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第2章 スキル覚醒
第11話「勇者は進路を考えます」
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この楽しい旅のイカれたメンバーを紹介するぜ!
「ベル、足は疲れていませんか?」
“主人公“のグレン・アルナイル!
いずれチートスキルに目覚める予定の、細マッチョ&イケメン&イケボ&高身長の好青年!
だが隙あらば人をお姫様抱っこしたがる変人だ!
「疲れてない……あと手離せ」
そして“無能勇者“のベルンハルト・ミルザム!
勇者を辞める予定なのでそうなるとただの無能!
お姫様抱っこから解放された代わりに何故かずっと手を繋がれてるぜ!!
……以上だ。
というか異常なんだけど……。
計画通り、オレとグレンは森を通って王都に向かっている。
なのに――歩いても歩いても、出会いイベントが発生しない……っ!
どうしよ~~!!
グレンが隣にいる以上、アイリちゃんがオレに惚れる可能性は無……低いけど……でも、せめて会いたい!!!
それでアプローチしたらサ……ほら、ネ?
作者サンの魅力でアイリチャンもイチコロ(笑)
ナンチャッテ(笑)
……メンバー紹介したりエセおじさん構文やってる場合じゃないよ、オレ。思い出そうね~。
えーっと……グレンとアイリちゃんが会うのは確か夜にさしかかる頃。
暗闇の中でモンスターに襲われてるアイリちゃんをグレンが助け、二人は一夜を(健全に)森の中の洞窟で過ごし小さな愛のつぼみを育む……という非常にベタ……いや様式美的な出会いだ。
――え、これってさ。もし仮にここでアイリちゃんと会えた場合、オレはどうすりゃいいの……??
「ベル? どうしました」
横目で見上げると、グレンは子猫でも見つめるような甘い視線をオレに送っている。
アイリちゃんと会ったら……バグってるこいつも正常に戻るだろう。
そうなったら、お邪魔虫はオレの方だ。
「いや……日が落ちてきたと、思って」
ごまかしついでに繋がれた手を振り払おうとしたが、逆に更に強く握られた。なんだこいつ……。
「そうですね。あ――向こうに洞窟がありますよ。少し早いですが、今日はあそこで休みましょうか」
グレンが指し示す先には、確かに小さな洞窟がある。
……ん? あの洞窟って……もしかしなくても、アイリちゃんイベ用のやつじゃ……???
「あ、ああ……」
え、イベント見逃した???
(セルフ)追放した後、寝たり……なんやかんやしてたから? アイリちゃんイベそんな時間シビアなんだ……レアキャラ?
◇
辿り着いた洞窟は小さく、スペース的には一人なら小さく丸まれば横たわることができるかな、という程度。男二人では無理がある。
そうそう……だからグレンは座ったまま、アイリちゃんを抱きかかえる感じの体勢で過ごすんだよなぁ。
密着して、お互いの鼓動が聞こえる距離で……話しかける度に目と目が合ってときめいて、でもそれを隠して会話する。
うん。非常に甘酸っぱく良いシーン(自画自賛)だ。
……これ、このままだとオレとグレンでそのシーンやることになる流れじゃないか……?
だってこの場にいるのはオレたちだけだし。
アイリちゃんいないし。
「グレン。オレ、あっちの茂みで寝るから……お前がここで寝ろ」
寒いけど仕方ない。グレンの腕に抱かれたまま一晩過ごすよりマシだ。
そう思い、岩の裏の茂みに向かおうとしたが――当然、止められた。うん、わかってました。
「だめです。貴方があんなところで寝たら……最悪の場合、凍死しますよ」
でしょうね~!
引き寄せられ、後ろからぎゅうぎゅう抱きしめられる。
「じゃあどうすんだ」
「ベルを」
「お前が抱きかかえて寝るって? お断りだ」
「……貴方をここで寝かせて、俺は外で見張りをしてるつもりだったんです。俺なら一晩ぐらい寝なくても平気ですし」
……またオレ何かやっちゃいました?
「でも……いいですね、それ……貴方を腕の中に閉じ込めて眠りにつけるなんて……夢みたいです」
ああ……グレンの中で決定事項になっちゃってるよ……。あと閉じ込めるって言い方怖いからね? 気をつけて??
