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出立

ヒロイン同士の秘密談

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エレノアと晴人が行為を行っていた一方、アリシアとカレン、二人きりになった彼女達は、何やら女だけの会話を始めていた。

「アリシア……貴女はどう思っているの?」

具体的な内容を示さない言葉、しかし、アリシアはカレンが何を意図しているのかを理解していた。
それは言うまでもなく、今のハルト達との関係とハーレムの事。

こうして会話を始めたのも誰から先導したというわけではなく、彼女達同士が率先したこと。
将来の為に、お互いの意志を確認する必要があったからだ。

アリシアは淀みない口調で答えた。

「私はハーレムには同意しています。
カレンさんもそうなのではないでしょうか?」

「確かにね……私も同意したわよ。
まあ……彼と貴女の勢いに押されて仕方なくってところはあるけど……」

事を思い出した風にカレンは、頭を抱えて明後日の方向に目を向ける。

「あの時はすみませんでした……」

晴人の望みに協力する為、カレンの箍を外し彼女の欲望を解放させてしまった事を反省するアリシア。

確かに、それで好きな人の力にはなれたのかもしれない。
しかし冷静になって思い返すと、結局のところ、服従させて無理矢理という形で終わってしまったのではないかとアリシアは不安になる。

彼女はその選択に迷いを抱き、カレンに対して罪悪感を感じていた。

「あぁ……そうね、貴女はそう思っているのね」

アリシアの顔からカレンは何かを察する。

「ハルトの催淫の効果って、確かに女性の情欲を煽ることは出来るけど……ただ、理性まで失わせるほど影響は強くないみたいなの。
個人差はあると思うけど、貴女も実際に掛かったんだから分かるでしょ?  」

アリシアは少し低い声でたどたどしく答えた。

「……はい、体がゾクゾクして熱くなりました。
それと、頭もくらくらするというか、まるで逆上せたような感じになりました。
でも、意識はハッキリしていました……
そういえば、理性も……」

そうぼそぼそと呟きながら、アリシアは川辺の一件の事を思い出す。

あの時、確かにアリシアは晴人の精子による催淫と媚薬効果でエッチな気持ちが高まっていた。
けど、明確に理性も意識もあった。
最初、アリシアは理性を失わせるほど強い催淫だから、あそこまで私達は乱れてしまうのだと思い込んでいた。
しかし理性があるなら、尚のこと恥じらいが増してあそこまで狂ったようなエッチは出来ない、何よりもアリシア達はまだ処女を卒業したばかりだ。

では、アリシア達を一体何が突き動かしているのか……

「ハルトがハーレムを作るって言って私は最初は嫌で否定した、貴女の説得も聞く気もなかった。
だから、いくらエッチな気持ちにさせられたからって嫌な気持ちは変わらなかったの……抵抗は出来たのよ。」

するとカレンは一度目を伏せて、アリシアの瞳をじっと見据えた。

「でも……こんなこと言うのは、やっぱり自分でも馬鹿げてるとは思うのだけれど……ハルトのね、あの人の精子を貴女に飲まされた時、抱いていた筈の不安とか不満が払拭されて、満ち足りた気分になってしまったの……」

ハルトを好きになってしまってから、彼の精子の匂いにも味にも敏感に反応するようになってしまい、それを体や五感で感じることで多幸感を感じるようになってしまったと説明するカレン。

すると、今まで翳りの入った雰囲気を放っていたアリシアが、カレンの言葉に共感を示し徐々に光を取り戻していった。

「は、はい!  そうです……私もカレンさんと一緒です!!
何と言うのでしょうか……ハルトさんの精子って温かいんですよ。
物理的な意味でもそうですけど……
心地よく満たされていく温かさというのでしょうか、あの人の事、私への気持ち、好意、愛情、ハルトさんの全てが伝わっていく気がするんです。」

アリシアはここで漸く気づく。
結局のところ、私達があそこまで乱れてしまうのはハルトさんの事が大好きなのだからでは無いだろうか、と……
つまり、彼への愛情がそうさせているのではないかと……

