ、ゲホッ」

「ああ、えっと……ごめんなさい、落ち着いて!」

 思わず勢いよく身を起こしたら咳き込んでしまう。うう……なんだこれ。


 は??? え???

 グレンが、オレを転生させた……??


 背中をさすられながら、混乱に痛み出した頭を抑える。やだなんか全身痛くなってきた……もうおうちかえる……。


「お、予想通りなんかすごいことになってるね」

「井上さん……」

 窓から、“スピカ“の姿をした井上さんが入ってくる。

「グレンくん、君が言い辛いなら私が代わりに説明してあげようか」

「……いいです。ちゃんと俺が言います」

 グレンはスピカが井上さんなことも知ってるわけね。
 よーし。もうなに言われても驚かない……驚かないぞ……!!!


「落ち着いて聞いてください……俺は、貴方のおじさんなんです」

「……」

 お、おう……。そうか……。

「は?? おじさん……??? グレンが????」

 いや、無理。やっぱ無理。落ち着けない!!!!

 
「グレンくん、順番がおかしいよ。まずなんでベルンハルトくんを転生させたのかから話さないと」

「あ、ああ……そうですね。俺も動揺してて」

 スピカ(井上さん)とグレン(叔父さん……?)は当たり前のように転生がどうたらと話している。
 なんだよお前ら、めちゃくちゃ知り合いじゃん!! しかも二人とも全部知ってんの!!??

「うん……ほんと、順番に説明してください」

「はい。少し長くなりますが――」


 そうしてグレンは語り始めた。
 “オレ“と彼についての長い話を。



 ◆◆◆


 
 まず、事の始まりは俺がパーティーから追放された事です。

 追放までの経緯は大体、貴方が書いた物語……『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝インペラトル】で全てを手に入れる~後悔してももう遅い~』と同じですね。

 ただし、追放された後の行動が違います。

 俺はまず初めに伯爵領に行き、ブルーノ・ミルザムに、ベルが俺を拒絶したことを伝えました。
 早急に俺以外の護衛を用意してもらう必要があったので。

 でもあの男は……必要ないと、言いました。ベルはもう後継者ではないから、死んでくれるのならその方が好都合だと……。

 なので俺は、とにかく一度ベルの元へ戻ろうと思って王都ギルドに向かいました。情報が集まりやすい場所ですから、貴方の居場所が追えると思ったんです。


 そこで、俺はあいつらに再会しました。

 セシリアと、ドロシーです。
 あの女たちは貴方を見捨てて、挙げ句の果てには“無能勇者“なんて呼んで、蔑んでいました。

 周りの冒険者たちも同調して貴方を蔑み、同じ口で俺を褒め称えました。

 殺したくて、たまらなかったです。
 でも、それどころじゃなかったので後回しにしました。

 
 あの女たちから、貴方が一人で“雪の草原“に……死のダンジョンとも呼ばれる危険な場所へ挑みに行ったと聞いたんです。

 俺も急いでそこへ向かいました。


 でも、手遅れだった。

 貴方はもう……死んでいたんです。ベル。


 ……絶望しました。
 貴方のいない世界なんて意味はない。全員死んでしまえと、そう思って……気がついたら、俺は……【皇帝】のスキルを得ていました。

 そしてその力を使って、世界を滅ぼそうとしました。

 おとぎ話の魔王のように、生きとし生けるものから魔力を奪って、世界を壊して……それから、もう一度世界を創り直そうと思ったんです。

 俺と貴方だけの世界。
 貴方が心から笑ってくれる世界を。


 ……まあ、それはそこのクソ猫に止められて、俺はひとまず貴方の魂を、異世界へと飛ばすことに――ベルンハルト、貴方を赤谷蓮に転生させることにしました。



 ◆


 
「――とまあ、便宜上、ここまでを《一周目》と呼びましょうか」


 呼びましょうか、じゃないよ……。
 え??? 頭が追いついてない……!!!

「し、質問は……?」

「ややこしいから全部終わってからにしようか」

 おそるおそる上げた手は井上さんの肉球でピシッと弾かれた。


「さて、ではここからが《二周目》です」

 グレンはそう言うと、また話し始める。


 
 ◆



 俺は貴方の魂を、本来胎児のまま死ぬはずだった“赤谷蓮“の身体へ送りました。

 適合率が高い空の器が都合よく見つかったので、交渉はそこの猫にしてもらって。


 ……で、まあ……。
 
 俺は蓮の“おじさん“という仮の器を作ることで、クソ猫は“井上さん“になって、二人で貴方を見守っていました。

 
 それから十八年――。
 貴方をようやくこの《三周目》の世界に転生させる準備が整ったんです。



 ◆◆◆



「そんな感じですね」

 で、オレが生まれたってわけね……おkおk把握……。

 
「いや、どういうこと???」

 把握できないです……!!
 

「る、ループものってこと???」

「自分の人生をそんなゲームみたいに……まあ、そうだよ。で、グレンくんと私は《一周目》からの記憶もスキルも全部引き継いでるから“強くてニューゲーム“ってやつだね」

 井上さんはニコニコと笑って、オレを見ている。
 うん……てかさ。

「い、井上さんは……なんなの?」

 グレンを妨害できて、グレンと同じ魔力を持った存在――そんなの、もう一つしかないんだけど。
 
 でも一応、と訊いてみたら。

 
「ああ。魔王だよ~」

 井上さんはいつも通りの軽い調子で答えた。

 いや……『文芸部の地味眼鏡ちゃんが実は魔王でした』みたいな長文タイトル小説の設定かよ……!!!

 
「そのタイトルはセンスなくない??」

「心読まないでください……」

 てかあれか。
 じゃあ今までイマジナリーフレンドだと思ってた井上さんは、全部マジの井上さん……というか魔王が話しかけてきてたってこと??

「そうそう。魔王様が直接貴様の脳内に話しかけていました」

「そうですか……」


 だっておかしいもんな!! あんなに実体化したりするイマジナリーフレンドは!!!
 そりゃ魔王だよ……うん、魔王魔王。
 

「魔王様と皇帝陛下。話終わったんなら、質疑応答の時間をいただいてもよろしいですか……」

 いやもう断られても根掘り葉掘りきくけどな!!!!
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