◇◇◇
携帯食と水だけの簡単な夕食を終え、狭い穴の中に二人。
体格の都合上(オレはもうちょっと肩幅とかあったと思うけど、ベルンハルトはオレよりも細いのがなんか嫌。)当然のようにオレが抱きかかえられる側なわけだが……。
背中にはずっとグレンの体温があって……『物語』どおり、鼓動が聞こえてきそうだ。
ひぃ…………相手が男ってわかってても無理!!!
こんな経験ないんだもん……。前世でも母親にしか抱きしめられたことないし!!!
落ち着くんだ……『素数』を数えて落ち着くんだ……。
「ベル、寒くありませんか」
「……大丈夫」
よーし落ち着いた。落ち着いたぞ~。
ちなみに、グレンが魔法で保温的なものをしてくれてるので、洞窟内は広さ以外は案外快適だ。
……あれ?? その魔法あったらオレ、外で寝ても死ななかったよね?
こいつ本当にオレが言うまでは一人で寝かせてくれる気あったのか……? 疑わしくなってきたな。
◇◇◇
「なぁ……グレン。お前、この旅が終わったらどうする気だ」
保温魔法と人肌とで心地よくまどろみながら問いかける。
胸板に頭を預けて、手慰みにグレンの耳元で揺れるピアスを弾いた。
――グレンは、ずっとオレの傍にいると言ったが……きっとそれは、今だけの約束だ。
設定が変わって、『物語』が少しズレてはきているが――グレンは、近いうちに【皇帝】のスキルを覚醒させる。
何故だかわからないが、オレにはその確信があった。
そして、彼が皇帝になった後は……もう、今日みたいにオレの手を引いて歩くことはないだろう。
「どう、とは?」
「冒険者続けるのか?……お前なら、“元勇者パーティーのメンバー“なんて肩書きなしでも引く手数多だろ」
対して、オレはどうだろう。
このまま勇者を辞めれば、“無能勇者“になって死ぬ運命は避けられるかもしれない。
でも、その先は?
ベルンハルトの人生は本来、十八年で終わる。その後のことは作者にだってわからない。
あ~~!!!
こんなことなら「悪い勇者も改心して主人公に謝罪して、その後は平凡な冒険者として主人公を尊敬しながら暮らしましたとさ」チャンチャンッ♪
……みたいな設定にしとけばよかった。
ベルンハルトにももう少し温情を、と引いてた叔父さんの助言は正しい。
いつどこで誰に転生するかわからないんだから、悪役にだってハッピーエンドへの道は残しておくべきだったんだ。
「……ベルンハルトさん。貴方は、どうするつもりなんですか?」
「オレは……勇者の称号も失ったら、多分冒険者として生きていくのは難しいし……家に戻っても、もう後継者じゃないから……どこかの家の令嬢と政略結婚でもすることになるんじゃないか」
はぁ……。
転生前のオレは、もう大学も決まって(体育以外の成績は優秀だったから推薦入学で余裕だった)進路のことは深く考えずにすむターンに入ってたのに……。
なんで異世界転生してからの方が進路に悩まないといけないんだ……。
ベルンハルト~~お前さぁ……!
「後継者から外すね!」って父親に言われたからって、「はいそうですか」ってあっさり納得してんじゃねぇよ!!!