カレンは得心の言った表情をするアリシアを見て、満足してほくそ笑んだ。

「今でも強引なやり方だとは思ってるけど……
でも貴女がしてくれた事、本当は私それほど気にしていないのよ……
拒否し続けたところで、色々と折れて結局私断る気を失ってしまってたわけだし。
だからいいのよ、貴女がそのことで気にしなくても……」

アリシアは優しい表情を向けるカレンに、精一杯の感謝の気持ちを込めて答えた。

「はい、ありがとうございます!」

そのとき、カレンとアリシアの間にあった壁に小さな穴があき始めた。

「それで……これからの事だけど、きっとハルトの周りには私達以外に彼を愛した女性が増えていくと思うのよ。」

アリシアは頷きならがら同意した。

「そうですよね……ハルトさん、優しいですからね」

「それに何気ない気遣いができるわよね。」

「はい、あと女性を褒めるのも上手いですし、私達と話す時も言葉に気をつけながら、尚且つ女性を引き立てるような話を持ちかけるので、ハルトさんここじゃあモテますよ。」

「そうね、きっと彼モテるわよね。
何しろ、黒髪黒目で童顔っていうのが異国風で魅力があるし、見た目結構誠実で人好きのする表情をしてるから、話しかけてくる女子は多いと思うのよ。」

「カレンさんは、ハルトさんのそういう所が好きなんですか?」

「アリシアこそ、彼の事をよく見てるわよね……」

「"………………。"」

好きな男の自慢話で盛り上がっていた彼女達だっだが、急に頬を染めて何も言わなくなり、やがてトークを中断した。

「一旦落ち着きましょう……」

「そ、そうですね……」

二人とも同時に深呼吸をして、冷静になろうとする。

「ハルトがずっと私達の事を好きでいてくれる為に、努力すればいいと思わない?」

「努力ですか?」

「そうよ、私達のことを好きでいてもらえる努力をするの。」

晴人に心から愛されて、彼の自分への気持ちが本気だと自覚したカレン……彼女なりに心境の変化があった。

ハーレムになり不安になってしまうのは、結局自分にまだ自信がないのが原因。
ただ、それだと対等じゃない……ハルトは愛してくれているのに、私だけ彼への愛情を疑っていることになる。

だからカレンは考えた、まずはそうならない為に、自信をつけるために努力をするべきだと。

しかし、一方でシスターとして禁欲や物欲を制限してきたアリシアには、女性磨きという言葉は縁遠いものだった。

「簡単な事よ……今日みたいに普段は見せない特別な可愛い姿を見せるの。」

「それって……ネグリジェの事ですか?
でも、あれは女性の寝間着としては結構一般的だと思うのですが……」

寝間着に可愛いも特別もないと思っているアリシア、正直晴人が寝間着姿を褒めたのも予想外だった。
ただ、何にせよ好きな人から褒められるのは嬉しい事だ。

「ダメよ……そういう当たり前の考えは捨てなさい。
彼はね、多分……私達が普段とは違う格好をしてるから思わず見取れてしまったのよ。
あの時、私達の寝間着姿を見て素敵だっていってくれたでしょ?
あれって……きっと、言葉だけじゃなくて本気でそう思ってたのよ。」

「た、確かに……あの時のハルトさんの視線ずっと私達の寝間着に向けられてましたもんね。
ちょ、ちょっとエッチな視線だったとは思いますけど……」

「つまりはそういうことよ。
私達が少し工夫していつもとは違った格好をするだけで、それはハルトにとっては価値があるものなの。
ただ、それを可愛く魅せたり、大人っぽく綺麗に魅せれば彼は私達のことをもっと見てくれる、益々好きになってくれるはずよ。
これは外見だけの話じゃないの……
振る舞いや接し方もそう……例えば普段よりも彼に甘えて接したりすれば、彼はさらに私達を好きになってくれるんじゃないかしら?」