自分と彼とは今や同一の存在なのだから、こんな恨み言に意味はない。
それに、父親の言葉に逆らわなかった彼の気持ちは理解できる。――そういう設定(後継者から外される事に納得している)にしたのはオレだから当然なんだけど。
ベルンハルトの父、ブルーノ・ミルザム伯爵。ミルザム伯爵領を治める領主である彼は、ベルンハルト以上に傲慢で嫌な男なのだ。
オレの“父親“という生き物に対する偏見を煮詰めて固めたみたいな存在だ。
――オレの父親は、母を妊娠させた後、病弱な彼女を捨てて失踪した。
その結果オレは母の親族から忌み子として扱われていたのだ。
まあ、別にそれはいい。
お母さんが「蓮のこと悪く言う奴らとこれ以上関わる気ないし」と、オレのために叔父さん以外との縁を切ってくれたので、そこにはこだわってない。
ただ。オレにとって“父親“というものはずっと――無責任で、怖くて……そういう嫌悪の対象であり続けた。
例によって作者の知らないことは描写できないので、『追放皇帝』には子への愛情に溢れた素晴らしい父親なんぞは登場しない。
グレンの父も、ベルンハルトの父とは違う方向性の無関心系クズだ。
ともかく――。
ベルンハルトは、父という存在との対話を諦めていたので、彼の言葉に一切の反論なく従った。
家を出れてラッキーぐらいに思ってたはずだ(そこまでは細かく書いてないけど多分)。
「……いいんですか、それで」
眠い中、思考をぐるぐる回してたせいで一瞬なにを訊かれてるのかわからなかった。
ん? ああ、政略結婚の話か。
「うーん……まあ、相手によるかな……」
アイリちゃんほど完璧な女の子じゃないにしても……ああ、そうだ。
「エステル、とかなら……」
四話で登場する第二ヒロイン、エステル・シャウラ。彼女との結婚ならオレの方は大歓迎だ。
エステルはベルンハルトの従兄妹。
彼女の双子の弟、ロニーはベルンハルトの代わりに後継者になるべくミルザム家の養子になった。
……ブルーノが、もうじき昔、グレンとベルンハルトの交わした〈契約〉の影響で死ぬはずだから、もう実質ロニーが当主と言っても過言ではないな。
「エステル、って……エステル・シャウラ? 貴方のいとこですよね」
「うん」
グレンと結ばれるのはアイリちゃんだから、エステルは負けヒロインなんだけど……可愛いんだよねぇ……。
年齢は一つ下の十七歳で、アイリちゃんよりも更に小柄な妹系。
彼女はどちらかといえば故郷を助けてくれたグレンを慕って旅に同行する感じだから、負けヒロインと呼ぶには語弊があるか。
――なんか今、変な感じしたな。
えー……うーん……エステルとの出会いは……。
ベルンハルトの死を知ったグレンがミルザム領に行って……ロニーとエステルと会って……で、モンスターが襲ってきて……。
「……あ」
オレの故郷、モンスターに襲われるんだったわ。
「ベル、足は疲れていませんか?」
“主人公“のグレン・アルナイル!
いずれチートスキルに目覚める予定の、細マッチョ&イケメン&イケボ&高身長の好青年!
だが隙あらば人をお姫様抱っこしたがる変人だ!
「疲れてない……あと手離せ」
そして“無能勇者“のベルンハルト・ミルザム!
勇者を辞める予定なのでそうなるとただの無能!
お姫様抱っこから解放された代わりに何故かずっと手を繋がれてるぜ!!
……以上だ。
というか異常なんだけど……。
計画通り、オレとグレンは森を通って王都に向かっている。
なのに――歩いても歩いても、出会いイベントが発生しない……っ!
どうしよ~~!!
グレンが隣にいる以上、アイリちゃんがオレに惚れる可能性は無……低いけど……でも、せめて会いたい!!!
それでアプローチしたらサ……ほら、ネ?
作者サンの魅力でアイリチャンもイチコロ(笑)
ナンチャッテ(笑)
……メンバー紹介したりエセおじさん構文やってる場合じゃないよ、オレ。思い出そうね~。
えーっと……グレンとアイリちゃんが会うのは確か夜にさしかかる頃。
暗闇の中でモンスターに襲われてるアイリちゃんをグレンが助け、二人は一夜を(健全に)森の中の洞窟で過ごし小さな愛のつぼみを育む……という非常にベタ……いや様式美的な出会いだ。
――え、これってさ。もし仮にここでアイリちゃんと会えた場合、オレはどうすりゃいいの……??
「ベル? どうしました」
横目で見上げると、グレンは子猫でも見つめるような甘い視線をオレに送っている。
アイリちゃんと会ったら……バグってるこいつも正常に戻るだろう。
そうなったら、お邪魔虫はオレの方だ。
「いや……日が落ちてきたと、思って」
ごまかしついでに繋がれた手を振り払おうとしたが、逆に更に強く握られた。なんだこいつ……。
「そうですね。あ――向こうに洞窟がありますよ。少し早いですが、今日はあそこで休みましょうか」
グレンが指し示す先には、確かに小さな洞窟がある。
……ん? あの洞窟って……もしかしなくても、アイリちゃんイベ用のやつじゃ……???