そのとき、アリシアは彼女達が座るソファの隅で見え隠れしていた一冊の本に気づく。

「なんですか……これ?」

手を伸ばしてそっとピンク色の表紙が目立つその本を取った。

「ちょっ、それは……」

「『恋愛の究極の心得~これさえあれば、どんな男もイチコロ~』
私……この本、エレノアさんのお部屋でも見つけました。」

恐らく、カレンはエレノアの私物であるこの本を参考にアリシアにアドバイスをしてきたのだろう。
アリシアはそれに気づき、ジト目で彼女を見つめた。

「…………わ、悪い!?
し、仕方ないじゃない!! こういうの初めてなんだから! 」

「だからって本を参考にするのは……」

とはいえ、やはりカレンは恋愛は初経験である。
男の好きな女性像とかグッとくる女性の仕草もよく分からない彼女は、その手の本を参考にするほど切羽詰まっていたのである。

「じゃあ、貴女だったらどうするのよ……
何かほかに方法があるの?」

そう言われてアリシアはうーんと唸りながら考えるが、段々とその表情は険しいものになっていった。

「……だ、ダメです、全くいい考えが浮かびません!」

「ポンコツね……一つぐらい何か浮かばないの?」

アリシアは半泣きでカレンに縋った。

「……だ、だってぇ……
私だってこういうのは初めてで……どうすればいいのか初めから分からないんですよぉ……」

本を参考にしたアリシアの意見に疑問を持ちながら、アリシアはこの有様。

そんな彼女にカレンは呆れた様子だ。

「まぁ、本を参考にするぐらいだし?
私も恋愛経験が豊富というわけじゃないんだけど……女性磨きをするというのは、女として常識だと思うわ。
あの時の彼の反応を思い出せば、アリシアだって分かるでしょ?」

「は、はい……でも、私はただいつも通りのネグリジェに着替えただけですし、ハルトさんがもっと私達を見てくれるような事を具体的にしろと言われても、よく分かりません。」

俯いて顔を暗くするアリシアを見て、カレンはため息を吐いた。

「私だって恋愛経験はないけど、女性磨きの基本ぐらいは分かるし、ちゃんとしてるわ。
…………別に、それぐらいだったら貴女にも教えてあげるわよ。」

「い、いいのでしょうか?本当に?」

「ただし、特別に……特別によ?  貴女が分からないって言うから教えてあげるんだから……でも、頼るだけじゃなくて自分でも挑戦することを覚えなさい、いいわね?」

「は、はい!」

アリシアの浮かない顔を思い出し、カレンは心に違和感を覚えていた。
彼女を簡単に見過ごしておけなくなる……歯がゆさというものに近いだろう。

「貴女も彼が好きなら、そんなことで弱音を吐かないでほしいわ……」

「あの、何か言いましたか?」

「何でもない」

しかし、カレンも女としての魅力に絶対の自信がある訳では無い。

それでも、アリシアの為に協力する事を誓ったのは、彼女が他人事だと思えなかったから……
アリシアの好きという気持ちと自分のそれを比べても、大差はないのだと気づいてしまったから。

だから、自分の立場をアリシアの立場に置き換えてカレンは考えてしまった。
と同時に自分だけ取り残されていく悔しさ、晴人に見捨てられてしまう不安と悲しさを想像してしまったのだ。

「カレンさんって……優しい人ですよね。」

「何よ急に……」

「見た目はかなりクールな人かと思ってましたけど、本当は思いやりがあって温かい方なんですね。
良かったです……本当に……」

褒められて悪い気はしないが、アリシアにそう言われても素直に喜べないのはカレンが、まだ彼女との距離を少なからず置いているからだろう。

「貴女のような方がハルトさんを好きになってくれてよかったと思います。」

だが、その距離は少しずつだが縮まっていた。

「フフッ……それはお互い様でしょ?」

「はい、そうでしたね。」

そう言って笑う二人、ぎこちなく微妙な二人の関係は徐々に変わりつつあった。

「……まだハーレムの事、私達の間で話していなかったわね。」

そう言われてアリシアはハッとする。

「そ、そうでした……」

「ハルトは私達を幸せにする義務があるし、私達も彼を幸せにしなくちゃいけない。
だから、彼が一夫多妻を望んでいるなら、私達は最初の彼の女として、これから彼の傍に寄り添ってくる女達を見定めなければいけないと思うの。」


アリシアとカレン、最初に晴人の女となった者同士で将来の為、様々な約束事が決められていく。
勿論、そんな事を晴人は知る由もない……


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