「あ、ああ……」
え、イベント見逃した???
(セルフ)追放した後、寝たり……なんやかんやしてたから? アイリちゃんイベそんな時間シビアなんだ……レアキャラ?
◇
辿り着いた洞窟は小さく、スペース的には一人なら小さく丸まれば横たわることができるかな、という程度。男二人では無理がある。
そうそう……だからグレンは座ったまま、アイリちゃんを抱きかかえる感じの体勢で過ごすんだよなぁ。
密着して、お互いの鼓動が聞こえる距離で……話しかける度に目と目が合ってときめいて、でもそれを隠して会話する。
うん。非常に甘酸っぱく良いシーン(自画自賛)だ。
……これ、このままだとオレとグレンでそのシーンやることになる流れじゃないか……?
だってこの場にいるのはオレたちだけだし。
アイリちゃんいないし。
「グレン。オレ、あっちの茂みで寝るから……お前がここで寝ろ」
寒いけど仕方ない。グレンの腕に抱かれたまま一晩過ごすよりマシだ。
そう思い、岩の裏の茂みに向かおうとしたが――当然、止められた。うん、わかってました。
「だめです。貴方があんなところで寝たら……最悪の場合、凍死しますよ」
でしょうね~!
引き寄せられ、後ろからぎゅうぎゅう抱きしめられる。
「じゃあどうすんだ」
「ベルを」
「お前が抱きかかえて寝るって? お断りだ」
「……貴方をここで寝かせて、俺は外で見張りをしてるつもりだったんです。俺なら一晩ぐらい寝なくても平気ですし」
……またオレ何かやっちゃいました?
「でも……いいですね、それ……貴方を腕の中に閉じ込めて眠りにつけるなんて……夢みたいです」
ああ……グレンの中で決定事項になっちゃってるよ……。あと閉じ込めるって言い方怖いからね? 気をつけて??
◇◇◇
携帯食と水だけの簡単な夕食を終え、狭い穴の中に二人。
体格の都合上(オレはもうちょっと肩幅とかあったと思うけど、ベルンハルトはオレよりも細いのがなんか嫌。)当然のようにオレが抱きかかえられる側なわけだが……。
背中にはずっとグレンの体温があって……『物語』どおり、鼓動が聞こえてきそうだ。
ひぃ…………相手が男ってわかってても無理!!!
こんな経験ないんだもん……。前世でも母親にしか抱きしめられたことないし!!!
落ち着くんだ……『素数』を数えて落ち着くんだ……。
「ベル、寒くありませんか」
「……大丈夫」
よーし落ち着いた。落ち着いたぞ~。
ちなみに、グレンが魔法で保温的なものをしてくれてるので、洞窟内は広さ以外は案外快適だ。
……あれ?? その魔法あったらオレ、外で寝ても死ななかったよね?
こいつ本当にオレが言うまでは一人で寝かせてくれる気あったのか……? 疑わしくなってきたな。
◇◇◇
「なぁ……グレン。お前、この旅が終わったらどうする気だ」
保温魔法と人肌とで心地よくまどろみながら問いかける。
胸板に頭を預けて、手慰みにグレンの耳元で揺れるピアスを弾いた。
――グレンは、ずっとオレの傍にいると言ったが……きっとそれは、今だけの約束だ。
設定が変わって、『物語』が少しズレてはきているが――グレンは、近いうちに【皇帝】のスキルを覚醒させる。
何故だかわからないが、オレにはその確信があった。
そして、彼が皇帝になった後は……もう、今日みたいにオレの手を引いて歩くことはないだろう。
「どう、とは?」
「冒険者続けるのか?……お前なら、“元勇者パーティーのメンバー“なんて肩書きなしでも引く手数多だろ」
対して、オレはどうだろう。
このまま勇者を辞めれば、“無能勇者“になって死ぬ運命は避けられるかもしれない。
でも、その先は?
ベルンハルトの人生は本来、十八年で終わる。その後のことは作者にだってわからない。
あ~~!!!
こんなことなら「悪い勇者も改心して主人公に謝罪して、その後は平凡な冒険者として主人公を尊敬しながら暮らしましたとさ」チャンチャンッ♪
……みたいな設定にしとけばよかった。
ベルンハルトにももう少し温情を、と引いてた叔父さんの助言は正しい。
いつどこで誰に転生するかわからないんだから、悪役にだってハッピーエンドへの道は残しておくべきだったんだ。
「……ベルンハルトさん。貴方は、どうするつもりなんですか?」
「オレは……勇者の称号も失ったら、多分冒険者として生きていくのは難しいし……家に戻っても、もう後継者じゃないから……どこかの家の令嬢と政略結婚でもすることになるんじゃないか」
はぁ……。
転生前のオレは、もう大学も決まって(体育以外の成績は優秀だったから推薦入学で余裕だった)進路のことは深く考えずにすむターンに入ってたのに……。
なんで異世界転生してからの方が進路に悩まないといけないんだ……。
ベルンハルト~~お前さぁ……!
「後継者から外すね!」って父親に言われたからって、「はいそうですか」ってあっさり納得してんじゃねぇよ!!!
自分と彼とは今や同一の存在なのだから、こんな恨み言に意味はない。
それに、父親の言葉に逆らわなかった彼の気持ちは理解できる。――そういう設定(後継者から外される事に納得している)にしたのはオレだから当然なんだけど。
ベルンハルトの父、ブルーノ・ミルザム伯爵。ミルザム伯爵領を治める領主である彼は、ベルンハルト以上に傲慢で嫌な男なのだ。
オレの“父親“という生き物に対する偏見を煮詰めて固めたみたいな存在だ。
――オレの父親は、母を妊娠させた後、病弱な彼女を捨てて失踪した。
その結果オレは母の親族から忌み子として扱われていたのだ。
まあ、別にそれはいい。
お母さんが「蓮のこと悪く言う奴らとこれ以上関わる気ないし」と、オレのために叔父さん以外との縁を切ってくれたので、そこにはこだわってない。
ただ。オレにとって“父親“というものはずっと――無責任で、怖くて……そういう嫌悪の対象であり続けた。
例によって作者の知らないことは描写できないので、『追放皇帝』には子への愛情に溢れた素晴らしい父親なんぞは登場しない。
グレンの父も、ベルンハルトの父とは違う方向性の無関心系クズだ。
ともかく――。
ベルンハルトは、父という存在との対話を諦めていたので、彼の言葉に一切の反論なく従った。
家を出れてラッキーぐらいに思ってたはずだ(そこまでは細かく書いてないけど多分)。
「……いいんですか、それで」
眠い中、思考をぐるぐる回してたせいで一瞬なにを訊かれてるのかわからなかった。
ん? ああ、政略結婚の話か。
「うーん……まあ、相手によるかな……」
アイリちゃんほど完璧な女の子じゃないにしても……ああ、そうだ。
「エステル、とかなら……」
四話で登場する第二ヒロイン、エステル・シャウラ。彼女との結婚ならオレの方は大歓迎だ。
エステルはベルンハルトの従兄妹。
彼女の双子の弟、ロニーはベルンハルトの代わりに後継者になるべくミルザム家の養子になった。
……ブルーノが、もうじき昔、グレンとベルンハルトの交わした〈契約〉の影響で死ぬはずだから、もう実質ロニーが当主と言っても過言ではないな。
「エステル、って……エステル・シャウラ? 貴方のいとこですよね」
「うん」
グレンと結ばれるのはアイリちゃんだから、エステルは負けヒロインなんだけど……可愛いんだよねぇ……。
年齢は一つ下の十七歳で、アイリちゃんよりも更に小柄な妹系。
彼女はどちらかといえば故郷を助けてくれたグレンを慕って旅に同行する感じだから、負けヒロインと呼ぶには語弊があるか。
――なんか今、変な感じしたな。
えー……うーん……エステルとの出会いは……。
ベルンハルトの死を知ったグレンがミルザム領に行って……ロニーとエステルと会って……で、モンスターが襲ってきて……。
「……あ」
オレの故郷、モンスターに襲われるんだったわ。
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